投下資本利益率とは?経済用語について説明

投下資本利益率の指標
指標名 計算式 意味
ROIC 税引後営業利益 ÷ 投下資本 投下資本に対する利益率
ROE 当期純利益 ÷ 自己資本 自己資本に対する利益率
ROA 当期純利益 ÷ 総資産 総資産に対する利益率
WACC 有利子負債コスト × 有利子負債比率 + 株主資本コスト × 株主資本比率 加重平均資本コスト

1. 投下資本利益率とは何か

要約

ROICとは何か?

ROIC(ロイック)とは、Return on Invested Capitalの略称で、日本語では投下資本利益率と呼ばれます。企業が投下した資本から得られた利益の割合を示す経済指標です。企業における主な資本とは、営業利益などの自己資本や、銀行からの借入や株主からの他人資本のこと。これらの資金を事業活動へ投入して本業利益を生み出します。ROICは、投入したこれらの資金をどれほど有効活用できているかを測る指標なのです。

ROICは、自己資本だけでなく負債も含めて評価するため、企業の総合的な収益性を判断する基準として適しています。

ROICは、企業が投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。例えば、1

ROICは、企業の収益性を測る物差しとして使われます。自己資本利益率(ROE)は自己資本に対する利益率を示すのに対し、ROICは自己資本に負債も含めて評価するため、投資家が企業の総合的な競争力や稼ぐ力を判断するのに適しているとされます。企業は事業単位でROICを算出し、低採算だと評価した場合には撤退や縮小に踏み切る判断基準として活用します。一つの目安として7%が意識されています。

投下資本の求め方
資金調達サイド 有利子負債 + 株主資本
資金運用サイド 運転資本 + 固定資産

投下資本の求め方

投下資本を求める方法は、資金調達側と資金運用側のどちらに着目するかによって異なります。

資金調達サイドに着目する場合、投下資本は有利子負債株主資本の合計で計算されます。

資金運用サイドに着目する場合、投下資本は運転資本固定資産の合計で計算されます。運転資本は、売上債権+棚卸資産-仕入債務で計算されます。

投下資本は、企業が事業活動を行うために必要な資金の総額を表す指標です。ROICを計算する際には、投下資本の算出方法を明確にすることが重要です。

ROICが注目されるようになった背景

2014年に発表された「伊藤レポート」を契機にPL(損益計算書)重視の経営が見直され、多くの企業でROE(自己資本利益率)の向上に取り組み始めました。

投資家が企業に対して「利益額」ではなく「利益率」の向上を求めるようになり、ROICが注目されました。ROICを見ると、その企業が投入した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げたかを把握できます。

投資に値する企業かを測る指標として、多くの投資家がROICを参考にしています。

企業のグループ化やグローバル化、それにともなうポートフォリオ経営の増加なども、ROICが注目されるようになったことが理由です。ポートフォリオ経営では、各事業の収益性や成長の見込みを詳細に分析する必要があります。「ROE(Return on Equity:自己資本利益率)」も利益率の指標として用いられてきたものの、ROEでは事業ごとに自己資本を算出しなければなりません。そこで投下資本を細かく区別しないROICが浸透していったのです。

まとめ

ROICは、企業が投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

ROICは、自己資本だけでなく負債も含めて評価するため、企業の総合的な収益性を判断する基準として適しています。

ROICは、投資家が企業の成長性や収益性をより正確に判断するための材料になるのです。

ROICは、企業のグループ化やグローバル化、それにともなうポートフォリオ経営の増加などによって注目されるようになりました。

2. 投下資本利益率の重要性とは

要約

ROIC経営とは

ROIC経営とは、経営戦略にROICを主要な指標として活用する経営手法です。企業の経営状態を評価するためにROICを用います。

また複数の事業のROICを比較して付加価値の高い事業を特定し、事業の再編成や資本分配などを判断する際にもROICを活用できるのです。ROICが高いほど費用対効果に優れており、持続性が高い事業といえます。

一般的に望ましいといわれているROICの数値は7%以上。7%未満の事業は赤字に陥るリスクが高いため、改善の必要があります。

ROIC経営は、企業が持続的に成長していくために不可欠な考え方です。

ROIC経営のメリット
メリット 説明
事業セグメント別管理 事業単位で資本運用を管理できる
収益効率の把握 収益の効率性を正確に把握できる
資金調達の容易化 資金調達が容易になる

