グラン・バッサム歴史都市とは?世界遺産についての解説

グラン・バッサム歴史都市の概要
項目 内容
位置 コートジボワール南コモエ州
登録年 2012年
登録基準 (iii)文化的伝統の伝承、(iv)歴史的段階の代表
構成資産 歴史都市、灯台
面積 400km2 (世界遺産登録部分は1.1km2)
主な見どころ ヨーロッパ人居住地区、行政地区、商業地区、ンズィマ人地区、灯台

1. グランバッサム歴史都市の概要とは

要約

グラン・バッサムの歴史都市の概要

グラン・バッサム歴史都市は、コートジボワールの南コモエ州の古都グラン・バッサムのうち、フランス植民地時代に築かれた歴史的な町並みが残る地域などを対象として、2012年にユネスコの世界遺産に登録されました。植民地時代の古都というだけでなく、独立運動においても重要な役割を果たしたグラン・バッサムの歴史都市は、コートジボワールの世界遺産の中ではコモエ国立公園(1983年登録)以来約30年ぶりの新規登録物件となっただけでなく、同国では初の文化遺産登録となりました。

グラン・バッサム(大バッサム)の名前の由来は、コモエ川河口のことをアルサム と呼んでいた人々がかつて存在したことによるといいます。その人々はこの地に移り住んだ人々だったといいますが、この地には時代ごとに様々な民族が流入しました。グラン・バッサム域内の漁村で暮らすンズィマ人も15世紀末から16世紀初頭にこの地に定住するようになった人々とされます。

19世紀になるとイギリスとフランスが領有をめぐって争うようになり、フランスは一帯を治めていた首長アテクブレと条約を結び、要塞を建設する許可も得ました。1843年に建設されたその要塞がヌムール要塞で、現存はしませんが、グラン・バッサムの都市計画は元来このヌムール要塞から拡張する形で展開したものであった。

19世紀後半になるとフランス商人が進出するようになり、その一人であったアルチュール・ヴェルディエが初代総督となりました(在任1870年 – 1880年)。そして、1885年のベルリン条約でフランスの領有が確定すると、フランスは本格的な都市建設に乗り出し、グランバッサムを最初の首都とした。グラン・バッサムはエブリエ潟と大西洋に挟まれた細長い土地に発達した。

グラン・バッサム歴史都市の概要
項目 内容
位置 コートジボワール南コモエ州
登録年 2012年
登録基準 (iii)文化的伝統の伝承、(iv)歴史的段階の代表
構成資産 歴史都市、灯台
面積 400km2 (世界遺産登録部分は1.1km2)
主な見どころ ヨーロッパ人居住地区、行政地区、商業地区、ンズィマ人地区、灯台

グラン・バッサムの歴史都市の構成

グラン・バッサム歴史都市は、歴史都市灯台という2つの構成資産に分かれています。歴史都市はさらに、ヨーロッパ人の居住地区行政地区商業地区ンズィマ人地区という4つの要素に分けられます。

居住地区は、約30haの土地に130軒ほどの建物が見られます。住居の基本設計としてはファサードに柱があることや、羽根板のついた鎧戸の存在が指摘されており、新古典主義様式が多く見られます。居住地区と名がついてはいるが、官舎や学校といった公共性の高い建物もいくらかは見られます。

行政地区は、約23haの地区に、植民地時代の官庁などが残っています。古い建物としては首都になった1893年に建てられた旧総督府(現 服飾博物館)、その翌年に建てられた旧郵便局・税関(現 グラン・バッサム文化遺産センター)などがあります。

商業地区は、約15haの地区で、市内でも最古に属する街区です。19世紀後半に建設が始まり、1920年代から30年代頃の建物も多く残ります。植民地時代にはコートジボワール最大の商業地でしたが、現在ではその機能は失われ、中産階級から低所得者層が多く住んでいます。ンズィマ人地区は、歴史都市の東端を占める地区で、面積は約10haです。ヨーロッパ人の入植以前からンズィマ人が暮らす集落でしたが、グラン・バッサムの都市計画が拡張していくに従い、計画都市に組み込まれ、格子状に整備された街路が見られます。

歴史都市の構成要素
要素 内容
居住地区 約30ha、130軒の建物、新古典主義様式
行政地区 約23ha、旧総督府、旧郵便局・税関など
商業地区 約15ha、19世紀後半に建設開始、コートジボワール最大の商業地だった
ンズィマ人地区 約10ha、伝統的な漁村の生活様式が残る

