項目 | 内容 |
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概要 | 分類、特徴、生態、保護状況 |
分布地域 | 生息地、分布域の現状、保全 |
食性 | 食性、外来種の影響、保全 |
繁殖行動 | 繁殖行動、環境変化の影響、保全 |
保護活動 | 保護活動の現状、課題、取り組み |
人間との関係 | 観光、研究、保護活動 |
1. オガサワラヨシノボリの概要
オガサワラヨシノボリの分類と特徴
オガサワラヨシノボリは、スズキ目ハゼ科ヨシノボリ属に属する淡水魚です。小笠原諸島にのみ生息する固有種であり、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IA種に指定されています。体長は7cm程度にまで成長し、体色は黒や褐色で、体に斑紋がある個体もいます。クロヨシノボリと似ていますが、クロヨシノボリに見られる胸鰭の根元にある三日月状の斑紋が見られないことで見分けることができます。腹部の鱗や産卵行動の違いにより別種と判明したようです。
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島(父島、母島)の上流~中流域で見られます。小笠原諸島にのみ生息しており、生息地域の開発により生息環境が変化していることから環境省のレッドリスト 絶滅危機IA種に指定されています。学名は「Rhinogobius ogasawaraensis」と生息地である小笠原の名前が入っています。
オガサワラヨシノボリは、吸盤状の腹鰭を使って岩に引っ付くことができます。父島・母島で若干の形態的な差異が見られるようです。
分類 | スズキ目ハゼ科ヨシノボリ属 |
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特徴 | 体長7cm、体色は黒や褐色、胸鰭の根元には三日月状の斑紋がない |
生息地 | 小笠原諸島(父島、母島)の上流~中流域 |
保護状況 | 環境省レッドリスト 絶滅危機IA種 |
オガサワラヨシノボリの生態
オガサワラヨシノボリは、川で孵化した後、海へ降河し成長し、その後また川へ戻ってくる習性があります。このため、すみだ水族館では、初めは淡水、その後海水、再び淡水で飼育を行いました。
オガサワラヨシノボリは、主に砂礫底の淵で付着藻類や流下昆虫などを摂餌します。産卵は淡水域で行われ、1~5月に石などの産卵基質の下面に卵を産み付けます。卵は長径2.0 mm、短径0.7 mmのいわゆる小卵で、孵化仔魚は全長約3.3 mmです。
孵化後、仔魚は直ちに海域へと流され、1~2ヵ月の浮遊期を経たあと、全長15~20 mmに成長して再び河川を遡上します。遡上は4月頃に始まり、6月にピークを迎えます。外部形態から推測された本種の生物学的最小形は雌雄共に30 mm前後で、多くの個体は1年で成熟するようです。最大全長は90 mmですが、平均的には40 mm程度です。
孵化 | 川で孵化 |
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成長 | 海で成長 |
遡上 | 成長後、川に戻る |
食性 | 付着藻類や流下昆虫などを摂餌 |
産卵 | 1~5月に石などの産卵基質の下面に卵を産み付ける |
卵の大きさ | 長径2.0 mm、短径0.7 mmのいわゆる小卵 |
孵化仔魚 | 全長約3.3 mm |
浮遊期 | 1~2ヵ月 |
遡上時期 | 4月頃から始まり、6月にピークを迎える |
成熟 | 1年で成熟 |
最大全長 | 90 mm |
平均全長 | 40 mm |
オガサワラヨシノボリの保護状況
オガサワラヨシノボリは、生息地の開発や環境変化により数が減少しつつあり、保護が急務となっています。1999年に環境省レッドリストの絶滅危惧IB類に指定され、2007年の改訂版レッドリストでは、より絶滅の危険性の高いIA類へとランクが変更されました。
オガサワラヨシノボリは、歴史的に分布域が限定されている上、河川改修工事や少雨化の影響により生息場所が減少しています。
オガサワラヨシノボリの保護には、生息地保全や系統保存など、包括的な保護施策が必要と考えられています。
指定 | 環境省レッドリスト 絶滅危惧IA種 |
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原因 | 生息地の開発や環境変化 |
対策 | 生息地保全、系統保存 |
まとめ
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島にのみ生息する固有種で、絶滅危惧IA種に指定されています。吸盤状の腹鰭を使って岩に引っ付くことができ、川で孵化した後、海へ降河し成長し、その後また川へ戻ってくる習性があります。
オガサワラヨシノボリは、生息地の開発や環境変化により数が減少しつつあり、保護が急務となっています。生息地保全や系統保存など、包括的な保護施策が必要と考えられています。
