項目 | 企業側 | 投資家側 |
---|---|---|
流動性 | 向上 | 向上 |
株価 | 上昇の可能性 | 上昇の可能性 |
配当 | 増配の可能性 | 増配の可能性 |
株主数 | 増加 | 増加 |
管理コスト | 増加 | なし |
株価変動 | 急落の可能性 | 急落の可能性 |
単元未満株 | 発生の可能性 | 発生の可能性 |
イメージ | 向上 | なし |
投資機会 | 増加 | 増加 |
NISA | 利用促進 | 利用促進 |
コスト | 増加 | なし |
1. 株式分割の定義とは
株式分割とは何か?
株式分割とは、すでに発行されている株式を、1株を2株のように、決められた割合に分けることを言います。その株式を保有している場合、分割された株式が割り当てられます。その分割の割合は、2倍や3倍といった整数だけでなくものだけでなく、1:1.5のような分割が行われることもあります。なお、株式分割をしても、理論上その株価は分割された割合に応じて下がることになりますが、所有している資産としての合計額や、その企業の時価総額は、理論上は変わりません。
例えば、ある株価1000円の株式を2株保有していたとします。そうすると、その株式で2000円の価値を持っていることになります。(実際の市場では、このような保有の形はありませんが、説明のしやすさからこのような形で説明します。)その企業が、「1:2の株式分割」が行われることになったとします。すると、持っている2株が4株に分割され、1株の株価が500円となります。しかし、保有している総額は変わりません。つまり、株式分割を行っても、保有している株価は半減するものの、時価総額は変わりません。
株式分割は、会社が株主のもの」です。その株主の中には、その会社のことがわかっていないのにも関わらず、株主総会で文句ばかり言うような、質の悪い株主も出てきます。さらに、単純に株主総会や株主優待の発想のような、コスト面での問題も出てきます。そのため、ある程度株主の数・質を選定するために、株主分割を行わない企業もあります。
分割前 | 分割後 |
---|---|
1株1,000円 | 1株100円 |
1万株 | 10万株 |
100株 | 1,000株 |
株式分割と増資の違い
株式分割も増資も、どちらも発行済株式数が増えることに変わりありませんが、株式分割が株式の単価を下げて発行済株式総数を増やすのに対し、増資は新たに発行した株式と引き換えに投資家からの出資を受けることになります。
東京証券取引所は、個人が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位の水準を「5万円以上、50万円未満」と定めています。かねてより投資単位が50万円以上の上場企業に対し、投資単位の引き下げの検討要請を行ってきたことから、株式分割を行う企業が増加傾向にあります。
2023年は、2024年1月から始まった新「NISA」を前に、個人投資家がより株式を買いやすくなるよう株式分割に踏み切る企業が増え、150社以上の企業が、2023年中に基準日を設けて株式分割を実施しました。
2024年に入っても株式分割の動きは続いており、日立製作所(5分割)、三井物産(2分割)、ソニーグループ(5分割)、三井住友フィナンシャルグループ(3分割)、ソフトバンク(10分割)など大型銘柄が株式分割を実行・予定しています。2024年7月1日を効力発生日として株式分割を行った企業の一部をご紹介します。
項目 | 株式分割 | 増資 |
---|---|---|
資本金 | 変化なし | 増加 |
発行済み株式数 | 増加 | 増加 |
資金調達 | なし | あり |
株式分割の基準日
取締役会で株式分割が決議されたら、どの時点で分割された株式が株主に割り当てられるのかを伝える必要があります。この分割された株式が割り当てられた日を「基準日」といい、基準日の2週間前までには株主に対して基準日公告を行わなければなりません。
株式分割の効力発生日を迎えると、株主には分割によって増えた株式が与えられます。またこの時、1株に満たない端数が生じた場合は、その端数を合計したものを競売等で売却した後に売却代金を株主に交付します。
まとめ
株式分割とは、すでに発行されている株式を、1株を2株のように、決められた割合に分けることを言います。株式分割は、企業が株主の利益を追求し、株式市場での取引を活性化させるための手段です。
株式分割は、1株を2株や3株など整数倍だけでなく、1株につき1.5株などのような分割が行われることもあります。
株式分割と増資との違いは、資本金等の額の変動有無です。株式分割も増資も、どちらも発行済株式数が増えることに変わりありませんが、株式分割が株式の単価を下げて発行済株式総数を増やすのに対し、増資は新たに発行した株式と引き換えに投資家からの出資を受けることになります。
