財務上の特約とは?経済用語について説明

財務上の特約に関する項目
項目	内容
財務上の特約の定義	社債発行時の社債権者保護のための財務上の取り決め
財務上の特約の目的	社債権者の利益保護と発行会社の財務状況悪化時の対応
財務上の特約の例	純資産維持条項、配当制限条項、利益維持条項など
財務報告書における特約の開示	金融庁による開示義務化の方向
特約開示のメリット	投資家の投資評価の精度向上、資本市場活性化
特約開示の課題	開示内容の粒度や範囲、開示方法の検討
担保提供制限条項	発行会社が発行する当該社債以外の社債に対して担保を自由に設定しないことを約束する特約
クロス・デフォルト条項	発行会社が他の債務に担保を提供した場合、当該社債の所有者も同等の担保を提供されることを保証する特約
純資産維持条項	発行会社が一定の純資産額を維持することを義務付ける条項
社債の安全性	特約が厳しいほど安全性は高まる
社債の格付け	特約が厳しいほど格付けは高くなる
社債の利回り	安全性が高いほど利回りは低くなる
会計処理	特約に違反した場合、発行会社は修正のための会計処理を行う必要がある
監査	監査人は発行会社が特約を遵守しているかどうかを検証する
会計基準	IFRSや日本会計基準では特約に関する情報開示が求められる
特約管理	特約の内容を理解し、常に遵守状況を確認する必要がある
リスク対策	特約に違反した場合に発生する可能性のある損失や法的リスクを認識し、対策を検討する必要がある
特約管理とリスク対策の重要性	財務状況の安定化、投資家からの信頼獲得、経営安定化に不可欠

1. 財務上の特約とは

財務上の特約の定義

財務上の特約とは、社債の発行に際して、社債権者を保護するために発行会社に対して課せられた財務上の取り決めのことです。社債の中には、発行会社の財務面を契約で拘束することで、社債権者の地位を保全する規定が設けられているものがあります。これらは発行会社に不測の事態が生じた場合に、その社債権者が他の債権者と比べて不利にならないようにする為のものです。

例えば、無担保社債の場合、当該社債権者の地位を保護するために、発行会社が既に発行している他の社債や今後新たに発行する社債に対して、抵当権及びその他の担保物権の設定を制限する条項が設けられることがあります。

また、発行会社が当該社債の所有者の元利金や償還金を受け取る権利を保護するために、発行会社が発行する当該社債以外の社債に対して担保を自由に設定しないことを約束し、担保を設定する場合には、当該社債にも同等の担保を設定する特約が設けられることもあります。

さらに、発行会社が当該社債の所有者の元利金や償還金を受け取る権利を保護するために、ローンを含む国内債務に対して担保を自由に設定しないことを約束し、担保を設定する場合には、当該社債にも同等の担保を設定する特約が設けられることもあります。

財務上の特約の目的
目的	説明
社債権者の利益保護	発行会社が財務上の特約に違反した場合、社債権者は債務不履行を主張したり、担保権を行使したりすることができます。
発行会社の財務状況悪化時の対応	発行会社が財務状況の悪化を早期に認識し、適切な対策を講じることを促す効果があります。
リスク軽減と安定的な取引関係	社債権者と発行会社の双方にとって、リスクを軽減し、安定的な取引関係を構築するための重要な役割を果たしています。

財務上の特約の目的

財務上の特約は、社債権者の利益を保護し、発行会社の財務状況が悪化した場合に、社債権者が他の債権者よりも不利な立場にならないようにすることを目的としています。

具体的には、発行会社が財務上の特約に違反した場合、社債権者は、債務不履行を主張したり、担保権を行使したりすることができます。

また、財務上の特約は、発行会社が財務状況の悪化を早期に認識し、適切な対策を講じることを促す効果もあります。

このように、財務上の特約は、社債権者と発行会社の双方にとって、リスクを軽減し、安定的な取引関係を構築するための重要な役割を果たしています。

財務上の特約の種類
種類	説明
純資産維持条項	発行会社が、一定の純資産額を維持することを義務付ける条項です。
配当制限条項	発行会社が、株主への配当を制限することを義務付ける条項です。
利益維持条項	発行会社が、一定の利益水準を維持することを義務付ける条項です。

