項目 | 内容 |
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定義 | 債務(デット)と株式(エクイティ)を交換する金融手法 |
目的 | 債務超過の解消、財務体質の改善 |
種類 | 新株払込方式、現物出資方式 |
メリット | 債務の削減、支払利息負担の軽減、自己資本の増強、経営への参画、債権放棄ではない |
デメリット | 経営への干渉、増税リスク、債務消滅益の課税、回収順位の劣後、回収不能リスク、株式売却益獲得の不確実性 |
会計処理 | 債務者側は特別な仕訳は発生しない、債権者側は株式の時価評価を実施 |
税務上の取り扱い | 適格現物出資、非適格現物出資 |
市場の動向 | 近年注目されている、企業再生やリストラクチャリングのニーズが高まっている、課題として時価評価の難しさ、経営への干渉がある |
1. デットエクイティスワップとは
デットエクイティスワップとは何か?
デットエクイティスワップ(DES)とは、経営不振や過剰債務に陥っている企業に対し、債務(デット)と株式(エクイティ)を交換することで、その企業の再生を図る仕組みのことです。簡単に表現するなら「債務の株式化」です。例えば、債務者が債権の一部を現物出資することで株式化をする方法がとられます。DESを活用することにより、債務を減少させて資本が増加することになるので、金融機関などの借り入れの返済ができない状況において、有効な手段と考えられています。
具体例として、ある会社が金融機関より5
会社は銀行に借入金5
DESは、企業が経営不振に陥った際に、債務超過を解消し、財務体質を改善するために用いられる手法です。企業再生ファンドや銀行はもちろん、事業承継や相続対策として中小企業が自ら実施するケースもあります。
デットエクイティスワップの目的
デットエクイティスワップの目的は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、債務超過の解消です。企業が債務超過に陥ると、新たな融資を受けにくくなったり、取引先から信用を失ったりするなど、事業活動に大きな支障をきたします。デットエクイティスワップによって債務を株式に転換することで、債務超過を解消し、事業の継続を可能にすることができます。
2つ目は、財務体質の改善です。デットエクイティスワップによって、返済義務のある借入金を返済義務のない資本に転換することで、財務体質を改善することができます。これにより、企業の信用力が高まり、新たな融資を受けやすくなったり、取引先との関係が改善されたりするなどのメリットが期待できます。
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングの一環として利用されることが多く、企業が倒産を避けるための手段としても用いられます。また、このプロセスは、企業の財務状況を健全化することで、長期的なビジネスの持続可能性を高める効果が期待されます。
目的 | 内容 |
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債務超過の解消 | 新たな融資を受けにくくなる、取引先から信用を失うなどの問題を解決 |
財務体質の改善 | 返済義務のある借入金を返済義務のない資本に転換することで、財務体質を改善 |
デットエクイティスワップの種類
デットエクイティスワップには、大きく分けて2つの種類があります。
1つ目は、新株払込方式です。これは、会社が新株を発行し、その発行によって得られた資金で債務を返済する方法です。この方法では、債権者は現金を受け取る代わりに、会社の株式を取得することになります。
2つ目は、現物出資方式です。これは、債権者が保有している債権を会社に現物出資し、その債権と引き換えに会社の株式を取得する方法です。この方法では、現金の移動は発生せず、帳簿上の操作のみで手続きが完了します。
どちらの方法も、最終的には債務が株式に転換され、会社の財務体質が改善されるという点では同じです。しかし、手続きや税務上の取り扱いなどが異なるため、それぞれのケースに適した方法を選択する必要があります。
種類 | 内容 |
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新株払込方式 | 会社が新株を発行し、その発行によって得られた資金で債務を返済 |
現物出資方式 | 債権者が保有している債権を会社に現物出資し、その債権と引き換えに会社の株式を取得 |
まとめ
デットエクイティスワップは、経営不振に陥った企業が債務を減らし、財務体質を改善するために用いられる手法です。債務を株式に転換することで、債務超過を解消したり、自己資本比率を高めたりすることができます。
デットエクイティスワップには、新株払込方式と現物出資方式の2つの種類があります。新株払込方式は、会社が新株を発行し、その発行によって得られた資金で債務を返済する方法です。現物出資方式は、債権者が保有している債権を会社に現物出資し、その債権と引き換えに会社の株式を取得する方法です。
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングの一環として利用されることが多く、企業が倒産を避けるための手段としても用いられます。