グラン・バッサムの歴史都市の登録基準

グラン・バッサム歴史都市は、世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録されました。

(iii) – 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。

(iv) – 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。

世界遺産登録基準
基準 内容
(iii) 文化的伝統や文明の存在を伝承する物証
(iv) 歴史上の重要な段階を物語る建築物や景観

まとめ

グラン・バッサム歴史都市は、フランス植民地時代の歴史を色濃く残す、コートジボワールを代表する世界遺産です。植民地時代の都市計画や建築様式、そしてンズィマ人の伝統的な文化が共存する独特な景観は、歴史と文化の融合を見事に示しています。

世界遺産登録基準(iii)と(iv)を満たしており、植民地時代の文化的伝統と文明の存在を伝承する物証として、歴史上の重要な段階を物語る建築物の集合体として、世界的に認められています。

グラン・バッサム歴史都市は、コートジボワールの歴史と文化を理解する上で重要な場所であり、観光客にとっても魅力的な観光地となっています。

2. グラン・バッサムの歴史と建造物

要約

グラン・バッサムの歴史

グラン・バッサムの歴史は、1843年にフランスが築いたヌムール要塞に始まります。1885年のベルリン条約でコートジボワールのフランス領有が確定すると、その首都として本格的な都市開発が行われました。

他の植民都市に比べてだいぶ時代が下ってから新たに建設されたため、その都市計画にはいくつかの特徴があります。時代遅れで無用の長物と化していた要塞は撤去し、ヨーロッパ人とアフリカ人それぞれの専門居住区を設けました。さらに行政地区や商業地区を分離し、細長い砂洲状の土地に整然とした計画都市が誕生したのです。

グラン・バッサムは1893年に正式に仏領コートジボワールの首都となりましたが、1899年の黄熱病の流行により人口が4分の1にまで激減。1900年にグラン・バッサム北西のバンジェルヴィルに首都が移転しました。その後アビジャンが建設されると、政治・経済の中心はそちらに移ります。

現在は、世界遺産の歴史的町並みだけでなく、美しいビーチを楽しめるリゾート地としても開発が進んでいます。

グラン・バッサムの建造物

グラン・バッサムの歴史地区は、西からヨーロッパ人居住区、行政区、商業区、そして現地のンズィマ人地区の4つに分けられていました。このうちンズィマ人地区以外の3地区が、ヨーロッパ人の築いたコロニアル風の建物が見られるエリアです。

居住区には今も130軒ほどの建物がありますが、その佇まいはどれも上流階級の邸宅といった感じです。その多くがコロニアル様式ないし新古典主義様式で、南国の樹々と良く調和した、明るく涼しげな家々が並んでいます。

行政区には、1893年に建てられた旧総督府を転用した服飾博物館や、その翌年に建てられた郵便局や税関といった歴史的建造物が点在しています。とくに旧郵便局はグラン・バッサム文化遺産センターとなっているので、世界遺産グラン・バッサム観光の際にはまずここを目指すと良いでしょう。

ヨーロッパ人地区の海側一帯は近年リゾート施設が増えているエリアで、浜辺に出ればバカンスを楽しんでいる外港人観光客の姿もたくさん目にすることができますよ。

建造物の様式
地区 様式 特徴
ヨーロッパ人居住区 コロニアル様式、新古典主義様式 上流階級の邸宅、南国の樹木と調和
行政区 コロニアル様式 旧総督府、旧郵便局・税関など
商業地区 コロニアル様式 19世紀後半に建設開始、コートジボワール最大の商業地だった

ンズィマ人地区

半島の東端のンズィマ人地区は、もともとここに住んでいた先住民の集落でした。グラン・バッサムがコートジボワールの首都として整備・拡張されていく過程で、集落も都市の1地区として組み入れられ、碁盤の目状の街路が建設されました。

ンズィマ人は漁業を生業として生活をしてきた人たちで、グラン・バッサムの交易とは基本的に無関係でした。そのため、同じグラン・バッサムの町にあっても、ヨーロッパ人地区とンズィマ人地区では街の雰囲気がガラッと変わります。

とくにこれといって観光名所があるわけではありませんが、ヨーロッパ人の営みとは切り離されたアフリカのローカルな生活を垣間見ることができることが、一番の見どころといえるでしょう。

ンズィマ人地区では、10月末から11月初旬の1週間にわたって、土地の伝統のお祭りが催されます。そのため、この時期を選んでグラン・バッサムを観光するのもおすすめです。

まとめ

グラン・バッサムは、フランス植民地時代の都市計画と建築様式が色濃く残る、歴史的な町です。ヨーロッパ人地区は、コロニアル建築が立ち並ぶ美しい街並みで、当時の繁栄を偲ばせることができます。

