設備投資とは?経済用語について説明

設備投資の全体像
項目	内容
定義	企業が事業を継続・拡大するために必要な設備に対して行う投資
種類	有形固定資産（土地、建物、機械など）無形固定資産（ソフトウェア、特許権など）
目的	生産能力の拡大、省力化・合理化、老朽化設備の更新、新規事業への進出、情報化など
メリット	生産性の向上、品質の向上、競争力の強化
デメリット	高額な投資費用、投資回収の遅延、技術革新のリスク
影響	企業の成長、経済全体の活性化
今後の展望	デジタル化、脱炭素化、人材育成など

1. 設備投資とは

設備投資の定義

設備投資とは、企業が事業を継続・拡大するために必要な設備に対して行う投資のことです。企業が商品を生産したり、新商品を開発したりするのに必要な設備を用意するための資金投入を指します。具体的には、「土地」「建物」「機械」「備品」「車両」「ソフトウェア」など、数年、場合によっては数十年にわたって使用するものが挙げられます。

設備投資は、大きく2種類に分類され、建物や機械設備など、目に見えるものを「有形固定資産」、ソフトウェアや商標権、特許など目に見えないものを「無形固定資産」といいます。

例えば、テレビ工場では、テレビを製造するための工場や工作機械を有形固定資産と呼びます。目に見えるモノに投資するものが「有形固定資産」です。一方、新型テレビを開発するための開発費用のように目に見えないものへの設備投資を「無形固定資産」と呼びます。無形固定資産はパソコンソフトや特許権、商標権などが当てはまります。

企業が設備投資を続けていることは、会社全体が成長へと向かっていることを意味します。企業の成長ぶりを知りたい場合は、設備投資額の増減をチェックしてみるのも有効な手段だといえるでしょう。

設備投資の種類
種類	説明
有形固定資産	目に見える資産（土地、建物、機械など）
無形固定資産	目に見えない資産（ソフトウェア、特許権など）

設備投資額の確認方法

「設備投資額」を確認するために、財務諸表のどこの項目を見たらよいかですが、有価証券報告書に「有形固定資産等明細表」の項目がある企業はそこで当期増加額の欄を確認します。「設備投資等の概要」に項目ごとの設備投資額が掲載されています。

また、【セグメント報告】の項目では、セグメントごとに有形固定資産・無形固定資産の増加額が記載されていますので、どのセグメントの設備投資を増加させているかなども把握できます。

設備投資は、企業が事業を継続し、さらに拡大するために必要な設備に対して投資をすることをいいます。設備投資の主な目的は二つあります。

一つは、維持・更新を目的とする設備投資。法令点検に伴う設備の補修や、長年の使用により老朽化した設備の更新です。二つ目は、経営課題を解決するための設備投資です。多くの企業が人口減に伴う市場縮小や慢性的な人手不足などの課題に直面しています。新事業・新市場創出や、省力化・合理化などを実現するためには、最新設備の投資が必要となっています。業績不振などの理由により設備投資をためらうと生産効率の低い設備を使い続けることになり、結果としてさらに収益力の低下を招くことになります。

設備投資額の確認項目
項目	確認場所
有形固定資産等明細表	有価証券報告書
設備投資等の概要	有価証券報告書
セグメント報告	有価証券報告書
減価償却累計額	貸借対照表
減価償却費	キャッシュフロー計算書

減価償却

減価償却とは、金額の高い車やパソコンなどを購入した時に、その購入代金を、購入した年に一度に経費とするのではなく、分割して少しずつ計上するルールのことをいいます。例えば、400万円の車を買ったとします。購入した年に400万円すべてを経費とするのではなく、「今年は50万、翌年に50万、翌々年に50万円…」というように、400万円を何年かで少しずつ経費にするというルールがあります。これが減価償却です。

では、減価償却費の額を確認するために、財務諸表のどこの項目を見たらよいか。まず、今まで発生した減価償却費を合計した金額にあたる「減価償却累計額」は、貸借対照表（B/S）に計上されます。また、1年間の「減価償却費」を知りたい場合は、キャッシュフロー計算書を見ます。「営業活動によるキャッシュフロー」の項目の、上から２行目に「減価償却費」という項目があります。これが、１年間の減価償却費の合計額になります。

