1. 外部金融とは
外部金融の定義
外部金融とは、企業などが外部の資金提供者から資金を調達することを指します。具体的には、銀行からの借入れや、株式の発行、社債の発行などで資金を得る方法をさします。これに対して、企業が自らの内部で生み出す利益を再投資することを「内部金融」と言います。
外部金融は新しい事業への投資や設備投資、事業拡大の際に必要となる資金を速やかに調達するための手段ですが、借り入れる場合は利息の負担や、株式を発行する場合は株主との関係性を考慮する必要があります。
種類 | 定義 |
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外部金融 | 企業が外部の資金提供者から資金を調達する |
内部金融 | 企業が自らの内部で生み出す利益を再投資する |
外部金融の必要性
企業が成長していく過程では常に資金が必要です。新製品の開発費、新規雇用、設備投資など、先立つものはお金です。企業のお金のやりくりでは、どのように効率的に資金調達するかが重要で企業金融のキーポイントです。
資金調達の方法は主に三つあります。第一に銀行借り入れで、銀行からみれば融資です。次に企業が直接市場から調達する方法が二つあり、一つは株式の発行、もう一つは債券の発行です。債券は借り入れと同じく負債であり、償還期には返済しなければならないお金です。
一方、株式は返済しなくてよい資金です。株式こそがリスクマネーであり、「資本」です。日本語で「リスク」といえば「危ない」、「投資」といえば文字通り「資金を投げる」のですから投げ銭のような感覚ですね。お金は行ったきり戻って来ないというイメージがあります。これは大きな誤解です。
方法 | 説明 |
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銀行借り入れ | 銀行から融資を受ける |
株式発行 | 企業が株式を発行して資金を調達する |
債券発行 | 企業が債券を発行して資金を調達する |
外部金融とリスクマネー
私の尊敬する経済史学者、大塚久雄氏はマックス・ウェーバーの研究者でありますが、最初の著作『株式会社発生史論』(1938年)では、株式がいかに近代的な概念であり、近代資本主義の本質であるかを説明しています。
資本とはリスクを分かち合い、リスクに見合った正当なリターンを受け取る金融の本質です。このシステムがなければ、新しい事業を起こし、発展させることはできません。新規事業には必ずリスクが伴います。もし、前例に従いリスクのないことだけを繰り返すならば、それは伝統主義でありウェーバーの言う「永遠の昨日」の世界に閉じこもることになります。敢えて未知の世界を切り開くときに、リスクなしには新たな収益を得ることはできません。
大航海時代にオランダや英国が東インド会社をつくり未知の世界に船出した際、多くの船主がリスクを分かち合い、またリスクをヘッジする手法(保険の仕組み)を編み出してきました。そこには「計算されたリスク」という概念があります。今やリスクは統計的・数量的に処理された数値によって示されますが、リスクを最小化することでリターンを取りにいくという試みを科学的・確率論的枠組みで理論付けたものです。ですから、リスクを取るスリルを味わう投機やギャンブルと異なり、投資はあくまでもリスクをあらかじめ計算し最小化するゲームなのです。
概念 | 説明 |
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リスクマネー | 投資に伴うリスクを負う資金 |
資本 | 企業の活動に必要な資金 |
計算されたリスク | リスクを統計的に分析し最小化する |
まとめ
外部金融は、企業が成長するために必要な資金を外部から調達する重要な手段です。銀行からの借入や株式・社債の発行など、様々な方法がありますが、それぞれに利点と欠点があります。
外部金融は、企業にとってリスクを伴う一方で、新しい事業や成長のための資金調達を可能にする重要な役割を担っています。
外部金融を活用する際には、それぞれの方法のリスクとメリットを理解し、自社の状況に合わせて適切な方法を選択することが重要です。
2. 外部金融の種類
直接金融
直接金融とは、資金の貸し手と借り手が第三者を介さず、直接結びつく仕組みのことを指します。
例として挙げられるのは、株式や債券です。このとき、投資家(貸し手)は自分で投資先(借り手)を選び、直接資金を提供していることから、直接金融による取引を行っているといえます。投資家が利益として受け取れるのは、株式の配当金や債券の利息です。
投資家は証券会社を利用して、投資先を探したり、資金を振込んだりすることがありますが、あくまでも証券会社は投資家と投資先を仲介する役割にとどまっており、手数料で利益を得ています。
種類 | 説明 |
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株式 | 企業が発行する株式を購入することで、企業の所有者となる |
