DCF法とは?経済用語について説明

DCF法の概要
項目 説明
DCF法 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出する手法
フリーキャッシュフロー 企業が自由に使えるお金
割引率 将来のキャッシュフローを現在価値に換算するための割合
WACC 加重平均資本コスト。株主資本コストと負債コストを加重平均して算出
残存価値 事業計画の予測期間以降のフリーキャッシュフローをまとめて計算したもの
企業価値 企業が保有する資産や将来その会社が生み出すキャッシュフローを基に、現時点での会社全体の価値を金額で表したもの
事業価値 企業が保有する事業そのものの価値を示し「事業で将来どれだけのキャッシュフローを生み出せるか」を表した金額
株式価値 企業価値から負債を引いたもの。株主に帰属する価値

1. DCF法とは何か

要約

DCF法の概要

DCF法とは、Discounted Cash Flowの略称で、日本語では割引キャッシュフロー法と呼ばれます。この方法は、企業が将来にわたって生み出すであろうキャッシュフロー(現金収入と支出の差額)を、現在に換算することで、企業の価値を求めます。このときに使う換算率を割引率といいます。割引率は、将来のキャッシュフローの不確実性やリスクを反映したものです。割引率が高ければ高いほど、将来のキャッシュフローは現在価値が低くなります。逆に、割引率が低ければ低いほど、将来のキャッシュフローは現在価値が高くなります。

DCF法は、企業の価値を調べる方法の一つです。企業の価値とは、その企業がこれから稼ぐことができるお金のことです。DCF法では、これから稼ぐお金を今のお金に変えることで、企業の価値を計算します。このときに使う数字を割引率といいます。割引率は、これから稼ぐお金がどれだけ確かなのかや、どれだけリスクがあるのかを考えたものです。割引率が大きいと、これから稼ぐお金は今のお金に変えると少なくなります。逆に、割引率が小さいと、これから稼ぐお金は今のお金に変えると多くなります。

DCF法で企業の価値を計算するには、3つのことをします。まず、これから稼ぐお金を予想するには、企業が今までやってきたことや、今やっていることを調べます。それから、他の会社や世の中のことも考えながら、これから売れるものやかかるお金や必要なものなどを考えます。このときに使うお金は、自由キャッシュフローと呼ばれるものです。自由キャッシュフローとは、仕事で入ってくるお金から必要なものに使うお金を引いたものです。自由キャッシュフローが多いと、企業は株主への配当を増額したり、自社株買いすることができます。

次に、割引率を決めるには、企業がどれだけリスクがあるかや、どれだけお金がかかるかを考えます。リスクがあると、これから稼ぐお金が予想通りにならないかもしれません。お金がかかると、企業は自分でお金を用意したり借りたりしなければなりません。割引率を決める方法には、いろいろありますが、よく使われるものは、WACCと呼ばれるものです。WACCとは、Weighted Average Cost of Capitalの略で、日本語では加重平均資本コストと呼ばれます。この方法では、企業が使っているお金の種類(自分で用意したお金や借りたお金など)とその分け方によって、それぞれのお金がかかる分を計算して平均します。

DCF法の計算手順
手順 説明
1. 将来のキャッシュフローを予測 事業計画に基づいて将来のキャッシュフローを予測する
2. 割引率を設定 企業のリスクや資本コストを考慮して割引率を設定する
3. 将来のキャッシュフローを割引 設定した割引率を用いて、将来のキャッシュフローを現在価値に換算する
4. 割引されたキャッシュフローを合計 割り引かれたキャッシュフローを合計し、企業の現在価値を算出する

