項目 | 説明 |
---|---|
定義 | 有価証券報告書を提出しなければならない会社が、一定の事由に該当した場合に提出する報告書 |
提出義務 | 金融商品取引法で定められている。発行する有価証券の募集又は売出しが外国において行われるとき、その他公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める場合に該当する。 |
提出先 | 内閣総理大臣 |
提出方法 | EDINETを通じて提出する |
特徴 | 適時性、強制力、開示事項が内閣府令で定められている |
重要性 | 投資者保護、市場の透明性、企業のガバナンス |
例 | M&Aによる会社合併、重要な災害の発生、主要株主の異動 |
作成手順 | 提出事由の確認、開示事項の決定、資料の作成、提出 |
決算報告書との違い | 開示の目的、タイミング、内容が異なる |
1. 臨時報告書とは
臨時報告書の定義
臨時報告書とは、有価証券報告書を提出しなければならない会社が、その発行する有価証券の募集又は売出しが外国において行われるとき、その他公益又は投資者保護のため一定の要件に該当したときに、遅滞なく内閣総理大臣への提出をすることが義務づけられている書類をいう。
例えば、M&Aによって会社の経営状況が大きく変化した場合や、重要な災害が発生した場合などに、臨時報告書の提出が必要となる。
臨時報告書は、投資者に対して、会社の重要な情報を適時に開示することで、投資判断を支援し、市場の透明性を高める役割を担っている。
事由 | 説明 |
---|---|
外国における有価証券の募集または売出し | 会社が発行する有価証券の募集または売出しが外国で行われる場合 |
募集によらないで行われる有価証券の発行 | 募集によらないで行われる有価証券の発行が行われる場合 |
募集等の届出を要しないストック・オプションの発行 | ストック・オプションの発行が行われる場合 |
親会社の異動または特定子会社の異動 | 会社の親会社または特定子会社が変更になる場合 |
主要株主の異動 | 会社の主要株主が変更になる場合 |
特別支配株主からの株式等売り渡請求 | 特別支配株主から株式等の売り渡請求があった場合 |
全部取得条項付種類株式の全部の取得を目的とする株主総会の招集 | 全部取得条項付種類株式の全部の取得を目的とする株主総会が開催される場合 |
株式の併合を目的とする株主総会の招集 | 株式の併合を目的とする株主総会が開催される場合 |
重要な災害の発生等 | 会社に重要な影響を与える災害が発生した場合 |
提出会社に対する重要な訴訟の提起または訴訟の解決 | 会社に対する重要な訴訟が提起または解決した場合 |
株式交換、株式移転、吸収分割、新設分割、吸収合併、新設合併、事業の譲渡・譲受けの決定 | 会社が株式交換、株式移転、吸収分割、新設分割、吸収合併、新設合併、事業の譲渡・譲受けを行う場合 |
子会社の取得 | 会社が子会社を取得する場合 |
代表取締役の異動 | 会社の代表取締役が変更になる場合 |
株主総会において決議事項が決議された場合 | 株主総会で決議事項が決定した場合 |
定時株主総会前に有価証券報告書を提出した場合で、有価証券報告書に記載した定時株主総会の決議事項が修正または否決された場合 | 定時株主総会前に有価証券報告書を提出した場合で、その内容が変更になった場合 |
財務諸表監査、内部統制監査を行う公認会計士等の異動もしくは異動の決定 | 監査を行う公認会計士等が変更になる場合 |
破産手続開始の申し立て等 | 会社が破産手続開始の申し立て等を受けた場合 |
重要な取立不能又は取立遅延のおそれが生じた場合 | 会社の債権回収が困難になった場合 |
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象の発生 | 会社の財務状況に大きな影響を与える事象が発生した場合 |
株主との間で、当該株主の株主総会での議決権行使や会社の取締役会の決議事項等について、所定の取り決めを行った場合 | 株主との間で、議決権行使や取締役会の決議事項に関する取り決めが行われた場合 |
