魚:コギクザメについて説明

コギクザメの生態
項目 内容
外見 円筒形でたるんだ体型、頭部は短くやや平ら、最大で全長4m
分類 キクザメ目キクザメ科キクザメ属
生息地 太平洋に広く分布、熱帯域では水深100-200m以深、緯度の高い地域では水深15-35m
食性 さまざまな魚類や頭足類を捕食、吸い込み型で捕食
繁殖 卵胎生、一度に114匹の子を産む、繁殖期は不明
保護状況 IUCNではデータ不足、日本の環境省では情報不足
人間との関係 深海漁業で混獲されるが食用価値は低い、水族館での飼育例は少ない、生態研究が進められている

1. コギクザメの外見と分類

要約

コギクザメの形態

コギクザメは、円筒形でたるんだ体型を呈し、頭部は短くやや平らになっている。鼻孔はお互いに離れた位置にあり、小さな皮弁で覆われている。噴水孔は小さく、眼よりかなり後方にある。眼は瞬膜を欠く。口は大きな円弧状を呈し、端にはごく短い溝がある。上顎には21-25の、下顎には20-27の歯列がある。ナイフ状の歯のそれぞれには中央に鋭い尖頭があり、その脇にも最大3つの尖頭がみられる。若い個体では尖頭が中央の1つしかみられない。鰓裂は5対あり、5番目の対が最も長い。

側線は体の両側面を走り、明瞭な溝状になる。胸鰭は短いが、腹鰭は長い基底部をもち比較的長い。第一背鰭は小さく腹鰭の始部に対する位置かそれより後方に始まる。第二背鰭は第一背鰭のすぐ後方に位置し、形も類似する。臀鰭はなく、尾柄は太い。尾鰭の基部にくぼみはない。尾鰭は上葉が下葉より長く、後端に欠刻はない。皮膚は最大で長さ0.4 cmになる楯鱗に密で均質に覆われる。キクザメの場合と異なり、この楯鱗が一体化することはない。個々の楯鱗はトゲ状になり、その基底部から周りに放射状に溝が走って菊の花状になる。口吻の下部の楯鱗は制御では特に細かい。

体色は褐色か灰色で、しばしば僅かに紫色を帯びるほか、鰭の後端は黒色になることが多い。腹側は明るい色であることが多く、特に口吻や口の周りでは明らかである。最大で全長4 mに達する可能性がある。記録されている最大の体重は266 kgで、3.1 mのメスの個体の記録である。

コギクザメの形態
特徴 説明
体型 円筒形でたるんだ体型
頭部 短くやや平ら
鼻孔 離れた位置にあり、小さな皮弁で覆われている
噴水孔 小さく、眼よりかなり後方にある
瞬膜を欠く
大きな円弧状、端にはごく短い溝がある
ナイフ状、中央に鋭い尖頭、脇に最大3つの尖頭
鰓裂 5対あり、5番目の対が最も長い
側線 体の両側面を走り、明瞭な溝状
胸鰭は短く、腹鰭は長い、第一背鰭は小さく、第二背鰭は第一背鰭のすぐ後方
尾鰭 上葉が下葉より長く、後端に欠刻はない
皮膚 楯鱗に密で均質に覆われる、個々の楯鱗はトゲ状
体色 褐色か灰色、しばしば僅かに紫色、鰭の後端は黒色
大きさ 最大で全長4m、最大体重は266kg

コギクザメの分類

コギクザメは、キクザメ科キクザメ属の1科1属のみからなるキクザメ目に属する2種のうちの1種である。

本種はオーストリアの魚類学者Viktor Pietschmannによって、2つの異なる出版物で新種として記載された。まず最初に1928年に『ウィーン科学アカデミー紀要』(Anzeiger der Akademie der Wissenschaften in Wien )においてドイツ語で簡潔に記載されたのち、1930年に『ビショップ博物館紀要』(Bishop Museum Bulletins )において英語でのより詳細な記載がなされた。なお、本種の種小名cookei はビショップ博物館の貝類学者C. Montague Cooke Jr.に献名されたものである。

