セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建造物群とは？世界遺産についての解説

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建造物群の概要
項目	内容
創設	1345年、ラドネジの聖セルギイによって創設
主な建造物	至聖三者大聖堂、生神女就寝大聖堂、鐘楼、聖セルギイの食堂など
世界遺産登録	1993年、世界遺産に登録
登録基準	(ii) 建築様式の融合による東ヨーロッパ建築への影響、(iv) 15～18世紀の特徴を残す傑作
宗教的意義	ロシア正教会の重要な聖地、精神的な支柱
アクセス	モスクワから電車で約1時間30分、セルギエフ・ポサド駅から徒歩で約20分
注意事項	服装に注意、写真撮影は場所によって制限あり

1. 歴史と由来
2. 建築様式と特徴
3. 世界遺産登録の理由
4. 観光スポットと体験
5. 宗教的意義と影響
6. アクセス方法と注意事項

1. 歴史と由来

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の起源

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会において最も重要な修道院のひとつであり、その精神的な支柱ともいうべき地位にある。この修道院は、1345年にラドネジの克肖者聖セルギイによって創設された。聖セルギイは、マコヴェッツ丘に至聖三者（三位一体）を記念して木造教会を建立した。これが修道院の起源である。聖セルギイは、敬虔な貴族の家系に生まれたが、修道士として生きる道を選び、より神に近付けるよう深い森に分け入り、庵と小さな聖堂を建てた。これがトロイツェ・セルギー大修道院の起源である。

建立直後からラドネジの聖セルギイの指導下で修道院は大きく発展し、その後も長い歴史の中で発展・拡大を続けた。15世紀には、アンドレイ・ルブリョフによる著名なイコン『至聖三者』が、当初はこの修道院内の至聖三者大聖堂（トロイツキー大聖堂）に納められていた。16世紀には修道院内最大の大聖堂である生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）が建立された。17世紀には前駆授洗イオアン誕生教会や聖セルギイの食堂が建設された。18世紀にはラヴラの格が与えられたほか、高さ88メートルをほこる白と青のバロック式鐘楼が建てられ、院内には神学校が設置された。19世紀には神学校は神学大学に改組された。

発展を続けた大修道院であったが、20世紀にロシア革命が起こりボリシェヴィキ政権（ソ連政府）が神品 (正教会の聖職)・修道士・修道女の虐殺を含む宗教弾圧政策をとる中、大修道院も壊滅的打撃を受けた。修道院は1920年から1945年までの間、閉鎖され、多くの文化財が散逸した。ソ連時代後半には若干態度を軟化させたソ連政府の下で、修道生活が細々と行われるようになった。

ソビエト連邦の崩壊後、大修道院は本格的に復興。1993年には建造物群が世界遺産に登録されている。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の主な出来事
年	出来事
1345年	ラドネジの聖セルギイによって創設
1422年	最初の石造りの聖堂が建立
1452年	ラドネジの聖セルギイが聖人に列せられる
1559年	生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）が建設
1744年	ラヴラの格が与えられる
1920年～1945年	ロシア革命による閉鎖
1993年	世界遺産に登録

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の重要な出来事

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、創設者であるラドネジの聖セルギイの指導の下、ロシア正教会において重要な役割を果たしてきた。聖セルギイは、中世ロシアにおいて多大な影響力を持ち、ロシア諸侯の紛争にあっては、仲介役として調停者の位置にあった。特にモスクワ大公ドミートリー・ドンスコイに対しては支持を与え、1380年「タタールのくびき」からロシアが解放される契機となるクリコヴォの戦いにおいて、戦いに赴くドミートリー・ドンスコイに対して祝福を与えている。

1392年、ラドネジのセルギイは亡くなった。1422年、最初の石造りの聖堂が、コソボの戦い(1389年）の後この地に逃れていたセルビア人修道士たちの手によって建立された。この聖堂はセルギイの禁欲と神との一体感という理想が反映されている。そして、至聖三者を記憶する至聖三者大聖堂（トロイツキー大聖堂）として献堂され、セルギイの不朽体（遺体）はこの大聖堂に安置された。1452年、ラドネジのセルギイは聖人に列せられた。

1559年イヴァン雷帝の命により、26年の歳月をかけて、六支柱式の生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）が建設された。生神女就寝大聖堂は、モスクワのクレムリンにある同名の聖堂を模して、ほぼ同じ形状と大きさで造られている。

