項目 | 内容 |
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相場操縦の定義 | 株式や金融商品の価格を人為的に操作する行為 |
相場操縦の目的 | 自己の利益、特定のグループの利益 |
相場操縦の種類 | 仮装売買、馴合売買、買い上がり・売り崩し、見せ玉、風説の流布 |
相場操縦の影響 | 市場の効率性低下、投資家の信頼低下、企業価値の毀損、経営への悪影響、経済活動の停滞、金融システムの不安定化 |
相場操縦の事例 | SMBC日興証券の相場操縦事件、東京電力エナジーパートナーの相場操縦事件 |
相場操縦の規制 | 金融商品取引法(日本)、1934年証券取引所法(アメリカ)、市場濫用指令(EU) |
相場操縦の対策 | 投資家の対策、証券会社・取引所の対策、政府・規制当局の対策 |
1. 相場操縦とは
相場操縦の定義
相場操縦とは、株式やその他の金融商品の市場価格を人為的に操作する行為です。この行為は、不正な手段を用いて市場の供給と需要のバランスを意図的に変えることにより、自分や特定のグループに利益をもたらすことを目的としています。相場操縦は、市場の公正性や透明性を損なうため、多くの国で違法とされています。
たとえば、虚偽の情報を流布して投資家を誤誘導したり、仮装売買や馴合売買などの実需と無関係な取引を行って市場価格に影響を与えたりすることが含まれます。日本取引所自主規制法人では、このような行為を検出し、防止するための監視体制を設けています。
相場操縦は、市場の健全な機能を阻害し、投資家の信頼を損なうため、厳しく規制されています。
定義 | 説明 |
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相場操縦 | 株式やその他の金融商品の市場価格を人為的に操作する行為 |
目的 | 不正な手段で市場の供給と需要のバランスを意図的に変え、自分や特定のグループに利益をもたらす |
相場操縦の目的
相場操縦の目的は、主に以下の2つに分けられます。
1. 自己の利益: 株価を操作することで、保有している株式を高く売却したり、安く購入したりして利益を得る。
2. 特定のグループの利益: 特定の企業の株価を操作することで、その企業の経営権を掌握したり、企業の価値を高めたりする。
目的 | 説明 |
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自己の利益 | 株価を操作することで、保有している株式を高く売却したり、安く購入したりして利益を得る |
特定のグループの利益 | 特定の企業の株価を操作することで、その企業の経営権を掌握したり、企業の価値を高めたりする |
相場操縦の例
相場操縦には、さまざまな手口がありますが、代表的な例として以下のようなものがあります。
1. 虚偽の情報流布: 存在しない情報や根拠のない情報を流布して、投資家の判断を誤らせる。
2. 仮装売買: 実質的な取引を行わず、売買のふりをして株価を操作する。
3. 馴合売買: 複数の人間で事前に打ち合わせを行い、売買を繰り返して株価を操作する。
種類 | 説明 |
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虚偽の情報流布 | 存在しない情報や根拠のない情報を流布して、投資家の判断を誤らせる |
仮装売買 | 実質的な取引を行わず、売買のふりをして株価を操作する |
馴合売買 | 複数の人間で事前に打ち合わせを行い、売買を繰り返して株価を操作する |
まとめ
相場操縦は、市場の公正性を損なう違法行為であり、投資家の利益を不当に奪う可能性があります。
相場操縦は、さまざまな手口で行われるため、投資家は常に注意が必要です。
相場操縦の疑いがある取引には、安易に関わらないようにしましょう。
2. 相場操縦の種類
仮装売買
仮装売買とは、実質的な取引を行わず、売買のふりをして株価を操作する行為です。
同一人物が、同一のタイミングで同一の取引で、売りと買いの当事者になることを指します。
証券口座を作るときには身分証明書の提出が求められますから、同じ証券会社で仮装売買をしても、同一人物の取引だということは、すぐにバレてしまいます。しかし、複数の証券口座を持っていて、片方で売った自分の株式について、もう片方で買いを入れることは可能となります。
仮装売買は、株主としての権利移転のない取引ですので、売買の効力は生じません。
定義 | 説明 |
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仮装売買 | 実質的な取引を行わず、売買のふりをして株価を操作する行為 |
