項目 | 説明 |
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国内総所得 | 一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計 |
付加価値 | 生産活動によって新たに付け加えられた価値 |
生産額法 | 国内で生産されたモノやサービスの付加価値を合計する方法 |
支出額法 | 国内で行われた最終需要の合計額を計算する方法 |
所得額法 | 国内で生み出された所得の合計額を計算する方法 |
国民総生産(GNP) | 国民が国内外で生産した付加価値の合計 |
国民総所得(GNI) | 居住者が国内外から得た所得の合計 |
名目GDP | 現在の価格で計算されたGDP |
実質GDP | 一定時点の価格を基準として計算されたGDP |
経済成長率 | 実質GDPの上昇率 |
財政政策 | 政府が歳入や歳出を通じて経済に影響を与える政策 |
金融政策 | 中央銀行が通貨供給量や金利を調整することで経済に影響を与える政策 |
1. 国内総所得の定義とは
国内総所得の定義
国内総所得とは、ある国で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値を合計した数字です。一定期間というのは、通常1年のことです。付加価値は、生産活動によって、新たに付け加えられた価値。つまり、モノやサービスを販売した時の価格から、生産にかかった原材料費やそのほかの費用などを差し引いた部分となります。\n\n単純なイメージでは、国内の生産や販売で実現した利益を1年分集計した数字です。国の経済状況を知る手掛かりとなります。
例えば、小麦から小麦粉を作り、それがパンになって消費者に販売されるというプロセスを例に考えてみましょう。\n\nまず農家が小麦を作り、製粉会社に100円で売ったとしましょう。仮に農家にかかった費用を0円としておくと、農家が生産した付加価値は100円です。\n\n次に製粉会社が、仕入れた小麦を小麦粉にしてパン屋さんに200円で売ります。小麦の仕入れには100円かかっているので、利益は100円。ここでも100円の付加価値が生じています。\n\nさらに、パン屋さんが小麦粉からパンを作って、消費者に300円で売ったとします。ここでも利益は100円。100円の付加価値が発生しました。ここまでのプロセスでは、農家が100円、製粉会社が100円、パン屋さんが100円とそれぞれ付加価値を生み出しています。ここでの付加価値の合計は300円となります。
売買のプロセスで動いたお金は、100円、200円、300円で合計600円ですが、その数字とは異なることに注意しましょう。また最終的に消費者が支払った300円と、全プロセスでの付加価値の合計が等しくなる点も重要です。
項目 | 説明 |
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国内総所得 | 一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計 |
付加価値 | 生産活動によって新たに付け加えられた価値 |
国内総所得と国民総生産の違い
国内総所得(GDP)が日本で使われるようになったのは、1980年代からです。代表的な指標として採用されたのが1993年。それ以前は主に、国民総生産(GNP、Gross National Product)が使われていました。2000年からは、国民経済計算の体系(93SNA)が変更され、GNPの概念がなくなりました。年代によってはGNPという言葉を知らないという方もいらっしゃるかもしれません。「国内」と「国民」という部分が異なる2つの言葉。違いを確認しておきましょう。\n\nGDPは「国内」で生産された付加価値の合計。例えば、日本企業が海外支店で生産した付加価値は、そこに含まれません。GNPは「国民」が生産した付加価値の合計。日本企業が海外支店で生産した付加価値も含むことになります。GDPが属地的な考え方を取る一方、GNPは属人的な見方をしているといえるでしょう。
GNPの概念はなくなり、それに代わるものとして「国民総所得(GNI、Gross National Income)」が使われるようになりました。定義としては「居住者が国内外から1年間に得た所得の合計」となり、海外からの所得も含みます。
項目 | 説明 |
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GDP | 国内で生産された付加価値の合計 |
GNP | 国民が生産した付加価値の合計 |
国内総所得と経済成長率