2. オガサワラヨシノボリの分布地域
オガサワラヨシノボリの生息地
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島にのみ生息する固有種です。具体的には、父島列島に属する弟島1河川・兄島2河川・父島14河川と、母島列島に属する母島4河川の計4島21河川から分布が確認されています。
オガサワラヨシノボリは、感潮域から滝の連続する上流域まで広く生息し、主に砂礫底の淵で付着藻類や流下昆虫などを摂餌します。
島 | 河川数 |
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父島列島 | 17 |
母島列島 | 4 |
合計 | 21 |
オガサワラヨシノボリの分布域の現状
オガサワラヨシノボリの生息地は、開発や環境変化の影響を受けて減少しています。特に、父島の西側は、島民の居住区や生活道路に近く、森林伐採や河川改修などが急速に進められ、河川環境が著しく悪化しています。
小笠原諸島の気候は亜熱帯性および海洋性という特徴をもち、1年を通じて高温ですが、年間降水量は約1
父島返還後(1969~2000年)の年間降水量は、戦前(1907~1943年)に比べて約20%少なくなり、明らかに少雨化が進行しています。このことから、将来、河口閉塞期間が長期化することによって稚魚の新規加入の頻度や量が減少し、個体群の機会的な絶滅リスクが増大する危険性があるので、定期的な分布調査と主要個体群のモニタリングの継続が必要であると考えられます。
問題 | 内容 |
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開発 | 父島の西側は、島民の居住区や生活道路に近く、森林伐採や河川改修などが急速に進められ、河川環境が著しく悪化している |
渇水 | 小笠原諸島の気候は亜熱帯性および海洋性という特徴をもち、1年を通じて高温ですが、年間降水量は約1,300 mmと少なく、河川は常に渇水傾向にあります。夏季にはその程度が著しく、オガサワラヨシノボリの生息する一部の河川では、全流程にわたって水が完全に干上がる場所も見られます。 |
少雨化 | 父島返還後(1969~2000年)の年間降水量は、戦前(1907~1943年)に比べて約20%少なくなり、明らかに少雨化が進行しています。 |
オガサワラヨシノボリの分布域の保全
オガサワラヨシノボリをはじめとする小笠原諸島の淡水生物は通し回遊型の生活環を基本とするため、河川と海域の連続性はきわめて重要です。しかし、河川は恒常的に水が不足し河口閉塞しています。さらに、少雨化の進行や河川改修工事などにより河口の閉塞期間は増加しているように思われます。
オガサワラヨシノボリの繁殖期・遡上期は1月から7月頃まで続くと推定されていることから、定期的に河口部の土砂を除去し、流下や遡上機会を確保するなどの対策が必要であると考えられます。また、再生産や稚魚の定着にきわめて重要なこの時期には特に、流路を分断する改修工事は回避すべきです。
オガサワラヨシノボリを従来の生息地で長期的に保護する場合、保全地域を指定することが有効です。小笠原諸島では、オガサワラヨシノボリをはじめ、在来淡水生物のほとんどが通し回遊を行うことから、河口から源流までの河川全体を保全地域に指定することが必要です。
対策 | 内容 |
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河川と海域の連続性 | 河川と海域の連続性を保全する必要がある |
保全地域 | 河口から源流までの河川全体を保全地域に指定する必要がある |
まとめ
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島の4島21河川に生息しています。しかし、生息地は開発や環境変化の影響を受けて減少しています。特に、父島の西側は、島民の居住区や生活道路に近く、森林伐採や河川改修などが急速に進められ、河川環境が著しく悪化しています。
小笠原諸島の気候は亜熱帯性および海洋性という特徴をもち、1年を通じて高温ですが、年間降水量は約1
オガサワラヨシノボリの保護には、河川と海域の連続性を保全し、河口から源流までの河川全体を保全地域に指定することが必要です。
3. オガサワラヨシノボリの食性
オガサワラヨシノボリの食性
オガサワラヨシノボリは、主に砂礫底の淵で付着藻類や流下昆虫などを摂餌します。
主な餌 | 付着藻類、流下昆虫 |
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オガサワラヨシノボリの食性と外来種