特徴 | 同一人物が、同一のタイミングで同一の取引で、売りと買いの当事者になる |
例 | 複数の証券口座を使い、片方で売った株式をもう片方で買い戻す |
馴合売買
馴合売買とは、あらかじめ複数の人間で裏で話をつけておいて、ある人が株式の売り(あるいは買い)と同時に、別の人がその株式の買い(または売り)を行うことを繰り返す行為です。
このような空虚な売買(実態としての取引のない売買)によって出来高が増大して、他の投資家に銘柄を注目させ、買いを呼び込もうとするのです。
また、こうした行為を委託したり、その受託したりすることも「馴合売買」に含まれます。つまり、他人を誘ったり、その誘いに応じたりするだけで犯罪と認定される可能性があります。
定義 | 説明 |
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馴合売買 | 複数の人間で事前に打ち合わせを行い、売買を繰り返して株価を操作する行為 |
特徴 | 実態としての取引のない売買 |
例 | ある人が株式を売ると同時に、別の人がその株式を買い、これを繰り返す |
買い上がり・売り崩し
買い上がりとは、現在の株価を上昇させる目的で、現在よりも高い価格で買い注文を大量に発注し、その間にある売り注文もすべて約定させることで、株価を引き上げながら出来高も上昇させることをいいます。
つまり、単独で行った株価と出来高の急上昇によって、ヤフーファイナンスや証券会社の「急騰ランキング」などに掲載され、取引が繁盛に行われているものと他の投資家に誤信させることによって、さらなる買いを集め、さらなる高値を付けさせる株価操縦です。
売買板の上に、指し値を最初から一定刻みに並べたり、断続的に指し値を徐々に引き上げる注文を繰り返したりする行為なども、「買い上がり」とみなされる危険性があります。
売り崩しは、買い上がりの反対で、現在の株価を下落させる目的で、現在よりも低い価格で売り注文を大量に発注し、その間にある買い注文もすべて約定させることで、株価を引き下げながら出来高も上昇させることをいいます。
種類 | 説明 |
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買い上がり | 現在の株価を上昇させる目的で、現在よりも高い価格で買い注文を大量に発注する |
売り崩し | 現在の株価を下落させる目的で、現在よりも低い価格で売り注文を大量に発注する |
まとめ
相場操縦には、さまざまな種類がありますが、いずれも市場の公正性を損なう違法行為です。
投資家は、これらの相場操縦の種類を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
特に、インターネット注文の発達により、近年では、個人投資家でも簡単に「見せ玉」ができるようになっています。相場操縦をしようという意図はなかったとしても、いくら手軽に発注をキャンセルできるからといって、むやみに繰り返すのは禁物です。
3. 相場操縦の影響
市場への影響
相場操縦は、市場の公正な価格形成を阻害し、投資家の信頼を損なうなど、さまざまな悪影響を及ぼします。
具体的には、以下のような影響が考えられます。
1. 市場の効率性低下: 相場操縦によって、本来の需給関係が歪められ、市場の効率性が低下します。
2. 投資家の信頼低下: 相場操縦が横行すると、投資家は市場を信頼できなくなり、投資意欲が減退します。
影響 | 説明 |
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市場の効率性低下 | 本来の需給関係が歪められ、市場の効率性が低下する |
投資家の信頼低下 | 相場操縦が横行すると、投資家は市場を信頼できなくなり、投資意欲が減退する |
企業への影響
相場操縦は、企業にも悪影響を及ぼします。
具体的には、以下のような影響が考えられます。
1. 企業価値の毀損: 相場操縦によって、企業の株価が不当に操作され、企業価値が毀損される可能性があります。
2. 経営への悪影響: 相場操縦によって、企業の経営が不安定になる可能性があります。
影響 | 説明 |
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企業価値の毀損 | 相場操縦によって、企業の株価が不当に操作され、企業価値が毀損される可能性がある |
経営への悪影響 | 相場操縦によって、企業の経営が不安定になる可能性がある |
経済への影響
相場操縦は、経済全体にも悪影響を及ぼします。
具体的には、以下のような影響が考えられます。
1. 経済活動の停滞: 相場操縦によって、投資意欲が減退し、経済活動が停滞する可能性があります。
