CAPとは?経済用語について説明

CAPの概要
項目	内容
定義	Common Agricultural Policyの略称。EUの共通農業政策。
目的	EU加盟国の農業部門を支援し、共通市場の構築を目的とする。
主な内容	農業生産者の所得支援、市場価格の安定化、農村地域の開発、消費者の安全確保、環境保護、気候変動への適応促進
歴史	1962年に創設。その後、生産過剰や国際的な批判などを背景に、1990年代以降、大幅な改革が行われた。
将来展望	農業の持続可能性、環境保護、経済競争力などの課題に対処する必要性が認識されている。
他の経済政策との関係	EUの経済統合政策、環境政策、貿易政策など、様々な経済政策と密接に関連している。

1. CAPとは何か

CAPの定義

CAPとは、Common Agricultural Policyの略で、欧州連合（EU）が実施する共通の農業政策のことです。1962年に創設され、EU加盟国の農業部門を支援し、共通市場の構築を目的としています。CAPは、主に農業生産者の所得支援、市場価格の安定化、農村地域の開発を目的としています。また、消費者の安全確保、環境保護、気候変動への適応促進にも貢献しています。

CAPは、EU加盟国間の農産物価格を統一し、EU域外からの輸入に共通の関税を課すことを目的としています。これは、ローマ条約の目標の一つで、加盟国間の農産物価格の均一化と、加盟国外からの輸入品に対する共通の関税を課す政策です。

CAPは、EU加盟国に義務付けられた共通の基本的農業政策であり、EU各国の農業法よりもこの政策が優先されます。

CAPの定義
項目	内容
略称	Common Agricultural Policy
目的	EU加盟国の農業部門を支援し、共通市場の構築を目的とする。
主な内容	農業生産者の所得支援、市場価格の安定化、農村地域の開発、消費者の安全確保、環境保護、気候変動への適応促進

CAPの目的

CAPの目的は、EU加盟国の農業セクターを支援し、安定させることです。具体的には、CAPは以下のことを目指しています。\n* 農家の収入を安定させ、農業の持続可能性を確保（市場支援）\n* 農業の生産性を向上させ、農産物の競争力を強化（構造政策）\n* 農村地域の発展を促進し、生活の質を向上（農村開発政策）\n* 環境の保護と天然資源の持続可能な管理の促進（緑化政策）

CAPの目的
目的	内容
農家の所得安定	市場支援措置を通じて農業者の収入を直接支援する。
農業の生産性向上	農村開発を通じて農業の競争力と持続可能性を向上させる。
農村地域の発展	農村開発を通じて農業の競争力と持続可能性を向上させる。
環境保護	環境保護と天然資源の持続可能な管理を促進する。

CAPの仕組み

CAPは、EU共通予算から資金提供される補助金制度に基づいて運営されています。この補助金は、農業者の収入を安定させ、農業の競争力を高め、環境を保護することを目的としています。

CAPの補助金は、2つの主要な柱に分かれています。第1の柱では、市場支援措置を通じて農業者の収入を直接支援しています。この措置には、直接支払い、市場介入などが含まれます。第2の柱では、農村開発を通じて農業の競争力と持続可能性を向上させる措置が提供されています。これには、インフラへの投資、教育や研修の支援、持続可能な農業慣行の促進などが含まれます。

CAPの仕組み
柱	内容
第1の柱	市場支援措置を通じて農業者の収入を直接支援する。
第2の柱	農村開発を通じて農業の競争力と持続可能性を向上させる。

まとめ

CAPは、EU加盟国の農業を支援し、共通市場の構築を目的とした包括的な政策です。農家の所得安定、市場価格の安定化、農村地域の開発、環境保護、気候変動への適応促進など、多岐にわたる目標を掲げています。

CAPは、EU共通予算から資金提供される補助金制度に基づいて運営され、市場支援と農村開発の2つの柱で構成されています。

2. CAPの歴史と起源

CAPの創設

CAPは、1957年に署名されたローマ条約によって欧州経済共同体（EEC）が創設される際に、その大きな目標である関税同盟の実現のために盛り込まれました。関税同盟とは、加盟国同士の物品取引に際しての関税を廃止するとともに、加盟国外から入ってくる物品に対する関税を共通化するものです。