DCF法の計算式

最後に、これから稼ぐお金を割引率で割って足すことで、企業の価値を計算します。このときに使う式は以下のようになります。\n\n企業価値 = ∑(t=1~n)CFt / (1 + r)^t + TV / (1 + r)^n\n\nこの式では、tは将来の年数を表し、nは予想する年数を表します。予想する年数はだいたい10年くらいですが、企業や仕事によって違います。それから、予想する年数よりも先のお金も考えるために、ターミナルバリューと呼ばれるものを足します。ターミナルバリューとは、予想する年数よりも先のお金の今の価値のことです。ターミナルバリューを求める方法には、いろいろありますが、よく使われるものは、パーペチュアルグロースモデルと呼ばれるものです。この方法では、予想する年数の最後のお金に成長率をかけて割引率から引きます。\n\nTV = CFn+1 / (r – g)\n\nこの式では、gは成長率を表します。成長率はだいたい無リスク金利や物価上昇率などを参考にします。

DCF法の計算式
説明
企業価値 = ∑(t=1~n)CFt / (1 + r)^t + TV / (1 + r)^n 企業価値は、各期のキャッシュフローを割引率で割り引いた現在価値の合計と、ターミナルバリューの現在価値の合計で算出される
TV = CFn+1 / (r – g) ターミナルバリューは、最終期のキャッシュフローを割引率から成長率を引いたもので割ることで算出される

DCF法の活用例

DCF法は、企業の評価や投資判断を行う際に利用されますが、DCF法を利用する場合の具体的なケースをいくつか紹介しますので、参考にしてください。DCF法は、企業の現在価値を算出するために使用されます。例えば、企業の売買や合併・買収の際に、DCF法を使って企業の評価額を算出し、交渉や決定の根拠としているのです。

DCF法は、投資プロジェクトの収益性を評価するためにも利用されます。将来のキャッシュフローを予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、投資の魅力度やリターンの見込みを評価しているのです。

DCF法は、株式の価値評価にも使用されます。将来の配当やキャピタルゲイン(株価上昇益)を予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、株式の公正価値を算出します。

DCF法は、プロジェクトの資金調達や財務計画の立案にも活用されます。将来のキャッシュフローの予測と現在価値への割り引きを行うことで、必要な資金や収益性の見込みを評価し、投資家や金融機関への説明資料として活用されるのです。

まとめ

DCF法は、企業の価値を評価する上で重要な手法の一つです。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業の長期的な価値を評価することができます。しかし、DCF法は、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測の正確性や割引率の設定に依存する側面があります。そのため、DCF法の結果はあくまでも参考として捉え、他の評価手法と併用して総合的に判断することが重要です。

2. DCF法の基本原則

要約

フリーキャッシュフロー

DCF法では、企業が将来生み出すと予想されるフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出します。フリーキャッシュフローとは、企業が自由に使えるお金のことです。企業は、事業活動を通じて収益を上げ、その収益から必要な費用を支払った後に、残ったお金を自由に使うことができます。この自由に使えるお金がフリーキャッシュフローです。

フリーキャッシュフローは、企業の収益力や成長力を示す重要な指標です。フリーキャッシュフローが多いほど、企業は将来にわたって安定的に収益を上げることができると考えられます。DCF法では、このフリーキャッシュフローを予測し、現在価値に割り引くことで、企業の価値を評価します。

