項目 | 説明 |
---|---|
現在値 | 将来の価値を現在の価値に換算した金額 |
将来価値 | 現在の価値を将来の価値に換算した金額 |
時間価値 | お金の価値が時間によって変化すること |
割引率 | 将来の価値を現在価値に割り引く際に用いる数値 |
株主資本コスト | 株主が要求する最低限の利益 |
WACC | 株主と債権者の双方を考慮した割引率 |
キャッシュフロー | 一定期間における資金の出入り |
フリーキャッシュフロー | 企業が自由に使える資金 |
継続価値 | 予測期間以降に獲得するキャッシュフローの現在価値合計 |
企業価値 | 企業全体の経済的な価値 |
事業価値 | 企業の事業活動から生み出される価値 |
時価総額 | 株式市場における株価と発行済株式を掛け合わせた金額 |
買収価格 | M&Aにおいて、売り手と買い手の交渉によって決定した会社や事業の取引金額 |
正味現在価値(NPV) | 投資やプロジェクトの収益性を評価する指標 |
DCF法 | 将来のキャッシュフローにもとづきながら時間・リスクを加味して事業価値などを算出する計算方法 |
正味現在価値法(NPV法) | プロジェクトが生み出すと予想される将来のキャッシュフローの現在価値合計と投資額を比較し、投資額をキャッシュフローが上回れば投資する意思決定法 |
1. 現在値の定義と意味
現在値とは何か?
現在値とは、将来受け取れる金額を現時点の価値で計算し直した金額のことです。例えば、1年後に受け取れる110万円は、金利が年間10%とすると現在価値で100万円になります。なぜなら、現在100万円を持っていて、それを銀行に預けておけば、金利の10%が加わって110万円になるからです。
現在価値は、将来の価値を割引率によって割り引くことで算出できます。割引率は、市場要求やリスクの大きさなどを基に決定されるもので、加重平均資本コスト(WACC)が代表的です。
現在価値の考え方を応用することで、M&Aにおいて重要な企業価値を求められます。
年数 | 将来価値(万円) | 現在価値(万円) |
---|---|---|
1年 | 110 | 100 |
2年 | 121 | 90.9 |
3年 | 133.1 | 82.6 |
将来価値とは?
将来価値とは、現在所有している金額に対して将来のある時点での価値に計算し直した金額のことです。現在価値とともに使われる言葉で、先の例で言えば現在所有している100万円は将来価値に計算し直すと100万円とは限らず、金利が年間10%であれば将来価値は110万円となります。
年数 | 現在価値(万円) | 将来価値(万円) |
---|---|---|
1年 | 100 | 110 |
2年 | 100 | 121 |
3年 | 100 | 133.1 |
時間価値とは?
お金は時間の経過によって価値が変わり、現在の100万円と将来の100万円が同じ価値でないことは何となくわかると思います。先の例のように、金利によって1年後には価値が上がったり、反対に下がったりする可能性もあり、この差は「お金の時間価値」と言われます。
一般にお金の価値は、同金額であれば受け取る時点が現在に近いほど価値は高くなり、遠いほど価値は低くなります。一方で、お金を支払う場合は現在から遠いほど有利に働きます。
まとめ
現在値とは、将来の価値を現在の価値に換算したものであり、将来の価値が確実である場合と不確実である場合で割引率が変化します。
将来価値とは、現在の価値を将来の価値に換算したものであり、金利によって価値が変動します。
時間価値とは、お金の価値が時間によって変化することを指し、現在価値と将来価値の差によって生まれます。
2. 現在値の重要性と役割
投資や取引における合理的な判断
現在価値や将来価値を理解することで、投資や取引において将来の金額が現在価値に直すとどれくらいの金額になるのか計算でき、より合理的な判断が可能です。
M&Aにおける企業価値評価
M&Aの売買価格(売り手企業の売却額)は、買い手と売り手による交渉で決定します。自由に決定できるものの、売り手と買い手の間で利害が対立するため、基準となる客観的な金額がなければ交渉は平行線となるおそれがあります。
一方で、ファイナンス理論に基づいて導出した企業価値があれば、合理的な基準に沿って売り手と買い手の双方が納得できる売買額を決定しやすくなります。M&Aにおいてスムーズに交渉を進める上で、企業価値評価は重要なプロセスです。
用語 | 説明 |
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事業価値 | 企業の事業活動から生み出される価値 |
時価総額 | 株式市場における株価と発行済株式を掛け合わせた金額 |
買収価格 | M&Aにおいて、売り手と買い手の交渉によって決定した会社や事業の取引金額 |
事業投資の意思決定
正味現在価値(NPV)は、投資やプロジェクトの収益性を評価する上で重要な指標です。NPVが正の値であれば投資すべき、負の値であれば投資は避けるべきであると判断します。
たとえば、ある投資プロジェクトで得られる売上の「現在価値」が2
まとめ
現在値は、投資や取引、M&Aなどにおいて将来の価値を現在の価値に換算することで、より合理的な判断を下せるようにする重要な役割を担います。
特にM&Aでは、企業価値評価において現在値の考え方が活用され、買い手と売り手の双方にとって納得のいく取引価格を決定する上で重要な役割を果たします。
事業投資においては、正味現在価値(NPV)などの指標を用いることで、投資の収益性を評価し、投資すべきかどうかを判断する上で役立ちます。
3. 現在値の計算方法と指標
現在価値の計算式
現在価値(PV)の計算式は次のとおりです。なお、”^”は「累乗」を表します。たとえば、「2^3」は2を3回掛け合わせることを表すため「2×2×2=8」となります。
PV = FV ÷(1+r)^n
※参考 将来価値(FV)の計算式は次のとおりです。
FV = PV × (1+r) ^n
計算式 | 説明 |
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PV = FV ÷(1+r)^n | 現在価値(PV)の計算式 |
FV = PV × (1+r) ^n | 将来価値(FV)の計算式 |
割引率とは?