デットエクイティスワップは、企業にとって有効な手段となる一方で、経営の自由度が制限されたり、増税のリスクがあったりなど、デメリットも存在します。そのため、デットエクイティスワップを検討する際には、メリットとデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断する必要があります。
2. デットエクイティスワップの仕組み
デットエクイティスワップの手続き
デットエクイティスワップの手続きは、新株払込方式と現物出資方式で異なります。
新株払込方式の場合は、債権者がまず資本金の増資に応じるところから始まります。次に、その資本金を債務者に払い込み、債務者は、その払い込まれたお金で借入金等の債務の返済に充てます。
現物出資方式の場合は、現預金に動きがないため、帳簿上の操作で振り替えるだけとなります。その結果、債権者から見ると、貸付金という現物を出資することとなります。
どちらの方法も、最終的には債務が株式に転換され、会社の財務体質が改善されるという点では同じです。しかし、手続きや税務上の取り扱いなどが異なるため、それぞれのケースに適した方法を選択する必要があります。
方式 | 内容 |
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新株払込方式 | 会社が新株を発行し、その発行によって得られた資金で債務を返済 |
現物出資方式 | 債権者が保有している債権を会社に現物出資し、その債権と引き換えに会社の株式を取得 |
デットエクイティスワップの税務上の取り扱い
デットエクイティスワップの税務上の取り扱いは、適格現物出資と非適格現物出資の2つに分けられます。
適格現物出資とは、100%グループ内におけるDESを指します。この場合、債権の簿価をそのまま引き継ぐことになるため、債務消滅益は生じません。
非適格現物出資とは、100%グループ内以外のDESを指します。この場合、債権の簿価と時価の差額に対して債務消滅益が発生します。
一般的に、銀行によるDESの実行は非適格現物出資となり、債務消滅益が発生することになります。
種類 | 内容 |
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適格現物出資 | 100%グループ内におけるDES、債権の簿価をそのまま引き継ぐ |
非適格現物出資 | 100%グループ内以外のDES、債権の簿価と時価の差額に対して債務消滅益が発生 |
デットエクイティスワップの会計処理
デットエクイティスワップの会計処理は、債務者側と債権者側で異なります。
債務者側は、借入金を資本金に振り替えるだけなので、特別な仕訳は発生しません。
債権者側は、株式の時価評価を実施します。その後で、残った借方科目と貸方科目との差額を債権譲渡損として計上します。
デットエクイティスワップの会計処理は、複雑なため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
主体 | 内容 |
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債務者 | 借入金を資本金に振り替えるだけなので、特別な仕訳は発生しない |
債権者 | 株式の時価評価を実施、残った借方科目と貸方科目との差額を債権譲渡損として計上 |
まとめ
デットエクイティスワップは、債務を株式に転換することで、会社の財務体質を改善する手法です。
デットエクイティスワップには、新株払込方式と現物出資方式の2つの種類があります。
デットエクイティスワップの税務上の取り扱いは、適格現物出資と非適格現物出資の2つに分けられます。
デットエクイティスワップの会計処理は、債務者側と債権者側で異なります。
3. デットエクイティスワップの利点
債務者側のメリット
デットエクイティスワップは、債務者にとって、以下のメリットがあります。
債務の削減:返済義務のある借入金を減らすことができます。
支払利息負担の軽減:借入金に対する利息の支払いが不要になります。
自己資本の増強:借入金が資本に転換されることで、自己資本比率が向上します。
メリット | 内容 |
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債務の削減 | 返済義務のある借入金を減らすことができる |
支払利息負担の軽減 | 借入金に対する利息の支払いが不要になる |
自己資本の増強 | 借入金が資本に転換されることで、自己資本比率が向上する |
債権者側のメリット
デットエクイティスワップは、債権者にとって、以下のメリットがあります。
経営再建時の株式売却によるキャピタルゲイン:企業が再生し、株式の価値が上昇した場合、株式を売却することで利益を得ることができます。
株主として経営に参加:企業の経営に参画し、経営改善に貢献することができます。
債権放棄ではない:債権放棄と異なり、企業が再生した場合には、株式を通じて利益を得る可能性があります。
メリット | 内容 |
