流通株式とは?経済用語について説明

1. 流通株式の基本概念

1-1. 流通株式の定義と重要性

「流通株式」とは、上場株式のうち、市場で自由に売買できる株式のことを指します。具体的には、上場株式から、役員が所有する株式、自己株式、上場株式数の10%以上を所有する者が所有する株式などを除いた株式です。これらの株式は、市場での売買が制限されるため、流通株式から除外されます。

流通株式は、企業の株式市場における評価を左右する重要な要素の一つです。なぜなら、流通株式の数が多ければ、それだけ多くの投資家が株式を売買できるようになり、株価が安定しやすくなるからです。逆に、流通株式の数が少なければ、株価が大きく変動する可能性があります。

例えば、上場会社の役員が自社の株式を大量に保有している場合、役員は自社の株式を簡単に売却することはできません。これは、役員の株式売却が株価に悪影響を及ぼす可能性があるためです。そのため、役員の株式は流通株式から除外され、市場での売買が制限されます。

流通株式は、企業の株式市場における評価を左右する重要な要素であり、上場企業にとって重要な指標の一つです。

1-2. 流通株式の計算方法

流通株式の計算方法は、以下の式で表されます。

流通株式数 = 上場株式数 – 流通性の乏しい株式数

流通性の乏しい株式とは、前述のように、役員が所有する株式、自己株式、上場株式数の10%以上を所有する者が所有する株式など、市場での売買が制限される株式です。

流通株式数は、上場企業の財務諸表に記載されることが多く、投資家にとって重要な指標の一つです。

1-3. 流通株式と上場審査基準・上場廃止基準

流通株式は、上場審査基準・上場廃止基準にも重要な役割を果たしています。例えば、東京証券取引所では、上場維持基準として、流通株式時価総額が5億円未満になった場合、上場廃止となる可能性があります。これは、流通株式時価総額が低い企業は、市場での売買が活発に行われず、投資家にとって魅力的な投資対象とはなりにくいと判断されるためです。

また、新規上場を申請する企業は、一定以上の流通株式を確保する必要があります。これは、新規上場企業が、市場での売買が活発に行われるようにするためです。

1-4. まとめ

流通株式とは、上場株式のうち、市場で自由に売買できる株式のことを指し、企業の株式市場における評価を左右する重要な要素の一つです。流通株式の数は、上場企業の財務諸表に記載されることが多く、投資家にとって重要な指標の一つです。また、上場審査基準・上場廃止基準においても重要な役割を果たしており、一定以上の流通株式を確保することが上場企業にとって重要となります。

流通株式は、企業の株式市場における透明性と流動性を高めるために重要な役割を果たしているといえます。

参考文献

PDF 流通株式の定義見直し – 日本取引所グループ

流通株式(時価総額) の解説 | バリュートレンド 長期投資家の …

流通株式【IPO用語】 | 株式公開を応援する IPO AtoZ

2. 流通株式の役割と重要性

2-1. 流通株式とは何か?その定義と計算方法

流通株式とは、東京証券取引所(東証)が新規上場や上場廃止基準の審査で使用している概念で、「上場会社の発行済株式のうち市場での取引が見込まれるもの」を指します。具体的には、市場で売買される可能性のある株式の数を示す指標であり、時価総額を計算する際に用いられる重要な要素です。

流通株式は、発行済株式から、市場での取引が見込まれないと判断される株式を除外することで計算されます。具体的には、10%以上の大株主の持ち分、役員所有株式、自己株式、国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式、その他取引所が固定的と認める株式などが除外されます。

従来の基準では、流通株式は「全上場株式ー(10%以上の大株主の持ち分+役員所有株式+自己株式)」で計算されていましたが、2021年4月に東証が市場区分の再編を実施したことに伴い、流通株式の定義が変更されました。新制度では、上記の計算式に「国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式」が追加され、流通株式から除外されるようになりました。これは、企業間の持ち合い株式(政策保有株式)の除外を念頭に置いた規定であり、MSCIのようなグローバルな指数算出会社が浮動株比率の算定に類似の基準を設けていることから、東証も同様の基準を導入したと考えられます。