しかし、関税同盟を実現させるに当たって、各国の利害が対立しやすいのが農業分野です。通常、各国は食料安全保障の観点から自国の農業生産を優先し、できるかぎり輸入に依存しないようにすることを企図するため、域内関税を廃止するとともに、域外関税を共通化するという関税同盟に対しては警戒感が先行すると見てよいでしょう。

特に欧州諸国は、両次の世界大戦によって深刻な食料不足を経験しました。国民に食料を安定供給することは各国政府にとって極めて重要な課題であり、これが満たせなくなれば政治の安定を図ることもできません。

このため、EECによる関税同盟の実現に当たっては、ローマ条約中に特に農業に関する一章を設け、国別の農業政策に留まらない新たな共通の農業政策を開始することとしたのです。これによって、各国の農業生産を維持しつつ、EEC全体の農業生産を拡大すること及びEECC内部での農産物の輸出入を活性化することが企図されました。

CAPの創設
時期	内容
1957年	ローマ条約でCAPが盛り込まれる。
1962年	共通農業政策が開始される。
1966年	ルクセンブルクの妥協。CAPに関する閣僚理事会の採択のあり方を巡って議論が巻き起こる。

CAPの初期段階

CAPの目的について、ローマ条約第39条は5項目を掲げていますが、これらは現行のEU機能条約第39条に引き継がれています。生産者保護に向けられた項目（所得確保等）と消費者保護に向けられた項目（安定供給等）とが見出されますが、設立当初に用いられた手法は、農産物価格をある程度高く設定することによって農業者の所得を確保するという価格政策が中心でした。

その価格設定を巡って閣僚理事会（農相理事会）では毎年激論が交わされました。1966年のいわゆる「ルクセンブルクの妥協」は、CAPに関する閣僚理事会の採択のあり方を巡って引き起こされた事件の一例です。

こうした伝統的な政策は1970年代から1980年代にかけて比較的安定的に機能していました。

CAPの初期段階
時期	内容
1970年代	価格政策が中心。
1980年代	生産過剰が発生。
1990年代	内外から批判が強まる。

CAPの改革

しかしながら、このCAPに対して、特に1980年代から1990年代にかけて内外から大きな批判が向けられるようになりました。

批判された第1の点は、CAPのために多大な予算が投入されているというものです。当時のECにおいては、CAPの関連に予算全体の過半が費やされていたのでした。

批判された第2の点は、CAPによって域内の農業生産が過剰に刺激されたため、生産過多が発生し、余剰農産物が域外の特に発展途上国へと投げ売りされているというものです。これによって発展途上国の健全な経済発展が阻害されているとの議論が巻き起こりました。

こうした議論は、当時のGATTの交渉にも影響し、輸出補助金を禁止する方向で議論が展開する一因となりました。また、農業生産を刺激するような補助金を原則禁止する、いわゆる「デカップリング」の方針が打ち立てられました。

CAPの改革
時期	内容
1992年	価格支持政策から直接支払い制度への移行。
1999年	農村開発政策の導入。
2003年	環境保護の重視。

まとめ

CAPは、当初は価格政策を中心とした農業保護政策でしたが、予算過大や生産過剰、国際的な批判などを背景に、1990年代以降、大幅な改革が行われました。

改革の主な内容は、価格支持政策から直接支払い制度への移行、農村開発政策の導入、環境保護の重視などです。

これらの改革によって、CAPは、農業生産の効率化、環境保護、農村地域の活性化など、より多面的で持続可能な政策へと進化してきました。

3. CAPのメリットとデメリット

CAPのメリット

CAPは、EU共通予算から資金提供される補助金制度に基づいて運営され、市場支援と農村開発の2つの柱で構成されています。

CAPのメリット
メリット	内容
食料安定供給	EU域内の食料自給率向上に貢献。
農家の所得向上	農業者の収入を安定させることで、生活水準の向上に貢献。
農村地域の活性化	農村開発政策を通じて、農村地域の雇用創出やインフラ整備を促進。