＜貸借対照表　減価償却累計額＞＜営業キャッシュフロー計算書　1年間の減価償却費＞

会社の成長のために、資金を使って「設備投資」するわけですが、その投資は長期間（２事業年度以上）にわたって消費するものです。何年もかけて使用するものの経費を1年で計上してしまうと、会社の利益を圧迫します。そのために、減価償却で分割して経費を計上していきます。「設備投資」と「減価償却」の関係は表裏一体ですが、単年度で考えてはいけません。「設備投資」は、会社が行う将来への投資です。設備投資の金額が、減価償却費を下回るようなことになれば、設備が実質的に減ることになります。反対に設備投資が減価償却費を上回れば、会社の設備が充実し、会社が成長方向に向かっていると判断できます。

まとめ

設備投資とは、企業が事業を継続・拡大するために必要な設備に対して行う投資であり、「有形固定資産」と「無形固定資産」の2種類があります。

設備投資額は、有価証券報告書の「有形固定資産等明細表」や「設備投資等の概要」、「セグメント報告」で確認できます。

減価償却は、高額な設備の購入代金を分割して経費計上する会計処理方法であり、貸借対照表の「減価償却累計額」とキャッシュフロー計算書の「減価償却費」で確認できます。

設備投資と減価償却は表裏一体の関係にあり、設備投資が減価償却費を上回れば、会社の設備が充実し、会社が成長方向に向かっていると判断できます。

2. 設備投資の重要性

設備投資と経済成長

設備投資は、企業が事業を継続し、さらに拡大するために必要な設備に対して投資をすることをいいます。設備投資の主な目的は二つあります。

一つは、維持・更新を目的とする設備投資。法令点検に伴う設備の補修や、長年の使用により老朽化した設備の更新です。二つ目は、経営課題を解決するための設備投資です。多くの企業が人口減に伴う市場縮小や慢性的な人手不足などの課題に直面しています。

新事業・新市場創出や、省力化・合理化などを実現するためには、最新設備の投資が必要となっています。業績不振などの理由により設備投資をためらうと生産効率の低い設備を使い続けることになり、結果としてさらに収益力の低下を招くことになります。

財務省「法人企業統計調査」によると設備投資は、2013年以降投資意欲は高まっていましたが、2016年以降はほぼ横ばいで推移している状況です。2017年度の設備投資の目的は、「既存建物・設備機器等の維持・補修・更新」が最も多く、10年間でその割合が増加しています。一方で、「新規事業部門への進出」、「省力化・合理化」などの割合は、減少しています。こうした傾向から、日本経済の成長に不透明感・不安感を持っている企業が多いことがうかがえます。結果として前向きな設備投資が行われず、収益力や成長力が低下する負のスパイラルに陥っているとも評価できます。

設備投資と景気

設備投資は、国内総生産（GDP）を構成する主要な要素のひとつで、景気に大きな影響を与えることから、個人消費とともに景気の両輪といわれています。

設備投資は、工場や船などの資本ストックを増加させ、経済の生産力を高めます。資本装備が増加することで、労働生産性が上昇し、潜在成長率を高めることが出来ます。

設備投資は、投資額が乗数効果によってより大きな消費となるため、経済の需要を高めます。需要の増大は、設備投資による生産増大を正当化し、需給が共に伸びる黄金状態をもたらします。設備投資が乗数効果を持つのは以下の理由があるからである。

投資する事業会社にとっては投資キャッシュ・フローが赤字になるだけで、会計上は減価償却を行い赤字にならない。一方で設備や工場を販売した側にとっては売り上げとなり、従業員の給与や会社の利益となる。このように社会全体で見て会計上の利益が投資によって増大する。そのために、経済全体が活気付き消費が増大するのである。

設備投資の低迷

一方で、設備投資が低調になるとキャッシュフローは黒字でも、会計上の利益が出ない場合があり、経済全体が停滞する。

設備投資は、景気動向を判断するための指標としたり、設備投資計画と企業収益などから投資意欲をみるために使われたりする。統計で設備投資を見る際には、統計によって調査対象範囲が違う、土地購入費の取り扱いが違うなどの差がある。

設備投資は、企業が事業を継続し、さらに拡大するために必要な設備に対して投資をすることをいいます。設備投資の主な目的は二つあります。

まとめ

設備投資は、企業の成長と経済全体の活性化に重要な役割を果たします。

設備投資は、生産能力の向上、労働生産性の向上、潜在成長率の向上、需要の増大、消費の拡大など、経済全体に好影響をもたらします。

しかし、設備投資が低調になると、経済全体が停滞する可能性があります。

設備投資は、景気動向を判断するための重要な指標であり、企業の投資意欲を把握する上で重要な要素となります。

3. 設備投資の種類

有形固定資産

設備投資の対象は、大きく分けて2種類あります。経理上は、有形固定資産と無形固定資産に別れ、決算書の一つである貸借対照表上も区分して記載されます。

有形固定資産とは、「土地」「建物」「機械」「備品」「車両」など、目に見える資産のことです。

企業が事業を行うために必要な、工場やオフィス、機械設備、車両などが有形固定資産に該当します。

有形固定資産は、企業の事業活動の基盤となる重要な資産であり、設備投資の対象として最も一般的です。

有形固定資産の例
種類	例
土地	工場用地、オフィス用地
建物	工場、オフィス、店舗
機械	生産設備、事務機器
備品	机、椅子、パソコン
車両	トラック、フォークリフト

