河南登封の文化財“天地之中”とは?世界遺産についての解説

河南登封の文化財“天地之中”の構成資産
構成資産 時代 説明
嵩山三闕 嵩山太室廟、少室廟、開母廟の石闕。篆書での金石文が刻まれている。
中岳廟 明・清 嵩山太室山南麓の黄盖峰に位置する道教の廟。明時代に造られ、清時代に改修された。
嵩岳寺塔 北魏 嵩山南麓に位置する中国で現存する最古のれんが塔。高さ36.78m。
少林寺建築群 宋・明・清 常住院、初祖庵、塔林などからなる。禅宗の祖庭として知られる。
会善寺 嵩山の四大寺院の一つ。正門をはじめとする8件の構造物に元朝の様式が残されている。
嵩陽書院 儒教の書院。宋明理学の基礎をつくった程顥・程頤もここで講義した。
周公測景台と観星台 中国最古の天文観測施設。観星台は、元代の1279年に郭守敬によって建てられた。
少林寺塔林 唐~現代 少林寺歴代高僧の墓地。唐、五代、宋、金、元、明、清7時代の古塔228基がある。
初祖庵 宋・明・清 少林寺西北の丘に位置する。仏教禅宗の開祖である菩提達磨を記念している。
太室闕 後漢 嵩山太室廟の石闕。高さ3.92m。中国最古の宗教的構造物。

1. 河南登封とは何か

要約

河南登封の地理

河南登封は、中華人民共和国(中国)の河南省に位置する都市です。登封は、中国の五岳の一つである嵩山(すうざん)の麓に広がり、古来より聖なる山として崇められてきました。嵩山は標高1440mで、登封は山の麓に位置するため、豊かな自然に囲まれた環境にあります。登封は、中国初期王朝の一つである夏王朝の存在した場所とされており、歴史的にも重要な場所です。

登封は、中国の伝統的な宇宙観において、天地の中心である「中原」と呼ばれる地域に位置しています。そのため、登封は中国文化の中心として、歴代王朝から重視されてきました。嵩山は、五岳の中心として、天地の中心に位置する聖なる山として、古くから仏教、儒教、道教などの宗教的な建造物群が多く作られるとともに、学術・教育に関する施設も形成されてきました。

登封は、嵩山周辺で歴代の王朝時代に築き上げられてきた歴史的建造物群を有しており、その歴史的価値から、2010年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。世界遺産に登録されたのは、嵩山少林寺をはじめとする8件の歴史的建造物群です。

登封の地理的特徴
特徴 説明
位置 中華人民共和国(中国)河南省
山岳 嵩山(すうざん)の麓
標高 嵩山:1440m
歴史 夏王朝の存在した場所
文化 天地の中心「中原」に位置

登封の交通アクセス

登封へのアクセスは、主に鄭州新鄭国際空港を利用する方法と、洛陽からバスで行く方法があります。鄭州新鄭国際空港は、日本から直行便が運航されており、成田国際空港から約4時間15分、関西空港から約3時間半のフライトです。鄭州新鄭国際空港から登封までは、直行バスで約1時間30分、タクシーなら約1時間です。

洛陽から登封までは、長距離バスで約2時間です。洛陽バスターミナルから少林寺行きのバスが出ており、比較的アクセスしやすいです。

登封市内は、公共交通機関が充実しているとは言えず、タクシーを利用するのが便利です。ただし、タクシーの料金は、日本のタクシーと比べて安価です。

登封の気候

登封は、大陸性気候に属し、夏は高温多湿、冬は乾燥寒冷です。夏は気温が30度を超える日も多く、湿度も高いため、熱中症に注意が必要です。冬は気温が氷点下になる日もあり、防寒対策が必要です。

登封の年間降水量は、約600mmで、雨季は6月から9月です。雨季には、集中豪雨が発生することもあるため、注意が必要です。

登封のベストシーズンは、春と秋です。春は、桜やツツジなど、様々な花が咲き乱れ、景色が美しくなります。秋は、紅葉が美しく、爽やかな気候で過ごしやすいです。

登封の気候
季節 気温 降水量 備考
30度以上 多い 熱中症に注意
氷点下 少ない 防寒対策が必要
春・秋 過ごしやすい 適度 観光に最適

まとめ

河南登封は、中国の五岳の一つである嵩山の麓に位置する都市です。歴史的にも重要な場所であり、世界遺産に登録された歴史的建造物群を有しています。登封へのアクセスは、鄭州新鄭国際空港や洛陽からのバスを利用する方法があります。登封の気候は、大陸性気候で、夏は高温多湿、冬は乾燥寒冷です。

登封は、豊かな自然と歴史文化に触れることができる魅力的な都市です。嵩山や少林寺など、多くの観光スポットがあり、中国の歴史と文化を深く知ることができます。

2. 天地之中の意味とは?