ROIC導入のメリット

ROIC導入のメリットは、事業セグメント(事業単位)で資本運用を管理できること、収益の効率性を正確に把握できること、資金調達が容易になることなどがあります。

ROICは、ROEやROAよりも正確な利益率を算出できる分、計算式が複雑です。「税引後の営業利益÷投下資本×100」で計算し、各項目の算出に手間がかかります。

ROICの有効性は、業界や企業の状況に大きく左右されます。

ROICは、企業の成長に欠かせない指標として、多くの企業が導入しています。

ROIC導入の注意点

ROICを上手に利用するポイントは、評価期間を数年、つまり中期に設定することです。

ROIC導入後は、つねにROICがWACC(Weighted Average Cost ofCapital:加重平均資本コスト)を超えているかを確認すべきです。

ROICは経営力や事業の収益力を正確に評価し、企業価値をさらに高めていくための指標です。

ROICを最大限に活用するには、ROICの数値だけで事業の価値を判断してはいけません。各事業の成長フェーズ、売上額や利益額、戦略、WACCとの比率もふまえたうえでROICを評価すべきです。

ROIC導入の注意点
注意点 説明
評価期間 中期に設定する
WACCとの比較 ROICがWACCを上回っているか確認する
総合的な評価 ROICだけでなく、他の指標も考慮する

まとめ

ROICは、企業が投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

ROICは、自己資本だけでなく負債も含めて評価するため、企業の総合的な収益性を判断する基準として適しています。

ROICは、投資家が企業の成長性や収益性をより正確に判断するための材料になるのです。

ROICは、企業のグループ化やグローバル化、それにともなうポートフォリオ経営の増加などによって注目されるようになりました。

3. 投下資本利益率の計算方法を理解しよう

要約

ROICの計算式

ROICは、次の計算式で求めます。

ROIC(%)=税引後の営業利益÷投下資本×100

例えば1

ROICは、企業が投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

投下資本の求め方

投下資本を求める方法は、資金調達側と資金運用側のどちらに着目するかによって異なります。

資金調達サイドに着目する場合、投下資本は有利子負債株主資本の合計で計算されます。

資金運用サイドに着目する場合、投下資本は運転資本固定資産の合計で計算されます。運転資本は、売上債権+棚卸資産-仕入債務で計算されます。

投下資本は、企業が事業活動を行うために必要な資金の総額を表す指標です。ROICを計算する際には、投下資本の算出方法を明確にすることが重要です。

投下資本の求め方
資金調達サイド 有利子負債 + 株主資本
資金運用サイド 運転資本 + 固定資産

ROICの計算例

ROICの計算例として、以下のケースを考えてみましょう。

税引後営業利益:1億円

投下資本:5億円

ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本 × 100 = 1億円 ÷ 5億円 × 100 = 20%

まとめ

ROICは、税引後の営業利益を投下資本で割って計算します。

投下資本は、資金調達サイドと資金運用サイドのどちらに着目するかによって計算方法が異なります。

ROICは、企業が投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

ROICを計算する際には、投下資本の算出方法を明確にすることが重要です。

4. 投下資本利益率と他の利益率の違い

要約

ROICとROEの違い

ROE(自己資本利益率)は、当期の出資に対してどれだけ利益を出したかを示す指標で、投資目線で評価する際に用いられます。ROICとの違いは、計算に「当期純利益」や「有利子負債」を用いる点です。

ROEは「当期純利益÷自己資本×100」で求めます。

ROEの自己資本は投下資本から有利子負債を差し引いたもの、当期純利益は管理コストや税金などを差し引いた最終的な利益です。

ROEの目安は5%以上であるものの、自社株買いで見かけの数字を操作できるため、信頼性がより高いのはROICだといわれています。

ROICとROAの違い

ROA(総資産利益率)は企業が保有するすべての資産から得た利益率を示す指標のこと。ROICとの違いは「総資本」と「当期純利益」を用いて計算する点です。

ROAは「当期純利益÷総資産×100」で求めます。

ROAの当期純利益には本業以外で得た利益も含み、総資産には事業とは直接関係ない資産も計上。本業以外の不動産収入や投資利益を得るとROAの数値は上がり、現預金などを多く保有していれば数値が下がります。

そのためROAは実際の経営状況を正確に反映できない可能性があるのです。

ROIC、ROE、ROAの比較

ROIC、ROE、ROAはそれぞれ異なる視点から企業の収益性を評価する指標です。

ROICは、投下資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

ROEは、自己資本に対してどれだけ利益を上げているのかを示す指標です。

ROAは、総資産に対してどれだけ利益を上げているのかを示す指標です。

ROIC、ROE、ROAの比較
指標 計算式 意味
ROIC 税引後営業利益 ÷ 投下資本 投下資本に対する利益率
ROE 当期純利益 ÷ 自己資本 自己資本に対する利益率
ROA 当期純利益 ÷ 総資産 総資産に対する利益率