有人島である父島と母島では、国際自然保護連合(IUCN) の定める世界の侵略的外来種ワースト100に挙げられているコイCyprinus carpio・カダヤシGambusia affinis・グッピーPoecilia reticulata・モザンビークティラピアOreochromis mossambicusが生息し、在来種の摂餌生態や忌避行動などに影響を及ぼしている可能性が考えられます。
特にモザンビークティラピアは河口部付近でオガサワラヨシノボリの遡上稚魚を捕食している可能性があり、詳細な調査が必要であると考えられます。
外来種 | 影響 |
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コイ | 在来種の摂餌生態や忌避行動などに影響 |
カダヤシ | 在来種の摂餌生態や忌避行動などに影響 |
グッピー | 在来種の摂餌生態や忌避行動などに影響 |
モザンビークティラピア | オガサワラヨシノボリの遡上稚魚を捕食している可能性がある |
オガサワラヨシノボリの食性と保全
オガサワラヨシノボリの食性と外来種の影響を考慮し、外来種の駆除や侵入防止などの対策が必要となります。
対策 | 内容 |
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外来種駆除 | モザンビークティラピアなどの駆除 |
侵入防止 | 外来種の侵入防止対策 |
まとめ
オガサワラヨシノボリは、主に砂礫底の淵で付着藻類や流下昆虫などを摂餌します。
しかし、外来種であるコイ、カダヤシ、グッピー、モザンビークティラピアなどの影響を受けており、特にモザンビークティラピアはオガサワラヨシノボリの遡上稚魚を捕食している可能性があります。
オガサワラヨシノボリの食性と外来種の影響を考慮し、外来種の駆除や侵入防止などの対策が必要となります。
4. オガサワラヨシノボリの繁殖行動
オガサワラヨシノボリの繁殖行動
オガサワラヨシノボリの産卵は、淡水域で行われ、1~5月に石などの産卵基質の下面に卵を産み付けます。卵は長径2.0 mm、短径0.7 mmのいわゆる小卵で、孵化仔魚は全長約3.3 mmです。
孵化後、仔魚は直ちに海域へと流され、1~2ヵ月の浮遊期を経たあと、全長15~20 mmに成長して再び河川を遡上します。遡上は4月頃に始まり、6月にピークを迎えます。
産卵場所 | 淡水域 |
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産卵時期 | 1~5月 |
産卵基質 | 石などの下面 |
卵の大きさ | 長径2.0 mm、短径0.7 mm |
孵化仔魚 | 全長約3.3 mm |
浮遊期 | 1~2ヵ月 |
遡上時期 | 4月頃から始まり、6月にピークを迎える |
オガサワラヨシノボリの繁殖行動と環境変化
オガサワラヨシノボリの繁殖期・遡上期は1月から7月頃まで続くと推定されていることから、定期的に河口部の土砂を除去し、流下や遡上機会を確保するなどの対策が必要であると考えられます。
また、再生産や稚魚の定着にきわめて重要なこの時期には特に、流路を分断する改修工事は回避すべきです。
問題 | 内容 |
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河口閉塞 | 河口部の土砂が堆積し、流下や遡上機会が減少 |
改修工事 | 流路を分断する改修工事は、再生産や稚魚の定着に悪影響 |
オガサワラヨシノボリの繁殖行動と保全
オガサワラヨシノボリの繁殖行動を考慮し、河川環境の保全、特に河口部の土砂除去や改修工事の回避などが重要となります。
対策 | 内容 |
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河口部の土砂除去 | 定期的に河口部の土砂を除去し、流下や遡上機会を確保 |
改修工事の回避 | 再生産や稚魚の定着に重要な時期には、流路を分断する改修工事は回避 |
まとめ
オガサワラヨシノボリの産卵は、淡水域で行われ、1~5月に石などの産卵基質の下面に卵を産み付けます。孵化後、仔魚は直ちに海域へと流され、1~2ヵ月の浮遊期を経たあと、全長15~20 mmに成長して再び河川を遡上します。
オガサワラヨシノボリの繁殖行動を考慮し、河川環境の保全、特に河口部の土砂除去や改修工事の回避などが重要となります。
5. オガサワラヨシノボリの保護活動
オガサワラヨシノボリの保護活動の現状
オガサワラヨシノボリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA種に指定されており、保護活動が進められています。
すみだ水族館では、開業時より小笠原村で採集したオガサワラヨシノボリの展示を行っており、2012年には繁殖に成功し、稚魚の展示を開始しました。
指定 | 環境省レッドリスト 絶滅危惧IA種 |
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取り組み | すみだ水族館での展示と繁殖 |
オガサワラヨシノボリの保護活動の課題
