シベニクの聖ヤコブ大聖堂とは?世界遺産についての解説

1. 聖ヤコブ大聖堂の歴史とは何か

要約

1-1. シベニクの歴史

シベニクはアドリア海東岸、ダルマチア海岸から聖アンソニー海峡を入った湾の奥に位置する港湾都市です。アドリア海の美しい港湾都市の多くは古代のギリシアやローマ、あるいは中世のヴェネツィアの植民都市・要塞都市として建設され発展しましたが、シベニクは南スラヴ系のクロアチア人貴族スービック家によって10世紀に設立されました。10~11世紀はクロアチア王国の都市として発展しましたが、1102年の滅亡後、11~14世紀にかけてヴェネツィア共和国、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)、ハンガリー王国を行き来しました。1412年にヴェネツィアが町を占領し、以来1797年の共和国消滅までその支配下に入りました。

シベニクの歴史
時代 出来事
10世紀 南スラヴ系のクロアチア人貴族スービック家によって設立
10~11世紀 クロアチア王国の都市として発展
1102年 クロアチア王国滅亡
11~14世紀 ヴェネツィア共和国、ビザンツ帝国、ハンガリー王国を行き来
1412年 ヴェネツィアが町を占領
1797年 ヴェネツィア共和国消滅

1-2. 聖ヤコブ大聖堂の建設

聖ヤコブ大聖堂の建設は1298年にシベニク教区が成立してから計画が進められ、1431年に着工しました。1431~41年の第1期工事は地元の建築家フランチェスコ・ディ・ジャコモの監督で行われ、ロマネスク・ゴシック様式で西ファサード(正面)や身廊・側廊が築かれました。西と北の扉に関してはランゴバルドの彫刻家ボニーノ・ダ・ミラノによるゴシック装飾が施されました。

1441~75年の第2期工事ではクロアチア人建築家・彫刻家ゲオルギオス・マテイ・ダルマチクスが指揮を執り、もっとも重要な東側のアプス(後陣。主祭壇などが置かれる半ドーム形の出っ張り)や洗礼堂・聖具室・トランセプト(ラテン十字形の短軸部分)などを後期ゴシック様式や初期ルネサンス様式で演出し、天井部分を完成させました。

1473年のジャコモの死を受けて、1475~1535年の第3期工事はアルバニアの建築家アンドリヤ・アレシや、イタリアの著名な建築家・彫刻家ニッコロ・ディ・ジョヴァンニ・フィオレンティーノに引き継がれました。フィオレンティーノは初期ルネサンス様式の旗手であり、身廊の窓や天井、側廊、クワイヤ(内陣の一部で聖職者や聖歌隊のためのスペース)、トランセプトの天井、アプスなどを改修しました。大聖堂は1555年に献堂(正式に神に捧げること)され、同年に西ファサードにバラ窓が追加されました。

聖ヤコブ大聖堂の建設
期間 担当者 内容
1431~1441年 フランチェスコ・ディ・ジャコモ 西ファサード、身廊、側廊建設
1441~1475年 ゲオルギオス・マテイ・ダルマチクス アプス、洗礼堂、聖具室、トランセプト建設
1475~1535年 アンドリヤ・アレシ、ニッコロ・ディ・ジョヴァンニ・フィオレンティーノ 身廊の窓、天井、側廊、クワイヤ、トランセプトの天井、アプス改修
1555年 献堂、西ファサードにバラ窓追加

1-3. 内戦と修復

大聖堂はユーゴスラビア人民軍の支援を受けたセルビア人部隊による1991年9月のシベニク砲撃の間に大規模に破壊されました。しかし数年で、外観は速やかにほとんど損傷のない状態に修復されました。

内戦と修復
時期 内容
1991年9月 セルビア人部隊による砲撃でドームが破壊
その後数年 外観が修復

1-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂は、13世紀にシベニク教区が成立してから建設が計画され、15世紀初頭に建設が始まりました。建設には100年以上かかり、ゴシック様式とルネサンス様式の融合が見られる建築となりました。

建設途中で多くの建築家が携わり、それぞれの建築様式が反映されています。特に、ジョルジョ・オルシーニゲオルギオス・マテイ・ダルマチクスニッコロ・ディ・ジョヴァンニ・フィオレンティーノといった建築家の貢献が大きいです。