CAPのデメリット

CAPは、長年にわたり欧州の農業分野に影響を与えてきました。その成果としては、安定した食料供給、農家の所得向上、農村地域の活性化などが挙げられます。しかし、CAPは課題も抱えており、環境への影響、競争力の低下、行政コストの上昇などが指摘されています。

環境への影響としては、農薬や肥料の使用による水質汚染、土壌侵食、生物多様性の減少などが挙げられます。競争力の低下としては、保護政策による生産過剰や、価格競争力の低下などが挙げられます。行政コストの上昇としては、複雑な補助金制度の運営に伴うコストなどが挙げられます。

CAPのデメリット
デメリット	内容
環境への影響	農薬や肥料の使用による水質汚染、土壌侵食、生物多様性の減少。
競争力の低下	保護政策による生産過剰や、価格競争力の低下。
行政コストの上昇	複雑な補助金制度の運営に伴うコスト。

CAPの改革

これらの課題に対処するため、CAPは近年、改革が実施されてきました。その重点は、農家の所得支援よりも市場指向の政策へのシフト、環境保護の重視、そして農村地域の開発促進に移行しています。

具体的には、直接支払いの削減、環境保護要件の強化、農村開発への投資の増加などが行われています。

CAPの改革
時期	内容
近年	市場指向の政策へのシフト、環境保護の重視、農村地域の開発促進。
具体例	直接支払いの削減、環境保護要件の強化、農村開発への投資の増加。

まとめ

CAPは、EU農業政策の中心的存在であり、その将来は地域の食料安全保障と持続可能性に大きな影響を与えるでしょう。

CAPは、安定した食料供給、農家の所得向上、農村地域の活性化などの成果を上げてきましたが、環境への影響、競争力の低下、行政コストの上昇などの課題も抱えています。

これらの課題に対処するため、CAPは近年、改革が実施されてきました。しかし、これらの改革が十分な効果をもたらしているかどうかについては、議論が続いています。

4. CAPの活用事例と注意点

CAPの活用事例

CAPは、EU共通予算から資金提供される補助金制度に基づいて運営され、市場支援と農村開発の2つの柱で構成されています。

CAPの活用事例
事例	内容
市場支援	直接支払い、市場介入などを通じて農業者の収入を直接支援。
農村開発	インフラへの投資、教育や研修の支援、持続可能な農業慣行の促進などを通じて農業の競争力と持続可能性を向上させる。
環境保護	環境保護と天然資源の持続可能な管理を促進する。

CAPの注意点

CAPの注意点
注意点	内容
環境への影響	農薬や肥料の使用による水質汚染、土壌侵食、生物多様性の減少。
競争力の低下	保護政策による生産過剰や、価格競争力の低下。
行政コストの上昇	複雑な補助金制度の運営に伴うコスト。

CAPの改革

具体的には、直接支払いの削減、環境保護要件の強化、農村開発への投資の増加などが行われています。

CAPの改革
時期	内容
近年	市場指向の政策へのシフト、環境保護の重視、農村地域の開発促進。
具体例	直接支払いの削減、環境保護要件の強化、農村開発への投資の増加。

まとめ

CAPは、EU農業政策の中心的存在であり、その将来は地域の食料安全保障と持続可能性に大きな影響を与えるでしょう。

5. CAPの将来展望

CAPの今後の課題

CAPは現在、2021年から2027年までの渡り実施されていますが、その先の未来は依然として不透明です。EUは次期CAPについて議論を深めており、農業の持続可能性、環境保護、経済競争力などの課題に対処する必要性が認識されています。また、Brexitの影響も考慮する必要があるでしょう。

次期CAPでは、環境保護と農業生産のバランスを取ることに重点が置かれることが期待されます。これは、気候変動への対応、生物多様性の保護、水の質の向上などの課題に対処することを意味します。また、農業者の収入確保と競争力向上も重要な課題となるでしょう。

