分類 | 定義 | 例 |
---|---|---|
グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs) | グローバルな金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | JPモルガン・チェース、シティグループ、HSBCなど |
国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs) | 国内の金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなど |
グローバルなシステム上重要な保険会社(G-SIIs) | グローバルな金融システムに影響を与える可能性のある保険会社 | アリアンツ、AIG、ゼネラリ保険会社など |
システム上重要なノンバンク金融機関(NBNI G-SIFIs) | 銀行や保険会社以外の金融機関で、グローバルな金融システムに影響を与える可能性のあるもの | ファイナンス会社、証券ブローカー・ディーラー、投資ファンドなど |
1. 重要な金融機関とは
1.1. システム上重要な金融機関(SIFIs)
本稿では、システム上重要な金融機関(Systemically Important Financial Institutions
具体的には、G20首脳は、2011年11月、カンヌ・サミットにおいて、グローバルなシステム上重要な金融機関に関する政策枠組みを合意しました。その後、金融危機以降の規制改革の中で、システム上重要な金融機関に対して、追加的な資本を求めるとともに、秩序ある破綻を可能にするための制度が整備されました。本稿では、その中でも、システム上重要な「銀行」に焦点を当てます(秩序ある破綻処理については今後の論文で取り上げます)。
なお、本稿では筆者がこれまで記載した一連の金融規制の文献を前提とするので、基礎的な知識の確認が必要な読者は「バーゼル規制入門」(服部
分類 | 定義 | 例 |
---|---|---|
グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs) | グローバルな金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | JPモルガン・チェース、シティグループ、HSBCなど |
国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs) | 国内の金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなど |
1.2. TBTF問題への対処方法
服部(2022c)でも説明したとおり、銀行が倒産した場合、特に問題である点は、銀行の破綻が他の銀行の破綻をもたらすなど、連鎖的な影響を与えうることから、政府には救済のインセンティブが生まれる点です。特に金融機関が最終的に救済されることが分かっていれば、過度なリスクテイクを行う可能性も生まれます。したがって、TBTF問題に対処するためには、(1)そもそも巨大な金融機関が倒産しないようにすること、さらに、(2)仮に倒産したとしても可能な限り公的資金を使わず、秩序ある破綻を可能にするための制度が必要といえます。
(1)巨大な金融機関が破綻する可能性を低下させる方法として、(Tier1資本の軸となる)「普通株式等Tier1資本」(Common Equity Tier 1
そこで、(2)仮に倒産したとしても、公的資金を使わず、株主と債券保有者にその損失を負担させる工夫も必要といえます。このように破綻に伴うコストを株主や債権者に負担させることを、ベイルアウト*6に対比させて、「ベイルイン」といいます。「ベイルイン」については、服部(2022c)で説明したとおり、金融危機以降の改革により、Tier2などの要件が見直されましたが、特に巨大な銀行について秩序ある破綻を可能とするため、現在、TLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)規制と呼ばれる規制が追加的に課されています。巨大な金融機関の秩序ある破綻については今後の論文で取り上げることを予定しています。また、我が国については公的資金注入のスキームは残されていますが、この点についても今後の論文で取り上げます。