財務上の特約の例

財務上の特約には、様々な種類がありますが、代表的なものとして、以下のようなものがあります。

* 純資産維持条項: 発行会社が、一定の純資産額を維持することを義務付ける条項です。

* 配当制限条項: 発行会社が、株主への配当を制限することを義務付ける条項です。

* 利益維持条項: 発行会社が、一定の利益水準を維持することを義務付ける条項です。

まとめ

財務上の特約は、社債発行時に社債権者を保護するために設けられる重要な条項です。

発行会社の財務状況が悪化した場合に、社債権者が他の債権者よりも不利な立場にならないようにすることを目的としています。

財務上の特約には、純資産維持条項、配当制限条項、利益維持条項など、様々な種類があります。

社債投資を行う際には、財務上の特約の内容を理解し、それに基づいたリスクを評価することが重要です。

2. 財務報告書における特約の重要性

財務報告書における特約の開示

金融庁は、資本市場活性化策の一環として、銀行融資の特約条項であるコベナンツ（財務制限条項）など債務状況の開示を企業に義務付ける方向でルールの見直しを進めています。

2023年6月30日、金融庁は、有価証券報告書および有価証券届出書ならびに臨時報告書において開示すべき「重要な契約」の類型やその開示内容を具体的に明らかにする「企業内容等の開示に関する内閣府令」等※1 の改正案（以下「本改正案」）を公表しました。

本改正案では、融資の契約額や社債の発行額が、自社の純資産額の一定比率以上である場合に臨時報告書や有価証券報告書において開示することとし、この「一定比率」などについては、投資家の声を反映しながら、実務を踏まえ具体的に検討する予定だ。内容は早ければ９月中旬に公表、2024年４月以降に適用され、25年４月以降に提出される書面から対象となる。

開示ルールの変更は、投資家全体の保護を目的として行われます。社債市場では、ユニゾホールディングスの経営破綻の際には、多額債務を負った企業の社債投資家への対応が遅れがちになる点が問題として浮き彫りになり、より厳格な投資家保護措置を求める声が高まっていた。

財務上の特約開示の義務化
開示義務化の対象	開示内容
融資の契約額や社債の発行額が、自社の純資産額の一定比率以上である場合	臨時報告書や有価証券報告書において開示
一定比率	投資家の声を反映しながら、実務を踏まえ具体的に検討
適用時期	2024年4月以降に適用され、25年4月以降に提出される書面から対象となる

特約開示のメリット

コベナンツ情報の開示が進むことは、社債投資家にとって投資評価をする上で重要な情報です。

将来のハイイールド債市場の発展や社債価格の適正化など、資本市場の活性化に役立つとの見方を示した。新ルールでは社債に限らず全ての投資家が債務不履行につながる情報へのアクセスが可能となります。

新ルールは経営危機時にどれくらいの資金がデフォルトに陥るのかを事前開示させるもので、全ての投資家がこうした情報に基づき、リスク情報を踏まえて資金配分できるようになると語った。

また、企業の担保状況を知ることができれば社債権者にとっても情報提供が一歩進むことになるという。

特約開示のメリット
メリット	説明
投資評価の精度向上	社債投資家にとって投資評価をする上で重要な情報
資本市場活性化	将来のハイイールド債市場の発展や社債価格の適正化など、資本市場の活性化に役立つ
リスク情報の共有	全ての投資家が債務不履行につながる情報へのアクセスが可能となり、リスク情報を踏まえて資金配分できるようになる

特約開示の課題

特約開示の課題としては、開示内容の粒度や範囲、開示方法などが挙げられます。

開示内容が詳細すぎると、企業にとって負担が大きくなり、開示が不足すると、投資家にとって十分な情報が得られない可能性があります。

また、開示方法についても、投資家にとって分かりやすく、アクセスしやすい方法を検討する必要があります。

金融庁は、これらの課題を解決するために、投資家や企業からの意見を聞きながら、適切な開示ルールを策定していく必要があります。

特約開示の課題
課題	説明
開示内容の粒度	開示内容が詳細すぎると、企業にとって負担が大きくなり、開示が不足すると、投資家にとって十分な情報が得られない可能性があります。
開示範囲	開示範囲が狭いと、投資家にとって十分な情報が得られない可能性があります。
開示方法	投資家にとって分かりやすく、アクセスしやすい方法を検討する必要があります。

まとめ

財務上の特約は、企業の財務状況やリスクを理解するために重要な情報です。

金融庁は、投資家保護の観点から、財務上の特約に関する情報開示を強化する方向で検討を進めています。

特約開示の強化は、投資家の判断材料を増やし、資本市場の活性化に貢献すると期待されています。

しかし、開示内容の粒度や範囲、開示方法など、課題も存在するため、適切な開示ルールを策定していく必要があります。

3. 特約の種類とその内容

担保提供制限条項

担保提供制限条項は、発行会社が、当該社債の所有者の元利金や償還金を受け取る権利を保護するために、発行会社が発行する当該社債以外の社債に対して担保を自由に設定しないことを約束し、担保を設定する場合には、当該社債にも同等の担保を設定する特約です。

