魚:クサカリツボダイについて説明

1. クサカリツボダイの外見と特徴

1-1. クサカリツボダイの見た目

クサカリツボダイは、体高が高く、やや側扁した体型をしています。体色は全体的に銀白色で、背側には薄い褐色の斑点が散らばっています。腹側は白いことが多いです。体長は最大で約50cmに達しますが、一般的には30cm前後で漁獲されることが多いようです。

クサカリツボダイの最大の特徴は、その独特な鱗にあります。体側には、硬い鱗が重なり合って鎧のように覆われています。特に、腹部の鱗は、板状で厚く、まるで鎧をまとっているように見えます。また、頭部後方の鱗は、硬い板状で、まるでマツカサウオのような印象を与えます。

さらに、クサカリツボダイは、他の魚にはあまり見られない特徴として、頭部が小さく、吻が突き出ている点があります。口は小さく、上向きに開きます。眼は小さく、頭部の上側に位置しています。

1-2. クサカリツボダイの生態

クサカリツボダイは、水深300メートルから500メートルの深海に生息する深海魚です。主に、天皇海山海域で漁獲されますが、カルフォルニア海山や日本の伊豆諸島周辺にも生息していると考えられています。

クサカリツボダイは、毎年11月頃から2月頃にかけて、天皇海山海域で産卵すると推測されています。稚魚は海山から成育場に移動し、1〜2年を過ごした後、海流に乗って天皇海山海域に戻ってきます。

クサカリツボダイは、他の魚が食べないサルパと呼ばれる脊索動物(ホヤの仲間)やウシヒキガイなどを餌としているため、他の魚との餌の競合に負けている可能性があります。

1-3. クサカリツボダイとツボダイの関係

クサカリツボダイは、ツボダイと近縁種ですが、別種です。市場では、ツボダイがクサカリツボダイと同種と思われていることが多く、ツボダイと表示されていることが多いですが、実際には、ツボダイの漁獲はあまりありません。市場で流通する多くのツボダイは、クサカリツボダイです。

「ホンツボダイ」と表示されている魚もクサカリツボダイです。これは、特定の地域で太ったクサカリツボダイが別種と考えられ、「ホンツボダイ」と称してきた慣習によるものです。しかし、DNA鑑定の結果、太ったホンツボダイも、やせたクサカリツボダイも、同種であることが明らかになりました。

1-4. まとめ

クサカリツボダイは、深海に生息する独特な魚です。鎧のような鱗を持つ姿は、深海魚らしい風格を感じさせます。ツボダイと近縁種ですが、市場ではクサカリツボダイがツボダイとして流通していることが多いようです。深海魚でありかつ日本から離れた場所で漁獲されるため、鮮魚として流通することは稀です。機会があればぜひ、その独特な外見と、深海魚らしい味わいを確かめてみてください。

参考文献

クサカリツボダイの基礎知識 – 日本トロール底魚協会 遠洋の …

クサカリツボダイ – Web魚図鑑

大変レアな生のクサカリツボダイをゲットしたけど……評価は保留

2. クサカリツボダイの生息地と分布

2-1. クサカリツボダイの分布域

クサカリツボダイは、北太平洋に広く分布する海水魚です。日本国内では、千葉県房総半島沖、八丈島、小笠原諸島、九州・パラオ海嶺北部から記録されています。さらに、2019年には鹿児島県種子島沖でも採集され、本種の分布域が鹿児島県ならびに琉球列島にまで及ぶことが確認されました。

具体的な分布域としては、千葉県南部沖、八丈島、小笠原諸島、九州・パラオ海嶺、アリューシャン列島、カリフォルニア沿岸など、北太平洋全域に分布しています。さらに、天皇海山列、マリアナ諸島、ハワイ諸島など、太平洋の広い範囲で見られます。

この広い分布域は、クサカリツボダイが北太平洋の様々な環境に適応していることを示しています。具体的には、水深146~500メートルの範囲で、特に水深300~500メートルの平頂海山(頂上部が平らになっている海山)を主な生息域としています。

2-2. クサカリツボダイの生息環境

クサカリツボダイは、水深100m以深の海底に生息する深海魚です。特に、北太平洋の平頂海山を主な生息域として、その周辺でオキアミ類、サルパ、ウキビシガイ、ハダカイワシ類などを捕食しています。

クサカリツボダイは、生息環境に合わせて、独特の体形と生態を進化させてきました。体は長楕円形で側扁しており、背部外郭は背びれの起部までは緩く直線状に上昇し、背びれ基底部でなだらかに降下して尾柄に達します。腹びれと肛門の間に隆起縁があり、吻端はとがっています。

