GDP成長率とは?経済用語について説明

GDP成長率に関する項目一覧
項目	説明
GDP	一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額
GDP成長率	前年または前期と比較して、GDPがどれだけ増えたかをパーセンテージで表したもの
名目GDP	市場価格で計測された価値を合算したもの
実質GDP	基準年の価格を基に計測された価値を合算したもの
GNP	一定期間に国民によって生み出された付加価値総額
国民総所得(GNI)	居住者が国内外から1年間に得た所得の合計
景気循環	経済活動が拡大と縮小を繰り返す現象
インフレ率	物価上昇率
失業率	労働力人口に対する失業者の割合
投資	企業が設備や在庫などに支出する金額
消費	家計がモノやサービスに支出する金額
創造的破壊	不況による非効率な部門の淘汰が経済全体の生産性を向上させるという考え方
成長株	将来の成長が期待される企業の株式
新興市場株	発展途上国の株式市場に上場している企業の株式
安定成長株	安定的に成長している企業の株式
債券	国や企業が発行する借用証書
GDPデフレーター	名目GDPを実質GDPで割ったもの

1. GDP成長率とは何か

GDPとは何か

GDPとは、Gross Domestic Productの略で、日本語では国内総生産と訳されます。これは、一定期間（通常は1年）にその国内で生産されたすべての最終財・サービスの市場価値の合計を指します。GDPは、国の経済規模を表す重要な指標であり、経済活動の活発さを示すものです。

GDPは、名目GDPと実質GDPの2種類があります。名目GDPは、統計で出た数字をそのまま集計したもので、つまりその時の市場価格で付加価値総額を評価したものです。一方、実質GDPは、名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものです。経済成長率を見たいときは、物価の変動を差し引いた実質GDPで見るのが一般的です。

GDPは、各産業の付加価値を合計することで求められます。例えば、ケーキ屋さんが500円のケーキを販売し、材料費が100円、人件費が100円、その他の費用が100円かかったとすると、付加価値は200円となります。このように、各産業の付加価値を合計することで、GDPが算出されます。

GDPは、内閣府により四半期ごとに公表されています。2018年1-3月期の統計によると、日本の実質GDPは533．9兆円となっています。また、併せてGDP成長率も公開されており、こちらは実質－0．2％でした。

GDPとGNPの違い
項目	GDP	GNP
対象	国内で生産された付加価値	国民が生産した付加価値
範囲	国内生産のみ	国内生産と海外での所得を含む
例	日本企業が国内で生産した自動車	日本企業が海外で生産した自動車
現在	主要な経済指標	概念がなくなった
代替指標	なし	国民総所得(GNI)

GDP成長率とは何か

GDP成長率とは、国内総生産（GDP）が一定期間内にどれだけ増加したかを示す指標のことです。具体的には、GDP成長率は前年または前期と比較して、GDPがどれだけ増えたかをパーセンテージで表します。たとえば、ある国のGDPが前年に比べて2%増加した場合、その国のGDP成長率は2%となります。

GDP成長率が高い場合、その国の経済が活発であることを示し、企業の利益や雇用の増加が期待されます。一方、GDP成長率が低い場合やマイナス成長の場合、経済が停滞しているか、縮小していることを示します。

GDP成長率は、インフレ率や失業率などの他の経済指標とも関連しており、総合的な経済分析において重要な役割を果たします。

GDP成長率は、前期対比で表されるのが一般的です。例えば、前期の実質GDPが500兆円で、当期の実質GDPが550兆円の場合、（550兆円－500兆円）÷500兆円＝0．1となり、10％のプラス成長であるということです。

名目GDPと実質GDPの違い
項目	名目GDP	実質GDP
定義	市場価格で計測された価値の合計	基準年の価格を基に計測された価値の合計
考慮事項	物価変動の影響を受ける	物価変動の影響を除く
例	2023年の名目GDPは100兆円	2023年の実質GDPは95兆円(物価上昇を考慮)
目的	経済規模の単純な比較	経済成長の正確な把握
一般的に	経済規模を表す	経済成長率を表す

GDPとGNPの違い

GDPとよく似た言葉にGNP（gross national product）というものがあり、これを日本語に訳すと国民総生産となります。GDPは国内の付加価値総額ですが、GNPは一定期間に国民によって生み出された付加価値総額を指し、国内に限らず海外支店等の所得も含んでいることが違うポイントです。

以前は、景気を計る指標として、このGNPが用いられていました。しかし企業のグローバル化が進んだ現在では、より国内の景気を反映するGDPが重視されるようになりました。

GNPの概念はなくなり、それに代わるものとして国民総所得（GNI、Gross National Income）が使われるようになりました。定義としては「居住者が国内外から1年間に得た所得の合計」となり、海外からの所得も含みます。