対策 | 内容 |
---|---|
巨大な金融機関が破綻しないようにする | Tier1資本(CET1)をより一層求める |
仮に倒産した場合でも公的資金を使わずに処理する | ベイルイン制度の導入、TLAC規制の導入 |
1.3. G-SIBs/D-SIBsバッファー
ここから、金融機関の中でもバーゼル規制の対象となる銀行に絞り議論を深めていきますが、服部(2023)では、国際的に活動する銀行についてはCET1比率4.5%だけでなく、追加的な資本バッファーが求められることを指摘しました。服部(2023)では「資本保全バッファー」および「カウンターシクリカル・バッファー」を取り上げましたが、図表1の右上にある「G-SIBs/D-SIBsバッファー」がシステム上重要な銀行に対する追加的な資本バッファーです。
システム上重要な銀行については、(1)グローバルの金融システムに影響を与える銀行と、(2)国内の金融システムに影響を与える銀行に分かれており、その対応が異なる点が重要な特徴です。例えば、日本のメガバンクなどが破綻した場合、国内だけでなく、海外でも多くのビジネスを行っていることから、国際的な金融システムに影響を与える可能性を有しています。このような銀行は、グローバルにシステミックな影響を与える銀行という意味から、「グローバルなシステム上重要な銀行(Global Systemically Important Banks
一方、日本ではプレゼンスが高く、一定程度、海外展開はしているものの、他国の金融システムに影響を与えるほどではないという銀行も存在しています。当該銀行は国内の金融システムに影響を与える銀行という意味から、「国内のシステム上重要な銀行(Domestic Systemically Important Banks
前述のとおり、金融システムへの影響が大きい銀行に対しては、追加的にCET1比率を高めることが要請されていますが、これを「G-SIBs/D-SIBsバッファー」や「G-SIBs/D-SIBsサーチャージ」などといいます。金融システムへの影響が大きい銀行に対し、より一層CET1比率を高める理念は理解できると思いますが、難しい点はどのようにシステム上重要な銀行を特定するかです。もちろん、資産などの点で規模が大きな銀行は、破綻した際、金融システムへの影響が大きいと考えられます。しかし、2008年の金融危機時には、リーマン・ブラザーズなどの投資銀行(証券会社)がシステミックリスクをもたらしたわけですが、資産の規模という観点のみで評価した場合、システム上重要な金融機関と認識されないリスクがあります。金融システムにおける伝播などの観点では、例えば、どれくらい他の金融機関と密接な関係を有しているかや、金融機関が有する複雑性、クロスボーダーでの活動などを考慮する必要があるといえます。
分類 | 定義 | 追加的な資本比率 |
---|---|---|
グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs) | グローバルな金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | 1.0%~3.5% |
国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs) | 国内の金融システムに影響を与える可能性のある銀行 | 0.5%~1.5% |
1.4. まとめ
重要な金融機関とは、その規模や影響力から、破綻した場合に金融システム全体に大きな影響を与える可能性のある金融機関を指します。特に、グローバルな金融システムに影響を与える可能性のある金融機関は、「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」と呼ばれ、より厳しい規制が課せられます。
G-SIBsの選定は、金融機関の規模だけでなく、他の金融機関との相互関係、複雑性、クロスボーダーでの活動など、多角的な視点から行われます。
G-SIBsに指定された銀行は、追加的な資本比率を求められるなど、より厳しい規制の対象となります。これは、G-SIBsの破綻リスクを抑制し、金融システム全体の安定性を確保するためです。
2. システミックリスクとは
2.1. システミックリスクの発生源