ただし、新基準では、「事業法人等」を全て除外するため、提携等による持ち合いに限らず法人投資家が保有する株式は広く流通株式から除外されます。これは、算出の利便性を考慮した制度設計だと推測されます。法人名義の株主について、持ち合いか純投資かを個別に判定するのは非常に手間がかかるため、株主の属性で一括で除外し、影響が大きいものについてのみ大量保有報告書の例外規定で拾うことを想定しているのだと思います。

2-2. 流通株式が企業価値評価に与える影響

流通株式は、企業の価値評価において重要な役割を果たします。企業の価値は、一般的に時価総額によって評価されますが、時価総額は全発行済株式数を用いて計算されます。しかし、実際には、市場で自由に売買できる株式は全発行済株式数の全てではありません。

例えば、親会社や創業者兼現経営者のように、市場で売買する意思がない大株主が保有する株式は、時価総額の計算に含めることは適切ではありません。このような株式は、市場での取引に影響を与えないため、企業の真の価値を反映していないと言えるからです。

流通株式は、市場で実際に取引される可能性のある株式数を反映するため、企業の真の価値をより正確に評価する指標となります。そのため、投資家は流通株式時価総額を参考に、企業の価値を判断することができます。

また、東証は、上場廃止基準の審査においても流通株式時価総額を用いています。流通株式時価総額が一定額を下回った場合は、上場廃止となる可能性があります。これは、流通株式時価総額が低い企業は、市場での取引が活発ではなく、投資家の関心が低いと判断されるためです。

2-3. 流通株式と株価の関係

流通株式は、株価の変動にも影響を与えます。流通株式数が少ない場合、需要と供給のバランスが崩れやすく、株価が大きく変動する可能性があります。

例えば、流通株式数が少ない企業の場合、少数の大口投資家が株の売買を行うだけで、株価が大きく変動することがあります。これは、流通株式数が少ないため、少数の投資家の売買が、市場全体の需給に大きな影響を与えるためです。

反対に、流通株式数が多ければ、需要と供給のバランスが安定し、株価の変動が抑制されます。これは、流通株式が多いということは、多くの投資家が株の売買に参加しており、市場全体の需給が安定していることを意味するためです。

2-4. まとめ

流通株式は、上場会社の発行済株式のうち市場での取引が見込まれる株式数を示す重要な指標です。流通株式は、企業の真の価値をより正確に評価するのに役立ち、上場廃止基準の審査や株価の変動にも影響を与えます。

投資家は、流通株式の概念を理解することで、企業の価値や株価の変動をより深く理解し、投資判断の精度を高めることができます。

参考文献

東証の流通株式時価総額の定義変更で何が変わるか – 儲から …

流通市場(株式)|証券用語解説集|野村證券

株価の変動要因とは?株価が上昇下落する仕組み – Ig

3. 流通株式市場の特徴

3-1. 流通株式比率の重要性と市場区分

流通株式市場において、流通株式比率は非常に重要な指標です。これは、市場における株式の流動性を示すものであり、投資家の取引機会や企業の資金調達能力に大きく影響を与えます。

東京証券取引所は、2022年4月に市場区分を再編し、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場という3つの区分を設けました。この再編における重要なポイントの一つに、各市場における流通株式比率の基準設定があります。

プライム市場では、流通株式比率が35%以上と定められています。これは、海外の機関投資家など、より多くの投資家を引きつけ、市場の活性化を図るための重要な基準です。一方、スタンダード市場とグロース市場では、25%以上という、プライム市場よりも低い基準が設定されています。これは、成長段階にある企業や、海外投資家の関心が低い企業への上場を促進するためのものです。