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経営再建時の株式売却によるキャピタルゲイン | 企業が再生し、株式の価値が上昇した場合、株式を売却することで利益を得ることができる |
株主として経営に参加 | 企業の経営に参画し、経営改善に貢献することができます |
債権放棄ではない | 債権放棄と異なり、企業が再生した場合には、株式を通じて利益を得る可能性があります |
デットエクイティスワップの総合的なメリット
デットエクイティスワップは、債務者と債権者双方にとって、メリットのある手法です。
債務者は、債務の負担を軽減し、財務体質を改善することができます。
債権者は、債権放棄による損失を回避し、企業の再生による利益を得る可能性があります。
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングを促進する効果が期待できます。
まとめ
デットエクイティスワップは、債務者と債権者双方にとって、メリットのある手法です。
債務者は、債務の負担を軽減し、財務体質を改善することができます。
債権者は、債権放棄による損失を回避し、企業の再生による利益を得る可能性があります。
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングを促進する効果が期待できます。
4. デットエクイティスワップのリスク
債務者側のリスク
デットエクイティスワップは、債務者にとって、以下のリスクがあります。
経営への干渉:債権者が株主となることで、経営への干渉が強まる可能性があります。
増税リスク:資本金が増加することで、法人税の負担が増加する可能性があります。
債務消滅益の課税:債務消滅益が発生した場合、課税される可能性があります。
リスク | 内容 |
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経営への干渉 | 債権者が株主となることで、経営への干渉が強まる可能性があります |
増税リスク | 資本金が増加することで、法人税の負担が増加する可能性があります |
債務消滅益の課税 | 債務消滅益が発生した場合、課税される可能性があります |
債権者側のリスク
デットエクイティスワップは、債権者にとって、以下のリスクがあります。
回収順位の劣後:株式は債権よりも回収順位が劣後するため、企業が倒産した場合、債権よりも回収が遅くなる可能性があります。
回収不能リスク:企業が再生せず、倒産した場合、株式の価値がゼロになる可能性があります。
株式売却益獲得の不確実性:特に未上場企業の場合、株式を売却する機会が限られるため、売却益を得ることが難しい場合があります。
リスク | 内容 |
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回収順位の劣後 | 株式は債権よりも回収順位が劣後するため、企業が倒産した場合、債権よりも回収が遅くなる可能性があります |
回収不能リスク | 企業が再生せず、倒産した場合、株式の価値がゼロになる可能性があります |
株式売却益獲得の不確実性 | 特に未上場企業の場合、株式を売却する機会が限られるため、売却益を得ることが難しい場合があります |
デットエクイティスワップの総合的なリスク
デットエクイティスワップは、債務者と債権者双方にとって、リスクのある手法です。
債務者は、経営の自由度が制限されたり、増税のリスクがあったりなど、様々なリスクを抱える可能性があります。
債権者は、回収順位が劣後したり、回収不能リスクがあったりなど、投資した資金を失う可能性があります。
デットエクイティスワップは、慎重に検討する必要がある手法です。
まとめ
デットエクイティスワップは、債務者と債権者双方にとって、リスクのある手法です。
債務者は、経営の自由度が制限されたり、増税のリスクがあったりなど、様々なリスクを抱える可能性があります。
債権者は、回収順位が劣後したり、回収不能リスクがあったりなど、投資した資金を失う可能性があります。
デットエクイティスワップは、慎重に検討する必要がある手法です。
5. デットエクイティスワップの活用事例
シャープの事例
2015年、経営難に陥っていた大手電機メーカーのシャープは、デットエクイティスワップを実行し、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行からの債務のうち、2
みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行がシャープに出資したことで、一時的に財務状況は改善されました。しかし、結果的に、デットエクイティスワップによりシャープの株価は下落しています。
シャープの事例は、デットエクイティスワップが必ずしも成功するとは限らないことを示しています。
デットエクイティスワップは、企業の財務状況を改善する効果が期待できる一方で、株価の下落など、予期せぬ影響が出る可能性もあることを認識しておく必要があります。
ランドの事例
2015年、不動産の開発を手がけるランドは、デットエクイティスワップを公表しました。リーマンショック以降、不動産業界が急激に冷え込んだ影響を受け、ランドも業績が悪化し、DESの実行を余儀なくされました。