株主(完全親会社を除き、大量保有報告書を提出した会社に限る)との間で、当該株主による会社の株式の取得・処分、保有割合等について所定の取り決めを行った場合 | 株主との間で、株式の取得・処分、保有割合に関する取り決めが行われた場合 |
重要な財務上の特約を行った場合等(重要な内容の変更があった場合を含む) | 会社が重要な財務上の特約を締結した場合 |
上場時ファイナンスのために、二号の四様式の有価証券届出書(以下「届出書」)を提出した会社について、届出書提出日後上場日の前日までに、当該届出書の第四部(株式公開情報)に、新たに記載すべき事項が発生した場合、もしくは記載内容に変更が生じた場合 | 上場時に提出した届出書の内容に変更があった場合 |
連結子会社に係る重要な災害の発生等 | 連結子会社に重要な災害が発生した場合 |
連結子会社に対する訴訟の提起または訴訟の解決 | 連結子会社に対する訴訟が提起または解決した場合 |
連結子会社の株式交換、株式移転、吸収分割、新設分割、吸収合併、新設合併、事業の譲渡・譲受けの決定 | 連結子会社が株式交換、株式移転、吸収分割、新設分割、吸収合併、新設合併、事業の譲渡・譲受けを行う場合 |
連結子会社による子会社の取得 | 連結子会社が子会社を取得する場合 |
連結子会社に係る破産手続開始の申立て等 | 連結子会社が破産手続開始の申し立て等を受けた場合 |
連結子会社に重要な取立不能又は取立遅延のおそれが生じた場合 | 連結子会社の債権回収が困難になった場合 |
連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象の発生 | 連結会社の財務状況に大きな影響を与える事象が発生した場合 |
連結子会社が重要な財務上の特約を行った場合等(重要な内容の変更があった場合を含む) | 連結子会社が重要な財務上の特約を締結した場合 |
臨時報告書の提出義務
臨時報告書の提出義務は、金融商品取引法で定められている。同法では、有価証券報告書を提出しなければならない会社が、一定の事由に該当した場合に、臨時報告書の提出を義務付けている。
具体的には、発行する有価証券の募集又は売出しが外国において行われるとき、その他公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める場合に該当する。
臨時報告書の提出は、遅滞なく行う必要がある。
提出期限 | 説明 |
---|---|
遅滞なく | 重要な事実が発生した場合、速やかに提出する必要がある |
臨時報告書の提出先
臨時報告書の提出先は、内閣総理大臣である。
提出された臨時報告書は、金融庁が運営する電子開示システムであるEDINETで公開され、誰でも閲覧することができる。
EDINETでは、臨時報告書以外にも、有価証券報告書、半期報告書などの開示書類も閲覧することができる。
閲覧方法 | 説明 |
---|---|
EDINET | 金融庁が運営する電子開示システムで閲覧可能 |
まとめ
臨時報告書は、有価証券報告書を提出しなければならない会社が、一定の事由に該当した場合に、その内容を記載して内閣総理大臣に提出する報告書である。
臨時報告書の提出は、投資者保護のために必要かつ適当なものであり、遅滞なく行う必要がある。
提出された臨時報告書は、EDINETで公開され、誰でも閲覧することができる。
2. 臨時報告書の特徴
適時性
臨時報告書は、有価証券報告書や半期報告書などの定期的な開示資料と異なり、投資者保護のために開示することが適切である事象が発生した場合に提出する適時性を重視した開示資料である。
つまり、臨時報告書は、会社の重要な情報が変化した場合に、速やかに投資者に知らせるための手段として用いられる。
これは、投資者が最新の情報を基に投資判断を行うことができるようにするためであり、市場の透明性を高める効果もある。
強制力
臨時報告書は、金融商品取引法に基づいて提出が義務付けられているため、強い強制力を持つ。
そのため、会社は、臨時報告書の提出義務を無視することはできない。
臨時報告書の提出義務を怠ると、罰則が科される可能性もある。
開示事項
臨時報告書に記載すべき事項は、企業内容等の開示に関する内閣府令で定められている。
同令では、臨時報告書の提出事由ごとに、開示すべき事項が具体的に列挙されている。