フリーキャッシュフローは、以下の計算式で算出できます。\n\nフリーキャッシュフロー = 税引後営業利益 + 減価償却費 – 設備投資額 ± 運転資本増減額\n\nこの計算式に基づき、ある企業のフリーキャッシュフローを計算してみましょう。\n\n<企業A>\n(単位:百万円)\n\n| 年 | 売上高 | 売上原価 | 販売費および一般管理費 | 営業利益 | 法人税 | 税引後利益 | 減価償却費 | 設備投資額 | 運転資本増減額 | フリーキャッシュフロー |\n|—|—|—|—|—|—|—|—|—|—|—| \n| 1 | 100 | 60 | 20 | 20 | 8 | 12 | 5 | 10 | 2 | 5 |\n| 2 | 120 | 72 | 24 | 24 | 9.6 | 14.4 | 6 | 12 | 3 | 9.4 |\n| 3 | 140 | 84 | 28 | 28 | 11.2 | 16.8 | 7 | 14 | 4 | 10.8 |\n| 4 | 160 | 96 | 32 | 32 | 12.8 | 19.2 | 8 | 16 | 5 | 12.2 |\n| 5 | 180 | 108 | 36 | 36 | 14.4 | 21.6 | 9 | 18 | 6 | 14.6 |\n\nサンプルとして、3年後のフリーキャッシュフローを計算すると以下のようになります。\n\n(単位:百万円)\n\nフリーキャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費 – 設備投資額 ± 運転資本増減額\n= 16.8 + 7 – 14 + 4\n= 10.8\n\n上記に従い、1年~5年後までのフリーキャッシュフローを計算すると、下記表の通りとなりました。\n\n(単位:百万円)\n\n| 年 | フリーキャッシュフロー |\n|—|—| \n| 1 | 5 |\n| 2 | 9.4 |\n| 3 | 10.8 |\n| 4 | 12.2 |\n| 5 | 14.6 |\n\nフリーキャッシュフローの計算過程については、本記事では割愛します。より詳しく知りたい方は、下記の記事をご参考ください。\n\n企業価値の算出に使う「フリーキャッシュフロー」の計算式と活用方法

フリーキャッシュフローの計算式
項目 説明
フリーキャッシュフロー 税引後営業利益 + 減価償却費 – 設備投資額 ± 運転資本増減額
営業キャッシュフロー 営業活動によって生じたお金の増減
投資キャッシュフロー 設備投資や固定資産の増減・有価証券の売買等で得た現金の流れ

割引率

割引率は、将来のキャッシュフローを現在価値に換算するために用いられる数値です。割引率は、将来のキャッシュフローに含まれる不確実性やリスクを反映したものです。割引率が高いほど、将来のキャッシュフローの価値は低くなります。割引率は一般的にWACC(加重平均資本コスト)と呼ばれるものを用います。

WACCとは、企業が資金を調達する際に支払うコストの平均です。WACCは、以下の式で計算できます。\n\nWACC = (E / (D + E)) * Re + (D / (D + E)) * Rd * (1 – T)\n\nここで、\n\n* WACC:加重平均資本コスト\n* Re:株主資本コスト\n* Rd:負債コスト\n* E:株主資本\n* D:負債\n* T:法人税率\n\nこの式の意味は、以下のように説明できます。

WACCは、企業の資金調達の状況やリスク性を反映したものです。したがって、WACCを割引率として用いることで、企業や事業の実態に即した価値算定ができると言えます。

割引率の計算式
項目 説明
割引率 WACC(加重平均資本コスト)
WACC 株主資本コストと負債コストを加重平均して算出
株主資本コスト 株主が投資に対して期待する収益率
負債コスト 債権者が投資に対して期待する収益率

残存価値

残存価値(ターミナルバリュー、TV)とは、事業計画の予測期間以降のフリーキャッシュフローをまとめて計算したものです。DCF法では、予測期間以降のフリーキャッシュフローについては、企業が一定の割合で成長すると仮定して、まとめて計算する形をとります。これが残存価値です。

残存価値の求め方にも様々な方法がありますが、ここでは下記の方式をとって計算します。\n\n残存価値(TV)=(事業計画の最終年度のフリーキャッシュフロー)÷(rーg)\n\n※r=割引率。ここではWACCを用いる。\n※g=継続成長率。0%としたり、経済成長率を用いたりと様々。\n\n本記事では、事業計画の翌年度以降の成長率を0%、つまり成長しないと仮定して、残存価値を計算してみます。

残存価値の計算式
項目 説明
残存価値 (事業計画の最終年度のフリーキャッシュフロー) ÷ (rーg)
r 割引率
g 継続成長率

まとめ

DCF法は、企業の価値を評価する上で重要な手法の一つです。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業の長期的な価値を評価することができます。しかし、DCF法は、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測の正確性や割引率の設定に依存する側面があります。そのため、DCF法の結果はあくまでも参考として捉え、他の評価手法と併用して総合的に判断することが重要です。

