哺乳類:バクについて説明

1. バクの特徴と生態

1-1. バクの形態と分布

バクは、奇蹄目バク科に属する動物で、現生種はすべてバク属に分類されます。英名はtapirで、世界中の多くの言語では「タピル」に近い名前で呼ばれています。日本語では、中国語の伝説上の動物「獏」の名を借用して「バク」と呼ばれています。

バクは北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、東南アジアに生息しています。最小種はTapirus kabomaniで、成獣の体長は1.7-2m程度です。体型は流線型で、薮の中を進むのに適しています。肩よりも腰の方が高く、皮膚は分厚く、ヤマバクを除いて体毛は少ないです。ヤマバクは長い体毛で被われ、寒さから身を守るのに役立っているとされています。頸部に鬣状に体毛が伸長する種もおり、これは捕食者から頸部を守る役割があると考えられています。マレーバクは体色が前部と後部が黒・胴体中央部が白ですが、これも夜間では体が分断されたように見え輪郭がつかめず捕食者から身を守る役割があると考えられています。

バクはブタのような体つきをし、ゾウの鼻のような口吻をもっています。吻端は鼻と上唇があわさり、その先端に鼻孔が開口しています。眼は小型で眼窩の奥の方にあり、薮の中で眼が傷つきにくくなっています。四肢は短く頑丈で、前脚が後脚よりも長いという特異な骨格構造を持っています。これは主な生息域には薮が多く、背丈の長い草を掻き分けて走ることに適した形状であるとされています。前肢の指は4本、後肢の趾は3本です。前肢の4本目の指は小型で高い位置にあり、柔らかい地面を移動する時にのみ用いられます。指趾は蹄状になっていますが、接地面は球状です。奇蹄目はその名が示すとおり、通常奇数の指をもつはずですが、バクの各脚の指の数は、前脚が4本、後脚が3本である点が特徴です。

1-2. バクの生態と行動

バクは主に森林に生息し、夜行性傾向が強いです。水辺を好み、採食や避暑、外部寄生虫から身を守るなどの理由から水中で過ごすことも多いです。幼獣を連れた母親以外は、主に単独で生活します。危険を感じると水中へ逃げ込みます。

バクは草本、木の葉・芽・若枝、果実、水生植物などを食べます。繁殖様式は胎生で、周年繁殖します。交尾前の儀式的な行動として、お互いに鳴き声を交し合うことがあります。雌雄は互い違いの向きになり、お互いの陰部の臭いをかぎながら回り始めます。回るのが早くなると共に互いの耳介や脇腹・四肢に噛みついたり、吻端で腹を突くこともあります。1回に1頭の幼獣を産みます。

1-3. バクの現状と課題

バクは、皮革が利用されることもあり、手綱や鞭の原料とされることもあります。ゴムやトウモロコシなどを食害することもあります。

近年、森林伐採や農地開発、ダム建設などによる生息地の破壊、食用や皮革用・スポーツハンティングなどの狩猟により生息数が減少している種もいます。

1-4. まとめ

バクは、その独特の形態と生態を持つ動物です。ゾウの鼻のような口吻や奇蹄目でありながら奇数でない指の本数など、特徴的な進化を遂げてきました。しかし、近年では生息地の破壊や狩猟によって、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。バクの保護のためには、生息地の保全、狩猟の規制、啓発活動など、様々な取り組みが必要となります。

バクは、私たち人間が共有する地球上の貴重な生物です。バクの保護活動に積極的に参加し、未来の世代にもバクの姿を見せることができるよう、一人ひとりが意識を高めていくことが大切です。

参考文献

バクはどんな動物? 特徴、生態、生息地について解説 マレー …

バク科とは – 生態や形態の特徴解説 – Zukan(図鑑)

バク – Wikipedia

2. バクの分布と生息地

2-1. バクの仲間たちの分布

バクは、かつてはヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸全土に生息していましたが、現在は東南アジア、中米、南米のみに5種が残るのみとなっています。

現存するバクの仲間は、次の5種に分類されます。

マレーバク: アジアに生息する唯一のバクです。マレー半島とスマトラ島に分布しています。

ベアードバク: 中米に生息するバクです。メキシコ南部からパナマにかけて分布しています。

ヤマバク: 南米に生息するバクです。コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、ブラジルに分布しています。

アメリカバク: 南米に生息するバクです。コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジルに分布しています。

ブラジルバク: 南米に生息するバクです。ブラジル東部に分布しています。

これらのバクたちは、それぞれ異なる生息環境に適応して進化してきました。例えば、マレーバクは熱帯雨林に、ベアードバクは乾燥した森林地帯に、ヤマバクは山岳地帯に、アメリカバクは湿地帯に生息しています。