システミックリスクとは、特定の金融機関の破綻が、金融システム全体に波及し、システム全体の崩壊を引き起こす可能性のあるリスクを指します。2008年のリーマン・ブラザーズの破綻は、システミックリスクが現実のものとなった典型的な例です。リーマン・ブラザーズは、世界中の金融機関と取引を行っており、その破綻は、他の金融機関への連鎖的な影響をもたらしました。
システミックリスクは、金融機関の規模や複雑性、相互連関性、そして、金融市場の構造など、様々な要因によって発生します。規模が大きい金融機関は、破綻した場合の影響が大きくなります。複雑な金融商品や取引は、リスクを理解しにくく、その破綻が他の金融機関に伝播しやすくなります。
また、金融機関同士が密接に関係している場合、一方が破綻すると、その影響が他の金融機関に伝播しやすくなります。さらに、金融市場の構造が複雑になっていることも、システミックリスクの発生を助長する要因となります。
要因 | 説明 |
---|---|
金融機関の規模 | 規模が大きいほど、破綻した場合の影響が大きくなる |
金融機関の複雑性 | 複雑な金融商品や取引は、リスクを理解しにくく、その破綻が他の金融機関に伝播しやすくなる |
金融機関間の相互連関性 | 金融機関同士が密接に関係している場合、一方が破綻すると、その影響が他の金融機関に伝播しやすくなる |
金融市場の構造 | 金融市場の構造が複雑になっていることも、システミックリスクの発生を助長する要因となる |
2.2. システミックリスクの発生メカニズム
システミックリスクは、様々なメカニズムによって発生します。代表的なメカニズムとしては、以下の3つが挙げられます。
①エクスポージャー/カウンターパーティ・チャネル:ある金融機関が破綻した場合、その金融機関と取引をしていた他の金融機関は、その破綻によって損失を被る可能性があります。特に、取引規模が大きい場合や、取引相手が複数いる場合は、その影響は大きくなります。
②資産処分/市場チャネル:金融機関が破綻した場合、その金融機関が保有していた資産を市場で売却する必要が生じます。しかし、市場で売却しようとする金融機関が増えると、資産価格が下落し、他の金融機関も損失を被る可能性があります。
③重大な機能またはサービス/代替可能性:ある金融機関が提供している重要な機能やサービスが、他の金融機関によって代替できない場合、その金融機関が破綻すると、金融システム全体に大きな影響を与える可能性があります。例えば、決済システムや信用情報機関などが挙げられます。
メカニズム | 説明 |
---|---|
エクスポージャー/カウンターパーティ・チャネル | 取引規模が大きい場合や、取引相手が複数いる場合は、その影響は大きくなる |
資産処分/市場チャネル | 市場で売却しようとする金融機関が増えると、資産価格が下落し、他の金融機関も損失を被る可能性がある |
重大な機能またはサービス/代替可能性 | 決済システムや信用情報機関などが挙げられます。 |
2.3. システミックリスクの対策
システミックリスクを抑制するためには、様々な対策が必要となります。代表的な対策としては、以下の3つが挙げられます。
①金融機関の健全性の強化:金融機関の自己資本比率を高めることや、リスク管理体制を強化することで、金融機関の破綻リスクを抑制することができます。
②金融市場の透明性の向上:金融商品や取引の情報を公開することで、市場参加者がリスクをより正確に把握し、適切な判断を行うことができるようになります。
③金融機関の破綻処理制度の整備:金融機関が破綻した場合でも、金融システム全体への影響を最小限に抑えるための制度を整備することが重要です。
対策 | 説明 |
---|---|
金融機関の健全性の強化 | 金融機関の自己資本比率を高めることや、リスク管理体制を強化することで、金融機関の破綻リスクを抑制することができます。 |
金融市場の透明性の向上 | 金融商品や取引の情報を公開することで、市場参加者がリスクをより正確に把握し、適切な判断を行うことができるようになります。 |
金融機関の破綻処理制度の整備 | 金融機関が破綻した場合でも、金融システム全体への影響を最小限に抑えるための制度を整備することが重要です。 |
2.4. まとめ
システミックリスクとは、特定の金融機関の破綻が金融システム全体に波及し、システム全体の崩壊を引き起こす可能性のあるリスクです。
システミックリスクは、金融機関の規模や複雑性、相互連関性、そして金融市場の構造など、様々な要因によって発生します。