しかし、デットエクイティスワップの結果、一時的に株価が下落したものの、その後しばらくして持ち直した事例です。
ランドの事例は、デットエクイティスワップが必ずしも株価の下落に繋がるわけではないことを示しています。
デットエクイティスワップは、企業の状況や市場の動向によって、異なる結果をもたらす可能性があります。
TIS株式会社の事例
2020年1月、TIS株式会社は、Sequent Software Inc.の株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。
Sequentの既存株主であるファンド、発行済株式の現金対価による譲受、第三者割当による新株発行の現金対価による引受けおよび同社に対するデットエクイティスワップを通じて、Sequent株式の取得を実施するとしています。
TIS株式会社の事例は、デットエクイティスワップがM&Aの一環として活用されるケースがあることを示しています。
デットエクイティスワップは、企業の買収や合併などのM&Aにおいて、資金調達手段として活用されることがあります。
まとめ
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングを促進する効果が期待できる一方で、株価の下落など、予期せぬ影響が出る可能性もあることを認識しておく必要があります。
デットエクイティスワップは、企業の状況や市場の動向によって、異なる結果をもたらす可能性があります。
デットエクイティスワップは、企業の買収や合併などのM&Aにおいて、資金調達手段として活用されることがあります。
デットエクイティスワップは、企業にとって有効な手段となる一方で、慎重に検討する必要がある手法です。
6. デットエクイティスワップ市場の動向
デットエクイティスワップ市場の現状
デットエクイティスワップは、近年、企業の再生やリストラクチャリングにおいて、注目されています。
特に、金融機関が経営不振に陥った企業に対して、債権放棄ではなく、デットエクイティスワップを選択するケースが増加しています。
これは、デットエクイティスワップが、債権者にとっても、企業の再生による利益を得る可能性があるためです。
しかし、デットエクイティスワップは、必ずしも成功するとは限らず、リスクも伴うため、慎重に検討する必要があります。
デットエクイティスワップ市場の将来展望
デットエクイティスワップ市場は、今後も成長が見込まれます。
企業の再生やリストラクチャリングのニーズが高まるにつれて、デットエクイティスワップの利用は増加すると予想されます。
また、金融機関も、デットエクイティスワップを積極的に活用することで、不良債権の発生を抑制し、企業の再生を支援していくことが期待されます。
デットエクイティスワップは、企業の財務状況を改善し、経済活動を活性化させる上で、重要な役割を果たすと考えられます。
デットエクイティスワップの課題
デットエクイティスワップは、有効な手法である一方で、いくつかの課題も存在します。
1つは、時価評価の難しさです。特に、非上場企業の場合、株式の時価を正確に評価することが難しい場合があります。
2つ目は、経営への干渉です。債権者が株主となることで、経営への干渉が強まる可能性があります。
これらの課題を克服するためには、デットエクイティスワップの制度設計や運用方法の改善が必要となります。
課題 | 内容 |
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時価評価の難しさ | 特に、非上場企業の場合、株式の時価を正確に評価することが難しい場合があります |
経営への干渉 | 債権者が株主となることで、経営への干渉が強まる可能性があります |
まとめ
デットエクイティスワップは、企業の再生やリストラクチャリングにおいて、注目されています。
デットエクイティスワップ市場は、今後も成長が見込まれます。
デットエクイティスワップは、有効な手法である一方で、いくつかの課題も存在します。
デットエクイティスワップは、企業の財務状況を改善し、経済活動を活性化させる上で、重要な役割を果たすと考えられます。
参考文献
・Des(デッドエクイティスワップ)って何?仕組みとメリット …
・Des(デットエクイティスワップ)とは?メリット・デメリット …
・デット・エクイティ・スワップ / 大和アセットマネジメント …
・デット・エクイティ・スワップ(Des)とは|金融業務用語集 …
・DES(デット・エクイティ・スワップ)とは何か|freee税理士検索
・デットエクイティスワップ(DES)とは?税務上の注意点も解説。
・デット・エクイティ・スワップ(Des)とは?そのとき株価は …
・スワップ取引とはなにか。投資におけるメリット・デメリット …
・Des(デット・エクイティ・スワップ)とは?仕組みやメリット …
・デットエクイティスワップ | 初心者でもわかりやすい金融用語 …
・M&A用語解説:Des(デッド・エクイティ・スワップ) | M&A Bank
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