3. DCF法のメリットとデメリット

要約

DCF法のメリット

DCF法は、将来のキャッシュフローを重視して企業の評価を行うため、事業の収益性や成長性に焦点を当てることができます。これにより、長期的な視点で企業価値を評価することが可能です。

DCF法では、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価するため、時間的な価値の変動を考慮することができます。将来のキャッシュフローを現在価値に換算することで、キャッシュフローのタイミングやリスクを反映した正確な評価が可能です。

DCF法は、キャッシュフローの予測や割引率の設定など、評価において柔軟性があります。投資家や評価者は、自身の予測や評価に基づいて適切なキャッシュフロー予測や割引率を設定することが可能です。

DCF法は、評価の過程が透明であり、結果を説明することが比較的容易です。将来のキャッシュフローの予測や割引率の選択が明示されるため、評価結果に対する理解や批判への対応がしやすくなります。

DCF法のメリット
メリット 説明
将来の収益力や成長力を評価できる 事業の収益性や成長性に焦点を当てることができる
時間的な価値の変動を考慮できる 将来のキャッシュフローを現在価値に換算することで、キャッシュフローのタイミングやリスクを反映した正確な評価が可能です
柔軟性がある 投資家や評価者は、自身の予測や評価に基づいて適切なキャッシュフロー予測や割引率を設定することが可能です
結果を説明しやすい 将来のキャッシュフローの予測や割引率の選択が明示されるため、評価結果に対する理解や批判への対応がしやすくなります

DCF法のデメリット

DCF法では将来のキャッシュフローを予測する必要がありますが、将来の経済状況や業績の不確実性が存在します。正確な予測を行うことは難しく、誤った予測が評価結果に影響を及ぼす可能性があるのは注意点です。

DCF法では割引率を設定する必要がありますが、割引率の選択は主観的な要素が含まれます。割引率の適切な設定には慎重な判断が求められ、誤った割引率の選択が評価結果に大きな影響を与える可能性があるのは注意点です。

DCF法は将来のキャッシュフローを評価するため、特に長期の予測では不確実性が高まります。経済や産業の変化、競争環境の変動など、予測期間が長くなるほど予測の正確性が低下する可能性があるのは注意点です。

DCF法は正確な情報に基づいて評価を行う必要がありますが、情報の欠如や誤差が評価結果に影響を及ぼす可能性があります。正確な財務データや将来の業績に関する情報が得られない場合、評価の信頼性が低下することがあるのは注意点です。

DCF法のデメリット
デメリット 説明
将来予測が難しい 将来の経済状況や業績の不確実性が存在します。正確な予測を行うことは難しく、誤った予測が評価結果に影響を及ぼす可能性があります
割引率の設定が難しい 割引率の適切な設定には慎重な判断が求められ、誤った割引率の選択が評価結果に大きな影響を与える可能性があります
長期の予測では不確実性が高まる 経済や産業の変化、競争環境の変動など、予測期間が長くなるほど予測の正確性が低下する可能性があります
情報の欠如や誤差が評価結果に影響を及ぼす可能性がある 正確な財務データや将来の業績に関する情報が得られない場合、評価の信頼性が低下することがあります
予測期間外の成長や収益性の評価には限定がある 企業の成長は一定期間後に鈍化する可能性があり、予測期間外の成長や収益性の評価には限定があります

DCF法の計算方法

DCF法の計算方法は以下の手順に基づいて行われます:まず、評価対象企業の将来のキャッシュフローを予測します。将来の複数の期間にわたるキャッシュフローが予測されるのが一般的です。これには、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動や財務活動によるキャッシュフローなどが含まれます。