無形固定資産

無形固定資産とは、「ソフトウェア」「特許権」「商標権」「営業権（のれん）」など、目に見えない資産のことです。

企業の競争力を高めるために必要な、知的財産やソフトウェア、ブランドなどが無形固定資産に該当します。

近年では、IT技術の進歩に伴い、ソフトウェアや情報システムへの投資が活発化しており、無形固定資産への設備投資も増加傾向にあります。

無形固定資産は、有形固定資産と比べて、価値評価が難しいという側面があります。

無形固定資産の例
種類	例
ソフトウェア	業務用ソフトウェア、ゲームソフト
特許権	発明に関する権利
商標権	商品やサービスの名称に関する権利
営業権	企業の顧客やブランド力に関する権利

設備投資の目的

設備投資には、「生産能力の拡大」「省力化・合理化」「老朽化設備の更新」「新規事業への進出」「情報化」など、様々な目的があります。

企業は、これらの目的を達成するために、適切な設備投資を行う必要があります。

設備投資の目的は、企業の経営戦略や事業計画によって異なります。

例えば、売上拡大を目的とする場合は、生産能力を拡大するための設備投資が必要となります。一方、コスト削減を目的とする場合は、省力化・合理化のための設備投資が必要となります。

設備投資の目的
目的	説明
生産能力の拡大	売上増加、市場シェア拡大
省力化・合理化	人件費削減、効率向上
老朽化設備の更新	生産性向上、安全性の確保
新規事業への進出	新たな市場開拓
情報化	業務効率化、情報共有の促進

まとめ

設備投資は、「有形固定資産」と「無形固定資産」の2種類に分類されます。

有形固定資産は、目に見える資産であり、工場や機械設備などが該当します。

無形固定資産は、目に見えない資産であり、ソフトウェアや特許権などが該当します。

設備投資の目的は、企業の経営戦略や事業計画によって異なり、「生産能力の拡大」「省力化・合理化」「老朽化設備の更新」「新規事業への進出」「情報化」などがあります。

4. 設備投資のメリットとデメリット

設備投資のメリット

設備投資には、企業の成長や競争力強化に繋がる様々なメリットがあります。

生産性の向上: 最新の設備を導入することで、生産効率が向上し、人件費や時間などのコスト削減につながります。

品質の向上: 高性能な設備を導入することで、製品やサービスの品質が向上し、顧客満足度を高めることができます。

競争力の強化: 新しい技術や設備を導入することで、競合他社との差別化を図り、市場での競争力を強化することができます。

設備投資のメリット
メリット	説明
生産性の向上	効率的な生産体制構築によるコスト削減
品質の向上	高品質な製品・サービス提供による顧客満足度向上
競争力の強化	差別化による市場での優位性獲得

設備投資のデメリット

設備投資には、メリットだけでなく、以下のようなデメリットも存在します。

高額な投資費用: 設備投資は、多くの場合、高額な費用がかかります。特に、最新鋭の設備や大型の設備を導入する場合には、多額の資金が必要となります。

投資回収の遅延: 設備投資の効果がすぐに現れるとは限りません。特に、新規事業への進出や新製品の開発など、時間のかかる投資の場合には、投資回収までに時間がかかる可能性があります。

技術革新のリスク: 技術革新は常に進んでおり、最新の設備がすぐに陳腐化してしまう可能性があります。そのため、設備投資を行う際には、将来的な技術革新を考慮する必要があります。

設備投資のデメリット
デメリット	説明
高額な投資費用	資金調達や資金繰りへの影響
投資回収の遅延	効果が出るまでに時間がかかる場合がある
技術革新のリスク	最新設備が陳腐化する可能性