2. 金融システムの不安定化: 相場操縦が横行すると、金融システムが不安定化する可能性があります。
影響 | 説明 |
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経済活動の停滞 | 相場操縦によって、投資意欲が減退し、経済活動が停滞する可能性がある |
金融システムの不安定化 | 相場操縦が横行すると、金融システムが不安定化する可能性がある |
まとめ
相場操縦は、市場、企業、経済全体に悪影響を及ぼすため、厳しく規制されています。
投資家は、相場操縦の影響を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
相場操縦は、市場の健全な発展を阻害する行為であり、投資家の利益を不当に奪う可能性があります。
4. 相場操縦の事例
SMBC日興証券の相場操縦事件
2022年5月16日、SMBC日興証券の社員らが株価の維持を目的に“相場操縦”に関与したとして、証券取引等監視委員会が強制捜査に踏み切ったという報道がありました。
SMBC日興証券は、2009年に旧日興コーディアル証券と合併し、現在では国内最大手の証券会社の一つです。
同社は、2021年4月以降、1年間で10銘柄の株式について、自社の顧客に有利なように株価を操作していた疑いがあります。
具体的には、自社の顧客が保有する株式を買い支えるために、自社で大量の買い注文を出したり、逆に売却を促すために大量の売り注文を出したりしていたとされています。
事件概要 | 説明 |
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時期 | 2022年5月16日 |
内容 | SMBC日興証券の社員らが株価の維持を目的に相場操縦に関与した疑い |
結果 | 証券取引等監視委員会による強制捜査 |
東京電力エナジーパートナーの相場操縦事件
2016年、東京電力エナジーパートナー株式会社(当時)が、卸電力取引所の一日前市場において、自社の小売料金の原価と同等の水準の価格を、売り入札価格の下限価格として設定していたことが発覚しました。
この行為は、市場相場を人為的に操作することを目的としていたとされ、証券取引等監視委員会から業務改善勧告を受けました。
東京電力エナジーパートナーは、その後、この行為を中止しましたが、この事件は、電力市場における相場操縦の危険性を示すものでした。
事件概要 | 説明 |
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時期 | 2016年 |
内容 | 東京電力エナジーパートナーが、卸電力取引所において、自社の小売料金の原価と同等の水準の価格を、売り入札価格の下限価格として設定していた |
結果 | 証券取引等監視委員会による業務改善勧告 |
その他
相場操縦は、さまざまな企業や個人によって行われてきました。
近年では、インターネットの普及により、個人投資家でも簡単に相場操縦に関わることが可能になってきています。
そのため、投資家は、相場操縦の危険性を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
まとめ
相場操縦は、市場の公正性を損なう違法行為であり、さまざまな企業や個人によって行われてきました。
投資家は、相場操縦の事例を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
相場操縦は、市場の健全な発展を阻害する行為であり、投資家の利益を不当に奪う可能性があります。
5. 相場操縦の規制
日本の相場操縦規制
日本では、金融商品取引法によって相場操縦が禁止されています。
同法では、相場操縦を以下の3つの類型に分類しています。
1. 仮装取引・馴合取引: 実質的な取引を行わず、売買のふりをして株価を操作する行為。
2. 変動操作取引: 買い注文や売り注文を大量に発注することで、株価を意図的に変動させる行為。
法律 | 説明 |
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金融商品取引法 | 相場操縦を禁止する法律 |
主な規制内容 | 仮装取引・馴合取引、変動操作取引 |
アメリカの相場操縦規制
アメリカでは、1934年証券取引所法によって相場操縦が禁止されています。
同法では、相場操縦を以下の2つの類型に分類しています。
1. 証券取引所法9条: 仮装売買・馴合売買、虚偽情報の流布など。
2. 証券取引所法10条: 相場操縦的または欺瞞的な術策を用いること。
法律 | 説明 |