次に、将来のキャッシュフローを現在価値に換算するための割引率を選択します。割引率は、企業のリスクや資本コストを反映し、通常はウェイトド平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital

予測された将来のキャッシュフローを、選択した割引率を用いて現在価値に割り引きます。これにより、将来のキャッシュフローが時間の経過に伴って価値が減少することを考慮する必要があるでしょう。

割り引かれたキャッシュフローを期間ごとに合計します。これにより、各期間の現在価値を算出します。各期間の現在価値を合計して、累積現在価値を算出します。これがDCF法による企業の評価額となります。

DCF法の計算手順
手順 説明
1. 将来のキャッシュフローを予測 事業計画に基づいて将来のキャッシュフローを予測する
2. 割引率を設定 企業のリスクや資本コストを考慮して割引率を設定する
3. 将来のキャッシュフローを割引 設定した割引率を用いて、将来のキャッシュフローを現在価値に換算する
4. 割引されたキャッシュフローを合計 割り引かれたキャッシュフローを合計し、企業の現在価値を算出する

まとめ

DCF法は、企業の価値を評価する上で重要な手法の一つです。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業の長期的な価値を評価することができます。しかし、DCF法は、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測の正確性や割引率の設定に依存する側面があります。そのため、DCF法の結果はあくまでも参考として捉え、他の評価手法と併用して総合的に判断することが重要です。

4. DCF法の適用分野

要約

M&A

DCF法は、企業の売買や合併・買収の際に、企業の評価額を算出し、交渉や決定の根拠として使用されます。DCF法は、企業の将来のキャッシュフローを予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、企業の価値を評価します。

M&Aでは、買収対象企業の価値を評価することが重要です。なぜなら、買収価格は、その価値に基づいて決まるからです。買収対象企業の価値を評価する方法には、DCF法の他にもマルチプル法や修正純資産法などがありますが、DCF法は最も合理的で客観的な方法と言われています。

なぜなら、DCF法は将来のキャッシュフローを割引現在価値に換算することで、買収対象企業が生み出す将来の利益を反映した価値を算出できるからです。

投資プロジェクトの評価

DCF法は、投資プロジェクトの収益性を評価するためにも利用されます。将来のキャッシュフローを予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、投資の魅力度やリターンの見込みを評価しているのです。

株式の価値評価

DCF法は、株式の価値評価にも使用されます。将来の配当やキャピタルゲイン(株価上昇益)を予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、株式の公正価値を算出します。

まとめ

DCF法は、企業の価値を評価する上で重要な手法の一つです。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業の長期的な価値を評価することができます。しかし、DCF法は、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測の正確性や割引率の設定に依存する側面があります。そのため、DCF法の結果はあくまでも参考として捉え、他の評価手法と併用して総合的に判断することが重要です。

5. DCF法と相対評価法(Comparable Company Analysis)の比較

要約

DCF法

DCF法は、企業の将来のキャッシュフローを予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、企業の価値を評価します。DCF法は、企業の将来の収益力や成長力を評価する上で有効な手法です。

DCF法は、企業の将来のキャッシュフローを予測する必要があるため、予測の正確性が評価結果に大きく影響します。また、割引率の設定も重要であり、適切な割引率を設定することが重要です。

相対評価法(Comparable Company Analysis)

相対評価法は、類似する企業の株価や収益性などの指標を参考に、評価対象企業の価値を評価する方法です。相対評価法は、DCF法と比較して、比較的簡単に評価を行うことができます。

相対評価法は、類似する企業の選定が重要であり、適切な類似企業を選定することが重要です。また、類似企業の指標をどのように評価対象企業に適用するかについても、慎重な判断が必要です。

DCF法と相対評価法の比較

DCF法と相対評価法は、それぞれメリットとデメリットがあります。DCF法は、企業の将来の収益力や成長力を評価する上で有効な手法ですが、将来予測や割引率の設定が難しいというデメリットがあります。相対評価法は、比較的簡単に評価を行うことができますが、類似企業の選定や指標の適用が難しいというデメリットがあります。