この条項は、発行会社が他の債権者に優先的に担保を提供することを制限することで、当該社債の所有者の権利を保護することを目的としています。

例えば、発行会社が、他の社債に担保を提供した場合、当該社債の所有者は、発行会社が破産した場合でも、他の債権者よりも優先的に債権回収を行うことができます。

担保提供制限条項は、社債の安全性向上に役立ちますが、発行会社にとっては、資金調達の自由度が制限されるというデメリットもあります。

担保提供制限条項
内容	目的
発行会社が発行する当該社債以外の社債に対して担保を自由に設定しないことを約束する特約	当該社債の所有者の権利を保護する
担保設定の制限	発行会社が他の債権者に優先的に担保を提供することを制限する
メリット	社債の安全性向上
デメリット	資金調達の自由度が制限される

クロス・デフォルト条項

クロス・デフォルト条項は、発行会社が、当該社債の所有者の元利金や償還金を受け取る権利を保護するために、ローンを含む国内債務に対して担保を自由に設定しないことを約束し、担保を設定する場合には、当該社債にも同等の担保を設定する特約です。

この条項は、発行会社が、他の債務に対して担保を提供した場合、当該社債の所有者も、同等の担保を提供されることを保証するものです。

例えば、発行会社が、他の債務に担保を提供した場合、当該社債の所有者は、発行会社が破産した場合でも、他の債権者よりも優先的に債権回収を行うことができます。

クロス・デフォルト条項は、社債の安全性向上に役立ちますが、発行会社にとっては、資金調達の自由度が制限されるというデメリットもあります。

クロス・デフォルト条項
内容	目的
発行会社が他の債務に担保を提供した場合、当該社債の所有者も同等の担保を提供されることを保証する特約	当該社債の所有者の権利を保護する
担保設定の連動	発行会社が他の債務に担保を提供した場合、当該社債の所有者も同等の担保を提供されることを保証する
メリット	社債の安全性向上
デメリット	資金調達の自由度が制限される

純資産維持条項

純資産維持条項は、発行会社が、一定の純資産額を維持することを義務付ける条項です。

この条項は、発行会社が、株主への配当や自社株買いなどで、純資産額が減少することを制限することで、社債の償還能力を確保することを目的としています。

例えば、発行会社が、純資産維持条項に違反した場合、社債権者は、債務不履行を主張したり、担保権を行使したりすることができます。

純資産維持条項は、社債の安全性向上に役立ちますが、発行会社にとっては、経営の自由度が制限されるというデメリットもあります。

純資産維持条項
内容	目的
発行会社が、一定の純資産額を維持することを義務付ける条項	社債の償還能力を確保する
純資産額の減少制限	発行会社が、株主への配当や自社株買いなどで、純資産額が減少することを制限する
メリット	社債の安全性向上
デメリット	経営の自由度が制限される