お金の計画を立てる時は、景気の動向が気になります。家計の収支や投資の判断を左右する景気の状況を示すのが、経済成長率。実質GDP成長率がそれです。例えば今年の実質GDPの値と、去年の実質GDPの値がわかれば、その増減率を計算できるでしょう。\n\n実質GDP成長率については、日銀などが将来的な予測を公表しており、景気の見通しをつける参考にもなります。
景気が良く経済が好調であれば、経済成長率・実質GDP成長率は高くなり、逆に景気が悪く経済が不調であれば成長率は低くなり、マイナスになることもあります。金利の動向や投資に対するリターンについて考える時にも、重要な判断材料となる数字です。経済成長率とその予測については、高い関心を持つことが必要といえるでしょう。
項目 | 説明 |
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経済成長率 | 実質GDPの上昇率 |
まとめ
国内総所得は、ある国で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値を合計したもので、国の経済状況を知る重要な指標です。国内総所得は、国内で生産された付加価値を対象とするため、日本企業が海外で生産したモノやサービスの付加価値は含まれません。一方、国民総所得は、居住者が国内外から得た所得を対象とするため、日本企業が海外で得た所得も含まれます。
国内総所得は、生産面、分配面、支出面の3つの側面から計算することができます。生産面では、国内で生産されたモノやサービスの付加価値を合計します。分配面では、国内で得られた所得を合計します。支出面では、国内で行われた最終需要を合計します。
国内総所得は、経済の規模や成長率を示す重要な指標であり、経済分析や政策立案に役立ちます。
2. 国内総所得の計算方法
生産額法
生産額法は、国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を計算する方法です。付加価値とは、企業が生産活動を通じて生み出した価値のことで、原材料や中間財のコストを除いたものです。生産額法は、以下の式で計算されます。\n\n「GDP = 生産額」
例えば、パン屋さんが小麦粉からパンを作って、消費者に300円で売ったとします。パン屋さんが小麦粉を仕入れるのに200円かかったとすると、パン屋さんの付加価値は300円 – 200円 = 100円となります。
このように、各産業の各段階で生産された国内すべての付加価値を合算することで、国内総生産(GDP)を求めることができます。
項目 | 説明 |
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生産額法 | 国内で生産されたモノやサービスの付加価値を合計する方法 |
支出額法
支出額法は、国内で行われた最終需要の合計額を計算する方法です。最終需要とは、消費者が購入したモノやサービス、政府が行った支出、企業による投資、輸出額です。支出額法は、以下の式で計算されます。\n\n「GDP = 個人消費 + 政府支出 + 民間投資 + 純輸出」
例えば、消費者が100万円の自動車を購入した場合、その100万円は最終需要としてGDPに計上されます。また、政府が10億円かけて道路を建設した場合、その10億円も最終需要としてGDPに計上されます。
このように、国内で行われたすべての最終需要を合計することで、国内総生産(GDP)を求めることができます。
項目 | 説明 |
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支出額法 | 国内で行われた最終需要の合計額を計算する方法 |
所得額法
所得額法は、国内で生み出された所得の合計額を計算する方法です。所得とは、個人や企業が得た収入のことです。所得額法は、以下の式で計算されます。\n\n「GDP = 雇用者報酬 + 営業余剰 + 固定資本減耗 + 税金 – 補助金」
例えば、会社員が1年間で300万円の給与を得た場合、その300万円は雇用者報酬としてGDPに計上されます。また、企業が1年間で100万円の利益を得た場合、その100万円は営業余剰としてGDPに計上されます。
このように、国内で生み出されたすべての所得を合計することで、国内総生産(GDP)を求めることができます。
項目 | 説明 |
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所得額法 | 国内で生み出された所得の合計額を計算する方法 |
まとめ
国内総所得は、生産額法、支出額法、所得額法の3つの方法で計算することができます。生産額法は、国内で生産されたモノやサービスの付加価値を合計する方法です。支出額法は、国内で行われた最終需要を合計する方法です。所得額法は、国内で生み出された所得を合計する方法です。
それぞれの計算方法によって、国内総所得の値は同じになります。これは、国内総所得が経済活動の全体像を表す指標であることを示しています。
