パハルプールの仏教寺院遺跡群とは?世界遺産についての解説

パハルプールの仏教寺院遺跡群の概要
項目 内容
位置 バングラデシュ北西部のラジシャヒ管区ナウガウン県
建設時期 8世紀半ばから9世紀
規模 一辺約320mの正方形の敷地
主な構成 中央の大祠堂とそれを取り囲む177の僧房
特徴 マンダラを象徴する配置、レンガ造り、粘土製の塑像による装飾
世界遺産登録年 1985年
アクセス ダッカからバスまたは電車で約6-7.5時間、ジョエプルハットからバスで約35分
周辺観光スポット モハスタン遺跡、ボグラ

1. パハルプールの歴史

要約

パハルプールの位置と名称の由来

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、バングラデシュ北西部のラジシャヒ管区ナウガウン県に位置しています。この地域は、現在ではイスラム教が主流ですが、8世紀後半から12世紀後半にかけては、仏教王朝のパーラ王朝が支配していました。パハルプールは、ベンガル語で「パハル」は「山」を、「プール」は「中核」を意味し、この地域の中心的な仏教寺院であったことを示しています。

パハルプールは、8世紀半ばから9世紀にかけて建設された大乗仏教の精舎であるソーマプラ大僧院の跡地です。この寺院は、パーラ王朝のダルマパーラ王(在位780〜810年)によって築かれたとされています。一辺約320mの正方形の敷地の中央に大祠堂がそびえ立ち、その周囲には多くの僧房が配置されていました。

ソーマプラ大僧院は、当時のインド亜大陸において最大規模の仏教寺院の一つであり、1000人もの僧侶が修行に励んでいたとされています。この寺院は、仏教の中心地として栄え、17世紀まで巡礼者が訪れ続けました。

パハルプールの名称と位置
名称 パハルプールの仏教寺院遺跡群
位置 バングラデシュ北西部のラジシャヒ管区ナウガウン県
由来 ベンガル語で「パハル」は「山」を、「プール」は「中核」を意味する

パハルプールの衰退と発掘

13世紀以降、ヒンドゥー教やイスラム教の台頭により、パハルプールは衰退し、長い間忘れられた存在となりました。しかし、19世紀にイギリス人によって発掘され、その壮大な規模と精巧な建築様式が明らかになりました。

発掘調査の結果、ソーマプラ大僧院の基礎部分や周壁、僧房、仏舎利塔などが発見されました。また、寺院の壁には、仏陀やヒンドゥー教の神々、動物などを描いた粘土製の塑像が多数発見されました。

これらの遺物は、当時のパハルプールの繁栄と、仏教文化の深さを物語っています。

パハルプールの歴史年表
時期 出来事
8世紀半ばから9世紀 ソーマプラ大僧院の建設
13世紀以降 ヒンドゥー教やイスラム教の台頭による衰退
19世紀 イギリス人による発掘

パハルプールの影響

パハルプールの建築様式は、東南アジアの仏教建築にも大きな影響を与えたと言われています。特に、カンボジアのアンコール遺跡やミャンマーのパガン遺跡に見られる建築様式は、パハルプールの影響を受けていると考えられています。

パハルプールの寺院は、マンダラを象徴するような、中央の大祠堂を中心とした配置が特徴です。この配置は、東南アジアの仏教寺院にも多く見られ、パハルプールの建築様式が、東南アジアの仏教文化に大きな影響を与えたことを示しています。

また、パハルプールで発展した粘土製の塑像の技術は、周辺地域にも広がり、8世紀以降もその伝統が受け継がれてきました。

パハルプールの影響
地域 影響
東南アジア アンコール遺跡、パガン遺跡
周辺地域 粘土製の塑像の技術

まとめ

パハルプールは、8世紀から9世紀にかけて、パーラ王朝によって建設された、インド亜大陸最大規模の仏教寺院遺跡です。この寺院は、当時の仏教文化の中心地として栄え、東南アジアの仏教建築にも大きな影響を与えました。