債券 | 企業が発行する債券を購入することで、企業に資金を貸し付ける |
出資 | 企業に直接資金を提供する |
クラウドファンディング | 不特定多数の人から資金を調達する |
間接金融
間接金融とは、お金の貸し手と借り手の間に金融機関などの第三者が入る仕組みのことです。
具体例は、銀行などの金融機関の預金です。預金では、預金者(貸し手)と借り手となる法人や個人は直接取引を行わず、金融機関を通じて間接的に関与します。
預金者から集められたお金は、金融機関の判断で借り手に利子を付けて貸し出されます。貸付利子の一部は預金者の利益(預金利息)となり、金融機関は貸付利子と預金利息の差額で利益を得ています。
種類 | 説明 |
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銀行融資 | 銀行から資金を借り入れる |
ビジネスローン | 事業資金を借り入れる |
信用金庫融資 | 信用金庫から資金を借り入れる |
信用組合融資 | 信用組合から資金を借り入れる |
ノンバンク融資 | ノンバンクから資金を借り入れる |
アセット・ファイナンス
アセット・ファイナンスとは売掛金や不動産、のれんなど、会社の持つ資産を売却し資金調達をする方法です。直接金融のように手間や時間がかからず、間接金融のように借入金を増やさないため、財務体質の改善も期待できます。
また自社の所有する財産の売却のため、信用力が低下している場合でも利用できる資金調達方法です。ただし、工場設備など必要な資産を売却してしまうと、事業そのものに影響を与えるため、先々の資金繰りを考えた選択が大切です。
種類 | 説明 |
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売掛金ファクタリング | 売掛金をファクタリング会社に売却して資金を調達する |
不動産売却 | 所有する不動産を売却して資金を調達する |
設備売却 | 所有する設備を売却して資金を調達する |
まとめ
外部金融には、直接金融、間接金融、アセット・ファイナンスの3つの種類があります。
直接金融は、企業が直接投資家から資金を調達する方法で、株式や債券の発行などが挙げられます。
間接金融は、銀行などの金融機関を介して資金を調達する方法で、銀行融資やビジネスローンなどが挙げられます。
アセット・ファイナンスは、企業が保有する資産を売却して資金を調達する方法です。
3. 外部金融のメリットとデメリット
直接金融のメリット
直接金融に該当する取引である株式や債券投資には、比較的利回りが高い金融商品も存在します。また、資金や投資機会さえあれば、成長が見込まれる企業や収益性の高いプロジェクトを自ら選んで投資することができます。
そのため、間接金融で資産を運用する場合(預金)に比べて、より効果的な運用を行える可能性があります。
直接金融の取引では、投資先候補の情報を収集・調査し、自分自身で投資先を選択することができます。これにより、自身の投資戦略やリスク許容度に応じて、柔軟に投資先や投資の形態を選ぶことが可能です。
また、金融商品取引所などの市場を介さない相対取引の場合では、投資条件や契約内容を交渉し、更に自身のニーズにカスタマイズした形で投資を行える可能性があります。
メリット | 説明 |
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高い利回り | 株式や債券など、高利回りの金融商品に投資できる |
投資先の選択の自由度が高い | 自身の投資戦略やリスク許容度に合わせて投資先を選べる |
柔軟な投資条件 | 投資条件や契約内容を交渉できる |
直接金融のデメリット
直接金融の取引では、預金と比較して高いリターンが期待できる一方で、相応のリスクを負うことになります。投資対象によって、価格変動リスクや信用リスク、流動性リスクといった、様々なリスクが存在します。
直接金融を活用した資産運用におけるデメリットは、投資家自身が直接こうしたリスクを負う必要があるという点です。後述する預金と異なり、投資した金額はたとえ一部であっても保全されません。そもそも、元本保証をうたって資金を集めることは、銀行など限られた金融機関以外には、法律で禁止されています。
投資を行う場合は自ら情報を収集し、分析を行い、投資先の財務状況や業績、市況などを把握した上で、自身の資産状況や金融リテラシー、リスク許容度などに合った投資先を選択することが重要です。
直接金融での取引では、投資元本が減少するリスクがあります。投資対象の株式や債券の価値や収益は、経済の変動や市場の変化、企業の業績悪化、法的問題など、様々な要因によって変動します。その中で、株式の場合は株価の下落で元本割れを起こしたり、債券の場合は発行体が債務不履行(デフォルト)を起こして元本の償還や利息の支払いが行われなかったりすることも考えられます。直接金融で投資を行う際は、投資先の市場や企業についての情報収集をしっかり行った上で、投資先を分散させるなど戦略的にリスクヘッジを行う必要があります。