20世紀にはユーゴスラビア内戦で被害を受けましたが、その後修復され、現在もその美しい姿を見せています。

2. 大聖堂の建築様式と特徴

要約

2-1. 建築様式

聖ヤコブ大聖堂は、ゴシック様式ルネサンス様式が融合した建築様式で建てられています。

ゴシック様式の特徴である尖塔アーチステンドグラスなどが、大聖堂の内部や外部に見られます。

一方、ルネサンス様式の特徴であるドーム彫刻バランスのとれたデザインなども見られます。

ゴシック様式とルネサンス様式が調和し、独特の美しさを生み出しています。

建築様式
様式 特徴
ゴシック様式 尖塔、アーチ、ステンドグラス
ルネサンス様式 ドーム、彫刻、バランスのとれたデザイン

2-2. 構造

聖ヤコブ大聖堂は、レンガや木を一切使用せず、石のみで建てられた世界最大の石造建築の教会です。

ドームは、高さ32mの八角形ドームで、大聖堂の中心部に位置しています。

身廊側廊は、植物の柱頭を持つゴシック様式の大理石柱で隔てられており、身廊の天井はシンプルな筒型ヴォールト、側廊の天井は交差ヴォールトとなっています。

西ファサードは、ルネサンス様式の影響を受けたシンプルなデザインで、ゴシック様式のバラ窓やオラクル(円形の採光窓)を組み合わせています。

構造
部位 特徴
ドーム 高さ32mの八角形ドーム
身廊 植物の柱頭を持つゴシック様式の大理石柱で隔てられている
身廊の天井 シンプルな筒型ヴォールト
側廊の天井 交差ヴォールト
西ファサード ルネサンス様式の影響を受けたシンプルなデザイン

2-3. 装飾

聖ヤコブ大聖堂には、72人の男女と子供の顔を描いたフリーズがあります。

これらの彫刻は、大聖堂の建設に貢献したシベニク市民の顔をモデルにしたと言われています。

西・南・北のポータル(玄関)周りは、ねじり柱やアーキヴォールト(アーチ部分の迫縁装飾)といったゴシックの細かい彫刻やレリーフで装飾されています。

特にライオン門と呼ばれる北門には、柱の下に2体のヴェネツィアのライオン像が置かれており、柱の上には最初の人間アダムとイヴの彫刻が設置されています。

装飾
部位 特徴
フリーズ 72人の男女と子供の顔を描いたフリーズ
ポータル ねじり柱やアーキヴォールトといったゴシックの細かい彫刻やレリーフで装飾
ライオン門 柱の下に2体のヴェネツィアのライオン像、柱の上にはアダムとイヴの彫刻

2-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂は、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した、世界でも珍しい建築様式です。

石造建築という点も特徴的で、レンガや木を一切使用していないため、非常に重厚な印象を与えます。

内部の装飾も非常に美しく、特に洗礼室の天井フリーズは必見です。

3. 世界遺産に登録されるまでの経緯

要約

3-1. 世界遺産登録基準

聖ヤコブ大聖堂は、2000年にユネスコの世界遺産に登録されました。

登録基準は、以下の3つです。

(i) 人類の創造的才能を表現する傑作である。

(ii) ある期間またはある文化圏における建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展における重要な影響を示すもの、または建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの分野における重要な価値を有するものを代表するものである。

世界遺産登録基準
基準 内容
(i) 人類の創造的才能を表現する傑作である
(ii) ある期間またはある文化圏における建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展における重要な影響を示すもの
(iv) 建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの分野における重要な価値を有するものを代表するものである

3-2. 登録理由

聖ヤコブ大聖堂は、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した傑作であり、15~16世紀にかけて、北イタリア、トスカーナ、ダルマチアの3つの地域の建築様式が融合した、ユニークな技法が見られることから、世界遺産に登録されました。

また、ゴシック様式からルネサンス期の教会建築の変遷を示すものであるという点も評価されています。

3-3. 登録までの道のり

聖ヤコブ大聖堂は、1991年のユーゴスラビア内戦で被害を受けましたが、その後修復され、2000年に世界遺産に登録されました。

世界遺産登録は、クロアチア政府や地元住民の努力によって実現しました。

3-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂は、その建築様式や歴史的価値から、2000年に世界遺産に登録されました。