割引率とは、将来価値を現在価値に割り引く(換算する)ときに用いる数値です。前述の例では、将来価値を現在価値に割り引いたときに用いた金利が割引率に該当します。
割引率は、投資や資金調達のリスク、時間の価値、市場の要求などに基づいて決定されます。
割引率が高いほど、将来の売上やキャッシュフローの現在価値は低くなります。
割引率の種類
割引率として定める指標は、金利以外にも複数の種類があります。状況や計算する対象によって、最適な割引率を活用する必要があります。
ここでは、代表的な割引率を2種類紹介します。
株主資本コストとは、株主からの出資によって調達した資本にかかるコストです。株主側から見ると、投資に対する期待収益率を表します。計算では、一般的にCAPMと呼ばれる理論が用いられます。
WACCとは、借入にかかるコストと株式による調達にかかるコストを加重平均した数値です。資金調達の視点で見ると、資金調達額に占める資金調達に必要なコストの割合を表します。債権者と株主双方を考慮した指標であり、DCF法による企業価値評価や事業投資の評価などに幅広く活用されています。
割引率 | 説明 |
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株主資本コスト | 株主が要求する最低限の利益 |
WACC | 株主と債権者の双方を考慮した割引率 |
まとめ
現在価値は、将来価値を割引率で割り引くことで算出されます。
割引率は、金利や株主資本コスト、WACCなど、状況や計算対象によって適切な指標を選択する必要があります。
割引率は、投資のリスクや期待収益率を反映した数値であり、リスクが高いほど割引率は高くなり、現在価値は低くなります。
4. 現在値の市場への影響
市場動向と現在値
市場動向は、経済指標や企業の業績などの情報が公表されると、株価は大きく変動します。このような要因が市場動向として現れると、株式の現在値にも影響を与えることがあります。
さらに、政治や経済の不確実性が高まると、株式市場は不安定になり、現在値が乱高下することがあります。例えば、国際的な貿易摩擦や政治的な危機などが発生すると、市場動向が乱れ、株価が変動することが予想されます。
一方で、良い業績や経済指標が市場に報告された場合、株式市場は強気になり、株価が上昇することがあります。このような場合も、現在値は市場動向に応じて変化します。
チャート分析
投資家やトレーダーは、市場動向を正確に把握することで、現在値の変動を予測し、適切な取引戦略を立てることができます。また、特定の企業や業界に関する情報も重要であり、市場動向と現在値の関連性を理解する上で欠かせません。
市場動向はさまざまな要素によって影響を受けるため、常に最新の情報にアクセスし、その情報を分析することが重要です。これにより、株式の現在値に対する見解を深め、より賢明な投資や取引が行えるでしょう。
現在値への影響要因
企業の業績:企業の業績は株価に大きな影響を与えます。業績が好調であれば、株価は上昇する傾向があります。逆に業績が低迷すると株価は下落します。投資家は企業の業績を注視し、それに応じて株価を評価します。
経済指標:経済指標やマクロ経済の動向も株式の現在値に影響を与えます。例えば、雇用統計やGDP成長率などが市場の動向に大きな影響を及ぼします。これらの経済指標の発表時には株式市場が大きく揺れることがあります。
金利政策:中央銀行の金利政策も株式市場に大きな影響を与えます。金利が引き下げられると、企業の借入コストが低下し、利益が増加するため株価が上昇することがあります。
世界の政治・社会情勢:国際情勢も株式の現在値に影響を与えます。特に地政学的なリスク要因は株価に大きな影響を及ぼすことがあります。また、各国の貿易摩擦や自然災害なども株価に影響を与えることがあります。
要因 | 説明 |
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企業の業績 | 業績が好調であれば株価は上昇する傾向 |
経済指標 | 雇用統計やGDP成長率などが市場の動向に影響 |
金利政策 | 金利が引き下げられると、企業の借入コストが低下し、利益が増加するため株価が上昇 |
世界の政治・社会情勢 | 地政学的なリスク要因や貿易摩擦、自然災害などが株価に影響 |
まとめ
現在値は、市場動向、経済指標、企業業績、金利政策、政治・社会情勢など、様々な要因によって影響を受けます。
投資家は、これらの要因を分析し、現在値の動向を予測することで、より適切な投資判断を下すことができます。
チャート分析などを通じて、市場の動向を把握し、現在値の変動を理解することが重要です。
5. 現在値の応用例と事例
企業価値評価
企業価値とは、企業全体の経済的な価値のことです。具体的には「企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値合計」や「株式価値(≒自己資本のみの価値)と負債価値の合計」として表されます。
企業価値と似た意味の用語に「事業価値」「時価総額」「買収価格」があります。それぞれの用語と、企業価値との違いを理解することが重要です。