システミックリスクを抑制するためには、金融機関の健全性の強化、金融市場の透明性の向上、金融機関の破綻処理制度の整備など、様々な対策が必要となります。
3. 国際金融機関の役割
3.1. 金融安定理事会(FSB)
金融安定理事会(FSB
FSBは、金融危機以降、世界的な金融システムの安定を維持するために、様々な取り組みを行ってきました。その取り組みには、システム上重要な金融機関の特定と規制、金融市場の透明性の向上、金融機関の破綻処理制度の整備などが含まれます。
FSBは、G20から指示を受け、その指示に基づいて、様々な政策を策定しています。例えば、FSBは、G-SIBsの選定基準を策定し、G-SIBsに指定された銀行に対して、追加的な資本比率を求めるなどの規制を導入しました。
役割 | 説明 |
---|---|
金融規制改革の推進 | G20のリーダーシップの下、金融規制改革を推進しています。 |
金融システムの安定維持 | 金融システムの安定を維持するための政策を策定し、その実施を監視しています。 |
G-SIBsの選定基準策定 | G-SIBsの選定基準を策定し、G-SIBsに指定された銀行に対して、追加的な資本比率を求めるなどの規制を導入しました。 |
3.2. 国際決済銀行(BIS)
国際決済銀行(Bank for International Settlements
BISは、バーゼル委員会(Basel Committee on Banking Supervision
BISは、金融システムの安定を維持するための様々な研究や政策提言を行っています。例えば、BISは、システミックリスクの計測や評価に関する研究を行ったり、金融機関の破綻処理に関する政策提言を行ったりしています。
役割 | 説明 |
---|---|
中央銀行間の決済 | 世界の中央銀行が加盟しています。中央銀行間の決済や資金の管理を行っています。 |
金融システムの安定維持 | 金融システムの安定を維持するための研究や政策提言を行っています。 |
バーゼル規制の策定 | バーゼル委員会を通じて、国際的な銀行規制の策定を主導しています。 |
3.3. 国際通貨基金(IMF)
国際通貨基金(International Monetary Fund
IMFは、金融システムの安定を維持するための様々な政策提言を行っています。例えば、IMFは、金融規制の強化や金融市場の透明性の向上に関する政策提言を行っています。
IMFは、金融危機の予防と対応のための国際的な協調を促進しています。例えば、IMFは、金融危機が発生した場合、各国政府や中央銀行が協力して対応できるよう、国際的な枠組みを構築しています。
役割 | 説明 |
---|---|
金融危機への対応 | 金融危機が発生した場合、危機に陥った国に対して、資金援助を行うとともに、経済政策の改善を支援しています。 |
金融システムの安定維持 | 金融規制の強化や金融市場の透明性の向上に関する政策提言を行っています。 |
国際的な協調の促進 | 金融危機の予防と対応のための国際的な協調を促進しています。 |
3.4. まとめ
国際金融機関は、世界的な金融システムの安定を維持するために、重要な役割を果たしています。
金融安定理事会(FSB)は、G20のリーダーシップの下、金融規制改革を推進し、金融システムの安定を維持するための政策を策定しています。
国際決済銀行(BIS)は、バーゼル委員会を通じて、国際的な銀行規制の策定を主導しています。
国際通貨基金(IMF)は、金融危機が発生した場合、危機に陥った国に対して、資金援助を行うとともに、経済政策の改善を支援しています。
4. グローバル銀行の役割
4.1. グローバル銀行のシステミックリスク
グローバル銀行は、世界中に支店や子会社を持ち、国際的な金融取引を活発に行っています。グローバル銀行は、その規模や影響力から、破綻した場合に金融システム全体に大きな影響を与える可能性があります。
グローバル銀行は、様々な金融サービスを提供しており、その中には、他の金融機関への融資や証券の取引などが含まれます。グローバル銀行が破綻した場合、その影響は、他の金融機関に波及し、金融システム全体に混乱をもたらす可能性があります。
また、グローバル銀行は、国際的な決済システムや金融市場インフラの重要な部分を担っています。グローバル銀行が破綻した場合、これらのシステムやインフラが機能不全に陥り、世界経済に大きな影響を与える可能性があります。