13世紀以降、ヒンドゥー教やイスラム教の台頭により衰退しましたが、19世紀に発掘され、その壮大な規模と精巧な建築様式が明らかになりました。

パハルプールは、現在では世界遺産に登録されており、バングラデシュを代表する観光スポットの一つとなっています。

2. 仏教寺院の特徴

要約

ソーマプラ大僧院の構造

パハルプールの仏教寺院遺跡群の中心には、ソーマプラ大僧院があります。この寺院は、一辺約320mの正方形の敷地内に、中央の大祠堂と、それを取り囲むように配置された177の僧房から構成されていました。

中央の大祠堂は、三段の基壇の上に建てられており、十字形の平面を持つ巨大な建造物でした。現在では、基壇部分しか残っていませんが、当時の壮大さをしのばせる遺構です。

大祠堂の周囲には、僧侶が生活していた僧房が、規則的に配置されていました。これらの僧房は、中庭に面して建っており、中庭には水路が巡らされ、当時の生活の様子を垣間見ることができます。

ソーマプラ大僧院の構造
構成要素 説明
中央の大祠堂 三段の基壇の上に建てられた十字形の巨大な建造物
僧房 大祠堂を取り囲むように配置された177の僧房
中庭 僧房に面して配置され、水路が巡らされている

寺院の装飾

ソーマプラ大僧院の壁面には、約2800枚の粘土製の塑像がはめ込まれていました。これらの塑像は、仏陀やヒンドゥー教の神々、動物、人などをモチーフとしており、当時の信仰や芸術レベルの高さを物語っています。

塑像は、非常に精巧に作られており、表情や動作が生き生きとしています。また、塑像の素材や技法は、当時のベンガル地方の伝統的な工芸技術を反映しており、貴重な文化遺産となっています。

これらの塑像は、現在では博物館に展示されていますが、当時の寺院の華やかさを想像することができます。

寺院の装飾
装飾 説明
塑像 仏陀やヒンドゥー教の神々、動物、人などをモチーフとした約2800枚の粘土製の塑像
素材 粘土
技法 当時のベンガル地方の伝統的な工芸技術

下水道施設

ソーマプラ大僧院には、当時すでに下水道施設が存在していたことが、発掘調査によって明らかになっています。各部屋には、中庭へ続く樋が設置されており、雨水や生活排水が、下水道を通じて処理されていたと考えられています。

当時の技術レベルの高さを示すだけでなく、衛生面への配慮もされていたことがわかります。

この下水道施設は、当時の社会が、高度な文明を築いていたことを示す重要な証拠となっています。

下水道施設
施設 説明
各部屋から中庭へ続く樋
排水処理 雨水や生活排水が下水道を通じて処理されていたと考えられている

まとめ

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、ソーマプラ大僧院を中心とした、大規模な仏教施設でした。寺院は、中央の大祠堂と、それを取り囲む僧房から構成され、マンダラを象徴するような配置が特徴です。

寺院の壁面には、精巧な粘土製の塑像が多数はめ込まれており、当時の信仰や芸術レベルの高さを物語っています。また、下水道施設の存在は、当時の社会が高度な文明を築いていたことを示しています。

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、当時の仏教文化の繁栄と、高度な技術レベルを伝える貴重な遺産です。

3. 世界遺産への指定経緯

要約

世界遺産登録基準

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、1985年にユネスコ世界遺産に登録されました。世界遺産登録基準では、以下の3つの基準を満たしているとされています。

(i) 人間の創造的才能を表す傑作である。

(ii) 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。

(vi) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

世界遺産登録基準
基準 説明
(i) 人間の創造的才能を表す傑作である
(ii) 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた
(vi) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある

登録基準の詳細

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、中央の大祠堂を中心とした釣り合いのとれた設計と、粘土製の塑像による装飾が評価され、登録基準(i)を満たしています。

また、パハルプールで発展した建築様式は、ミャンマーのパガン遺跡やインドネシアのプランバナン寺院群、カンボジアのアンコール遺跡などに影響を与え、登録基準(ii)を満たしています。

さらに、ソーマプラ大僧院は、7世紀以降のベンガル地方における大乗仏教の普及を示しており、登録基準(vi)を満たしています。

パハルプールの評価ポイント
基準 評価ポイント
(i) 中央の大祠堂を中心とした釣り合いのとれた設計と、粘土製の塑像による装飾
(ii) ミャンマーのパガン遺跡やインドネシアのプランバナン寺院群、カンボジアのアンコール遺跡などに影響を与えた建築様式
(vi) 7世紀以降のベンガル地方における大乗仏教の普及を示している