例えば、M&Aによる会社合併の場合には、合併の相手先、合併の目的、合併比率などが開示される。
項目 | 説明 |
---|---|
合併等の組織再編行為 | 合併の相手先、合併の目的、合併比率などが開示される |
重要な災害の発生 | 災害の内容、災害による損害、災害からの復旧計画などが開示される |
主要株主の異動 | 異動前の主要株主、異動後の主要株主、異動の理由、異動による会社の経営への影響などが開示される |
まとめ
臨時報告書は、適時性と強制力を持ち、投資者保護のために必要かつ適当な情報を適時に開示する役割を担っている。
臨時報告書に記載すべき事項は、企業内容等の開示に関する内閣府令で定められており、提出義務を怠ると罰則が科される可能性もある。
臨時報告書は、投資判断を行う上で重要な情報源となるため、投資家は、臨時報告書の内容をしっかりと確認することが重要である。
3. 臨時報告書の重要性
投資者保護
臨時報告書は、投資者保護の観点から非常に重要である。
臨時報告書によって、投資者は、会社の重要な情報を適時に知ることができる。
これにより、投資者は、最新の情報を基に投資判断を行うことができ、不当な損失を回避することができる。
市場の透明性
臨時報告書は、市場の透明性を高める役割も担っている。
臨時報告書によって、会社の重要な情報が広く公開されることで、市場参加者は、会社の状況をより正確に把握することができる。
これにより、市場の効率性が高まり、健全な市場の発展に貢献する。
企業のガバナンス
臨時報告書は、企業のガバナンスを強化する役割も担っている。
臨時報告書によって、会社は、投資者に対して、透明性と説明責任を果たすことを求められる。
これにより、会社は、より責任ある経営を行うことを促される。
まとめ
臨時報告書は、投資者保護、市場の透明性、企業のガバナンスの観点から非常に重要である。
臨時報告書は、投資判断を行う上で重要な情報源となるため、投資家は、臨時報告書の内容をしっかりと確認することが重要である。
また、企業は、臨時報告書を適切に作成・提出することで、投資者からの信頼を高め、健全な企業活動を維持することができる。
4. 臨時報告書の例
M&Aによる会社合併
M&Aによる会社合併の場合、臨時報告書には、合併の相手先、合併の目的、合併比率などが記載される。
例えば、A社がB社を吸収合併する場合、臨時報告書には、A社とB社の合併契約の内容、合併後の会社の名称、合併後の会社の事業内容などが記載される。
また、合併によってA社の株主がB社の株主になる場合、その際の株式交換比率なども記載される。
項目 | 説明 |
---|---|
合併の相手先 | 合併を行う会社の名称 |
合併の目的 | 合併を行う目的 |
合併比率 | 合併後の会社の株式比率 |
重要な災害の発生
重要な災害が発生した場合、臨時報告書には、災害の内容、災害による損害、災害からの復旧計画などが記載される。
例えば、工場火災が発生した場合、臨時報告書には、火災の原因、火災による損害額、火災による操業停止期間、復旧計画などが記載される。
また、災害によって会社の業績に大きな影響が出ることが予想される場合、その影響についても記載される。
項目 | 説明 |
---|---|
災害の内容 | 発生した災害の種類 |
災害による損害 | 災害によって発生した損害額 |
災害からの復旧計画 | 災害からの復旧計画 |
主要株主の異動
主要株主の異動があった場合、臨時報告書には、異動前の主要株主、異動後の主要株主、異動の理由、異動による会社の経営への影響などが記載される。
例えば、A社の筆頭株主がB社からC社に変わった場合、臨時報告書には、B社とC社の会社概要、C社がA社の株式を取得した目的、C社がA社の経営に与える影響などが記載される。
また、主要株主の異動によって会社の経営方針が変わる可能性がある場合、その可能性についても記載される。
項目 | 説明 |
---|---|
異動前の主要株主 | 異動前の主要株主の名称 |
異動後の主要株主 | 異動後の主要株主の名称 |
異動の理由 | 主要株主が変更になった理由 |
異動による会社の経営への影響 | 主要株主の変更が会社の経営に与える影響 |