東京証券取引所は、個人が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位の水準を「5万円以上、50万円未満」と定めています。かねてより投資単位が50万円以上の上場企業に対し、投資単位の引き下げの検討要請を行ってきたことから、株式分割を行う企業が増加傾向にあります。
2. 株式分割のメリットとは
企業側のメリット
株式分割で得られる最大のメリットは、株式の流動性を高められることです。つまり分割比率に応じて株価も下がるため、より多くの投資家が株式購入のチャンスを獲得できます。新たに株主となる投資家が増えるため、株主数の増加も期待できます。
株式分割後も1株あたりの配当を変更しなければ、株主は株式分割によって新たに取得した株式数分だけ、受け取る配当が増えることになります。この方法を活用すれば、1株あたりの配当金額を変更することなく配当増額の代替として株主に利益を還元することができます。
上場するためには、株主数や流通株式数などに関する一定の基準をクリアしなければなりません。株式分割を行うと、株主数や流通している株式数が増えるため、上位市場への昇格が狙いやすくなります。
メリット | 説明 |
---|---|
流動性向上 | 株価が下がることで、より多くの投資家が購入しやすくなる。 |
投資機会増加 | より多くの投資家に購入してもらえるため、資金調達や株式の流動性の向上に役立つ。 |
株価上昇の可能性 | 流動性が高まることで、株価が上昇する可能性がある。 |
株主数増加 | 株主数が増えることで、上場市場への昇格が狙いやすくなる。 |
株主優待の見直し | 株主数が増えることで、株主優待を廃止または減少させることができる。 |
投資家側のメリット
株式分割によって1株あたりの価格が下がるので、個人投資家が株を購入しやすくなります。これによって、より多くの人が投資を始めることができ、新たな投資家層を引き込むことが可能になります。
例えば、1株あたり2万円の株価がついている株式を100株単位で購入するためには、最低でも200万円が必要です。しかし、1:5の割合で株式分割が行われれば理論上株価は4千円になるため、100株単位でも40万円で購入することが可能になります。
株式の売買単価が下がると、「少しだけ買い増す」ことや「値が上がっているうちに少しだけ売却する」など、株式の売買の自由度が上がり、市場での取引が活発になることが期待できます。
株式分割を行うことで、1株当たりの配当が下がりますが、投資家が保有する株数が増えるため、全体の配当利回りはほぼ変わらない場合が多いです。これにより、投資家は安定した利回りを期待できます。
メリット | 説明 |
---|---|
購入しやすい | 1株あたりの価格が下がることで、より多くの投資家が購入できるようになる。 |
売買しやすい | 保有株数が増えることで、売却しやすい。 |
配当増加の可能性 | 1株あたりの配当金が据え置かれる場合、配当金が増える可能性がある。 |
株主優待の恩恵 | 株主優待の条件が変わらない場合、より多くの優待を受けられる可能性がある。 |
NISAの利用促進 | 投資単位が下がることで、NISA制度の利用促進につながる。 |
株式分割による株価上昇の可能性
上記のように、株式分割が発生しても、保有している株式の総合計の価値や、企業の時価総額が変化はありません。しかし、株式分割をきっかけに、株価が上昇する可能性があります。
まず、株式分割により、流動性が高くなることにより、個人投資家が買いやすくなるため、今まで「買いたかったが買えなかった」層の売買が現れます。
さらに、株式分割をする目的が指定替えであれば、その企業の姿勢を市場から評価され、さらなる成長を見込んだ買いも入ることになります。
一概に株式分割=株価上昇とは言えませんが、株式分割は好材料になりやすいということは、頭に入れておきましょう。
まとめ
株式分割は、企業が株主の利益を追求し、株式市場での取引を活性化させるための手段です。
株式分割は、企業の成長や投資家の資産運用においてメリットが多いですが、分割バブルのような急な値動きも発生するため注意が必要です。
株式分割は、流動性が高くなることにより、個人投資家が買いやすくなるため、今まで「買いたかったが買えなかった」層の売買が現れます。
さらに、株式分割をする目的が指定替えであれば、その企業の姿勢を市場から評価され、さらなる成長を見込んだ買いも入ることになります。
3. 株式分割のデメリットとは
企業側のデメリット
1株あたりの価格が安くなるため、株を売買する際の心理的な障壁が低くなり、投資家が短期的な利益を追求する取引を行いやすくなる場合があります。これが株価の急激な下落につながる可能性も考えられます。
株式分割によって株式の数が増えると、株式の管理(株主名簿の管理、株主総会の運営等)にかかるコストが増加します。また、株式分割の手続きには、時間とコストがかかります。これには、関連する法的手続きや、株主への通知、証券取引所への報告などが含まれます。
株式分割は一般にポジティブに受け取られることが多いですが、分割によって1株の価格が大幅に下がると、一部の人々から「安い株」という印象を持たれ、企業のイメージに影響を与える場合もあります。