本種はPietschmannによる記載の後も長らく同属のキクザメ(E. brucus)と同一種とみなされており、この誤解は1960年にニュージーランドの魚類学者Jack Garrickが再記載を行うまで続いた。Pietschmannが記載に用いたハワイ・カウアイ島から得られたホロタイプ標本は失われていたため、Garrickはニュージーランド・パリサー湾から得た標本を新たなタイプ標本に指定している。

英語ではPrickly shark(「トゲだらけのサメ」)と呼ばれる。標準和名の「コギクザメ」は、1983年に熊野灘から日本における本種の初報告がなされた際、谷内透と柳沢践夫によって提唱された。

コギクザメの分類
分類 名称
キクザメ目
キクザメ科
キクザメ属
コギクザメ

コギクザメとキクザメの違い

コギクザメとキクザメは同属であり、外見もよく似ているが、いくつかの違いがある。最も顕著な違いは、鱗の大きさ密度である。キクザメは非常に大きな鱗がまばらに生えているのに対し、コギクザメは小さな鱗が密に生えている。

また、キクザメはコギクザメよりも大型で、最大で4メートルほどになる。コギクザメは最大で全長4 mに達する可能性がある。

生殖方法も異なる。キクザメは非胎盤型の胎生で、40~50センチメートルの子を最多で26尾ほど産む。コギクザメは卵胎生で、生まれる前の子は卵黄の栄養を用いて成長する。妊娠したメスの報告が1例のみあり、その際は母胎内に114匹の子が確認された。

コギクザメとキクザメの違い
項目 コギクザメ キクザメ
小さく密に生えている 大きくまばらに生えている
大きさ 最大で全長4m 最大で4メートル
生殖方法 卵胎生 非胎盤型の胎生
出産数 114匹 26尾

まとめ

コギクザメは、キクザメ目キクザメ科キクザメ属に属する深海性のサメである。同属のキクザメとよく似ているが、鱗の大きさや密度、生殖方法などが異なる。

コギクザメは、円筒形でたるんだ体型をしており、最大で全長4メートルに達する。体色は褐色か灰色で、しばしば僅かに紫色を帯びる。

コギクザメは、キクザメと同様に、非胎盤型の胎生で、40~50センチメートルの子を最多で26尾ほど産む。

2. コギクザメの生息地と分布

要約

コギクザメの生息域

コギクザメは、太平洋に広く生息する。西太平洋と中央太平洋では、日本、台湾、オーストラリアのビクトリア州とクイーンズランド州、ニュージーランド、そしてパラオ、ニューカレドニア、トンガ、ハワイ、ギルバート諸島といった島々からも報告されている。

東太平洋ではオレゴンからカリフォルニア湾を経てエルサルバドルまでの海域や、ココ島、ガラパゴス諸島、ペルー沖、チリ沖などで生息が確認されている。

基本的には稀な種であるが、例外的にモントレー湾沖のモントレー海底谷では本種の雌雄が一年を通じてよくみられる。

コギクザメの生息域
地域 生息地
西太平洋 日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、パラオ、ニューカレドニア、トンガ、ハワイ、ギルバート諸島
東太平洋 オレゴン、カリフォルニア湾、エルサルバドル、ココ島、ガラパゴス諸島、ペルー沖、チリ沖

コギクザメの生息深度

コギクザメは、深海性の種であり、特に熱帯域では基本的に水深100-200 m以深で見られる。少なくとも水深650 mから記録があるが、それよりもかなり深い海域にも生息する可能性があると考えられており、水深1500 mまで生息している可能性がある。

一方緯度の高い地域では、浅い沿岸海域に入ることもよくある。例えば、モントレー峡谷では水深15-35 mの海域で継続的に発見されており、カリフォルニア州モスランディングでは水深4 mから捕獲された記録もある。