リスク | 説明 |
---|---|
金融機関への連鎖的な影響 | グローバル銀行が破綻した場合、その影響は、他の金融機関に波及し、金融システム全体に混乱をもたらす可能性があります。 |
決済システムや金融市場インフラへの影響 | グローバル銀行が破綻した場合、これらのシステムやインフラが機能不全に陥り、世界経済に大きな影響を与える可能性があります。 |
4.2. グローバル銀行に対する規制
グローバル銀行のシステミックリスクを抑制するため、国際的な規制当局は、グローバル銀行に対する規制を強化しています。その規制には、以下のものが含まれます。
①自己資本比率規制:グローバル銀行は、その規模やリスクに応じて、一定の自己資本比率を維持することが求められます。自己資本比率とは、自己資本の額を総資産の額で除した割合で、自己資本比率が高いほど、金融機関は破綻しにくいとされます。
②流動性規制:グローバル銀行は、短期的な資金不足に備えて、一定量の流動資産を保有することが求められます。流動資産とは、すぐに現金化できる資産で、流動資産比率が高いほど、金融機関は資金不足に陥りにくいといわれます。
③破綻処理計画:グローバル銀行は、破綻した場合でも、金融システム全体への影響を最小限に抑えるための破綻処理計画を策定することが求められます。破綻処理計画には、破綻した場合の資産の売却方法や、顧客への対応などが盛り込まれます。
規制 | 説明 |
---|---|
自己資本比率規制 | グローバル銀行は、その規模やリスクに応じて、一定の自己資本比率を維持することが求められます。 |
流動性規制 | グローバル銀行は、短期的な資金不足に備えて、一定量の流動資産を保有することが求められます。 |
破綻処理計画 | グローバル銀行は、破綻した場合でも、金融システム全体への影響を最小限に抑えるための破綻処理計画を策定することが求められます。 |
4.3. グローバル銀行の役割と課題
グローバル銀行は、世界経済の成長に貢献する重要な役割を担っています。グローバル銀行は、国際的な資金調達や投資を促進し、世界中の企業や個人に金融サービスを提供しています。
しかし、グローバル銀行は、その規模や複雑性から、システミックリスクをもたらす可能性も孕んでいます。そのため、グローバル銀行は、その役割と課題を認識し、適切な規制と監督の下で、安定的な金融システムの維持に貢献していく必要があります。
グローバル銀行は、国際的な金融規制の遵守、リスク管理体制の強化、透明性の向上など、様々な課題に取り組む必要があります。
役割 | 課題 |
---|---|
世界経済の成長への貢献 | 国際的な金融規制の遵守、リスク管理体制の強化、透明性の向上など、様々な課題に取り組む必要があります。 |
国際的な資金調達や投資の促進 | 国際的な金融規制の遵守、リスク管理体制の強化、透明性の向上など、様々な課題に取り組む必要があります。 |
世界中の企業や個人への金融サービス提供 | 国際的な金融規制の遵守、リスク管理体制の強化、透明性の向上など、様々な課題に取り組む必要があります。 |
4.4. まとめ
グローバル銀行は、世界経済の成長に貢献する一方で、その規模や影響力から、金融システム全体に大きな影響を与える可能性があります。
グローバル銀行のシステミックリスクを抑制するため、国際的な規制当局は、自己資本比率規制、流動性規制、破綻処理計画などの規制を強化しています。
グローバル銀行は、その役割と課題を認識し、適切な規制と監督の下で、安定的な金融システムの維持に貢献していく必要があります。
5. 金融規制と監督の重要性
5.1. 金融規制の目的
金融規制の目的は、金融システムの安定を維持し、金融市場の健全な発展を促進することです。金融規制は、金融機関の健全性を強化し、金融市場の透明性を向上させ、金融機関の破綻リスクを抑制することで、これらの目的を達成することを目指しています。
金融規制は、金融機関の自己資本比率、流動性、リスク管理、破綻処理など、様々な側面を対象としています。金融規制は、金融機関の行動を制限し、金融市場の秩序を維持することで、金融システム全体の安定性を確保しています。
金融規制は、金融機関のモラルハザードを抑制する役割も担っています。モラルハザードとは、金融機関が、政府による救済を期待して、過度なリスクテイクを行うことを指します。金融規制は、金融機関の行動を制限することで、モラルハザードを抑制し、金融システム全体の安定性を確保しています。