1744年女帝エリザヴェータ・ペトローヴナによってトローイッツェ・セルギエフ修道院は、ラヴラ（大修道院）の格を与えられた。以後、モスクワ府主教は大修道院長を兼務するようになる。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の重要な人物
人物	役割
ラドネジの聖セルギイ	創設者、ロシア正教会の聖人
アンドレイ・ルブリョフ	イコン画家、『至聖三者』の作者
イヴァン雷帝	生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）の建設を命じた
エリザヴェータ・ペトローヴナ	ラヴラの格を与えた女帝

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の変遷

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア革命後、ソビエト政権によって1920年に閉鎖された。ソ連政府により、大修道院の建築物や装飾品、イコンなどは国有化された。1920年ソ連政府は、修道院群を野外文化財博物館に転用する決定をした。しかし、その後も文化財破壊は続き、1930年大修道院にあった鐘は全て鋳つぶされた。

第二次世界大戦、さらに独ソ戦が勃発すると対独戦争完遂のため、スターリンは、従来、ソ連共産党が採っていた方針を転換し、国民のロシア・ナショナリズム、愛国心の鼓吹のため帝政時代の英雄や宗教的権威を認めた。その一環として1945年大修道院跡はロシア正教会に返還された。1946年4月16日、生神女就寝大聖堂において、聖堂を再び奉神礼に用いるため、成聖式が行われた。

1960年代から1970年代にかけて、主要な文化遺産の復元修理が行われた。大修道院には1983年までモスクワ主教座が置かれたが、1983年には主教座のモスクワのダニーロフ修道院（Danilov Monastery）への遷座が決定された。以後、大修道院は、ロシア正教会における宗教教育の主要なセンターとして位置づけられた。1993年至聖三者セルギイ大修道院（トローイッツェ・セールギエフ大修道院）を中心とする建造物群は、ユネスコによって世界遺産に登録された。

現在、至聖三者セルギイ大修道院（トローイッツェ・セールギエフ大修道院）では、いくつかの聖堂を用いて、朝5時から計4つの聖体礼儀が行われている。奉神礼には一般の信者も参加することが出来る。朝5時の奉神礼は、至聖三者大聖堂で行われ、普段はガラスで覆われている聖セルギイの不朽体に直接接吻をする機会が与えられる。このため早朝にもかかわらず多くの信者が参祷する。また修道院の一角にはホテルが設置され、多くの巡礼者がロシア人を中心に集っている。

まとめ

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、14世紀にラドネジの聖セルギイによって創設されたロシア正教会の重要な修道院である。聖セルギイは、ロシア正教会の精神的な支柱であり、彼の指導の下、修道院は大きく発展した。

15世紀以降、修道院は発展を続け、多くの重要な建造物が建設された。16世紀にはイヴァン雷帝の命により、修道院内最大の大聖堂である生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）が建設された。17世紀には前駆授洗イオアン誕生教会や聖セルギイの食堂が建設された。18世紀にはラヴラの格が与えられたほか、高さ88メートルをほこる白と青のバロック式鐘楼が建てられ、院内には神学校が設置された。

20世紀のロシア革命によって閉鎖されたが、第二次世界大戦後、ロシア正教会に返還され、現在もロシア正教会の重要な聖地として多くの巡礼者が訪れている。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の歴史と文化を象徴する重要な場所であり、世界遺産に登録されている。

2. 建築様式と特徴

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建築様式

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の伝統的な建築様式と西ヨーロッパのバロック様式が融合した建造物群である。

修道院の建築様式は、14世紀に建てられた最初の木造教会から始まり、15世紀以降、石造りの教会や鐘楼などが建設されていった。16世紀には、イヴァン雷帝の命により、モスクワのクレムリンにあるウスペンスキー大聖堂を模して、生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）が建設された。

17世紀には、バロック様式の建築物が多く建設された。聖セルギイの食堂（トラーベズナヤ）は中央に柱などの支えが無い、ロシア最大規模510平方メートルを室内空間であった。5つのドームを擁する門上プレッテンチェースカヤ教会（前駆授洗イオアン誕生教会）は、1693年から1699年にかけて、ストロガノフ家の寄付によって建設された。

18世紀には、高さ88メートルをほこる白と青のバロック式鐘楼が建てられた。この鐘楼は、当時としてはロシア一の高層建築であった。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建築様式
様式	特徴
ロシア正教会伝統	玉ねぎ型屋根、壁画、イコノスタス
バロック	華麗な装飾、曲線的なフォルム
融合	ロシア正教会伝統とバロック様式の融合

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の特徴

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の特徴として、ロシア正教会の伝統的な建築様式である「玉ねぎ型」の屋根が挙げられる。