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1934年証券取引所法 | 相場操縦を禁止する法律 |
主な規制内容 | 証券取引所法9条(仮装売買・馴合売買、虚偽情報の流布など)、証券取引所法10条(相場操縦的または欺瞞的な術策を用いること) |
EUの相場操縦規制
EUでは、市場濫用指令によって相場操縦が禁止されています。
同指令では、相場操縦を以下の4つの類型に分類しています。
1. 虚偽又は誤解を招く取引: 虚偽の情報に基づいた取引や、誤解を招くような取引。
2. 価格操作: 市場価格を人為的に操作する行為。
法律 | 説明 |
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市場濫用指令 | 相場操縦を禁止する法律 |
主な規制内容 | 虚偽又は誤解を招く取引、価格操作、仮装又は詐欺となる行為、虚偽又は誤解を招く情報の流布 |
まとめ
相場操縦は、世界各国で厳しく規制されています。
各国の規制は、相場操縦の定義や規制対象、罰則などが異なりますが、いずれも市場の公正性を維持し、投資家の利益を守ることを目的としています。
投資家は、各国の相場操縦規制を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
6. 相場操縦の対策
投資家の対策
投資家は、相場操縦の危険性を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
1. 情報収集: 投資を行う前に、銘柄に関する情報を十分に収集し、根拠のない情報や噂に惑わされないようにしましょう。
2. 取引の記録: 自分の取引内容を記録しておきましょう。
対策 | 説明 |
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情報収集 | 投資を行う前に、銘柄に関する情報を十分に収集し、根拠のない情報や噂に惑わされないようにする |
取引の記録 | 自分の取引内容を記録しておく |
証券会社・取引所の対策
証券会社や取引所は、相場操縦を防止するために、さまざまな対策を講じています。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
1. 監視体制の強化: 不正な取引を監視するための体制を強化し、相場操縦を早期に発見できるようにする。
2. 情報公開: 投資家に必要な情報を公開することで、透明性を高め、相場操縦を抑制する。
対策 | 説明 |
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監視体制の強化 | 不正な取引を監視するための体制を強化し、相場操縦を早期に発見できるようにする |
情報公開 | 投資家に必要な情報を公開することで、透明性を高め、相場操縦を抑制する |
政府・規制当局の対策
政府や規制当局は、相場操縦を防止するために、法律の整備や監視体制の強化など、さまざまな対策を講じています。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
1. 法令の整備: 相場操縦をより厳しく規制するための法律を整備する。
2. 監視体制の強化: 証券取引等監視委員会などの監視体制を強化し、相場操縦を早期に発見できるようにする。
対策 | 説明 |
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法令の整備 | 相場操縦をより厳しく規制するための法律を整備する |
監視体制の強化 | 証券取引等監視委員会などの監視体制を強化し、相場操縦を早期に発見できるようにする |
まとめ
相場操縦は、市場の健全な発展を阻害する行為であり、投資家の利益を不当に奪う可能性があります。
相場操縦を防止するためには、投資家、証券会社・取引所、政府・規制当局がそれぞれ役割を果たす必要があります。
投資家は、相場操縦の危険性を理解し、不正な取引に関わらないように注意する必要があります。
証券会社・取引所は、監視体制を強化し、不正な取引を早期に発見できるようにする必要があります。
参考文献
・相場操縦 | 初心者でもわかりやすい金融用語集 | マネクリ …
・相場操縦(ソウバソウジュウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・相場操縦 | 用語集 | 投資信託を学ぶ|つみたてnisa(積立nisa …
・Smbc日興証券 相場操縦事件 大手証券会社で何が |Nhk …
・弁護士が解説!どのケースが「株価操作・操縦」の罪になる …