CAPの今後の課題
課題	内容
農業の持続可能性	気候変動への対応、生物多様性の保護、水の質の向上。
環境保護	気候変動への対応、生物多様性の保護、水の質の向上。
経済競争力	農業者の収入確保と競争力向上。

CAPの具体的な展望

CAPの具体的な形についてはまだ確定していませんが、欧州委員会は、農業の持続可能性、環境保護、経済競争力の向上に重点を置いた提案を提示しています。また、農業者に対する支援を合理化し、環境保護措置への資金繰りを増やすことも検討されています。

CAPの具体的な展望
内容	内容
農業の持続可能性	農業の持続可能性、環境保護、経済競争力の向上に重点を置いた提案。
環境保護	環境保護措置への資金繰りを増やす。
経済競争力	農業者に対する支援を合理化。

CAPの重要性

CAPは、EU農業政策の中心的存在であり、その将来は地域の食料安全保障と持続可能性に大きな影響を与えるでしょう。

CAPの継続的な評価と適応により、欧州の農業セクターが、これからの課題にも対応し、繁栄し続けることが不可欠です。

CAPの重要性
重要性	内容
食料安全保障	地域の食料安全保障に大きな影響を与える。
持続可能性	地域の持続可能性に大きな影響を与える。

まとめ

CAPは、EU共通予算から資金提供される補助金制度に基づいて運営され、市場支援と農村開発の2つの柱で構成されています。

6. CAPと他の経済政策の比較

CAPとEUの経済統合

CAPは、EUの経済統合政策の一環として位置付けられています。EUは、関税同盟、単一市場、経済・通貨同盟と段階的に経済統合を進めてきました。CAPは、関税同盟の段階で導入された政策であり、EU域内の農産物市場の統合を促進する役割を果たしてきました。

CAPは、EU域内の農産物価格の統一、EU域外からの輸入に対する共通の関税の課税などを通じて、EU域内の農業市場の統合を促進してきました。これは、EU全体の経済統合を促進する上で重要な役割を果たしています。

CAPとEUの経済統合
項目	内容
関税同盟	EU域内の農産物市場の統合を促進。
単一市場	EU域内の農産物市場の統合を促進。
経済・通貨同盟	EU域内の農産物市場の統合を促進。

CAPと環境政策

CAPは、近年、環境保護の重要性を認識し、環境保護政策との連携を強化しています。EUは、気候変動対策、生物多様性保全、水質保全などの環境政策を積極的に推進しており、CAPもこれらの政策目標達成に貢献する役割を担っています。

CAPは、環境保護要件の強化、環境保護措置への資金繰りの増加などを通じて、環境政策との連携を強化しています。これは、EU全体の環境政策目標達成に貢献するだけでなく、農業の持続可能性を高める上でも重要な役割を果たしています。

CAPと環境政策
項目	内容
気候変動対策	気候変動対策に貢献。
生物多様性保全	生物多様性保全に貢献。
水質保全	水質保全に貢献。

CAPと貿易政策

CAPは、EUの貿易政策とも密接に関連しています。EUは、自由貿易協定（FTA）の締結などを通じて、国際的な貿易の拡大を目指しています。CAPは、EU域内の農業市場の安定化、農産物の競争力強化などを通じて、EUの貿易政策を支援する役割を果たしています。

CAPは、EU域内の農産物市場の安定化、農産物の競争力強化などを通じて、EUの貿易政策を支援する役割を果たしています。これは、EU全体の貿易政策目標達成に貢献するだけでなく、EUの農業セクターの国際的な競争力を強化する上でも重要な役割を果たしています。

CAPと貿易政策
項目	内容
自由貿易協定	EU域内の農業市場の安定化、農産物の競争力強化などを通じて、EUの貿易政策を支援。
国際的な貿易の拡大	EU域内の農業市場の安定化、農産物の競争力強化などを通じて、EUの貿易政策を支援。