3. 国内総所得の重要性と役割
経済政策立案における重要性
国内総所得は、政府の経済政策立案においても重要な指標です。政府は、国内総所得を基に財政政策や金融政策を実施して、経済を安定させるために役立てています。
例えば、国内総所得が減少している場合、政府は景気刺激策として、公共事業の拡大や減税などの財政政策を実施することがあります。また、国内総所得が急増し、インフレが懸念される場合は、金融政策によって金利を引き上げ、経済活動を抑制することがあります。
国民生活における重要性
国内総所得は、私たちの生活にも密接に関わっています。国内総所得が伸びれば、私たちの生活はより豊かになると考えられます。また、国内総所得が低迷すれば、私たちの生活はより厳しくなると考えられます。
例えば、国内総所得が伸びれば、企業はより多くの従業員を雇用したり、賃金を増やしたりすることができるようになります。これにより、消費者の購買力が向上し、経済全体が活性化します。
国際比較における重要性
国内総所得は、国際比較においても重要な指標です。国内総所得が高い国ほど、経済的に豊かであると考えられています。
国際比較では、国内総所得を人口で割った一人当たり国内総所得が用いられることが多いです。一人当たり国内総所得が高い国は、国民一人当たりの生活水準が高いことを示しています。
まとめ
国内総所得は、経済政策立案、国民生活、国際比較において重要な役割を果たす指標です。政府は、国内総所得を基に経済政策を立案し、国民は国内総所得の動向によって生活水準が変化します。また、国際比較においては、国内総所得は国の経済力を示す指標として用いられます。
4. GDPと国民総生産(GNP)の違い
GDPとGNPの定義
GDPは「国内」で生産された付加価値の合計。例えば、日本企業が海外支店で生産した付加価値は、そこに含まれません。GNPは「国民」が生産した付加価値の合計。日本企業が海外支店で生産した付加価値も含むことになります。GDPが属地的な考え方を取る一方、GNPは属人的な見方をしているといえるでしょう。
GNPの概念はなくなり、それに代わるものとして「国民総所得(GNI、Gross National Income)」が使われるようになりました。定義としては「居住者が国内外から1年間に得た所得の合計」となり、海外からの所得も含みます。
項目 | 説明 |
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GDP | 国内で生産された付加価値の合計 |
GNP | 国民が生産した付加価値の合計 |
GDPとGNPの使い分け
以前、日本の景気を測る指標として主にGNPが用いられていたが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されている。国内の生産活動に焦点を当てることで、国内の景気変動をより直接的に捉えることができるからである。
GNIとの関係
GNIは、先ほど紹介した国民総生産(GNP)に近い概念で、国民(国内に住む人々)が一定期間内に得た総所得を示す数値であり「Gross National Income」の略語である。GDPが国内の生産で得た付加価値を示すものであるのに対し、GNIは国民が国内外で生み出した所得の合計を反映しており、国内に住む人々が国外で働いて得た所得と、国内に住む人々が国内で得た所得が含まれる。
GNIは国民が生み出した所得を測るので、国外での経済活動にも関連しており、GNIはGDPよりもグローバルな視点が必要な時に活用される。
項目 | 説明 |
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GNI | 居住者が国内外から得た所得の合計 |
まとめ
GDPは国内で生産された付加価値の合計であり、GNPは国民が生産した付加価値の合計です。GNPは、国内だけでなく海外での生産活動も含まれます。現在では、GNPの代わりにGNIが用いられることが多くなっています。
GDPは国内の経済状況をより正確に反映する指標として、GNPよりも重視されています。
5. 国内総所得の限界と課題
GDPの限界
GDPは、国の経済活動を数値化し、時系列的な変化や比較を可能にする貴重な統計情報です。そのため、政府や企業は国内総所得の動向を注視し、経済政策や投資戦略の立案に活用しています。
しかしながら、国内総所得が一つの数値で国の経済状況を完全に表現するわけではありません。GDPには限界もあり、例えば環境負荷や生活品質といった側面をカバーしきれない部分があります。
GDPの課題