目的 | 説明 |
---|---|
金融システムの安定維持 | 金融機関の健全性を強化し、金融市場の透明性を向上させ、金融機関の破綻リスクを抑制することで、金融システム全体の安定性を確保しています。 |
金融市場の健全な発展 | 金融機関の健全性を強化し、金融市場の透明性を向上させ、金融機関の破綻リスクを抑制することで、金融システム全体の安定性を確保しています。 |
モラルハザードの抑制 | 金融機関の行動を制限することで、モラルハザードを抑制し、金融システム全体の安定性を確保しています。 |
5.2. 金融監督の役割
金融監督とは、金融規制の遵守状況を監視し、金融機関の健全性を評価することです。金融監督は、金融機関が適切なリスク管理を行い、金融規制を遵守しているかどうかを監視することで、金融システム全体の安定性を確保しています。
金融監督は、金融機関の経営状況、財務状況、リスク管理体制などを評価し、必要に応じて、金融機関に対して、改善策を指示したり、制裁措置を講じたりします。金融監督は、金融機関の健全性を維持し、金融市場の秩序を維持することで、金融システム全体の安定性を確保しています。
金融監督は、金融機関のモラルハザードを抑制する役割も担っています。金融監督は、金融機関の行動を監視することで、モラルハザードを抑制し、金融システム全体の安定性を確保しています。
役割 | 説明 |
---|---|
金融規制の遵守状況の監視 | 金融機関が適切なリスク管理を行い、金融規制を遵守しているかどうかを監視することで、金融システム全体の安定性を確保しています。 |
金融機関の健全性の評価 | 金融機関の経営状況、財務状況、リスク管理体制などを評価し、必要に応じて、金融機関に対して、改善策を指示したり、制裁措置を講じたりします。 |
モラルハザードの抑制 | 金融機関の行動を監視することで、モラルハザードを抑制し、金融システム全体の安定性を確保しています。 |
5.3. 金融規制と監督の課題
金融規制と監督は、金融システムの安定を維持するために不可欠ですが、いくつかの課題も抱えています。
①規制の過剰な厳格化:金融規制が過度に厳格化すると、金融機関の活動が制限され、金融市場の活力が低下する可能性があります。
②規制の抜け穴:金融規制には、必ず抜け穴が存在する可能性があります。金融機関は、規制の抜け穴を利用して、リスクテイクを行う可能性があります。
③規制の国際的な整合性:金融規制は、国際的な整合性を保つことが重要です。金融規制が国によって異なる場合、金融機関は、規制の緩い国に拠点を移すことで、規制を回避する可能性があります。
課題 | 説明 |
---|---|
規制の過剰な厳格化 | 金融規制が過度に厳格化すると、金融機関の活動が制限され、金融市場の活力が低下する可能性があります。 |
規制の抜け穴 | 金融規制には、必ず抜け穴が存在する可能性があります。金融機関は、規制の抜け穴を利用して、リスクテイクを行う可能性があります。 |
規制の国際的な整合性 | 金融規制は、国際的な整合性を保つことが重要です。金融規制が国によって異なる場合、金融機関は、規制の緩い国に拠点を移すことで、規制を回避する可能性があります。 |
5.4. まとめ
金融規制と監督は、金融システムの安定を維持し、金融市場の健全な発展を促進するために不可欠です。
金融規制は、金融機関の健全性を強化し、金融市場の透明性を向上させ、金融機関の破綻リスクを抑制することで、これらの目的を達成することを目指しています。
金融監督は、金融規制の遵守状況を監視し、金融機関の健全性を評価することで、金融システム全体の安定性を確保しています。
金融規制と監督は、いくつかの課題も抱えていますが、金融システムの安定を維持するために、今後も進化していく必要があります。
6. 金融機関の国際連携
6.1. 国際的な金融規制の協調
金融機関は、国境を越えて活動しているため、金融規制は国際的な協調が不可欠です。国際的な金融規制の協調は、金融機関が規制を回避することを防ぎ、金融システム全体の安定性を確保するために重要です。
国際的な金融規制の協調は、バーゼル委員会や金融安定理事会(FSB)などの国際機関を通じて行われています。バーゼル委員会は、銀行の自己資本比率規制や流動性規制などの国際的な基準を策定し、世界中の銀行に適用されるよう推奨しています。