どちらの手法が優れているということはなく、評価の目的や状況に応じて適切な手法を選択する必要があります。

まとめ

DCF法は、企業の将来のキャッシュフローを予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、企業の価値を評価します。相対評価法は、類似する企業の株価や収益性などの指標を参考に、評価対象企業の価値を評価します。どちらの手法もメリットとデメリットがあり、評価の目的や状況に応じて適切な手法を選択する必要があります。

6. DCF法の具体的な事例

要約

M&AにおけるDCF法の活用

M&Aでは、買収対象企業の価値を評価することが重要です。なぜなら、買収価格は、その価値に基づいて決まるからです。買収対象企業の価値を評価する方法には、DCF法の他にもマルチプル法や修正純資産法などがありますが、DCF法は最も合理的で客観的な方法と言われています。

なぜなら、DCF法は将来のキャッシュフローを割引現在価値に換算することで、買収対象企業が生み出す将来の利益を反映した価値を算出できるからです。

例えば、A社がB社を買収しようとしています。B社の将来のキャッシュフローは以下の表のように予測されています。\n\n| 年 | キャッシュフロー |\n|—|—| \n| 1 | 10億円 |\n| 2 | 12億円 |\n| 3 | 15億円 |\n| 4 | 18億円 |\n| 5 | 20億円 |\n\nB社の割引率は10%とします。また、5年目以降は1%の成長率で永久にキャッシュフローが発生すると仮定します。この場合、B社の継続価値は以下のように計算できます。\n\n継続価値 = 20億円÷(10%―1%) = 250億円\n\nB社の割引現在価値は以下のように計算できます。\n\n1年目キャッシュフロー = 10億円÷(1+10%) = 9.09億円\n2年目キャッシュフロー = 12億円÷(1+10%)^2 = 9.92億円\n3年目キャッシュフロー = 15億円÷(1+10%)^3 = 11.26億円\n4年目キャッシュフロー = 18億円÷(1+10%)^4 = 12.29億円\n5年目キャッシュフロー = 20億円÷(1+10%)^5 = 12.39億円\n継続価値 = 250億円÷(1+10%)^5 = 154.40億円\n\n以上を合計したものがB社の割引現在価値となり、209.35億円と計算することができます。A社はこの価値を参考にして、B社に対する買収提案を行うことができます。

M&AにおけるDCF法の活用例
項目 説明
買収対象企業 B社
B社の将来のキャッシュフロー 1年目: 10億円、2年目: 12億円、3年目: 15億円、4年目: 18億円、5年目: 20億円
割引率 10%
継続成長率 1%
B社の継続価値 250億円
B社の割引現在価値 209.35億円

事業計画におけるDCF法の活用

事業計画とは、企業が将来どのような事業を展開していくかを具体的に策定することを言います。事業計画では、売上や利益だけでなく、キャッシュフローも重要な指標です。キャッシュフローは、企業が実際に手元に入るお金の流れを表します。キャッシュフローがプラスであれば、企業は自己資金で投資や返済ができますが、キャッシュフローがマイナスであれば、借入や資本増強が必要になります。

事業計画において、DCF法を使うことで、将来のキャッシュフローを割引現在価値に換算することができます。これにより、事業計画の収益性や投資効果を評価することができます。また、DCF法を使うことで、事業計画のリスクや不確実性も考慮することができます。なぜなら、DCF法では割引率にリスクプレミアムを加えることで、リスクの高い事業ほど低い価値になるからです。