要約

古代中国の宇宙観

古代中国の宇宙観は、「天円地方」すなわち「天は円く、地は四角い」というものでした。この宇宙観では、天と地は巨木や高峰でつながっていると信じられていました。

中国は、中華思想に基づき、自らを天地の中心に置いていました。その中でも中心に位置するとされたのが「中原」で、古代の為政者はここに都を置きました。

嵩山は、五岳の中心として、そこに聳え、天地の中心に位置する聖なる山として、古くから仏教、儒教、道教などの宗教的な建造物群が多く作られるとともに、学術・教育に関する施設も形成されてきました。

古代中国の宇宙観
概念 説明
天円地方 天は円く、地は四角い
天地のつながり 巨木や高峰でつながっている
天地の中心 中原

登封と天地の中心

登封は、古代中国の宇宙観において、天地の中心である「中原」に位置しています。そのため、登封は中国文化の中心として、歴代王朝から重視されてきました。

登封の史跡群は、歴代王朝が「天地の中心」という概念を示したものであり、その思想が、建築物や遺跡に反映されています。

登封の史跡群は、嵩山信仰と強く結びついており、宗教建築物や世俗の建築物が、1500年以上に渡って皇帝が支援し、中国で崇められている聖山「嵩山」を中心に天地の中央として、仏教の思想とも合わさり、伝統や文化などがそれぞれ反映されているという点で評価されています。

登封と天地の中心
場所 説明
登封 天地の中心「中原」に位置
嵩山 五岳の中心、天地の中心に位置する聖なる山
登封の史跡群 歴代王朝が「天地の中心」という概念を示した建造物群

天地之中の思想

「天地之中」の思想は、中国の文化や歴史において重要な役割を果たしてきました。この思想は、中国人が自らを世界の中心に位置づけ、その文化や文明を世界に広めていくという意識を育んできたと言えるでしょう。

「天地之中」の思想は、登封の史跡群だけでなく、中国の様々な文化や芸術にも影響を与えてきました。例えば、中国の伝統的な建築様式や、絵画、彫刻、音楽など、様々な分野に「天地之中」の思想が反映されています。

天地之中の思想
影響 説明
中国文化 中国人が自らを世界の中心に位置づけ、その文化や文明を世界に広めていくという意識を育んできた
建築様式 中国の伝統的な建築様式に反映
絵画・彫刻・音楽 様々な分野に「天地之中」の思想が反映

まとめ

「天地之中」は、古代中国の宇宙観に基づく思想であり、中国は天地の中心に位置し、その中でも中原が中心であるという考え方です。

登封は、この「天地之中」の思想が色濃く反映された場所であり、歴代王朝が「天地の中心」という概念を示した建造物群が数多く存在しています。

「天地之中」の思想は、中国の文化や歴史に大きな影響を与えており、登封の史跡群は、その思想を理解する上で重要な場所と言えるでしょう。

3. 世界遺産への登録経緯

要約

世界遺産登録への道のり

登封の史跡群は、2001年11月29日に「嵩山の史跡群」として世界遺産の暫定リストに掲載されました。

2009年の第33回世界遺産委員会(セビーリャ)で初めて審議されましたが、そのときは嵩山との関連性をはじめとする資産構成についての吟味などが不十分として、「情報照会」と決議されました。

中国政府が提出した追加情報を踏まえた結果、翌年ICOMOSは「登録」を勧告し、その年の第34回世界遺産委員会(ブラジリア)で再審議された結果、登録が認められました。

世界遺産登録までの流れ
内容
2001年 世界遺産の暫定リストに掲載
2009年 情報照会
2010年 世界遺産に登録

登録基準

中国政府は、基準(1)、(2)、(3)、(4)、(6) の適用を主張していました。そのうち、基準 (1)、(2)、(4) の適用にはICOMOSが否定的見解を示し、世界遺産委員会でも覆りませんでした。

最終的に採用されたのは、基準(3)と(6)です。

基準(3)は、「天地の中心」という思想がそこに都を置いたり儀礼を行なったりすることを通じて、中国皇帝の権力と結びついてきたことを示すという点に適用されました。

基準(6)は、「天地の中央」に集中する聖俗の建造物群が、中国文化史上で重要な意味を持ったことや、仏教寺院も聖なる山と共生関係を持つに至ったことなどに対して適用されました。