大陸棚や大陸斜面に生息し、その底近くを泳ぐ。海底谷の中でも、谷沿いに泳いでいるのがよくみられる。砂泥海底を好む。

低い溶存酸素濃度にも耐性があり、他のサメは進入できない海盆にも生息する。

コギクザメの生息深度
地域 生息深度
熱帯域 水深100-200m以深
緯度の高い地域 水深15-35m
深海 水深650m以上、最大で水深1500mまで

コギクザメの分布と生息環境

コギクザメは、太平洋に広く分布し、日本近海でも確認されている。

生息深度としては、熱帯域では水深100-200 m以深、緯度の高い地域では水深15-35 mの海域など、地域によって異なる。

大陸棚や大陸斜面、海底谷など、砂泥海底を好む。

まとめ

コギクザメは、太平洋に広く分布する深海性のサメである。

生息域は、西太平洋、中央太平洋、東太平洋など、熱帯から温帯にかけて広く分布する。

生息深度としては、熱帯域では水深100-200 m以深、緯度の高い地域では水深15-35 mの海域など、地域によって異なる。

大陸棚や大陸斜面、海底谷など、砂泥海底を好む。

3. コギクザメの食性と捕食方法

要約

コギクザメの食性

コギクザメは、メルルーサ、カレイ、メバル、キンムツ、サバ、ニシンなどのさまざまな硬骨魚のほか、ゾウギンザメ類、アブラツノザメ、若いカグラザメ、ヘラザメ属の卵鞘など、軟骨魚も捕食する。

アメリカオオアカイカをはじめとするタコやイカも捕食する。

若いコギクザメ自身もカグラザメなどに捕食されることがあるが、成魚については捕食される危険性はほとんどないと考えられる。

コギクザメの食性
種類
硬骨魚 メルルーサ、カレイ、メバル、キンムツ、サバ、ニシン
軟骨魚 ゾウギンザメ類、アブラツノザメ、若いカグラザメ、ヘラザメ属の卵鞘
頭足類 タコ、イカ

コギクザメの捕食方法

コギクザメは、吸い込み型の摂食様式をとることが推測される。

本種は、海底のすぐ上を浮くように泳いでいる様子が観察される。

モントレー峡谷で行われた追跡調査では、本種が顕著な日周鉛直移動を行うことが確認された。日中にはあまり活動せず、外洋の海底に近い場所で単独で休息していた。日没前後になって活発になり、沿岸部の海底谷のへりを目指して上昇を始めた。この上昇は魚の群れを捕食するためのものである可能性がある。

それぞれの個体の生息域を大きく離れることはほとんどなく、行動圏は2.2 km2以下と小さかった。モントレー峡谷では30個体以上の集団を作って泳ぐ様子がよく観察される。

コギクザメの捕食方法
方法 説明
摂食様式 吸い込み型
泳ぎ方 海底のすぐ上を浮くように泳ぐ
日周鉛直移動 日中は海底で休息、夜間は上昇して捕食
行動圏 2.2km2以下
集団行動 30個体以上の集団で泳ぐ

