哺乳類:ニホンジカについて説明

1. ニホンジカの分布と生息地

1-1. ニホンジカの分布域

ニホンジカ (Cervus nippon) は、偶蹄目シカ科シカ属に分類される偶蹄類で、日本、中国大陸、ロシアに分布しています。日本では北海道、本州、四国、九州、南西諸島に生息しており、7つの地域亜種に分類されています。

かつては朝鮮半島、ベトナムにも生息していましたが、現在では絶滅したと考えられています。韓国では絶滅しており、台湾では再導入されています。また、イギリス、フランス、ドイツ、ニュージーランドなど世界各地に移入され、外来種として問題視されている地域もあります。

1-2. ニホンジカの生息環境

ニホンジカは、常緑広葉樹林や落葉広葉樹林、草原など様々な環境に生息しています。しかし、完全に森林から離れることはなく、森林の周辺や森林内に草地が点在する環境を好みます。

積雪地帯では、冬季に積雪を避けて季節的な移動を行うこともあります。特に北海道のエゾシカは、冬には低地や海岸部に移動することが知られています。

1-3. 亜種ごとの生息地

日本のニホンジカは、地域によって形態や遺伝的な特徴が異なるため、7つの亜種に分類されています。それぞれの亜種の生息地は以下のとおりです。

エゾシカ:北海道全域

ホンシュウジカ:本州(北海道を除く)

キュウシュウジカ:九州(対馬を除く)

マゲジカ:馬毛島

ヤクシカ:屋久島

ケラマジカ:慶良間諸島

ツシマジカ:対馬

南西諸島の3亜種(マゲジカ、ヤクシカ、ケラマジカ)は特に小型であり、オスの体重はエゾシカの140kgに対して、マゲジカとヤクシカで40kg、ケラマジカでは30kgとされています。

1-4. まとめ

ニホンジカは、日本各地に生息しており、それぞれの地域に適応した亜種に分化しています。生息環境は多様ですが、森林と草原が混在する環境を好み、冬季には積雪を避けて移動することもあります。

ニホンジカは、かつては日本各地に広く生息していましたが、乱獲や生息地の減少により、生息数が激減し、分布域が分断化しました。しかし、近年は保護政策の効果もあり、生息数が増加傾向にあります。

一方で、ニホンジカの増加は、農作物や森林への被害、生態系への影響など様々な問題を引き起こしています。そのため、ニホンジカの個体数管理は重要な課題となっています。

参考文献

ニホンジカ – Wikipedia

全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定及び生息分布調査 …

ニホンジカの生態|繁殖・食性(嗜好・不嗜好植物)・行動圏 …

2. ニホンジカの特徴と体格

2-1. 日本各地に生息する多様なニホンジカ

ニホンジカは、日本固有種と思われがちですが、実は東南アジアからベトナム、中国の日本海沿岸にかけて広く分布するシカ科シカ属の動物です。日本では、北海道のエゾシカ、本州のホンシュウジカ、中国地方・四国・九州のキュウシュウジカ、対馬のツシマジカ、馬毛島のマゲジカ、屋久島のヤクシカ、慶良間諸島のケラマジカの7亜種が生息しています。

これらの亜種は、生息環境や気候の違いによって、体格や毛色、角の形などに特徴が見られます。例えば、北海道のエゾシカは、寒冷な気候に適応するため、他の亜種よりも体が大きく、冬毛は灰褐色になります。一方、慶良間諸島のケラマジカは、温暖な気候に適応するため、体が小さく、体毛は短く、赤褐色をしています。

これらの亜種は、それぞれ独自の進化を遂げてきた結果、多様な特徴を持つようになりました。ニホンジカの多様性は、日本の豊かな自然環境が生み出したものであると言えるでしょう。

2-2. ニホンジカの体格と生息環境

ニホンジカは、環境適応能力が高く、多様な場所に生息しています。積雪の多い地域を除き、森林、草原、農耕地など様々な環境で見られます。生息環境によって、ニホンジカの体格や行動パターンにも違いが見られます。

例えば、山中に生息する山ジカは、人里に生息する里ジカと比べて、体が小さく、警戒心が強い傾向があります。これは、山間部では、餌となる植物が少なく、厳しい環境で生き抜く必要があり、人里のように容易に餌を得られないためと考えられます。

ニホンジカの体格は、亜種によって異なりますが、一般的には雄の方が雌よりも大きく、体重は20~140kg、体長は90~190cmにもなります。

2-3. ニホンジカの食性と繁殖

ニホンジカは草食性で、木の葉や樹皮、草本、種子など、様々な植物を食べています。特に、ケヤキの枝葉を好む傾向があり、年間の採食量の70%以上を占めることもあります。