一方、ンズィマ人地区は、伝統的な漁村の生活様式が今も残る、アフリカの文化を感じられる場所です。

グラン・バッサムの歴史地区は、フランス植民地時代の歴史とアフリカの伝統文化が融合した、独特な魅力を持つ場所です。

3. グラン・バッサムの世界遺産登録の経緯

要約

世界遺産登録への道のり

コートジボワールの世界遺産条約締約は1981年1月9日のことで、アフリカでは12番目の締約国であった。そして、ニンバ山厳正自然保護区の拡大登録(1982年)、タイ国立公園(1982年)、コモエ国立公園(1983年)と世界遺産(自然遺産)登録を進めたが、ながらく文化遺産の登録はなかった。

このため、コートジボワール当局は文化遺産の登録を強く望み、UNESCO事務局長松浦晃一郎(在任1999年 – 2009年)が2004年に大統領ローラン・バグボ(在任2000年 – 2011年)と会談した際には、グラン・バッサムを文化遺産第1号として推薦する強い意向が示されたという。

コートジボワールの世界遺産の暫定リストにグラン・バッサムが正式に記載されたのは2006年11月29日のことであった。最初の推薦は2008年2月1日に行われたが、それを踏まえた翌年の第33回世界遺産委員会(セビリア)の審議結果は「情報照会」であった。

情報照会決議の理由になったのは、その時点の推薦範囲にンズィマ人地区が含まれていなかったことや、比較研究の不足、保全計画の不備などが理由であった。

登録に向けた改善

コートジボワール当局は2010年に世界遺産基金から登録準備の助成も受けつつ、推薦書を練り直した。再考においてンズィマ人地区も構成資産に含められ、サン=ルイ島(セネガルの世界遺産)、ラム旧市街(ケニアの世界遺産)などにとどまらず、世界遺産未登録の植民都市などまで比較対象に入れる形で「顕著な普遍的価値」の証明が行われるなどした。

改訂された推薦書は2012年1月30日に提出されたが、それに対し、世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、世界遺産としての「顕著な普遍的価値」は認めたものの、緩衝地帯をさらに拡大すべきことなど、管理・保全方面での注文をつけ、再度「情報照会」とすべきことを勧告した。

しかし、その年の第36回世界遺産委員会(サンクトペテルブルク)では、ICOMOSが勧告していたほぼすべての改善要求が併記される形ではあったが、逆転で登録が認められた。

世界遺産登録

世界遺産としての正式登録名は、Historic Town of Grand-Bassam (英語)、Ville historique de Grand-Bassam (フランス語)である。

現在のグラン・バッサムは面積400 km2で、日本でいうと東京23区の約3分の2ほどの面積である。そのうち世界遺産に登録されているのは1.1 km2で、この世界遺産は「歴史都市」(La ville historique

前者はその中がさらに(ヨーロッパ人の)居住地区、行政地区、商業地区、ンズィマ人地区という4つの要素に分けられる。

世界遺産登録情報
項目 内容
正式登録名 Historic Town of Grand-Bassam (英語), Ville historique de Grand-Bassam (フランス語)
構成資産 歴史都市 (La ville historique, ID1322-001), 灯台 (Le phare, ID1322-002)

まとめ

グラン・バッサム歴史都市の世界遺産登録は、コートジボワール当局の強い意志と、世界遺産委員会の厳しい審査を経て実現しました。

登録に至るまでには、推薦範囲の拡大、比較研究の充実、保全計画の強化など、多くの課題を克服する必要がありました。

グラン・バッサム歴史都市の世界遺産登録は、コートジボワールの歴史と文化を世界に発信する重要な一歩となりました。

4. グラン・バッサムの文化的遺産とアフリカの歴史

要約

フランス植民地時代の影響

グラン・バッサムは、19世紀後半から20世紀初頭に築かれた植民都市の例であり、ヨーロッパからの入植者や地元の人々が暮らした商業・行政地区や住宅地などが残っています。