まとめ

ROIC、ROE、ROAはそれぞれ異なる視点から企業の収益性を評価する指標です。

ROICは、投下資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているのかを示す指標です。

ROEは、自己資本に対してどれだけ利益を上げているのかを示す指標です。

ROAは、総資産に対してどれだけ利益を上げているのかを示す指標です。

5. 投下資本利益率の業界別比較

要約

自動車業界

自動車業界のROICの業界平均は10.6%です。

大手企業の中では、SUBARUの数値が高く、日産の数値が低めですが、基本的にはどの企業にもあまり大きな差はありません。

自動車業界は、製造業の中でも比較的ROICが高い傾向にあります。

これは、自動車業界が、高い技術力とブランド力を持つ企業が多く、競争が激しい業界であるためと考えられます。

業界別ROIC平均値
業界 ROIC平均値
自動車 10.6%
精密・電機・機械 8.4%
百貨店 3.2%
コンビニ 5.1%
情報通信 10.5%

精密・電機・機械業界

精密・電機・機械業界のROICの平均は8.4%です。

しかし、一番数値が高いキーエンスが16.42%なのに対して、一番数値が低い三菱重工が3.02%と、数値の幅が広い傾向にあります。

精密・電機・機械業界は、自動車業界と同様に、高い技術力とブランド力を持つ企業が多く、競争が激しい業界です。

しかし、業界内での競争が激しいため、ROICの数値にばらつきが見られると考えられます。

百貨店業界

百貨店のROICの業界平均は3.2%です。

自動車業界や精密・電機・機械業界と比較すると、かなり数値が低めの印象になります。

百貨店業界は、近年、インターネット通販の台頭などによって、厳しい経営環境に置かれています。

そのため、ROICの数値が低くなっていると考えられます。

まとめ

ROICは、業界によって大きく異なる指標です。

自動車業界や精密・電機・機械業界は、比較的ROICが高い傾向にあります。

百貨店業界は、近年、厳しい経営環境に置かれているため、ROICの数値が低くなっています。

ROICは、企業の収益性を評価する上で重要な指標ですが、業界によって比較することが重要です。

6. 投下資本利益率の改善方法とは

要約

ROIC改善のための施策

ROICを改善するためには、売上高営業利益率の向上と投下資本回転率の向上という2つの側面から取り組む必要があります。

売上高営業利益率の向上には、売上高の増加、売上原価の削減、販売費および一般管理費の削減などが挙げられます。

投下資本回転率の向上には、運転資本回転率の向上と固定資産回転率の向上などが挙げられます。

ROICを改善するためには、これらの施策を組み合わせることが重要です。

ROIC改善のための施策
改善項目 説明
売上高営業利益率 売上高の増加、売上原価の削減、販売費および一般管理費の削減
投下資本回転率 運転資本回転率の向上、固定資産回転率の向上

ROIC改善のための具体的な取り組み

ROICを改善するための具体的な取り組みとしては、以下のものが挙げられます。

無駄なコストの削減:事業の効率化を進め、無駄なコストを削減することで、売上高営業利益率を向上させることができます。

在庫管理の改善:在庫管理を改善することで、運転資本回転率を向上させることができます。

設備投資の効率化:設備投資の効率化を進めることで、固定資産回転率を向上させることができます。

ROIC改善のための具体的な取り組み
取り組み 説明
無駄なコストの削減 事業の効率化を進め、無駄なコストを削減
在庫管理の改善 在庫管理を改善し、運転資本回転率を向上
設備投資の効率化 設備投資の効率化を進め、固定資産回転率を向上

ROIC改善のための組織体制

ROICを改善するためには、組織全体でROICを意識した経営に取り組む必要があります。

そのためには、ROICに関する知識を共有し、各部門がROICの改善目標を理解することが重要です。

また、ROICの改善状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善策を検討していく必要があります。

ROICを改善するためには、組織全体で一体となって取り組むことが重要です。

まとめ

ROICを改善するためには、売上高営業利益率の向上と投下資本回転率の向上という2つの側面から取り組む必要があります。

ROICを改善するための具体的な取り組みとしては、無駄なコストの削減、在庫管理の改善、設備投資の効率化などが挙げられます。

ROICを改善するためには、組織全体でROICを意識した経営に取り組む必要があります。

ROICは、企業の収益性を評価する上で重要な指標ですが、ROICを改善するためには、継続的な努力が必要です。

参考文献

ROICとは?計算式は?ROE・ROAとの違いは? – freee税理士検索

ROIC(投下資本利益率)とは|財務・会計用語集|iFinance

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