ニホンジカは、季節繁殖性で、主に9月~11月に交尾を行い、約220日の妊娠期間を経て、翌年の5月下旬~7月上旬に出産します。一産一子で、生まれてから約4か月間は、母親と一緒に過ごします。

2-4. まとめ

ニホンジカは、日本の豊かな自然環境が生み出した、多様性に富んだ動物です。生息環境や亜種によって体格や毛色、行動パターンなどが異なります。近年は、個体数が増加し、農作物や森林への被害が深刻化しています。しかし、ニホンジカは、古来から日本人と深い関わりを持ってきた動物であり、その生態を理解し、共存していくことが重要です。

参考文献

ニホンジカの生態と見つけ方 | 生き物サーチング

【徹底解説】ニホンジカは何を食べ、どこに住む?生態的な …

ニホンジカ 学名:Cervus nippon|野生生物共有図鑑

3. ニホンジカの繁殖と生活習慣

3-1. ニホンジカの繁殖サイクル

ニホンジカは、繁殖期と非繁殖期で行動パターンが大きく異なります。非繁殖期では、オスは単独もしくはオス同士の群れで、メスは単独もしくは母子で行動します。しかし、発情期になると、大きな成獣のオスは複数のメスを従えた縄張りを持つようになり、これをハーレム形成と言います。ハーレムを形成したオスは、発情したメスと交尾するだけでなく、縄張りに侵入しようとする他のオスを追い払います。また、縄張りを持ったオスは「フィーヨー」というような高い鳴き声を発し、これをラッティングコールと言い、自分の存在を他のオスに知らせています。

交尾を終えたメスは、約220日の妊娠期間を経て初夏に1頭の子を産みます。生まれた子は、メスの場合はそのまま母親と一緒に行動しますが、オスは角が生える2年目くらいになると母親から離れ、単独、もしくは他のオスに追従するようになります。

ニホンジカは、繁殖能力がとても高い種です。栄養状態が良ければ、性成熟したメスのほとんどが毎年妊娠することができるようです。オスの場合も同様に性成熟は早いようですが、オスは発情期になわばり争いに勝てなければ交尾に至ることはあまりなく、成獣になるとようやく繁殖活動ができるようになるようです。

3-2. ニホンジカの食性と胃の構造

ニホンジカは草食性の動物であり、植物を主な食料としています。植物は、森や草原にたくさんあるため、豊富な食物資源を得ることができます。しかし、植物には繊維質が多く、簡単に消化できないものもあります。この問題を解決するために、ニホンジカの胃は複雑な構造となっています。胃の数は全部で4つもあります。

口から入った食物は、一旦1つ目の胃の中に貯め込んでおき、休んでいるときに再度口の中に戻して咬みなおします。これを「反芻」と呼びます。1つ目の胃の中にはバクテリアが共生しており、硬い繊維質を分解してくれます。このことから、ニホンジカはたくさんの種類の植物を食べて生活することができます。

ニホンジカは季節によって食べる植物の種類も変わります。落葉広葉樹林に生息するエゾジカやホンシュウジカは、イネ科草本、木の葉、堅果、ササ類などを季節に応じて採食します。とくにササ類は積雪地域の冬の主要な植物です。常緑広葉樹林に生息するキュウシュウジカなどは食性の季節的変化は少なく、1年を通じて木の葉を採食します。

3-3. ニホンジカの行動と活動時間

ニホンジカは本来薄明薄暮性であり、日の出前と日没直後の薄明るい時間帯に活動する動物です。しかし、日本では鹿が夜間目撃されることがよくありますし、鹿と車の交通事故なども夜よく起こっており、鹿は夜行性のように思えます。これは、鹿が人間の行動に合わせて行動時間を変えた結果なのです。昼間は畑には人間がいますし、山の中ならハンターが鹿を撃ちに来ることもあります。このため、鹿が生活パターンを変えて夜に行動するようになり、人気のない夜の畑に降りてきたりするようになったのです。

ニホンジカの行動範囲は狭く、0.5〜2平方キロメートルの範囲内で休息と食事を繰り返しています。2〜3時間食物を食べては、2〜4時間休憩しながら反芻するのを繰り返します。

3-4. まとめ

ニホンジカは、繁殖能力が高く、食性も幅広いため、環境適応能力も高く、近年では全国的に生息数を増やしています。しかし、その一方で、農作物や森林への被害、交通事故など、人間社会との摩擦も増加しています。

ニホンジカの個体数増加は、人間活動による森林環境の変化や、天敵の減少などが影響していると考えられます。今後、ニホンジカとの共存を図っていくためには、生息環境の管理、捕獲による個体数調整など、様々な対策が必要となります。

参考文献

鹿の生態 | Deer Info-日本で唯一の鹿情報総合サイト

ニホンジカ – 広島大学デジタル博物館

PDF ニホンジカの生態 – 石川県ホームページ

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