2-2. マレーバクの生息地

マレーバクは、ミャンマー南部からマレー半島、スマトラ島にかけて分布しています。生息地は、山地の雲霧林から分断化された低地の森林まで、広範囲にわたります。湖や河川の近くや湿地帯などの水辺を利用し、原生林や二次林に生息しますが、低地の常緑樹林は特に重要な生息地となっています。

マレーバクは、森林周辺のアブラヤシなどを栽培する農地や農道、林業地でも見られることがあります。

2-3. 生息地の減少と絶滅危惧種

マレーバクは、森林開発による生息地の減少、密猟、交通事故などによって、個体数が減少しています。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、マレーバクは「EN(Endangered:危機)」に分類されており、絶滅の危機に瀕しています。

生息地の減少は、マレーバクの生存にとって大きな脅威となっています。マレーバクは、広大な森林が必要であり、分断された森林では十分な餌や繁殖相手を見つけることが難しくなります。

2-4. まとめ

バクは、かつては世界各地に分布していましたが、現在は限られた地域にのみ生息しています。特にマレーバクは、生息地の減少や密猟などの影響を受けて、絶滅の危機に瀕しています。

バクの保護には、生息地の保全、密猟の防止、交通事故対策など、様々な取り組みが必要です。私たち一人ひとりが、バクの現状に関心を持ち、保護活動に協力していくことが大切です。

参考文献

【マレーバクとは】特徴や生息地・絶滅危惧種保護の取り組み …

マレーバクの生態と性格は?野生での生息地はどこ? – 生物 …

【マレーバク|動物図鑑】特徴と生態 | 動物生き物サイト

3. バクの食性と摂取量

3-1. バクの食性:多様な植物を食べる雑食性動物

バクは、主に木の葉、果実、草、水草などを食べる草食動物です。しかし、時にはサトウキビなどの農作物を食べることもあり、人間にとって害獣とみなされることもあります。その食性は、生息環境によって大きく変化します。アマゾンの地域では、アブラナ科、マメ科、アナカルディア科の植物の種子や果実が主食となります。セラードでは、大西洋岸森林に植生が移行している場所では、新芽や葉を食べることも確認されています。さらに、アマゾンやパンタナールの冠水地域では、水生植物も重要な食料源となります。

バクは、特にヤシの果実を好むことが知られています。ブリチ(Mauritia flexuosa)、ジェリーバ(Syagrus romanzoffiana)、パルミト・ジュサラ(Euterpe edulis)、パトゥア(Oenocarpus bataua)、イナジャ(Attalea maripa)など、様々な種類のヤシの果実を食べています。これらの果実は、バクにとって栄養価の高い食料であり、消化しやすいことから、バクはこれらの果実を積極的に摂取しています。

3-2. 種子散布者としての役割

バクは、果実を食べる際に種子をそのまま排出したり、嘔吐によって種子を排出したりすることがあります。この行動によって、バクは植物の種子散布に貢献していると考えられています。バクは、他の動物に比べて移動距離が長いため、広範囲にわたって種子を散布することが可能です。この種子散布は、森林の再生や生態系の維持に重要な役割を果たしています。

バクは、特に森林の再生において重要な役割を果たしています。バクは、森の中を移動する際に、獣道を作り、その獣道は他の動物たちにとっても利用されます。この獣道は、森林の植物の分布を広げるのに役立ち、森林の再生を促進しています。また、バクは、果実を食べることで、植物の種子を散布し、新しい植物の生育を促しています。

3-3. バクの摂取量と影響

バクは、体重の約10%の植物を毎日食べるといわれています。これは、他の草食動物に比べて、かなり多くの量です。バクは、体重が大きいことと、活動的な動物であることから、多くのエネルギーを必要としています。バクが多くの植物を食べることで、森林の植生に影響を与えることもあります。例えば、バクが特定の種類の植物を好んで食べることで、その植物の個体数が減少することがあります。

バクは、森林の生態系に大きな影響を与えていることがわかります。バクは、植物の種子散布、森林の再生、そして植生の変化に貢献しています。バクは、森林の生態系にとって欠かせない存在であると言えるでしょう。

3-4. まとめ

バクの食性は、生息環境によって大きく変化し、様々な種類の植物を食べる雑食性動物です。特にヤシの果実を好むことが知られています。バクは、種子散布者としての役割を担い、森林の再生や生態系の維持に貢献しています。また、体重の約10%の植物を毎日食べることで、森林の植生に影響を与えていることも明らかになりました。バクは、森林の生態系にとって重要な役割を果たしていることがわかります。

参考文献

バク:特徴、摂食、繁殖、生息地、好奇心

バク | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

バク(ばく)とは? 意味や使い方 – コトバンク

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