デメリット | 説明 |
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リスクが高い | 投資元本が減る可能性がある |
情報収集の必要性 | 投資先のリスクを理解するために、情報収集が必要 |
元本保証がない | 投資した金額は保証されない |
間接金融のメリット
間接金融において、預金者は貸出先の貸倒れリスクを直接負わなくて良い点がメリットです。
そもそも金融機関は、貸出し時の審査や資産運用リスク管理を行うことで、リスクを一定程度低く抑えるよう業務を行っています。それでも、金融機関が貸出しを行った法人が倒産して貸倒れが発生したり、個人が返済不能に陥って自己破産したりするのは起こりえるものです。このとき、金融機関は元本を失いますが、預金者は直接的な損失を被らずに済みます。金融機関自体が倒産しない限りは、引き続き自分の預金を自由に引き出せるのです。
したがって間接金融では、預金者自身で市場や投資先に関する情報収集やリスク分散を行わなくとも、預金利息を享受することができます。
国内の金融機関は預金保険制度の対象となっていることから、万が一金融機関が破綻しても、普通預金等の場合、預金者一人当たり元本1
メリット | 説明 |
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リスクが低い | 預金保険制度により、預金が保護される |
情報収集が不要 | 金融機関が投資先を選定する |
元本保証がある | 預金は元本保証される |
間接金融のデメリット
間接金融で資産運用を行おうとすると、直接金融での投資に比べてリスクが低い反面、利回りも低い傾向があります。
そもそも預金者への利息は、金融機関が貸付利子などによって得た利益から、経費や利益が差し引かれた分が還元されており、株式や債券への投資と比べて利回りは低くなります。
特に現在の日本経済は低金利環境が続いているため、金融機関が預金に対して支払う金利も低くなっています。超低金利時代が終わりを迎えない限りは、預金を増やすのみで大きなリターンを期待することは難しいでしょう。
預金保険制度によって預金などが一定範囲で保護されることは、間接金融の大きなメリットですが、留意すべき点もあります。本制度は、ある金融機関の1預金者あたり1
デメリット | 説明 |
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利回りが低い | 預金利息は株式や債券に比べて低い |
預金保険制度の制限 | 預金保険制度の対象となる金額は限られている |
金融機関の倒産リスク | 金融機関が倒産した場合、預金が全額戻らない可能性がある |
4. 外部金融と国内金融の違い
国内金融の定義
国内金融とは、国内の資金提供者から資金を調達することを指します。
具体的には、日本の銀行からの借入れや、日本の株式市場での株式発行、日本の債券市場での社債発行などが挙げられます。
定義 | 説明 |
---|---|
国内金融 | 国内の資金提供者から資金を調達する |
外部金融と国内金融の違い
外部金融は、国内金融と比べて、資金調達の範囲が広く、より多くの資金調達手段があります。
例えば、海外の銀行からの借入れや、海外の株式市場での株式発行、海外の債券市場での社債発行なども外部金融に含まれます。
また、外部金融は、国内金融と比べて、金利や手数料などのコストが異なる場合があります。
これは、国ごとの経済状況や金融市場の状況によって異なるためです。
項目 | 外部金融 | 国内金融 |
---|---|---|
資金調達範囲 | 海外を含む | 国内のみ |
金利・手数料 | 国によって異なる | 国内の市場状況によって異なる |
情報収集 | 情報収集が難しい場合がある | 情報収集が比較的容易 |
手続き | 手続きが複雑な場合がある | 手続きが比較的簡単 |
国内金融のメリット
国内金融は、外部金融と比べて、情報収集や手続きが比較的容易です。
また、国内金融機関は、日本の経済状況や法律に精通しているため、企業にとってより適切なアドバイスやサポートを提供できる可能性があります。
メリット | 説明 |
---|---|
情報収集が容易 | 国内の金融機関は情報収集がしやすい |
手続きが簡単 | 国内の金融機関は手続きが比較的簡単 |
適切なアドバイス | 国内の金融機関は日本の経済状況や法律に精通している |
国内金融のデメリット
国内金融は、外部金融と比べて、資金調達の選択肢が限られる場合があります。
また、国内金融機関は、外部金融機関と比べて、金利や手数料などのコストが高い場合があります。
デメリット | 説明 |
---|---|
資金調達選択肢が限られる | 海外の資金調達手段は利用できない |