GDPは「国内」で生産された付加価値の合計。例えば、日本企業が海外支店で生産した付加価値は、そこに含まれません。GNPは「国民」が生産した付加価値の合計。日本企業が海外支店で生産した付加価値も含むことになります。GDPが属地的な考え方を取る一方、GNPは属人的な見方をしているといえるでしょう。

まとめ

GDPとは、一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を指す経済指標です。GDPは、名目GDPと実質GDPの2種類があり、経済成長率を見る際は、物価変動の影響を除いた実質GDPが用いられます。

GDP成長率は、前年または前期と比較して、GDPがどれだけ増えたかをパーセンテージで表したものです。GDP成長率が高いほど、経済が活発であることを示します。

GDPとよく似た指標にGNPがありますが、GNPは国民が生産した付加価値の合計であり、海外での所得も含みます。現在では、GDPがより重視されています。

GDPは、国の経済状況を把握する上で重要な指標であり、経済成長率は、投資戦略を立てる際に重要な判断材料となります。

2. GDP成長率の重要性

経済状況の把握

GDP成長率は、国の経済状況を把握する上で非常に重要な指標です。GDP成長率が高いということは、その国の経済が活発であり、企業の利益や雇用の増加が期待できることを意味します。逆に、GDP成長率が低い場合やマイナス成長の場合、経済が停滞しているか、縮小していることを示します。

GDP成長率は、投資戦略を立てる際にも重要な判断材料となります。例えば、GDP成長率が高い国では、企業の業績が好調である可能性が高く、株式市場が活発になる傾向があります。そのため、投資家は、GDP成長率の高い国に投資することで、より高いリターンを得られる可能性があります。

GDP成長率は、政府の経済政策の有効性を評価する指標としても用いられます。政府は、GDP成長率を目標に、経済政策を実行します。そのため、GDP成長率が目標を達成しているかどうかは、政府の経済政策の成功を判断する上で重要な指標となります。

GDP成長率は、国民生活の質にも影響を与えます。GDP成長率が高い場合、国民の所得が増加し、生活水準が向上する傾向があります。逆に、GDP成長率が低い場合、国民の所得が減少したり、失業率が高くなったりする可能性があります。

GDP成長率と経済状況
GDP成長率	経済状況
高い	経済が活発、企業の利益や雇用増加が期待できる
低い	経済が停滞、縮小している可能性がある
マイナス	経済が縮小している
安定	経済が安定している
変動が大きい	経済が不安定
変動が小さい	経済が安定している

投資戦略への影響

GDP成長率は、投資戦略に大きな影響を与える可能性があります。GDP成長率が高い国では、企業の業績が好調である可能性が高く、株式市場が活発になる傾向があります。そのため、投資家は、GDP成長率の高い国に投資することで、より高いリターンを得られる可能性があります。

逆に、GDP成長率が低い国では、企業の業績が低迷する可能性が高く、株式市場が低迷する傾向があります。そのため、投資家は、GDP成長率が低い国への投資は慎重に検討する必要があります。

GDP成長率は、通貨の価値にも影響を与えます。GDP成長率が高い国では、通貨の価値が上昇する傾向があります。これは、GDP成長率が高い国では、経済が活発であり、投資家の需要が高まるためです。

投資家は、GDP成長率を参考に、投資対象国や投資戦略を決定することができます。

GDP成長率と投資戦略
GDP成長率	投資戦略
高い	成長株や新興市場株への投資
低い	安定成長株や債券への投資
変動が大きい	リスクの高い投資
変動が小さい	リスクの低い投資

政策決定への影響

GDP成長率は、政府の経済政策の決定にも大きな影響を与えます。政府は、GDP成長率を目標に、経済政策を実行します。そのため、GDP成長率が目標を達成しているかどうかは、政府の経済政策の成功を判断する上で重要な指標となります。

GDP成長率が低い場合、政府は、経済活性化のための政策を実行する必要があります。例えば、減税や公共事業の拡大などが考えられます。

GDP成長率が高い場合、政府は、インフレ抑制のための政策を実行する必要があります。例えば、利上げや財政支出の抑制などが考えられます。

政府は、GDP成長率を参考に、経済政策の方向性を決定します。

GDP成長率と政府の経済政策
GDP成長率	政府の経済政策
高い	インフレ抑制のための政策
低い	経済活性化のための政策
マイナス	景気刺激策
安定	現状維持
変動が大きい	柔軟な政策対応

まとめ

GDP成長率は、国の経済状況を把握する上で非常に重要な指標であり、投資戦略や政府の経済政策の決定にも大きな影響を与えます。

GDP成長率が高い場合、経済が活発であり、企業の利益や雇用の増加が期待できます。一方、GDP成長率が低い場合やマイナス成長の場合、経済が停滞しているか、縮小していることを示します。