コギクザメの捕食行動

コギクザメは、さまざまな魚類や頭足類を捕食する。

捕食方法は、吸い込み型で、海底のすぐ上を浮くように泳ぎながら、獲物を捕食する。

日周鉛直移動を行い、夜間に活動して、魚の群れを捕食する。

まとめ

コギクザメは、さまざまな魚類や頭足類を捕食する肉食性のサメである。

捕食方法は、吸い込み型で、海底のすぐ上を浮くように泳ぎながら、獲物を捕食する。

日周鉛直移動を行い、夜間に活動して、魚の群れを捕食する。

4. コギクザメの繁殖期と繁殖行動

要約

コギクザメの繁殖様式

コギクザメは、卵胎生で、生まれる前の子は卵黄の栄養を用いて成長する。

妊娠したメスの報告が1例のみあり、その際は母胎内に114匹の子が確認された。この数はサメが一腹にもつ子の数としては最も多い例の一つである。

性成熟に達する体サイズは正確には不明だが、オスで2.0 m程度、メスで3.0 m程度だと考えられている。

コギクザメの繁殖行動

コギクザメの繁殖行動については、まだよくわかっていない。

妊娠したメスの報告が1例のみであり、その際は母胎内に114匹の子が確認された。

このことから、コギクザメは、他のサメと比べて、非常に多くの子供を産むことがわかる。

コギクザメの繁殖期

コギクザメの繁殖期については、まだよくわかっていない。

しかし、妊娠したメスの報告が1例のみあり、その際は母胎内に114匹の子が確認されたことから、繁殖期は一年を通してある可能性があると考えられる。

まとめ

コギクザメは、卵胎生で、生まれる前の子は卵黄の栄養を用いて成長する。

妊娠したメスの報告が1例のみあり、その際は母胎内に114匹の子が確認された。

繁殖期については、まだよくわかっていないが、一年を通してある可能性があると考えられる。

5. コギクザメの保護と生態系への影響

要約

コギクザメの保護状況

国際自然保護連合 (IUCN) は本種の保全状態をデータ不足 (DD) と評価するに留まっているが、生息域がまばらであることに加え深海漁業が拡大しつつあることが本種の保全状態に与える影響について特記している。

日本の環境省が2017年にまとめた海洋生物レッドリストでも、本種は情報不足 (DD) と評価されている。

コギクザメの保護状況
機関 評価
IUCN データ不足 (DD)
日本の環境省 情報不足 (DD)

コギクザメの生態系への影響

コギクザメは、深海生態系において重要な役割を果たしていると考えられる。

コギクザメは、さまざまな魚類や頭足類を捕食することで、生態系のバランスを保っている。

また、コギクザメは、他のサメや魚類の餌となることで、食物連鎖の一端を担っている。

コギクザメの生態系への影響
影響 説明
生態系のバランス さまざまな魚類や頭足類を捕食することでバランスを保つ
食物連鎖 他のサメや魚類の餌となることで食物連鎖の一端を担う

コギクザメの保護の必要性

コギクザメは、生息域がまばらで、情報不足なため、保護の必要性が高い。

深海漁業の拡大は、コギクザメの生息に大きな影響を与えている。

コギクザメの保護のためには、深海漁業の規制や、生息環境の保全が必要である。

まとめ

コギクザメは、生息域がまばらで、情報不足なため、保護の必要性が高い。

深海漁業の拡大は、コギクザメの生息に大きな影響を与えている。

コギクザメの保護のためには、深海漁業の規制や、生息環境の保全が必要である。

6. コギクザメと人間の関係性

要約

コギクザメと漁業

コギクザメは、底引きトロール漁や刺し網、延縄などによる商業漁業で混獲されることがある。

肉は不味で柔らかいため、食用としての商業的価値はほとんどない。

コギクザメと漁業
漁業 影響
底引きトロール漁 混獲される
刺し網 混獲される
延縄 混獲される
食用価値 ほとんどない

コギクザメと水族館

コギクザメは、非常に記録は少ないが、本種の飼育記録としてアメリカのモントレーベイ水族館で3度の記録が残っている。

日本でも、大阪府の海遊館が、高知県室戸の定置網で採捕された全長2.82m、194kg雌の本種の標本を2015年に展示した記録がある。

コギクザメと水族館
水族館 展示状況
モントレーベイ水族館 飼育記録あり
海遊館 標本展示あり

コギクザメと研究

コギクザメは、深海性のサメであり、生態についてはまだ多くの謎が残されている。

近年、深海調査技術の発展により、コギクザメの生態に関する研究が進められている。

コギクザメの研究は、深海生態系の理解を深める上で重要である。

まとめ

コギクザメは、深海漁業で混獲されることがあるが、食用としての価値はほとんどない。

水族館では、飼育が難しいため、展示されている例は少ない。

コギクザメは、深海性のサメであり、生態についてはまだ多くの謎が残されている。

コギクザメの研究は、深海生態系の理解を深める上で重要である。

参考文献

コギクザメ – コギクザメの概要 – わかりやすく解説 Weblio辞書

コギクザメ – Wikipedia

コギクザメ – Wikiwand

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