デメリット | 説明 |
---|---|
株価急落の可能性 | 短期的な利益を追求する投資家が増加し、株価が急落する可能性がある。 |
管理コスト増加 | 株主数が増加することで、株主名簿の管理や株主総会の運営など、管理コストが増加する。 |
イメージ悪化 | 株価が大幅に下がることで、企業のイメージが悪化する可能性がある。 |
投資家側のデメリット
株式分割を行うと、比率によっては単元未満株(端株)が生じる場合があります。例えば、100株持っている株式が1:1.1に株式分割された場合、1株が1.1株に分割されるため、保有株式数は「100株×1.1=110株」になります。
しかし、市場での売買単位は100株ですから、増えた10株に関しては市場で売れません。そのため、この端株を売却しようと思ったら、株式を発行している会社に対して買取請求を行わなければなりません。この際に、指値でなく成行注文するしかできず、場合によっては手数料負けしてしまうこともあります。
一般的に株主が増えると、株価は安定する傾向にありますが、投機目的の投資家が増えることで、株価のボラティリティ(価格の変動幅)が大きくなる可能性があります。その結果、株価の安定性が損なわれる場合もあります。
株式分割は、特に初心者の投資家にとっては、理解しにくい場合があります。これにより、株の取引に対する投資家の不安が高まる場合もあります。
デメリット | 説明 |
---|---|
単元未満株の発生 | 分割比率によっては、売買できない単元未満株が発生する可能性がある。 |
株価の不安定化 | 投機目的の投資家が増加することで、株価の変動幅が大きくなる可能性がある。 |
理解の難しさ | 特に初心者にとって、株式分割の仕組みを理解するのが難しい場合がある。 |
株式分割の注意点
これらのデメリットは、株式分割によって引き起こされる可能性のある問題をいくつか示しています。したがって、企業は株式分割の実施を検討する際に、これらの点を慎重に評価し、全体としての利益がデメリットを上回る場合に、実施を決定することが重要です。
まとめ
株式分割は、企業の成長や投資家の資産運用においてメリットが多いですが、分割バブルのような急な値動きも発生するため注意が必要です。
株式分割は、流動性が高くなることにより、個人投資家が買いやすくなるため、今まで「買いたかったが買えなかった」層の売買が現れます。
さらに、株式分割をする目的が指定替えであれば、その企業の姿勢を市場から評価され、さらなる成長を見込んだ買いも入ることになります。
一概に株式分割=株価上昇とは言えませんが、株式分割は好材料になりやすいということは、頭に入れておきましょう。
4. 株式分割の具体的な方法
株式分割を行うための手続き
株式分割を行うためには、取締役会設置会社においては取締役会での決議(非設置会社の場合は株主総会の普通決議)を行う必要があります。決議では、以下の3点が決定されます。
また決議の前に、定款で定められている「発行可能株式総数」を確認する必要があります。株式分割の比率によっては、現在の定款で定められている「発行可能株式総数」を超えてしまう可能性があります。そのような場合は、株式分割の決議前に、取締役会の決議で定款の「発行可能株式総数」を変更しなければなりません。
取締役会で株式分割が決議されたら、どの時点で分割された株式が株主に割り当てられるのかを伝える必要があります。この分割された株式が割り当てられた日を「基準日」といい、基準日の2週間前までには株主に対して基準日公告を行わなければなりません。
株式分割の効力発生日を迎えると、株主には分割によって増えた株式が与えられます。またこの時、1株に満たない端数が生じた場合は、その端数を合計したものを競売等で売却した後に売却代金を株主に交付します。
手順 | 内容 |
---|---|
取締役会または株主総会での決議 | 株式分割を行うための決議を行う。 |
定款変更 | 必要に応じて、発行可能株式総数に関する定款規定を変更する。 |
基準日公告 | 株式分割の基準日と詳細を株主に告知する。 |
効力発生日 | 実際に株式の分割効果が生じる日。 |
登記 | 会社分割を行なった後は、効力が発生した日から2週間以内に登記を行う。 |
株式分割後の登記
株式分割を行ってから2週間以内に、本店所在地を管轄している法務局で、株式分割に関する変更登記申請を行います。
なお、株式分割の変更登記申請を行う場合、分割する株式の比率や株式数に関係なく一律30
株式分割の注意点
株式分割は、企業の成長や投資家の資産運用においてメリットが多いですが、分割バブルのような急な値動きも発生するため注意が必要です。
株式分割は、流動性が高くなることにより、個人投資家が買いやすくなるため、今まで「買いたかったが買えなかった」層の売買が現れます。
さらに、株式分割をする目的が指定替えであれば、その企業の姿勢を市場から評価され、さらなる成長を見込んだ買いも入ることになります。