オガサワラヨシノボリの保護活動は、生息地の開発や環境変化、外来種の影響など、多くの課題に直面しています。
特に、父島の西側は、島民の居住区や生活道路に近く、森林伐採や河川改修などが急速に進められ、河川環境が著しく悪化しています。
小笠原諸島の気候は亜熱帯性および海洋性という特徴をもち、1年を通じて高温ですが、年間降水量は約1
問題 | 内容 |
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開発 | 父島の西側は、島民の居住区や生活道路に近く、森林伐採や河川改修などが急速に進められ、河川環境が著しく悪化している |
渇水 | 小笠原諸島の気候は亜熱帯性および海洋性という特徴をもち、1年を通じて高温ですが、年間降水量は約1,300 mmと少なく、河川は常に渇水傾向にあります。夏季にはその程度が著しく、オガサワラヨシノボリの生息する一部の河川では、全流程にわたって水が完全に干上がる場所も見られます。 |
外来種 | コイ、カダヤシ、グッピー、モザンビークティラピアなどの外来種の影響がある |
オガサワラヨシノボリの保護活動の取り組み
オガサワラヨシノボリの保護活動では、生息地の保全、外来種の駆除、系統保存などの取り組みが行われています。
生息地の保全には、河川改修工事の抑制、河口部の土砂除去、水質改善などが重要となります。
外来種の駆除には、モザンビークティラピアなどの駆除や侵入防止対策が必要です。
対策 | 内容 |
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生息地保全 | 河川改修工事の抑制、河口部の土砂除去、水質改善 |
外来種駆除 | モザンビークティラピアなどの駆除 |
系統保存 | 遺伝子資源の保存 |
まとめ
オガサワラヨシノボリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA種に指定されており、保護活動が進められています。
しかし、生息地の開発や環境変化、外来種の影響など、多くの課題に直面しています。
オガサワラヨシノボリの保護活動では、生息地の保全、外来種の駆除、系統保存などの取り組みが行われています。
6. オガサワラヨシノボリと人間の関係
オガサワラヨシノボリと観光
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島の固有種であり、観光資源としても注目されています。
すみだ水族館では、オガサワラヨシノボリを展示することで、多くの人にこの貴重な魚を知ってもらう機会を提供しています。
取り組み | 内容 |
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展示 | すみだ水族館などでの展示 |
オガサワラヨシノボリと研究
オガサワラヨシノボリは、生態や進化の研究対象としても注目されています。
研究者たちは、オガサワラヨシノボリの生態や遺伝子などを調査することで、小笠原諸島の自然環境や生物の進化について貴重な知見を得ています。
研究内容 | 生態、進化 |
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オガサワラヨシノボリと保護活動
オガサワラヨシノボリは、絶滅危惧種に指定されており、保護活動が重要となっています。
環境省や地元住民、研究者など、様々な主体が協力して、オガサワラヨシノボリの生息環境の保全や外来種の駆除などの取り組みを行っています。
主体 | 内容 |
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環境省 | 生息環境の保全 |
地元住民 | 保護活動への参加 |
研究者 | 生態調査、遺伝子調査 |
まとめ
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島の固有種であり、観光資源、研究対象、保護活動の対象として、人間と深い関わりを持っています。
すみだ水族館など、オガサワラヨシノボリを展示する施設が増えることで、多くの人にこの貴重な魚を知ってもらう機会が増え、保護活動への関心が高まることが期待されます。
参考文献
・水族館魚図鑑-オガサワラヨシノボリ(Rhinogobius ogasawaraensis)
・オガサワラヨシノボリが遂に新種記載されました!-小笠原自然 …
・ヨシノボリってどんな魚?さまざまな水域に棲む可愛い生き物 …
・PDF 07-…….m.c..-5.02 – 日本魚類学会
・ヨシノボリ飼育方法!特徴やレイアウト・エサやりについて …
・意外と難しい?ヨシノボリの飼育法(混泳・餌・水温・水質 …
・CiNii 論文 – オガサワラヨシノボリの分布と生息現況
・すみだ水族館、絶滅危惧種「オガサワラヨシノボリ」の繁殖に …
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