例えば、C社は新規事業に投資しようとしています。新規事業の将来のキャッシュフローは以下の表のように予測されています。\n\n| 年 | キャッシュフロー |\n|—|—| \n| 1 | -50億円 |\n| 2 | -20億円 |\n| 3 | 10億円 |\n| 4 | 30億円 |\n| 5 | 50億円 |\n\n新規事業の割引率は15%とします。また、5年目以降は2%の成長率で永久にキャッシュフローが発生すると仮定します。この場合、新規事業の継続価値は以下のように計算できます。\n\n継続価値 = 50億円÷(15%―2%) = 454.55億円\n\n新規事業の割引現在価値は以下のように計算できます。\n\n1年目キャッシュフロー = -50億円÷(1+15%) = -43.48億円\n2年目キャッシュフロー = -20億円÷(1+15%)^2 = -15.11億円\n3年目キャッシュフロー = 10億円÷(1+15%)^3 = 6.38億円\n4年目キャッシュフロー = 30億円÷(1+15%)^4 = 16.32億円\n5年目キャッシュフロー = 50億円÷(1+15%)^5 = 23.28億円\n継続価値 = 454.55億円÷(1+15%)^5 = 166.67億円\n\n以上を合計したものが新規事業の割引現在価値となり、154.06億円と計算することができます。C社はこの価値を参考にして、新規事業への投資判断を行うことができます。

事業計画におけるDCF法の活用例
項目 説明
新規事業 C社の新規事業
新規事業の将来のキャッシュフロー 1年目: -50億円、2年目: -20億円、3年目: 10億円、4年目: 30億円、5年目: 50億円
割引率 15%
継続成長率 2%
新規事業の継続価値 454.55億円
新規事業の割引現在価値 154.06億円

不動産の価値評価

DCF法は、不動産の価値評価にも使用されます。将来の賃料収入や売却益を予測し、割引率を適用して現在価値に換算することで、不動産の価値を評価します。

まとめ

DCF法は、企業の価値を評価する上で重要な手法の一つです。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業の長期的な価値を評価することができます。しかし、DCF法は、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測の正確性や割引率の設定に依存する側面があります。そのため、DCF法の結果はあくまでも参考として捉え、他の評価手法と併用して総合的に判断することが重要です。

参考文献

Dcf法とは?計算方法やメリット・デメリットについて詳しく解説 | ユニヴィスグループ

DCF法とは?考え方やメリットやデメリット、計算方法を徹底解説。

【完全版】DCF法の計算手順や欠点を基礎からわかりやすく図解

DCF法 – Wikipedia

DCF法とは?メリット・デメリットや計算方法を手順別に解説|経営分析|bizocean(ビズオーシャン)ジャーナル

Dcf法をわかりやすく解説 メリット・デメリットと企業価値を計算する方法 | the Owner

Dcf法とは?企業価値の計算方法やメリット・デメリットを解説 | レバレジーズm&Aアドバイザリー

Dcf法とは?メリット・デメリットから計算方法や割引率まで詳しく解説 | M&A・事業承継の理解を深める

DCF法とは?計算方法や割引率、メリット・デメリットを詳しく解説

企業の価値算出にもちいる「DCF法」とは?概要や計算手順を徹底解説 – KnowHows(ノウハウズ)

DCF法とは?概要や計算方法、メリット・デメリットを解説|M&Aキャピタルパートナーズ

Dcf法とは? 割引現在価値とは? Waccとは? | Zeiken Links 事業承継・M&Aの知識・情報

Dcf法の基礎知識/メリット・デメリットと現在価値に換算したた企業価値評価 | キャリアコンサルタントドットネット

Dcf法とは?計算方法や割引率、メリット・デメリットをわかりやすく解説 – M&A仲介なら弁護士法人m&A総合法律事務所

企業価値評価の基礎知識 Dcf法の仕組みと計算例 | 経理・会計業務を効率化「経理プラス」

Dcf法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)|グロービス経営大学院 創造と変革のmba

dcf法をわかりやすく解説|メリットとデメリットと計算方法 | M&A・事業承継|M&A東京

Dcf法とは?その計算方法や割引率、メリット・デメリットを解説 | M&Aなら、みつきコンサルティング

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