コストが高い | 海外の金融機関に比べてコストが高い場合がある |
5. 外部金融の世界的な動向
グローバル化と外部金融
グローバル化が進展するにつれて、企業は海外市場への進出や海外企業との取引を拡大しています。
そのため、企業は、海外の資金提供者から資金を調達する必要性が高まっています。
海外からの資金調達には、海外の銀行からの借入れや、海外の株式市場での株式発行、海外の債券市場での社債発行などが挙げられます。
要因 | 影響 |
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グローバル化 | 海外市場への進出や海外企業との取引拡大により、海外からの資金調達が必要となる |
金融規制の強化 | 金融危機や不正行為を防ぐために、世界各国で金融規制が強化されている |
テクノロジーの進化 | インターネットバンキングやモバイルバンキングの普及により、場所や時間に縛られることなく、海外の金融機関から資金を調達できるようになった |
金融規制の強化
近年、金融危機や不正行為を防ぐために、世界各国で金融規制が強化されています。
金融規制の強化は、外部金融の利用を難しくする可能性があります。
特に、海外の金融機関からの借入れや、海外の株式市場での株式発行は、規制が厳しくなっているため、企業は、資金調達を行う前に、規制の内容を十分に理解しておく必要があります。
テクノロジーの進化
テクノロジーの進化は、外部金融の利用方法を変えています。
例えば、インターネットバンキングやモバイルバンキングの普及により、企業は、場所や時間に縛られることなく、海外の金融機関から資金を調達できるようになりました。
また、フィンテック企業の台頭により、従来の金融機関とは異なる新しい資金調達手段が登場しています。
まとめ
外部金融は、グローバル化、金融規制の強化、テクノロジーの進化など、様々な要因によって変化しています。
企業は、外部金融を利用する際には、これらの動向を常に把握し、適切な対応を行う必要があります。
6. 外部金融の将来展望
金融テクノロジーの進化
金融テクノロジーの進化は、外部金融の利用方法をさらに変える可能性があります。
例えば、ブロックチェーン技術を活用した新しい資金調達手段が登場する可能性があります。
また、人工知能(AI)やビッグデータ分析などの技術を活用することで、より効率的で安全な外部金融サービスが提供される可能性があります。
技術 | 影響 |
---|---|
ブロックチェーン技術 | 新しい資金調達手段が登場する可能性がある |
人工知能(AI) | より効率的で安全な外部金融サービスが提供される可能性がある |
ビッグデータ分析 | より精度の高いリスク評価や顧客分析が可能になる |
規制の緩和
金融規制の強化は、外部金融の利用を難しくする一方で、規制の緩和は、外部金融の利用を促進する可能性があります。
特に、中小企業やスタートアップ企業は、資金調達に苦労しているため、規制の緩和によって、外部金融へのアクセスが容易になることが期待されます。
対象 | 影響 |
---|---|
中小企業 | 資金調達へのアクセスが容易になる |
スタートアップ企業 | 資金調達へのアクセスが容易になる |
持続可能な金融
近年、環境問題や社会問題への関心が高まっていることから、持続可能な金融への関心も高まっています。
持続可能な金融とは、環境問題や社会問題に配慮した金融活動のことです。
外部金融は、持続可能な金融の推進に貢献する可能性があります。
例えば、環境問題に配慮した事業を行う企業への投資や、社会問題の解決に貢献する事業を行う企業への融資などが挙げられます。
分野 | 説明 |
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環境問題 | 環境問題に配慮した事業を行う企業への投資 |
社会問題 | 社会問題の解決に貢献する事業を行う企業への融資 |
まとめ
外部金融は、金融テクノロジーの進化、規制の緩和、持続可能な金融への関心の高まりなど、様々な要因によって変化していく可能性があります。
企業は、これらの動向を常に把握し、外部金融を効果的に活用することで、事業の成長を促進していく必要があります。
参考文献
・外部金融(ガイブキンユウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・外部経済・外部不経済とはなにか。具体例も解説|森本@何度 …
・「外部性」外部(不)経済とは?具体例や解決方法を分かりやすく …
・外部金融(がいぶきんゆう) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・【図解あり】直接金融と間接金融の違いをわかりやすく解説 …
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・内外経済・金融情勢の現状と展望 (2022年1月1日 No.3527 …