まとめ
臨時報告書は、会社の重要な情報が変化した場合に、投資者に知らせるための手段として用いられる。
臨時報告書には、M&Aによる会社合併、重要な災害の発生、主要株主の異動など、様々な事象に関する情報が記載される。
投資家は、臨時報告書の内容をしっかりと確認することで、会社の状況をより正確に把握することができる。
5. 臨時報告書の作成手順
提出事由の確認
臨時報告書の作成手順は、まず、臨時報告書の提出事由に該当するかどうかを確認することから始まる。
臨時報告書の提出事由は、企業内容等の開示に関する内閣府令で定められており、非常に多くの項目がある。
そのため、臨時報告書の提出が必要かどうかを判断するためには、同令をよく確認する必要がある。
開示事項の決定
提出事由に該当する場合、次に、臨時報告書に記載すべき事項を決定する。
臨時報告書に記載すべき事項は、提出事由ごとに、企業内容等の開示に関する内閣府令で定められている。
同令をよく確認し、必要な情報を漏れなく記載する必要がある。
資料の作成
開示事項を決定したら、臨時報告書を作成する。
臨時報告書は、内閣府令で定められた様式に従って作成する必要がある。
また、臨時報告書には、会社名、提出年月日、提出事由、開示事項などが記載される。
提出
臨時報告書を作成したら、内閣総理大臣に提出する。
臨時報告書の提出は、EDINETを通じて行う。
EDINETに臨時報告書を登録すると、金融庁が公開し、誰でも閲覧することができる。
6. 臨時報告書と決算報告書の違い
開示の目的
臨時報告書と決算報告書は、どちらも会社の情報を投資者に開示するための書類であるが、開示の目的が異なる。
決算報告書は、会社の業績を報告するための書類であり、投資者に会社の財務状況を把握させることを目的としている。
一方、臨時報告書は、会社の重要な情報が変化した場合に、投資者に速やかに知らせるための書類であり、投資判断を支援することを目的としている。
項目 | 臨時報告書 | 決算報告書 |
---|---|---|
開示の目的 | 投資判断を支援 | 会社の業績を報告 |
開示のタイミング | 重要な事実が発生した場合に速やかに提出 | 決算期末後に提出 |
開示内容 | 投資判断に影響を与える可能性のある情報 | 会社の財務状況に関する情報 |
開示のタイミング
決算報告書は、決算期末後に提出される定期的な開示書類である。
一方、臨時報告書は、決算期末を待たずに、会社の重要な情報が変化した場合に、速やかに提出される。
そのため、臨時報告書は、決算報告書よりも、よりタイムリーな情報提供を行うための書類と言える。
開示内容
決算報告書には、会社の財務状況に関する情報が詳細に記載される。
一方、臨時報告書には、会社の重要な情報が変化した場合に、投資判断に影響を与える可能性のある情報が記載される。
そのため、臨時報告書の内容は、決算報告書の内容よりも、より限定的であることが多い。
まとめ
臨時報告書と決算報告書は、どちらも会社の情報を投資者に開示するための書類であるが、開示の目的、タイミング、内容が異なる。
決算報告書は、会社の業績を報告するための定期的な開示書類であり、臨時報告書は、会社の重要な情報が変化した場合に、投資者に速やかに知らせるための書類である。
投資家は、臨時報告書と決算報告書の内容をしっかりと確認することで、会社の状況をより正確に把握することができる。
参考文献
・臨時報告書(りんじほうこくしょ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・臨時報告書の提出事由q&A~頻出事例と実務対応~ 第1回 …
・わかりやすい用語集 解説:臨時報告書(りんじほうこくしょ …
・【臨時報告書とは】‐会計・Ipo用語集 | Cfo Library
・臨時報告書とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・「臨時計算書類の作成基準について」 | 日本公認会計士協会
・臨時報告制度の法的知識と実務上の留意点 – 株式会社インソース
・臨時報告書|M&A用語集 – M&A・事業承継ならマクサス …
・PDF 事務局説明資料(情報開示の頻度・タイミング) – 金融庁