事業活動から生み出される価値です。企業価値から非事業資産(事業以外の財産価値)を差し引くことで算出されます。
株式市場における株価と発行済株式(自己株式を除く)を掛け合わせた金額です。経済産業省「企業価値と株主利益について」にあるように、株式市場が効率的である場合において、時価総額は株式価値と一致します。
用語 | 説明 |
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事業価値 | 企業の事業活動から生み出される価値 |
時価総額 | 株式市場における株価と発行済株式を掛け合わせた金額 |
買収価格 | M&Aにおいて、売り手と買い手の交渉によって決定した会社や事業の取引金額 |
M&Aにおける企業価値評価
M&Aにおいて、売り手と買い手の交渉によって決定した会社や事業の取引金額です。交渉によって自由に決定できるものの、理論上は株式価値に相当すると考えられています。つまり、企業価値から有利子負債を差し引くことで、株式価値(≒理論上の買収価格)を算定できます。
M&Aの売買価格(売り手企業の売却額)は、買い手と売り手による交渉で決定します。自由に決定できるものの、売り手と買い手の間で利害が対立するため、基準となる客観的な金額がなければ交渉は平行線となるおそれがあります。
一方で、ファイナンス理論に基づいて導出した企業価値があれば、合理的な基準に沿って売り手と買い手の双方が納得できる売買額を決定しやすくなります。M&Aにおいてスムーズに交渉を進める上で、企業価値評価は重要なプロセスです。
DCF法による企業価値評価
企業価値を評価する手法として「DCF法」があります。DCF法は、対象会社(売り手企業)の将来的な収益性を加味した上で企業価値を評価できる点がメリットです。具体的には、次の流れで企業価値を評価します。
1) 予測可能な期間のフリーキャッシュフローを予測する。
2) 予測期間のフリーキャッシュフローを割引率で割り引いて現在価値に換算する。
3) 予測期間以降のフリーキャッシュフローを継続価値として算出し、現在価値に換算する。
ステップ | 内容 |
---|---|
1 | 予測可能な期間のフリーキャッシュフローを予測する |
2 | 予測期間のフリーキャッシュフローを割引率で割り引いて現在価値に換算する |
3 | 予測期間以降のフリーキャッシュフローを継続価値として算出し、現在価値に換算する |
まとめ
現在値の考え方は、企業価値評価において重要な役割を果たします。
DCF法などの手法を用いることで、企業の将来的な収益性を考慮した上で、企業価値を評価することができます。
M&Aにおいては、企業価値評価に基づいて、合理的な売買価格を決定することができます。
6. 現在値の将来展望と課題
現在値の重要性の高まり
現在値は、将来の価値を現在の価値に換算することで、より合理的な判断を下せるようにする重要な指標です。
特に、投資やM&A、事業投資など、将来の収益性を考慮する必要がある場面において、現在値の重要性はますます高まっています。
現在値を正しく理解し、活用することで、より精度の高い意思決定を行うことが可能になります。
割引率の精度向上
現在値の計算において、割引率は重要な役割を果たします。
割引率の精度を高めるためには、市場の動向、金利、リスクなどを正確に分析し、適切な割引率を設定することが重要です。
割引率の精度向上は、現在値の精度向上に繋がり、より信頼性の高い意思決定を可能にします。
キャッシュフロー予測の精緻化
現在値の計算には、将来のキャッシュフローの予測が不可欠です。
キャッシュフローの予測精度を高めるためには、企業の事業計画、市場環境、競合状況などを詳細に分析する必要があります。
キャッシュフロー予測の精緻化は、現在値の精度向上に繋がり、より正確な企業価値評価を可能にします。
まとめ
現在値は、将来の価値を現在の価値に換算することで、より合理的な判断を下せるようにする重要な指標であり、その重要性はますます高まっています。
現在値の精度を高めるためには、割引率の精度向上とキャッシュフロー予測の精緻化が重要です。
市場の動向、金利、リスク、事業計画、市場環境、競合状況などを分析することで、より正確な現在値を算出することができます。
参考文献
・株式の現在値について:知っておきたいこと | sasa-dango
・現在値(げんざいね) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・現在価値とは?計算プロセスや割引率の考え方・企業価値の …
・【図解】現在価値とは?求め方や割引率との関係、計算方法を …
・現在値とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・現在価値と将来価値の違いとは何か?投資や取引のリスクを …
・現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係 …
・現在価値(げんざいかち)とは? 意味や使い方 – コトバンク