設備投資を行う際の注意点

設備投資を行う際には、メリットとデメリットを比較検討し、慎重に判断することが重要です。

費用対効果の分析: 設備投資によってどれだけの利益が見込めるのか、投資費用に見合うだけの効果が得られるのかを事前に分析する必要があります。

資金調達の計画: 設備投資には、多くの場合、多額の資金が必要となります。そのため、資金調達の計画を立て、必要な資金を確保しておく必要があります。

リスク管理: 設備投資には、技術革新のリスクや市場環境の変化によるリスクなど、様々なリスクが伴います。そのため、リスク管理を徹底し、リスクを最小限に抑える必要があります。

設備投資を行う際の注意点
注意点	説明
費用対効果の分析	投資に見合うだけの効果があるか確認
資金調達の計画	必要な資金を確保するための計画
リスク管理	技術革新や市場環境の変化によるリスクへの対応

まとめ

設備投資は、企業にとって大きなメリットをもたらす一方で、高額な投資費用や投資回収の遅延、技術革新のリスクなど、デメリットも存在します。

設備投資を行う際には、メリットとデメリットを比較検討し、慎重に判断することが重要です。

費用対効果の分析、資金調達の計画、リスク管理など、様々な要素を考慮した上で、設備投資を行うかどうかを決定する必要があります。

適切な設備投資を行うことで、企業は成長し、競争力を強化することができます。

5. 設備投資の影響

設備投資と企業の成長

設備投資は、企業の成長に大きな影響を与えます。

設備投資によって生産能力が向上すれば、売上増加や利益増加に繋がる可能性があります。

また、設備投資によって業務効率が向上すれば、人件費や時間などのコスト削減につながり、企業の収益性を高めることができます。

さらに、設備投資によって新製品や新サービスを開発できれば、企業の競争力を強化し、新たな市場を開拓することができます。

設備投資と経済への影響

設備投資は、企業の成長だけでなく、経済全体にも大きな影響を与えます。

設備投資が増加すると、経済活動が活発化し、雇用創出や賃金上昇につながります。

また、設備投資によって生産性が向上すれば、物価が安定し、国民生活の向上に貢献します。

さらに、設備投資は、新たな技術開発やイノベーションを促進し、経済成長を牽引する力となります。

設備投資の現状

近年、日本の設備投資は、低迷傾向にあります。

これは、少子高齢化や人口減少、海外経済の低迷、企業の不透明感など、様々な要因が複合的に影響していると考えられます。

しかし、一方で、デジタル化や脱炭素化など、新たな技術革新や社会課題への対応を目的とした設備投資も増加しています。

今後、日本の設備投資は、これらの課題に対応していくために、新たな方向へと転換していくことが期待されます。

まとめ

設備投資は、企業の成長と経済全体に大きな影響を与えます。

設備投資は、生産性向上、雇用創出、賃金上昇、物価安定、技術革新など、様々な経済効果をもたらします。

しかし、日本の設備投資は、近年低迷傾向にあります。

今後、日本の設備投資は、新たな技術革新や社会課題への対応を目的とした投資へと転換していくことが期待されます。

6. 設備投資の今後の展望

設備投資のトレンド

今後の設備投資は、以下のトレンドが予想されます。

デジタル化: AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用した設備投資が加速すると予想されます。

脱炭素化: 環境問題への関心の高まりから、省エネ設備や再生可能エネルギー設備への投資が拡大すると予想されます。

人材育成: 人材不足が深刻化する中、人材育成のための設備投資も重要になってくると予想されます。

設備投資のトレンド
トレンド	説明
デジタル化	AI、IoT、ビッグデータなどの活用
脱炭素化	省エネ設備、再生可能エネルギー設備への投資
人材育成	人材不足に対応するための投資

設備投資を成功させるためのポイント

設備投資を成功させるためには、以下のポイントを意識することが重要です。

長期的な視点: 設備投資は、短期的な利益ではなく、長期的な視点で判断する必要があります。

設備投資を成功させるためのポイント
ポイント	説明
長期的な視点	短期的な利益ではなく、長期的な視点で判断
費用対効果の分析	投資に見合うだけの効果があるか確認
リスク管理	技術革新や市場環境の変化によるリスクへの対応

設備投資と政府の役割

政府は、企業の設備投資を促進するために、様々な政策を展開しています。

税制優遇: 設備投資に対する税制優遇措置を設けることで、企業の投資意欲を高めています。

補助金: 設備投資に対して補助金を交付することで、企業の投資負担を軽減しています。

情報提供: 設備投資に関する情報を提供することで、企業の投資判断を支援しています。

政府の設備投資促進政策
政策	説明
税制優遇	設備投資に対する税制優遇措置
補助金	設備投資に対して補助金を交付
情報提供	設備投資に関する情報の提供