玉ねぎ型」の屋根は、雪が多い地域なので雪が屋根に積もりにくい形状にしたという話や、ロウソクで燃える炎をイメージしたと言われている。

また、修道院は城壁で囲まれており、その中に多くの教会や聖堂、鐘楼などが集まっている。

修道院内には、聖セルギイの不朽体（遺体）が安置されている至聖三者大聖堂（トロイツキー大聖堂）や、アンドレイ・ルブリョフによる著名なイコン『至聖三者』が納められている生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）など、ロシア正教会の重要な聖遺物が数多く存在する。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建築様式の融合

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の建築様式は、ロシア正教会の伝統的な建築様式と西ヨーロッパのバロック様式が融合したものである。

ロシア正教会の伝統的な建築様式は、玉ねぎ型の屋根や、壁画、イコノスタスなどが特徴である。

一方、バロック様式は、17世紀にロシアに伝わった西ヨーロッパの建築様式であり、華麗な装飾や、曲線的なフォルムなどが特徴である。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院では、これらの建築様式が融合し、独特の建築様式を生み出している。

まとめ

玉ねぎ型の屋根や、壁画、イコノスタスなど、ロシア正教会の伝統的な建築様式が随所にみられる。

一方で、17世紀以降に建設されたバロック様式の建築物も数多く存在する。

これらの建築様式が融合することで、セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の伝統と西ヨーロッパの影響を融合させた独特の建築様式を持つ建造物群となっている。

3. 世界遺産登録の理由

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の世界遺産登録基準

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された。

(ii) 伝統的なロシア建築と西ヨーロッパの建築様式の融合が見られ、東ヨーロッパの建築の発展に影響を与えたという点。

(iv) 至聖三者聖セルギイ大修道院には、15〜18世紀に発展・拡大した時期の特徴が残り、軍事機能も持つ正教会の建造物の中でも傑作であるということ。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、大修道院として発展した時期の聖堂などが残っていて、中には西欧から取り入れられたバロック建築なども見られ、ロシアで多く見られる正教会の城壁で囲まれた修道院建築の中でも傑作であるという点で評価されています。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の世界遺産登録基準
基準	内容
(ii)	伝統的なロシア建築と西ヨーロッパの建築様式の融合が見られ、東ヨーロッパの建築の発展に影響を与えた
(iv)	15〜18世紀に発展・拡大した時期の特徴が残り、軍事機能も持つ正教会の建造物の中でも傑作である

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の世界遺産登録の意義

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の重要な聖地であり、ロシアの歴史と文化を象徴する建造物群である。

世界遺産に登録されたことで、セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、世界的に重要な文化遺産として認められ、保護と保存が促進されるようになった。

また、世界遺産登録は、ロシアの文化や歴史に対する国際的な関心を高め、観光客の増加にもつながった。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、世界遺産登録によって、その価値が世界的に認められ、保護と保存が促進され、観光客の増加にもつながった。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の世界遺産登録の背景

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の重要な聖地であり、ロシアの歴史と文化を象徴する建造物群である。

1993年に世界遺産に登録された背景には、ロシア正教会の伝統的な建築様式と西ヨーロッパのバロック様式が融合した独特の建築様式を持つ建造物群であること、そして、ロシア正教会の歴史と文化を象徴する重要な場所であることが挙げられる。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の重要な聖地であり、ロシアの歴史と文化を象徴する建造物群である。

世界遺産登録は、ロシアの文化や歴史に対する国際的な関心を高め、観光客の増加にもつながった。

まとめ

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、ロシア正教会の重要な聖地であり、ロシアの歴史と文化を象徴する建造物群である。

世界遺産登録は、セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の価値を世界的に認め、保護と保存を促進し、観光客の増加にもつながった。

4. 観光スポットと体験

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の見どころ

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院は、多くの見どころがある。

まず、修道院の中心部にある至聖三者大聖堂（トロイツキー大聖堂）は、創設者であるラドネジの聖セルギイの不朽体（遺体）が安置されている。

また、16世紀にイヴァン雷帝の命により建設された生神女就寝大聖堂（ウスペンスキー大聖堂）は、モスクワのクレムリンにある同名の聖堂を模して建設された。

さらに、17世紀に建設された聖セルギイの食堂（トラーベズナヤ）は、中央に柱などの支えが無い、ロシア最大規模510平方メートルを室内空間であった。

セルギエフ・ポサドのトロイツェ・セルギー大修道院の主な観光スポット
スポット	説明
至聖三者大聖堂	創設者であるラドネジの聖セルギイの不朽体が安置されている
生神女就寝大聖堂	モスクワのクレムリンにある同名の聖堂を模して建設された
聖セルギイの食堂	中央に柱などの支えが無い、ロシア最大規模の室内空間
鐘楼	1770年に建てられた、当時のロシアで最も高い建造物