世界遺産としての価値

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、当時の仏教文化の繁栄と、高度な技術レベルを伝える貴重な遺産です。

世界遺産に登録されたことで、その価値が広く認められ、保護と保存が進められています。

パハルプールは、世界中の人々に、当時の仏教文化の素晴らしさを伝える重要な役割を担っています。

まとめ

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、その建築様式、文化的な影響、そして当時の仏教文化の繁栄を伝える貴重な遺産として、世界遺産に登録されました。

世界遺産登録は、この遺跡の価値を広く認め、保護と保存を促進する役割を果たしています。

パハルプールは、世界中の人々に、当時の仏教文化の素晴らしさを伝える重要な役割を担っています。

4. パハルプールの観光スポット

要約

ソーマプラ大僧院

パハルプールの仏教寺院遺跡群のメインスポットは、ソーマプラ大僧院です。この寺院は、現在では基壇部分しか残っていませんが、当時の壮大さをしのばせる遺構です。

大祠堂の周囲には、僧房や仏舎利塔などの遺跡が残っており、当時の寺院の規模の大きさを実感することができます。

また、大祠堂の壁面には、仏陀やヒンドゥー教の神々、動物などを描いた粘土製の塑像が多数残っており、当時の信仰や芸術レベルの高さを物語っています。

ソーマプラ大僧院の見どころ
見どころ 説明
基壇部分 当時の壮大さをしのばせる遺構
僧房 当時の寺院の規模の大きさを実感できる
塑像 仏陀やヒンドゥー教の神々、動物などを描いた粘土製の塑像

パハルプール博物館

ソーマプラ大僧院の敷地内には、パハルプール博物館があります。この博物館には、発掘調査で発見された遺物や、寺院の壁面から剥がされた塑像などが展示されています。

博物館を訪れることで、パハルプールの歴史や文化について、より深く理解することができます。

また、博物館には、当時の生活の様子を伝える資料なども展示されており、当時のパハルプールの暮らしを想像することができます。

パハルプール博物館の見どころ
展示物 説明
発掘された遺物 当時の生活の様子を伝える資料
塑像 寺院の壁面から剥がされた塑像

周辺の観光スポット

パハルプールの周辺には、他にもいくつかの観光スポットがあります。

例えば、パハルプールから約1時間ほどの場所にあるモハスタン遺跡は、古代インドの都市遺跡です。この遺跡は、パハルプールと同じく、パーラ王朝の時代に栄えた都市であり、当時の都市計画や建築様式を知る上で貴重な資料となっています。

また、パハルプールから約2時間ほどの場所にあるボグラは、バングラデシュ北西部の主要都市です。ボグラには、歴史的なモスクや寺院、市場などがあり、バングラデシュの文化に触れることができます。

周辺の観光スポット
スポット 説明
モハスタン遺跡 古代インドの都市遺跡
ボグラ バングラデシュ北西部の主要都市

まとめ

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、ソーマプラ大僧院を中心とした、壮大な仏教施設です。

遺跡の敷地内には、博物館もあり、当時の歴史や文化について学ぶことができます。

周辺には、モハスタン遺跡やボグラなど、他の観光スポットもあり、バングラデシュの歴史と文化を満喫することができます。

5. 仏教寺院の建築様式

要約

マンダラを象徴する配置

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、中央の大祠堂を中心とした、マンダラを象徴するような配置が特徴です。