投資家は、GDP成長率を参考に、投資対象国や投資戦略を決定することができます。政府は、GDP成長率を参考に、経済政策の方向性を決定します。

GDP成長率は、国民生活の質にも影響を与えます。GDP成長率が高い場合、国民の所得が増加し、生活水準が向上する傾向があります。

3. GDP成長率の計算方法

GDP成長率の計算式

GDP成長率は、以下の計算式で求められます。

GDP成長率 = (当期の実質GDP – 前期の実質GDP) ÷ 前期の実質GDP × 100

例えば、前期の実質GDPが500兆円で、当期の実質GDPが550兆円の場合、GDP成長率は次のようになります。

(550兆円 – 500兆円) ÷ 500兆円 × 100 = 10%

名目GDPと実質GDP

GDP成長率を計算する際には、名目GDPと実質GDPの違いを理解することが重要です。

名目GDPは、市場価格で計測された価値を合算したものです。一方、実質GDPは、基準年の価格を基に計測された価値を合算したものです。

名目GDPは、物価変動の影響を受けているため、経済成長率を正確に把握するためには、実質GDPを用いる必要があります。

実質GDPは、名目GDPから物価変動の影響を除いたものです。そのため、実質GDPは、経済の真の成長を表す指標と言えます。

GDPデフレーター

名目GDPと実質GDPの関係を表す指標として、GDPデフレーターがあります。

GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割ったものです。

GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP

GDPデフレーターは、物価上昇率を表す指標としても用いられます。GDPデフレーターが1より大きい場合は、物価が上昇していることを示し、1より小さい場合は、物価が下落していることを示します。

まとめ

GDP成長率は、(当期の実質GDP – 前期の実質GDP) ÷ 前期の実質GDP × 100で計算されます。

GDP成長率を計算する際には、名目GDPと実質GDPの違いを理解することが重要です。

名目GDPは市場価格で計測された価値を合算したもので、実質GDPは基準年の価格を基に計測された価値を合算したものです。

GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割ったもので、物価上昇率を表す指標としても用いられます。

4. GDP成長率と景気循環

景気循環とGDP成長率

GDP成長率は、景気循環と密接に関連しています。景気循環とは、経済活動が拡大と縮小を繰り返す現象のことです。

景気が良い時期には、GDP成長率が高くなり、企業の投資意欲が高まります。そのため、雇用が増加し、消費支出も増加する傾向があります。

逆に、景気が悪い時期には、GDP成長率が低くなり、企業の投資意欲が低下します。そのため、雇用が減少したり、消費支出が減少したりする傾向があります。

GDP成長率は、景気循環の先行指標として用いられることがあります。つまり、GDP成長率が低下し始めると、景気が悪化する可能性が高いことを示唆しています。

景気循環とGDP成長率
景気	GDP成長率	特徴
好況	高い	企業の投資意欲が高まる、雇用が増加、消費支出が増加
不況	低い	企業の投資意欲が低下、雇用が減少、消費支出が減少
回復	上昇	経済活動が活発化
後退	下降	経済活動が鈍化する

景気循環とGDP成長率の関係

景気循環は、投資によって大きく影響を受けます。景気が良い時期には、企業の投資意欲が高まり、設備投資や在庫投資が増加します。

投資の増加は、GDP成長率の上昇につながります。しかし、景気が悪化すると、企業の投資意欲が低下し、投資が減少します。

投資の減少は、GDP成長率の低下につながります。このように、投資は、景気循環とGDP成長率の重要な要素となっています。

景気循環は、消費にも影響を与えます。景気が良い時期には、消費者の所得が増加し、消費支出が増加します。消費支出の増加は、GDP成長率の上昇につながります。

投資と消費の影響
項目	景気	GDP成長率
投資	好況	上昇
投資	不況	下降
消費	好況	上昇
消費	不況	下降

不況と経済成長

不況は、経済成長に対して有益な側面も持ち合わせています。ヨーゼフ・シュンペーターによる創造的破壊の理論は、不況による倒産や失業などの非効率な部門の淘汰こそが、経済全体の生産性を向上させるという適者生存の考え方です。

不況は、古い企業の存続に有利に働くという側面もあります。これは、不況時に新規参入できるのが、純資産の大きな企業に限られることによるものです。

不況は、経済成長にとって必ずしも悪いものではありません。不況は、経済構造の転換を促し、新たな成長の芽を生み出す可能性を秘めています。

不況は、経済の活性化に繋がる可能性があります。不況期には、企業はコスト削減や効率化を進める必要があり、その結果、生産性向上や技術革新が促進されることがあります。

不況の経済成長への影響
不況の影響	メリット	デメリット
非効率な部門の淘汰	経済全体の生産性向上	倒産や失業
古い企業の存続	安定的な経済活動	新規参入の阻害
コスト削減と効率化	生産性向上	雇用減少
技術革新	新たな成長の芽	投資リスクの増加