流通株式比率の基準が異なることで、各市場における企業の構成や投資家の属性に違いが生じます。プライム市場では、高い流通株式比率を維持している企業が多く、投資家の流動性が高く、資金調達の機会も多いことが期待されます。一方、スタンダード市場やグロース市場では、成長段階にある企業や、海外投資家の関心が低い企業が多く、プライム市場に比べて流動性が低い傾向が見られます。

3-2. 流通株式比率の改善手法

企業が流通株式比率を改善し、より多くの投資家を呼び込むためには、様々な手法が考えられます。主な手法としては、既存株主による株式売却、新規株式発行、自己株式の処分などが挙げられます。

既存株主による株式売却には、証券会社による引受けを伴う売出し、証券取引所の立会内取引での売却、ブロックトレード、立会外分売などがあります。これらの手法は、既存株主の株式を市場に流すことで流通株式比率を高める効果がありますが、それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。

証券会社による引受けを伴う売出しは、大口の売却を行う際に有効な手法ですが、発行会社の手続的負担が大きく、売却タイミングの柔軟性が低い点がデメリットです。一方、証券取引所の立会内取引での売却は、手続的な負担が少なく、売却タイミングの柔軟性が高い点がメリットですが、大量の株式を売却する場合には、売却に時間がかかり、株価下落圧力が働く可能性がある点がデメリットです。

新規株式発行には、公募による株式の新規発行、株式の第三者割当、新株予約権又は新株予約権付社債の第三者割当などがあります。これらの手法は、新たな資金調達を行うとともに、流通株式比率を高める効果がありますが、発行会社は、資金使途や発行理由などの開示義務を負うため、手続的な負担が大きい点がデメリットです。

自己株式の処分は、市場での自己株式取得や、特定の大株主からの自己株式取得などがあります。これらの手法は、市場に流通する株式を増やすことで、流通株式比率を高める効果がありますが、自己株式取得は、会社法上の財源規制の対象となるため、企業の財務状況によっては実施が難しい場合があります。

3-3. 流通株式比率改善の課題と注意点

流通株式比率を改善することは、企業にとって非常に重要ですが、いくつかの課題や注意点を理解しておく必要があります。

第一に、流通株式比率を改善するためには、既存株主の理解と協力が不可欠です。特に、大口株主は、株式売却に抵抗感を持つ場合があり、企業は、これらの株主との良好な関係を維持し、納得のいく条件で売却を促す必要があります。

第二に、流通株式比率の改善は、必ずしも株価の上昇に繋がるわけではありません。売却された株式が市場でどのように受け入れられるかは、企業の業績や市場の状況など、様々な要素に左右されます。企業は、流通株式比率の改善と同時に、企業価値の向上に取り組む必要があるでしょう。

第三に、流通株式比率を改善するために、様々な手法を組み合わせることが重要です。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、企業は、自社の状況に合わせて適切な手法を選択し、効率的に流通株式比率を改善する必要があります。

3-4. まとめ

流通株式市場は、企業と投資家をつなぐ重要な市場です。企業は、市場の流動性を高め、資金調達を円滑に行うため、流通株式比率の改善に取り組む必要があります。

流通株式比率を改善するためには、様々な手法がありますが、それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、企業は、自社の状況に合わせて適切な手法を選択し、効率的に流通株式比率を改善する必要があります。また、流通株式比率の改善は、必ずしも株価の上昇に繋がるわけではなく、企業価値の向上に取り組むことが重要です。

流通株式市場は、今後も企業の成長や投資家の利益に大きな影響を与える市場であり、企業は、流通株式比率の重要性を理解し、適切な戦略を立てて市場に対応していく必要があります。

参考文献

東京証券取引所市場再編の上場維持基準と「流通株式比率 …

プライム市場とは 「流通株式35%以上」など基準 – 日本経済新聞

流通株式の定義 – 上場会社向けナビゲーションシステム

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