世界遺産登録は、クロアチアにとって大きな喜びであり、観光客の増加にもつながりました。

聖ヤコブ大聖堂は、これからも世界中の人々に愛される観光スポットとして、その歴史と文化を語り継いでいくでしょう。

4. 大聖堂内の見どころとは

要約

4-1. 洗礼室

聖ヤコブ大聖堂の見どころの一つに、洗礼室があります。

洗礼室は、大聖堂の南アプスに位置し、ゴシック様式の彫刻やレリーフで飾られています。

洗礼盤は、オレンジ色の石で作られた丸いお椀のような形をしており、洗礼盤の下の足は3人の天使の彫刻で飾られています。

洗礼盤の上に赤ん坊をいれて、洗礼の儀式をするそうです。

洗礼室
部位 特徴
洗礼盤 オレンジ色の石で作られた丸いお椀のような形
洗礼盤の下の足 3人の天使の彫刻で飾られている

4-2. フリーズ

大聖堂の外部には、72人の男女と子供の顔を描いたフリーズがあります。

これらの彫刻は、大聖堂の建設に貢献したシベニク市民の顔をモデルにしたと言われています。

フリーズは、大聖堂の東側から北側にかけて、まるで帯のように取り囲んでいます。

フリーズは、大聖堂の建設当時の市民の姿を伝える貴重な資料となっています。

フリーズ
部位 特徴
フリーズ 72人の男女と子供の顔を描いたフリーズ
場所 大聖堂の東側から北側にかけて

4-3. ライオン門

聖ヤコブ大聖堂の北門は、ライオン門と呼ばれています。

ライオン門には、柱の下に2体のヴェネツィアのライオン像が置かれており、柱の上には最初の人間アダムとイヴの彫刻が設置されています。

ライオン門は、大聖堂の入り口として、訪れる人々を歓迎しています。

ライオン門
部位 特徴
ライオン像 柱の下に2体のヴェネツィアのライオン像
アダムとイヴ 柱の上には最初の人間アダムとイヴの彫刻

4-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂は、内部にも外部にも見どころがたくさんあります。

洗礼室、フリーズ、ライオン門など、それぞれの場所に歴史を感じることができます。

大聖堂を訪れる際は、これらの見どころをじっくりと鑑賞しましょう。

5. 聖ヤコブ大聖堂の観光ポイント

要約

5-1. アクセス

聖ヤコブ大聖堂は、シベニクの旧市街の中心部に位置しています。

シベニクには、スプリット空港からバスでアクセスできます。

バス停から大聖堂までは、徒歩で約10分です。

アクセス
交通手段 情報
バス スプリット空港からバスでアクセス
徒歩 バス停から大聖堂まで徒歩約10分

5-2. 開館時間・料金

聖ヤコブ大聖堂の開館時間は、午前8時から午後8時です。

入場料は、大人100クーナ(約1

学生やシニアは割引があります。

開館時間・料金
項目 情報
開館時間 午前8時から午後8時
入場料 大人100クーナ(約1,500円)
割引 学生やシニアは割引あり

5-3. 注意点

聖ヤコブ大聖堂は、宗教施設です。

服装には注意しましょう。

また、内部は写真撮影禁止の場合があります。

注意点
項目 情報
服装 宗教施設なので服装に注意
写真撮影 内部は写真撮影禁止の場合あり

5-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂は、アクセスも良く、観光しやすい場所です。

開館時間や料金、注意点などを事前に確認しておきましょう。

聖ヤコブ大聖堂を訪れて、その歴史と文化に触れてみましょう。

6. 大聖堂周辺の観光スポット紹介

要約

6-1. レプブリカ広場

聖ヤコブ大聖堂の手前には、レプブリカ広場があります。

レプブリカ広場は、シベニクの旧市街の中心部にある広場です。

広場には、聖ヤコブ大聖堂の建築者の銅像が建てられています。

広場周辺には、カフェやレストランが立ち並んでおり、賑わっています。

レプブリカ広場
場所 特徴
場所 聖ヤコブ大聖堂の手前
特徴 シベニクの旧市街の中心部にある広場
その他 聖ヤコブ大聖堂の建築者の銅像がある

6-2. シベニクの旧市街

聖ヤコブ大聖堂から徒歩で約5分のところに、シベニクの旧市街があります。

旧市街は、中世の面影を残す街並みが魅力です。

石造りの家が立ち並び、細い路地が迷路のように入り組んでいます。

旧市街を散策しながら、歴史を感じてみましょう。

シベニクの旧市街
場所 特徴
場所 聖ヤコブ大聖堂から徒歩約5分
特徴 中世の面影を残す街並みが魅力
その他 石造りの家が立ち並び、細い路地が迷路のように入り組んでいる

6-3. 聖フランシスコ協会

聖ヤコブ大聖堂から徒歩で約10分のところに、聖フランシスコ協会があります。

聖フランシスコ協会は、13世紀に建てられた教会です。

教会の隣には、公園があり、ペタル・クレシミル4世の像があります。

聖フランシスコ協会は、静かで落ち着いた場所なので、ゆっくりと過ごしたい人におすすめです。

聖フランシスコ協会
場所 特徴
場所 聖ヤコブ大聖堂から徒歩約10分
特徴 13世紀に建てられた教会
その他 教会の隣には公園があり、ペタル・クレシミル4世の像がある

6-4. まとめ

聖ヤコブ大聖堂周辺には、他にも魅力的な観光スポットがたくさんあります。

レプブリカ広場、シベニクの旧市街、聖フランシスコ協会など、それぞれの場所を訪れてみましょう。

聖ヤコブ大聖堂と周辺の観光スポットを巡ることで、シベニクの歴史と文化を深く知ることができます。

参考文献

シベニクの聖ヤコブ大聖堂とは? – 世界遺産マニア

シベニクの聖ヤコブ大聖堂 | クロアチア | 世界遺産オンライン …

シベニクの聖ヤコブ大聖堂 – Wikipedia

世界最大の石造り教会!世界遺産「シベニクの聖ヤコブ大聖堂 …

シベニクの聖ヤコブ大聖堂 [Katedrala svetog Jakova …

The Cathedral of St James in Šibenik – UNESCO World …

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