1. 航海士の役割と仕事内容
1-1. 航海士とは？
航海士とは、船舶の運航に関する専門的な知識と技術を持ち、船長を補佐して安全かつ効率的な航海を行う船舶職員のことです。 航海士は、大きく分けて「甲板部」と「機関部」の2つに分かれており、それぞれ異なる役割を担っています。 航海士になるためには、海技士国家資格を取得する必要があります。
1-2. 甲板部の航海士の仕事
甲板部の航海士は、船舶の運航に関する業務を担当します。具体的には、航海計画の作成、航路の選定、 操舵 、気象観測、荷役作業の監督などを行います。 航海中はブリッジと呼ばれる操舵室で当直を行い、常に周囲の状況を監視し、安全な航海に努めます。 また、入出港時には、タグボートや水先人との連携を取りながら、安全かつ正確な操船を行います。 航海士は、海図やレーダー、GPSなどの航海計器類を使いこなし、常に的確な判断が求められる重要な役割を担っています。
1-3. 機関部の航海士の仕事
機関部の航海士は、船舶の機関（エンジン）の運転・保守管理を担当します。 主機関や発電機、ボイラーなどの機器を監視し、異常がないか確認します。 また、定期的なメンテナンスや修理を行い、常に機関を良好な状態に保つことが求められます。 航海中は機関室で当直を行い、エンジンの出力調整や燃料の管理なども行います。 機関部の航海士は、船舶の心臓部ともいえる機関の安全かつ効率的な運転に責任を持ち、 航海士としての専門的な知識と技術が求められます。
2. 航海士になるために必要な資格
2-1. 航海士の資格の種類
航海士になるためには、国土交通省が実施する海技士国家試験に合格し、海技士免許を取得する必要があります。 海技士免許には、航海士と機関士の2種類があり、それぞれ甲板部と機関部で担当する業務が異なります。 航海士の資格は、一級から六級までの6つの等級に分かれており、等級が高いほど大型船舶の運航が可能となります。 一級海技士（航海） は、すべての船舶の船長として乗船できます。
2-2. 海技士国家試験の受験資格
海技士国家試験を受験するためには、一定の乗船履歴や養成学校での学習が必要です。 例えば、 一級海技士（航海） の試験を受験するためには、三級海技士（航海）を取得後、3年以上の実務経験を積む必要があります。 また、大学や高等専門学校、海上技術学校などの海事系の教育機関を卒業し、所定の単位を取得することで、一部の試験科目が免除される場合があります。
2-3. 海技士試験の内容
海技士試験は、筆記試験と口述試験からなります。 筆記試験では、航海や機関に関する専門知識、法規、英語などが出題されます。 口述試験では、筆記試験の内容をより深く理解しているか、また、海技士としての適性があるかを審査されます。 試験の難易度は高く、合格するためには、しっかりと試験対策を行うことが重要です。
3. 航海士に求められる知識とスキル
3-1. 航海に関する専門知識
航海士は、航海に関する幅広い専門知識が求められます。 航海計器 の使用方法、海図の読み方、気象・海象の知識、 国際ルール 、 海上衝突予防法 など、安全な航海を行うために必要な知識を習得しなければなりません。 また、近年は 電子海図 や 自動運航システム など、新しい技術も導入されており、常に最新の知識をアップデートしていくことが重要です。
3-2. 操船技術
航海士は、船舶を安全かつ正確に操縦する技術が求められます。 操舵 、 変針 、 着桟 など、様々な操船技術を習得し、あらゆる状況下で適切な判断と操作を行えるようになる必要があります。 また、大型船舶の場合は、タグボートとの連携も重要であり、チームワークも求められます。
3-3. コミュニケーション能力
航海士は、船長や他の乗組員、陸上スタッフ、港湾関係者など、様々な人とコミュニケーションをとる必要があります。 正確な情報を共有し、意思疎通を図るためには、高いコミュニケーション能力が求められます。 また、 英語 は国際共通語であるため、 英語力 も必要不可欠です。
3-4. リーダーシップ
航海士は、船長を補佐し、乗組員を指揮する立場にあります。 的確な指示を出し、乗組員をまとめる リーダーシップ が求められます。 また、緊急時には冷静な判断と行動が求められ、 責任感 と プレッシャーに強い精神力 も必要です。
4. 航海士のキャリアパスと将来性
4-1. 航海士のキャリアパス
航海士のキャリアパスは、海技士の等級によって異なります。 三級海技士（航海） を取得後、 外航船 や 内航船 の 航海士 として乗船し、経験を積みます。 一定期間の実務経験を経て、 二級海技士（航海） 、 一級海技士（航海） と上位の資格を取得し、より大型船舶の運航が可能となります。 最終的には、 船長 として活躍することを目指す人が多いです。
4-2. 陸上職へのキャリアチェンジ
一部の航海士は、陸上職にキャリアチェンジすることもあります。 海運会社や船舶管理会社で、 運行管理者 や 海務監督 として、船舶の運航管理や安全管理を担当します。 また、海事関係の公務員や、海事系の教育機関の教員など、海事分野での幅広いキャリアパスがあります。
4-3. 航海士の将来性
海上輸送 は、国際貿易において重要な役割を担っており、 航海士 の需要は今後も安定していると考えられます。 特に、 LNG船 や クルーズ船 など、専門性の高い船舶の需要が高まっており、 高度な知識と技術を持つ航海士 は、より活躍の場が広がることが期待されます。 また、 自動運航船 の開発も進められていますが、 安全運航の最終的な責任は人間が負う ことになるため、 航海士の役割は今後も重要 であり続けるでしょう。
5. 航海士を目指す人へのアドバイス
5-1. 海への興味と熱意を持つ
航海士は、海を舞台に活躍する仕事です。 海への興味と熱意を持ち、 船旅 や 海洋 に関する知識を深めることが大切です。 実際に船に乗る機会があれば、積極的に参加し、 船上生活 を体験してみるのも良いでしょう。
5-2. 体力と精神力を鍛える
航海士は、長期間にわたる 船上生活 を送ります。 時には、 過酷な環境 下での 航海 もあり、体力と精神力が求められます。 規則正しい生活習慣を心がけ、 運動 や ストレス解消法 を見つけるなど、心身の健康管理に努めましょう。
5-3. 英語力を磨く
航海士 は、 国際的な仕事 であり、 英語 は必須です。 特に、 外航船 に乗船する場合は、 英語でのコミュニケーション能力 が求められます。 積極的に英語を学び、 英会話 の練習を重ねましょう。
5-4. 海技士国家試験の対策
航海士になるためには、 海技士国家試験 に合格しなければなりません。 試験の難易度は高く、 専門知識 や 法規 など、幅広い範囲の学習が必要です。 早めに試験対策を始め、 過去問 を解いたり、 参考書 を読んだりして、しっかりと知識を身につけましょう。
5-5. 情報収集と進路選択
航海士には、 外航船 や 内航船 、 フェリー 、 クルーズ船 など、様々な働き方があります。 自分の興味や適性に合わせて、 進路選択 をすることが大切です。 海事系の教育機関や、 海運会社 の 説明会 などに参加し、 情報収集 を積極的に行いましょう。