まとめ

財務上の特約には、担保提供制限条項、クロス・デフォルト条項、純資産維持条項など、様々な種類があります。

これらの条項は、社債の安全性向上に役立ちますが、発行会社にとっては、資金調達の自由度や経営の自由度が制限されるというデメリットもあります。

社債投資を行う際には、財務上の特約の内容を理解し、それに基づいたリスクを評価することが重要です。

また、発行会社は、財務上の特約を遵守することで、社債の信用力を高め、安定的な資金調達を実現することができます。

4. 特約の財務上の影響

社債の安全性

財務上の特約は、社債の安全性に大きな影響を与えます。

特約が厳しいほど、発行会社は財務状況の悪化を抑制する必要があり、社債の安全性は高まります。

逆に、特約が緩いほど、発行会社は財務状況の悪化を許容されるため、社債の安全性は低くなります。

そのため、投資家は、社債の安全性評価を行う際に、財務上の特約の内容を必ず確認する必要があります。

財務上の特約と社債の安全性
特約の厳しさ	社債の安全性
厳しい	安全性は高まる
緩い	安全性は低くなる

社債の格付け

社債の格付けは、社債の安全性評価を行う上で重要な指標です。

格付けは、社債の発行会社が、財務上の特約を遵守する能力や、債務不履行のリスクなどを総合的に評価して行われます。

財務上の特約が厳しいほど、社債の格付けは高くなり、逆に、特約が緩いほど、社債の格付けは低くなります。

そのため、投資家は、社債の格付けを確認することで、社債の安全性についてある程度の判断ができます。

財務上の特約と社債の格付け
特約の厳しさ	社債の格付け
厳しい	格付けは高くなる
緩い	格付けは低くなる

社債の利回り

社債の利回りは、社債の投資収益率を表す指標です。

社債の利回りは、社債の安全性と密接な関係があります。

社債の安全性が高いほど、利回りは低くなり、逆に、安全性低いほど、利回りは高くなります。

これは、投資家は、リスクの高い社債に投資するほど、高い利回りを期待するからです。

財務上の特約と社債の利回り
社債の安全性	社債の利回り
高い	利回りは低くなる
低い	利回りは高くなる

まとめ

財務上の特約は、社債の安全性、格付け、利回りに大きな影響を与えます。

投資家は、社債の安全性評価を行う際に、財務上の特約の内容を必ず確認する必要があります。

また、発行会社は、財務上の特約を遵守することで、社債の信用力を高め、低利で資金調達を実現することができます。

財務上の特約は、社債投資を行う上で重要な要素の一つです。

5. 特約の会計処理と監査の観点からの重要性

会計処理

財務上の特約は、発行会社の会計処理にも影響を与えます。

例えば、純資産維持条項に違反した場合、発行会社は、その違反を修正するために、会計処理を行う必要があります。

また、利益維持条項に違反した場合、発行会社は、その違反を修正するために、会計処理を行う必要があります。

このように、財務上の特約は、発行会社の会計処理に影響を与える可能性があります。

財務上の特約と会計処理
特約違反	会計処理
純資産維持条項違反	違反を修正するための会計処理が必要
利益維持条項違反	違反を修正するための会計処理が必要

監査

監査人は、発行会社の財務諸表を監査する際に、財務上の特約の内容を必ず確認します。

監査人は、発行会社が、財務上の特約を遵守しているかどうかを検証し、その結果を監査報告書に記載します。

監査人は、財務上の特約に違反している場合、その違反を指摘し、発行会社に是正を求めます。

このように、財務上の特約は、発行会社の監査にも影響を与えます。

財務上の特約と監査
監査	内容
監査人の確認	監査人は、発行会社の財務諸表を監査する際に、財務上の特約の内容を必ず確認します。
遵守状況の検証	監査人は、発行会社が、財務上の特約を遵守しているかどうかを検証し、その結果を監査報告書に記載します。
違反の指摘	監査人は、財務上の特約に違反している場合、その違反を指摘し、発行会社に是正を求めます。

会計基準

財務上の特約は、会計基準にも影響を与えます。

例えば、国際会計基準（IFRS）では、財務上の特約に関する情報を開示することが求められています。

また、日本会計基準でも、財務上の特約に関する情報を開示することが求められています。

このように、財務上の特約は、発行会社の会計処理や監査、会計基準に影響を与える可能性があります。

財務上の特約と会計基準
会計基準	開示義務
IFRS	財務上の特約に関する情報を開示することが求められています。
日本会計基準	財務上の特約に関する情報を開示することが求められています。

まとめ

財務上の特約は、発行会社の会計処理や監査、会計基準に影響を与える可能性があります。

発行会社は、財務上の特約を遵守することで、会計処理の透明性を高め、監査の効率化を図ることができます。

また、会計基準を遵守することで、投資家からの信頼を獲得することができます。

財務上の特約は、発行会社にとって、会計処理や監査、会計基準を遵守するための重要な要素の一つです。

6. 財務上の特約の管理とリスク対策

特約管理

発行会社は、財務上の特約を適切に管理する必要があります。

特約の内容を理解し、常に遵守状況を確認する必要があります。

また、特約に違反した場合には、速やかに是正措置を講じる必要があります。

特約管理は、発行会社の財務状況の安定化に不可欠です。

財務上の特約管理
管理内容	説明
特約内容の理解	特約の内容を理解し、常に遵守状況を確認する必要があります。
遵守状況の確認	特約の内容を理解し、常に遵守状況を確認する必要があります。
違反時の是正措置	特約に違反した場合には、速やかに是正措置を講じる必要があります。

リスク対策

発行会社は、財務上の特約に違反した場合のリスクを認識し、適切なリスク対策を講じる必要があります。

例えば、特約に違反した場合に発生する可能性のある損失を予測し、その損失を回避するための対策を検討する必要があります。

また、特約に違反した場合に発生する可能性のある法的リスクを認識し、そのリスクを回避するための対策を検討する必要があります。

リスク対策は、発行会社の経営安定化に不可欠です。

財務上の特約のリスク対策
リスク	対策
損失発生の可能性	特約に違反した場合に発生する可能性のある損失を予測し、その損失を回避するための対策を検討する必要があります。
法的リスク	特約に違反した場合に発生する可能性のある法的リスクを認識し、そのリスクを回避するための対策を検討する必要があります。