また、頭部と肩帯部に多くの骨板が露出し、骨板の表面に放射状の隆起があるのも特徴です。これらの特徴は、深海での生活に適応した結果だと考えられています。

2-3. クサカリツボダイの産卵と幼魚の移動

クサカリツボダイは、1~2年後に成熟して産卵場に戻り、11月~翌年2月ころに産卵します。産卵場は、天皇海山列海域にあるとされています。

生まれた稚魚は海流に乗って成育場へ移動しますが、一部はカリフォルニア沿岸、天皇海山列、伊豆諸島周辺海域などにも到達します。このことは、クサカリツボダイが幼魚の段階でも広い範囲に分布していることを示しています。

2-4. まとめ

クサカリツボダイは、北太平洋に広く分布する深海魚で、水深100m以深の海底、特に平頂海山を主な生息域としています。日本国内では、千葉県房総半島沖、八丈島、小笠原諸島、九州・パラオ海嶺北部、そして鹿児島県種子島沖などから記録されており、その分布域は非常に広範囲にわたります。

クサカリツボダイは、深海という特殊な環境に適応した独特の体形と生態を持っています。また、幼魚は海流に乗って広い範囲に移動することが確認されており、その分布拡大に重要な役割を果たしていると考えられます。

クサカリツボダイの生息域や分布を理解することは、その資源管理や保全に不可欠です。今後の研究では、より詳細な生息環境や移動経路を解明することで、クサカリツボダイの資源を持続的に利用するための有効な対策が期待されます。

参考文献

クサカリツボダイ(くさかりつぼだい)とは? 意味や使い方 …

種子島から得られた琉球列島初記録のクサカリツボダイ – Nature …

干物界の最高級魚「つぼ鯛」とは?その美味しさと食べ方をご …

3. クサカリツボダイの食性と摂取方法

3-1. クサカリツボダイの食性

クサカリツボダイは、主にサルパやウキビシガイなどのプランクトンを食しています。これらの生物は、栄養価が低く、クサカリツボダイが同所的に生息するキンメダイやカガミダイが摂餌するキュウリエソやハダカイワシなどの栄養価の高い生物とは対照的です。そのため、クサカリツボダイは、餌の競合に負けて栄養価の低い餌生物を食べている可能性があります。

餌の競合に負けて栄養価の低い餌生物を食べていること、産卵を毎年行うことから、クサカリツボダイは徐々に体高が低くなり、痩せ方をして死んでいくと考えられています。

この食性は、クサカリツボダイの資源管理において重要な要素となります。クサカリツボダイが栄養価の低い餌を食べることで、成長が遅く、資源量が減ってしまう可能性があります。そのため、クサカリツボダイの資源管理を行う際には、餌となるプランクトンの量や質を考慮する必要があります。

3-2. クサカリツボダイの漁獲方法と流通

クサカリツボダイは、主に底引き網や延縄漁で漁獲されます。特に天皇海山では、底引き網漁が盛んに行われており、クサカリツボダイは重要な漁獲対象種となっています。

流通面では、クサカリツボダイは、鮮魚として市場に出回ることは少なく、主に干物として販売されます。特に、クサカリツボダイの干物は、ツボダイの干物として販売されることが多く、消費者はクサカリツボダイをツボダイとして食べている場合が多いです。

3-3. クサカリツボダイの美味しい食べ方

クサカリツボダイは、白身魚で、淡白な味わいが特徴です。身は硬めで、コリッとした食感が楽しめます。脂は少なく、しつこくありません。

クサカリツボダイは、刺身、煮付け、焼き物など、様々な調理法で楽しむことができます。

刺身:鮮度が良ければ、刺身で食べることができます。コリッとした食感が楽しめます。

煮付け:煮付けにすると、身が柔らかく、旨味が染み込みます。ご飯によく合います。

焼き物:焼き物にすると、表面は香ばしく、中はふっくらと仕上がります。

3-4. まとめ

クサカリツボダイは、栄養価の低いプランクトンを主食とするため、成長が遅く、資源量が減ってしまう可能性があります。また、流通面では、ツボダイとして販売されることが多く、消費者はクサカリツボダイをツボダイとして食べている場合が多いです。

クサカリツボダイは、刺身、煮付け、焼き物など、様々な調理法で楽しむことができます。鮮度が良ければ、刺身で食べることができ、コリッとした食感が楽しめます。煮付けにすると、身が柔らかく、旨味が染み込みます。焼き物にすると、表面は香ばしく、中はふっくらと仕上がります。

クサカリツボダイは、美味しくて栄養価の高い魚です。機会があれば、ぜひ味わってみてください。

参考文献

ツボダイ属について&生物一覧ー | 市場魚貝類図鑑

PDF クサカリツボダイの資源生物学的特性について 柳本 卓(遠洋 …

隠れたうまい深海魚クサカリツボダイ | ヌローライフ

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