世界遺産登録基準
基準 説明
(3) 文化的伝統または文明に関する独特な証拠となっている
(6) 顕著な普遍的価値を有する出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある

登録の意義

登封の史跡群の世界遺産登録は、中国の歴史と文化を世界に発信する上で重要な意味を持ちます。

登封の史跡群は、中国の文化や歴史を理解する上で重要な場所であり、世界遺産登録によって、その価値が広く知られるようになりました。

また、世界遺産登録は、登封の史跡群の保護と保存にも役立ちます。

世界遺産登録の意義
意義 説明
中国の歴史と文化の発信 世界に中国の歴史と文化を発信
保護と保存 登封の史跡群の保護と保存に役立つ

まとめ

登封の史跡群は、2001年に世界遺産の暫定リストに掲載され、2009年に情報照会、2010年に世界遺産に登録されました。

登録基準は、(3)「文化的伝統または文明に関する独特な証拠となっている」と(6)「顕著な普遍的価値を有する出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある」です。

登封の史跡群の世界遺産登録は、中国の歴史と文化を世界に発信する上で重要な意味を持ち、保護と保存にも役立ちます。

4. 建造物や遺跡の魅力

要約

嵩山三闕

嵩山三闕は、漢時代の118年から123年にかけて建てられた嵩山太室廟の石闕、少室廟の石闕、開母廟石闕のことで、これらの廟はすでに廃れており、石闕のみが残されています。

これらの石闕は、当時の公式書体であった隷書ではなく、非常に珍しい篆書での金石文が刻まれています。

嵩山三闕は、中国で最も古い宗教建造物の一つであり、当時の建築技術や文化水準の高さを示す貴重な遺構です。

嵩山三闕
名称 時代 説明
嵩山太室廟の石闕 高さ3.92m。中国最古の宗教的構造物。
少室廟の石闕 篆書での金石文が刻まれている。
開母廟石闕 篆書での金石文が刻まれている。