一概に株式分割=株価上昇とは言えませんが、株式分割は好材料になりやすいということは、頭に入れておきましょう。
まとめ
株式分割は、企業の成長や投資家の資産運用においてメリットが多いですが、分割バブルのような急な値動きも発生するため注意が必要です。
株式分割は、流動性が高くなることにより、個人投資家が買いやすくなるため、今まで「買いたかったが買えなかった」層の売買が現れます。
さらに、株式分割をする目的が指定替えであれば、その企業の姿勢を市場から評価され、さらなる成長を見込んだ買いも入ることになります。
一概に株式分割=株価上昇とは言えませんが、株式分割は好材料になりやすいということは、頭に入れておきましょう。
5. 株式分割の過去事例
任天堂
任天堂は2022年10月1日付で発行済みの普通株式を1株につき10株への分割を行いました。これにより、投資単位が約600万円から約60万円に引き下げられ、個人株主が参入しやすくなったとされています。
背景としては、かねてより「株価が高く投資しづらい」など、分割を求める意見が個人投資家から多く寄せられていたことから、購入層を広げることを目的に、31年ぶりに株式分割が行われました。
2023年6月26日には、投資単位の引き下げ(株式分割)について「投資家層の拡大・株式の流動性を高めるための有効な施策」とし、今後については「多面的な視点で慎重に検討する」との方針を開示しました。
オリエンタルランド
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2023年4月1日付で株式1株を5株とする株式分割を行いました。
これは、投資家層の拡大や流動性の向上につなげることを目的に行われ、さらに株式を長く持ってもらうために、個人投資家に人気の株主優待制度も分割に伴い見直されました。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、2021年9月12日に、1991年以来30年ぶりとなる株式分割を1:5の分割比率で行うことを発表しました。
トヨタ自動車の株式は、発表当時1株あたり約1万円強で売買単位は100株のため、トヨタの株式を購入する場合最低でも100万円強が必要でした。
これが5倍に分割されるため、最低売買単位は20万円強まで下がり、流動性はかなり改善されることになります。
トヨタ自動車は国内企業の中で時価総額がトップであるのに対し、株主数は15位であるため、株式分割によって投資家にとって買いやすい売買金額にまで下げ、長期保有してもらえる個人投資家を呼び込む目的があると言われています。
まとめ
株式分割は、株式の流動性を高めて個人の投資家を新たに呼び込めるなどのメリットがある一方で、管理コストなどのデメリットもあります。
メリットとデメリットの双方を天秤にかけながら、最善策の選択を行う必要があります。
6. 株式分割にかかわる税制とは
株式分割による税金
株式分割は、株主にとって無償で株式が増えるため、原則として税金はかかりません。
ただし、株式分割によって株価が下がり、その後に売却した場合には、売却益に対して税金が発生します。
また、株式分割によって株主優待の内容が変更になった場合、その変更によって生じた利益に対して税金が発生する場合があります。
株式分割とNISA
NISA口座で株式を保有している場合、株式分割によって増えた株式もNISA口座で保有することができます。
NISA口座は、非課税投資枠なので、株式分割によって増えた株式を売却した場合でも、売却益に対して税金はかかりません。
株式分割と相続税
株式分割は、相続税の評価額に影響を与える可能性があります。
相続税の評価額は、株式分割が行われた時点ではなく、相続が発生した時点での株価で評価されます。
そのため、株式分割によって株価が下落した場合、相続税の評価額が低くなる可能性があります。
まとめ
株式分割は、株主にとって無償で株式が増えるため、原則として税金はかかりません。
ただし、株式分割によって株価が下がり、その後に売却した場合には、売却益に対して税金が発生します。
また、株式分割によって株主優待の内容が変更になった場合、その変更によって生じた利益に対して税金が発生する場合があります。
NISA口座で株式を保有している場合、株式分割によって増えた株式もNISA口座で保有することができます。
参考文献
・株式分割とは?メリットなどわかりやすく解説(2024年最新)|M …
・「株式分割」とは?メリット・デメリットや効果を投資家の …
・株式分割の意味とは? 株初心者にもわかりやすく解説します …
・株式分割とは?実施目的や立場別のメリット・デメリットを …
・株式分割とは? 仕組みやメリット、注意点を解説 – MonJa …
・株式分割は儲かる?メリット・デメリットや、投資家への影響 …
・株式分割とは|メリットとデメリット・値動き … – 投資の教科書
・「株式分割」は買い?株価は上がる?下がる?メリットと注意 …
・【事例あり】株式分割とは?株価の変化やメリット … – FundPress