町並みは植民地時代の複雑な社会や独立運動の時代の様子が残っているのが特徴です。

グラン・バッサムは、フランスの植民地支配と、その後の独立運動という、アフリカの歴史における重要な転換期を物語る場所です。

アフリカの伝統文化

グラン・バッサムには、フランス植民地時代の影響だけでなく、アフリカの伝統文化も色濃く残っています。

特に、ンズィマ人地区は、伝統的な漁村の生活様式が今も残る、アフリカの文化を感じられる場所です。

ンズィマ人地区では、伝統的な祭事が行われたり、古来の住居様式が見られたりと、アフリカの文化を肌で感じることができます。

文化的遺産の価値

グラン・バッサム歴史都市は、フランス植民地時代の歴史とアフリカの伝統文化が融合した、独特な文化的遺産です。

植民地時代の建築物とアフリカの伝統的な文化が共存する景観は、歴史と文化の複雑な関係を示しており、世界的に貴重な文化的遺産として評価されています。

グラン・バッサム歴史都市は、アフリカの歴史と文化を理解する上で重要な場所であり、観光客にとっても魅力的な観光地となっています。

まとめ

グラン・バッサム歴史都市は、フランス植民地時代の影響とアフリカの伝統文化が融合した、独特な文化的遺産です。

植民地時代の建築物や都市計画、そしてンズィマ人の伝統的な文化は、アフリカの歴史と文化を理解する上で重要な要素です。

グラン・バッサム歴史都市は、歴史と文化の融合を見事に示す、世界的に貴重な文化的遺産です。

5. グラン・バッサムの伝統的なイベントと祭り

要約

伝統的な祭り

ンズィマ人地区では、10月末から11月初旬の1週間にわたって、土地の伝統のお祭りが催されます。

この祭りは、ンズィマ人の伝統的な文化や生活様式を体験できる貴重な機会です。

祭りの期間中は、伝統的な音楽やダンスが披露されたり、伝統的な料理が振る舞われたりと、賑やかな雰囲気に包まれます。

イベント

グラン・バッサム歴史都市では、伝統的な祭り以外にも、様々なイベントが開催されています。

例えば、音楽フェスティバルや映画祭などが開催され、観光客を楽しませています。

これらのイベントは、グラン・バッサムの歴史と文化を体験する絶好の機会です。

観光客への影響

グラン・バッサム歴史都市の伝統的なイベントや祭りは、観光客にとって魅力的な観光資源となっています。

これらのイベントは、観光客にグラン・バッサムの歴史と文化を深く理解させ、思い出に残る旅を提供します。

また、これらのイベントは、地域経済の活性化にも貢献しています。

まとめ

グラン・バッサム歴史都市では、伝統的な祭りや様々なイベントが開催され、観光客に歴史と文化を体験する機会を提供しています。

これらのイベントは、観光客にとって魅力的な観光資源であり、地域経済の活性化にも貢献しています。

グラン・バッサム歴史都市は、伝統的なイベントや祭りを活かした観光の更なる発展が期待されます。

6. グラン・バッサムの今後の保護と観光への展望

要約

保護の課題

グラン・バッサム歴史都市は、歴史的な建造物が多く残る貴重な場所ですが、近年、老朽化や自然災害による被害が懸念されています。

また、観光客の増加に伴い、環境問題や文化的な影響も懸念されています。

グラン・バッサム歴史都市の保護には、歴史的な建造物の維持管理、環境保護、観光客の増加に対応するインフラ整備など、様々な課題があります。

観光への展望

グラン・バッサム歴史都市は、歴史的な建造物や文化、そして美しいビーチなど、多くの魅力を持つ観光地です。

近年、観光客の増加に伴い、グラン・バッサム歴史都市は、更なる発展が期待されています。

観光客の増加に対応するためには、観光インフラの整備や、観光客向けのサービスの充実が重要です。

持続可能な観光

グラン・バッサム歴史都市の観光は、歴史的な建造物や文化を保護しながら、持続可能な観光を目指していく必要があります。

観光客の増加による環境負荷を軽減し、地域住民の生活を守りながら、観光客に魅力的な体験を提供することが重要です。

そのためには、観光客の分散化、環境保護への意識啓発、地域住民との交流促進など、様々な取り組みが必要です。

まとめ

グラン・バッサム歴史都市は、歴史的な建造物や文化、そして美しいビーチなど、多くの魅力を持つ観光地です。

今後の保護と観光への展望としては、歴史的な建造物の維持管理、環境保護、観光客の増加に対応するインフラ整備など、様々な課題を克服していく必要があります。

持続可能な観光を目指し、歴史的な建造物や文化を保護しながら、観光客に魅力的な体験を提供していくことが重要です。

参考文献

グラン・バッサムの歴史都市 | コートジボワール | 世界遺産 …

グラン・バッサムの歴史都市 | Wikipedia

グラン・バッサムの歴史都市 | 世界遺産を学ぶ

コートジボワールの植民地時代の古都!世界遺産グラン …

コートジボワールの世界遺産「グラン・バッサムの歴史都市 …

グラン-バッサムの歴史都市(グランバッサムのれきしとし)とは …

コートジボワールの世界遺産「グラン・バッサムの歴史都市 …

グラン・バッサムの歴史都市 – グラン・バッサムの歴史都市の …

グラン・バッサム歴史都市 | トラベルタウンズ

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