マンダラとは、仏教において、宇宙や仏の教えを表す図形であり、中心には仏が、周囲には仏の教えや世界を表す様々な図形が描かれています。

パハルプールの寺院も、中央の大祠堂を中心として、周囲に僧房や仏舎利塔が配置されており、マンダラの構造を反映していると考えられています。

マンダラを象徴する配置
配置 説明
中央の大祠堂 中心に位置し、宇宙や仏の教えを表す
僧房や仏舎利塔 周囲に配置され、仏の教えや世界を表す

レンガ造りの建築

パハルプールの寺院は、レンガ造りで建設されています。レンガは、当時のベンガル地方で一般的な建築材料であり、寺院の壁面や基壇などに使用されています。

レンガ造りは、耐久性に優れ、地震にも強い建築様式です。また、レンガは比較的安価な材料であり、当時の技術レベルでも容易に手に入れることができました。

パハルプールの寺院は、レンガ造りの技術を駆使して、壮大な建築物を作り上げています。

レンガ造りの建築
素材 レンガ
特徴 耐久性に優れ、地震にも強い
利点 安価で入手しやすい

塑像による装飾

パハルプールの寺院の壁面には、約2800枚の粘土製の塑像がはめ込まれていました。これらの塑像は、仏陀やヒンドゥー教の神々、動物、人などをモチーフとしており、当時の信仰や芸術レベルの高さを物語っています。

塑像は、非常に精巧に作られており、表情や動作が生き生きとしています。また、塑像の素材や技法は、当時のベンガル地方の伝統的な工芸技術を反映しており、貴重な文化遺産となっています。

これらの塑像は、現在では博物館に展示されていますが、当時の寺院の華やかさを想像することができます。

塑像による装飾
素材 粘土
モチーフ 仏陀、ヒンドゥー教の神々、動物、人
特徴 精巧な作りで、表情や動作が生き生きとしている

まとめ

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、マンダラを象徴するような配置、レンガ造りの建築、そして精巧な塑像による装飾が特徴です。

これらの建築様式は、当時のベンガル地方の技術レベルの高さを示すとともに、仏教文化の深さと豊かさを物語っています。

パハルプールの寺院は、当時の仏教建築の傑作であり、世界遺産に登録されるにふさわしい価値を持つ建築物です。

6. パハルプールへのアクセス方法

要約

ダッカからのアクセス

パハルプールへのアクセスは、バングラデシュの首都ダッカからが一般的です。ダッカからパハルプールまでは、バスまたは電車で行くことができます。

バスの場合、ダッカのガブトリターミナルから、ジョエプルハット行きのバスに乗車します。所要時間は約6時間です。

電車の場合、ダッカの中央駅から、ジョエプルハット行きの電車に乗車します。所要時間は約7.5時間です。

ダッカからのアクセス
交通手段 所要時間
バス 約6時間
電車 約7.5時間

ジョエプルハットからのアクセス

ジョエプルハットに到着したら、パハルプール行きのバスに乗り換えます。所要時間は約35分です。

ジョエプルハットからパハルプールまでは、タクシーやオートリキシャを利用することもできます。

パハルプールは、バングラデシュの田舎町にあるため、交通手段は限られています。事前に交通手段を調べておくことをお勧めします。

ジョエプルハットからのアクセス
交通手段 所要時間
バス 約35分
タクシー 約35分
オートリキシャ 約35分

ツアー利用

パハルプールへのアクセスは、ツアーを利用することもできます。

ダッカからパハルプールまでのツアーは、旅行会社で申し込むことができます。ツアーを利用すれば、交通手段の心配をする必要がなく、観光に集中することができます。

また、ツアーでは、日本語ガイドが同行してくれる場合もあり、より快適に観光を楽しむことができます。

ツアー利用
メリット 説明
交通手段の心配不要 観光に集中できる
日本語ガイド より快適に観光を楽しめる

まとめ

パハルプールへのアクセスは、ダッカからバスまたは電車で行くことができます。

ジョエプルハットからは、バス、タクシー、オートリキシャを利用することができます。

パハルプールへのアクセスは、ツアーを利用することもできます。

参考文献

パハルプールの仏教寺院遺跡群 – Wikipedia

バングラデシュの世界遺産|パハルプール遺跡観光の見どころ …

仏教の中心地として発展したパハルプールの仏教寺院遺跡群 …

バングラデシュの世界遺産「パハルプールの仏教寺院遺跡群 …

パハルプールの仏教寺院遺跡群 | バングラデシュ | 世界遺産 …

パハルプールの仏教遺跡 – 世界遺産を学ぶ

バングラデシュ・パハールプールの仏教寺院遺跡群 | 旅学協会

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