中岳廟

中岳廟は、太室山南麓の黄盖峰に位置し、前漢の武帝が嵩山を訪れた際に建てられた祠宮です。

現存する廟の構造は明時代に造られたもので、清時代に大規模な改修が行われました。

中岳廟は、中国の五岳の中で最も広大な歴史的建築群であり、道教の重要な寺院として、多くの信徒を集めてきました。

中岳廟
特徴 説明
位置 嵩山太室山南麓の黄盖峰
時代 明・清
規模 中国の五岳の中で最も広大な歴史的建築群
宗教 道教の重要な寺院

嵩岳寺塔

嵩岳寺塔は、嵩山南麓に位置し、北魏の520年から525年に建てられた中国で現存する最古のれんが塔です。

この塔は台座、塔身、塔刹から成り、十二辺形で高さは36.78mです。

嵩岳寺塔は、1490年を超える歴史を持つ、人類古建築史の典範とされています。

嵩岳寺塔
特徴 説明
位置 嵩山南麓
時代 北魏
構造 台座、塔身、塔刹から成る。十二辺形。
高さ 36.78m
歴史 1490年を超える歴史を持つ

まとめ

登封の史跡群には、嵩山三闕、中岳廟、嵩岳寺塔など、様々な歴史的建造物が存在します。

これらの建造物は、それぞれ異なる時代や文化を反映しており、中国の歴史と文化を深く理解する上で重要な役割を果たしています。

登封の史跡群を訪れる際には、これらの建造物をじっくりと見学し、その歴史と文化に触れてみてください。

5. 豊富な文化と歴史

要約

少林寺

少林寺は、北魏の孝文帝が跋陀のために命じて、495年に少室山五乳峯に建てさせた仏教寺院です。

527年に渡来僧菩提達磨が禅宗を創始してからは禅宗の祖庭として知られるようになりました。

また、達磨が始祖とされる少林拳の使い手である僧侶たちが、唐の太宗を助けて軍功を立てたことから、拳法でも知られるようになりました。

少林寺
特徴 説明
創建 北魏の495年
宗派 禅宗の祖庭
拳法 少林拳発祥の地
建築 常住院、初祖庵、塔林など

嵩陽書院

嵩陽書院は、北魏の時代に建造された嵩陽寺を起源とし、それから何度も改称されたあと、宋の時代に現在の名称となりました。

当時は儒教を講ずる四大書院の一つに数えられて名を知られていました。

宋明理学の基礎をつくったことで知られる程顥・程頤もここで講義したことがあります。

嵩陽書院
特徴 説明
創建 北魏の484年
改名 宋の1035年
種類 儒教の書院
特徴 中国四大書院の一つ
人物 程顥・程頤が講義

観星台

観星台は、周公測景台のすぐ北に残る天文観測施設で、元代の1279年に、郭守敬によって建てられました。

この時代までの現存する天文施設としては最大級で、当初は 9.46 mだったが、明代に上乗せされた部分が3 m 余りある。

この天文施設は日陰の長さを元に冬至や夏至のほか、緯度の高さなどを算定するものであった。

観星台
特徴 説明
時代
建設 1279年、郭守敬によって建てられた
種類 天文観測施設
規模 この時代までの現存する天文施設としては最大級
役割 冬至や夏至、緯度の高さなどを算定

まとめ

登封の史跡群は、少林寺、嵩陽書院、観星台など、様々な宗教や学問、科学技術の施設が集まっています。

これらの施設は、中国の歴史と文化を深く理解する上で重要な役割を果たしており、登封は、中国の文化と歴史の宝庫と言えるでしょう。

6. 観光地としての魅力

要約

少林寺観光

少林寺は、世界的に有名な寺院であり、多くの観光客が訪れます。少林寺では、カンフーショーや寺院の見学、塔林の散策など、様々な観光を楽しむことができます。

少林寺は、映画やドラマの舞台としても有名で、カンフー映画ファンにとっては聖地と言えるでしょう。

少林寺を訪れる際には、事前にツアーを予約しておくのがおすすめです。ツアーでは、少林寺の歴史や文化について詳しく説明を受けることができます。

少林寺観光
見どころ 説明
カンフーショー 映画のような迫力満点のショー
寺院見学 歴史ある寺院の建築様式や仏像を鑑賞
塔林 少林寺歴代高僧の墓地。様々な様式の塔が林立。
その他 武術体験、宿泊施設など

登封のその他の観光スポット

登封には、少林寺以外にも、中岳廟、嵩岳寺塔、嵩陽書院、観星台など、多くの観光スポットがあります。

これらの観光スポットは、それぞれ異なる歴史や文化を反映しており、登封は、中国の歴史と文化を深く知ることができる魅力的な観光地です。

登封を訪れる際には、少林寺だけでなく、これらの観光スポットも合わせて訪れてみてください。

登封のその他の観光スポット
観光スポット 説明
中岳廟 道教の重要な寺院
嵩岳寺塔 中国最古のれんが塔
嵩陽書院 儒教の書院
観星台 中国最古の天文台

登封のグルメ

登封では、地元の伝統料理を楽しむことができます。

特に、嵩山周辺では、山菜やキノコなど、自然の恵みを活かした料理が人気です。

登封を訪れた際には、ぜひ地元の伝統料理を味わってみてください。

登封のグルメ
料理 説明
山菜料理 嵩山周辺で採れる山菜を使った料理
キノコ料理 嵩山周辺で採れるキノコを使った料理
その他 地元の伝統料理

まとめ

登封は、世界遺産「河南登封の文化財“天地之中”」をはじめ、多くの観光スポットがあり、中国の歴史と文化を深く知ることができる魅力的な観光地です。

少林寺、中岳廟、嵩岳寺塔、嵩陽書院、観星台など、様々な歴史的建造物や遺跡があり、それぞれ異なる歴史や文化を反映しています。

登封を訪れる際には、これらの観光スポットを巡り、中国の歴史と文化に触れてみてください。

参考文献

「天地の中央」にある登封の史跡群 – Wikipedia

天地之中歴史建築群|中国世界遺産の旅ーアラチャイナ …

河南登封の文化財”天地之中”(かなんとうほうのぶんかざい …

中国の世界遺産「『天地の中央』にある登封の史跡群」とは …

【世界遺産】天地之中とは?|少林寺はここに!河南登封の …

「天地の中央」にある登封の史跡群 登録経緯 – Weblio 辞書

「天地の中央」にある登封の史跡群 | 中国 | 世界遺産 …

登封の歴史的建造物群ー天地之中 – 世界遺産を学ぶ

【中国旅行・河南省】「天地の中央」にある登封の史跡群 …

河南登封の文化財”天地之中 – トラベルタウンズ

空から見た登封「天地之中」歴史建築群 河南省

(5)世界遺産「天地の中央」史跡群観星台と周公測景台河南省

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