FSBは、システム上重要な金融機関の特定と規制、金融市場の透明性の向上、金融機関の破綻処理制度の整備など、様々な分野で国際的な協調を促進しています。
協調の目的 | 説明 |
---|---|
規制回避の防止 | 金融機関が規制を回避することを防ぎ、金融システム全体の安定性を確保するために重要です。 |
金融システム全体の安定確保 | 金融機関が規制を回避することを防ぎ、金融システム全体の安定性を確保するために重要です。 |
6.2. 国際的な金融機関の協力
金融危機が発生した場合、国際的な金融機関の協力は、危機の拡大を防ぎ、世界経済の安定を維持するために重要です。国際的な金融機関は、資金援助や政策提言を通じて、危機に陥った国を支援しています。
国際通貨基金(IMF)は、金融危機が発生した場合、危機に陥った国に対して、資金援助を行うとともに、経済政策の改善を支援しています。
国際決済銀行(BIS)は、世界の中央銀行間の決済や資金の管理を行うとともに、金融システムの安定を維持するための研究や政策提言を行っています。
機関 | 役割 |
---|---|
国際通貨基金(IMF) | 金融危機が発生した場合、危機に陥った国に対して、資金援助を行うとともに、経済政策の改善を支援しています。 |
国際決済銀行(BIS) | 世界の中央銀行間の決済や資金の管理を行うとともに、金融システムの安定を維持するための研究や政策提言を行っています。 |
6.3. 国際的な金融連携の課題
国際的な金融規制の協調や金融機関の協力は、金融システムの安定を維持するために重要ですが、いくつかの課題も抱えています。
①各国間の利害調整:各国は、自国の経済状況や金融システムの特性を考慮して、金融規制を策定する必要があるため、国際的な金融規制の協調は、各国間の利害調整が難しい場合があります。
②規制の抜け穴:国際的な金融規制には、必ず抜け穴が存在する可能性があります。金融機関は、規制の抜け穴を利用して、リスクテイクを行う可能性があります。
③情報の共有:国際的な金融規制の協調や金融機関の協力には、各国間の情報共有が不可欠です。しかし、各国間の情報共有は、プライバシーや機密性の問題から、難しい場合があります。
課題 | 説明 |
---|---|
各国間の利害調整 | 各国は、自国の経済状況や金融システムの特性を考慮して、金融規制を策定する必要があるため、国際的な金融規制の協調は、各国間の利害調整が難しい場合があります。 |
規制の抜け穴 | 国際的な金融規制には、必ず抜け穴が存在する可能性があります。金融機関は、規制の抜け穴を利用して、リスクテイクを行う可能性があります。 |
情報の共有 | 国際的な金融規制の協調や金融機関の協力には、各国間の情報共有が不可欠です。しかし、各国間の情報共有は、プライバシーや機密性の問題から、難しい場合があります。 |
6.4. まとめ
国際的な金融規制の協調や金融機関の協力は、金融システムの安定を維持するために不可欠です。
国際的な金融規制の協調は、バーゼル委員会や金融安定理事会(FSB)などの国際機関を通じて行われています。
国際的な金融機関の協力は、金融危機が発生した場合、危機の拡大を防ぎ、世界経済の安定を維持するために重要です。
国際的な金融連携は、いくつかの課題も抱えていますが、金融システムの安定を維持するために、今後も進化していく必要があります。
参考文献
・グローバルなシステム上重要な銀行 | 金融・証券用語解説集 …
・金融安定理事会による「グローバルなシステム上重要な銀行(G …
・わかりやすい用語集 解説:グローバルなシステム上重要な銀行 …
・グローバルなシステム上重要な金融機関とは?株式用語解説 – お …
・PDF -「大きすぎて潰せない(Tbtf)」問題について- – 財務省
・PDF システム上重要な金融機関に対処するための政策手段(仮訳)
・G-SIBsとは?国際的に決まっている潰せない金融機関!(一覧 …
・G-SIFIs(「グローバルなシステム上重要な金融機関」) | 時事 …
・金融機関における「責任あるai」の実現に向けたガバナンスの …
・ゴールドマン・サックス、アップルの目標株価265ドルを維持 …
・日本経済新聞 – 自己資本の上乗せ要件、米欧3行上げ Jp …
・PDF システム上重要なノンバンク金融機関の特定 に関する Fsb …