GDPは市場価格が原則なので、自然環境の悪化などが考慮されていません。国内総生産を表した数字なので、生産する上で燃料を使用して多量に排気ガスを排出してもGDPでは測ることができません。他には、企業の生産量を上げたいという思いから、労働者の労働時間が増えてしまったり、人間関係の悪化などは考慮できません。これらがGDPの問題点とされ、数十年以上も前から世界中が問題視しています。
GDPの代替指標
GDPの限界を克服するために、近年では、幸福度や環境負荷などを考慮した新たな指標が開発されています。例えば、世界幸福度ランキングや環境パフォーマンス指数などが挙げられます。
項目 | 説明 |
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世界幸福度ランキング | 幸福度を測る指標 |
環境パフォーマンス指数 | 環境負荷を測る指標 |
まとめ
国内総所得は、国の経済状況を把握する上で重要な指標ですが、環境負荷や生活品質といった側面を考慮していないため、限界があります。そのため、国内総所得の限界を克服するために、新たな指標が開発されています。
6. 国内総所得と経済政策
財政政策
財政政策とは、政府が歳入や歳出を通じて、経済に影響を及ぼす政策のことです。歳入面では増税(または減税)や国債発行の増減、歳出面では公共事業の拡大(または縮小)をすることによって、景気の拡大や抑制を図ります。
財政政策は、景気刺激策として、公共事業の拡大や減税などの政策を実施することがあります。また、インフレ抑制策として、歳出削減や増税などの政策を実施することがあります。
項目 | 説明 |
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財政政策 | 政府が歳入や歳出を通じて経済に影響を与える政策 |
歳入 | 増税、減税、国債発行 |
歳出 | 公共事業、社会保障 |
金融政策
金融政策とは、中央銀行が通貨供給量や金利を調整することで、経済に影響を及ぼす政策のことです。金融政策は、景気刺激策として、金利を引き下げたり、通貨供給量を増やしたりすることがあります。また、インフレ抑制策として、金利を引き上げたり、通貨供給量を減らしたりすることがあります。
項目 | 説明 |
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金融政策 | 中央銀行が通貨供給量や金利を調整することで経済に影響を与える政策 |
通貨供給量 | 国債の売買、預金準備率の変更、割引率の調整 |
金利 | 政策金利の変更 |
財政政策と金融政策の関係
財政政策と金融政策は、どちらも経済の安定を目的とした政策ですが、その効果や施策をおこなうタイミングは異なります。
財政政策は、金融政策と比べて、より直接的に経済に影響を与えることができます。しかし、財政政策は、政府の財政状況に大きな影響を与えるため、慎重に実施する必要があります。
まとめ
国内総所得は、政府の経済政策の目標値として用いられます。政府は、国内総所得を安定させるために、財政政策や金融政策を実施します。
財政政策は、政府支出や減税を通じて、経済に影響を与えます。金融政策は、金利や通貨供給量を調整することで、経済に影響を与えます。
財政政策と金融政策は、それぞれの特徴を生かして、効果的に組み合わせることで、経済の安定を図ることができます。
参考文献
・国内総所得とは何か?理解しておきたい基礎知識 | sasa-dango
・国内総生産(GDP)とは|経済指標用語集|iFinance
・国内総生産(GDP)とは?名目と実質とは?日本が順位を下げる理由、わかりやすく解説:朝日新聞GLOBE+
・いまさら聞けない「Gdp」をわかりやすく解説 求め方や実質・名目gdpの違いも紹介 | Eleminist(エレミニスト)
・国内総生産(GDP)とは?定義や求め方、最新の世界ランキングなどをわかりやすく紹介
・GDP(国内総生産)をわかりやすく解説!【初心者でもわかる経済学】 | kazuglobal
・Gdp(国内総生産)とは?世界経済を比較する指標をわかりやすく解説。 | マネリテ!「株式投資初心者の勉強 虎の巻」
・GDP(国内総生産)とは?|用語解説|三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
・【Gdpとは?】いまさら聞けないgdpの基礎情報!Gniとの違いは?実質gdpと名目gdpって何? – 海外取引に携わるすべての人のための為替 …
・今さら聞けない!Gdp、Gnp、Gniの意味やそれぞれの違いとは?わかりやすく解説 – タスマガジン
・Gdpとgni(Gnp)の違いについて : 経済社会総合研究所 – 内閣府
・国内総生産(GDP)とは?定義や求め方、最新の世界ランキングなどをわかりやすく紹介|Infoseekニュース
・【知ってるつもりの経済用語】「Gdp(国内総生産)」…どうやって求めるの?〈計算方法を解説〉 | ゴールドオンライン