水銀関連遺産:アルマデンとイドリアとは?世界遺産についての解説

水銀関連遺産:アルマデンとイドリアの世界遺産登録の概要
項目 アルマデン イドリア
位置 スペイン・カスティーリャ=ラ・マンチャ州シウダ・レアル県 スロベニア・プリモルスカ地方
発見時期 古代ローマ時代 1490年代
操業停止時期 2004年 1994年
世界遺産登録年 2012年 2012年
登録基準 (ii)(iv) (ii)(iv)

1. アルマデンとイドリアの地理

要約

1-1. アルマデンの地理

スペイン南西部のアルマデンは、首都マドリードから南西に約250kmの場所に位置します。シウダ・レアルの町からはバスで約2時間程で到着します。

アルマデン旧市街は、古代ローマ帝国の時代から水銀を生産し続けたアルマデン鉱山から中世の街並みがしっかりと残されている市街地までを含む、およそ48ヘクタールの範囲が世界遺産として登録されています。

水銀を他の町に運ぶために使われた道や旧監督官の邸宅、炉の遺構などかつての水銀生産がどのように行なわれていたかを垣間見ることができます。また、水銀販売所としてつくられた施設は、現在は博物館として再利用され、アルマデンとイドリアの世界遺産を観光しにきた多くの人々が訪れます。

サン・ミゲル礼拝堂は1645年に建設され、歴史的価値のある建造物の造りを、間近で楽しむことができます。当時のままの建造物や街並みが多く遺されている世界遺産なので、アルマデンとイドリアのかつての繁栄や鉱夫たちの暮らしに思いを馳せながら、タイムスリップしたかのような旅を楽しめます。

アルマデンの地理的特徴
項目 内容
位置 スペイン南西部のシウダ・レアル県
アクセス マドリードから南西に約250km、シウダ・レアルからバスで約2時間
世界遺産登録範囲 約48ヘクタール
主な見どころ 旧市街、水銀販売所、サン・ミゲル礼拝堂、ブスタマンテ炉など

1-2. イドリヤの地理

イドリアはスロベニアの首都リュブリャナから、西におよそ90kmの場所に位置し列車でおよそ1時間強で到着します。

イドリアの旧市街地は、アルマデンがローマ帝国時代から水銀生産を始めていたのに対し、イドリアでは1400年代から水銀生産が始まりました。

写真は、アントニウスの中心坑道入り口。イドリアには当時から使われていた鉱物取引所や市庁舎、鉱夫の宿泊施設、鉱山夫たちが当時楽しんでいた劇場など、当時の様子を垣間見ることができる歴史ある街並みが保存されており、見どころ満載です。

特に1700~1800年代に建てられた鉱物取引所と市庁舎は、スロベニアの中でも最古の建築物のひとつであり、バロック様式やゼツェシオン様式等の歴史的価値のある建物としても知られています。

イドリアの地理的特徴
項目 内容
位置 スロベニアの首都リュブリャナから西に約90km
アクセス リュブリャナから列車で約1時間
世界遺産登録範囲 約47ヘクタール
主な見どころ 旧市街、鉱物取引所、鉱山劇場、市庁舎、フランツ縦坑、アントニウスの中心坑道など

1-3. アルマデンとイドリアの地理的特徴

アルマデンとイドリアは、どちらも山岳地帯に位置しており、水銀鉱山は地下深くまで掘削されていました。

アルマデンは、スペインのラ・マンチャ地方に位置し、周囲は乾燥した地形で、水銀鉱山は丘陵地帯にありました。

一方、イドリアは、スロベニアのアルプス山脈のふもとに位置し、周囲は緑豊かな山岳地帯で、水銀鉱山は山腹にありました。

このように、アルマデンとイドリアは、地理的な条件が大きく異なるため、鉱山の開発方法や労働環境にも違いが見られました。

1-4. まとめ

アルマデンとイドリアは、ヨーロッパ大陸の異なる場所に位置する水銀鉱山ですが、どちらも豊かな歴史と文化を有する街として知られています。

アルマデンは、スペインのラ・マンチャ地方に位置し、乾燥した地形で、水銀鉱山は丘陵地帯にありました。

一方、イドリアは、スロベニアのアルプス山脈のふもとに位置し、周囲は緑豊かな山岳地帯で、水銀鉱山は山腹にありました。

このように、アルマデンとイドリアは、地理的な条件が大きく異なるため、鉱山の開発方法や労働環境にも違いが見られました。

2. アルマデンとイドリアの歴史

要約

2-1. アルマデンの歴史

アルマデンの水銀生産は古代ローマ時代にまで遡り、ローマに辰砂を供給していたという記録もあるが、16世紀以前の詳しい鉱山開発については未詳であるという。

1511年から1524年までは国王会計のもと、個人との開発契約を結ぶ形で開発が行われたが、1524年にスペイン王カルロス1世が債権者であるフッガー家に開発権を譲渡した。

途中、アウクスブルクの別の金融業者に開発権が渡ったり、フッガー家が再経営に乗り出した後に火災で一時閉山されるなどもあったが、1563年からスペイン政府は再びフッガー家と契約を結んだ。

このときに付けられた条件は、産出される水銀をすべてヌエバ・エスパーニャ副王領に送付することであった。

アルマデンの歴史
時期 内容
古代ローマ時代 辰砂をローマに供給
1511年~1524年 国王会計のもと、個人との開発契約
1524年 スペイン王カルロス1世がフッガー家に開発権を譲渡
1563年 スペイン政府が再びフッガー家と契約
17世紀初頭 水銀生産量が大きく増加
1620年代 水銀生産量が減少
1645年 国王会計による直接経営
1661年 契約制度に戻る
18世紀 生産量が再び急増
20世紀末 国有企業による採掘
2004年 操業停止

2-2. イドリヤの歴史

イドリヤはスロベニア西部のプリモルスカ地方の鉱山町で、1490年代に水銀鉱山が発見された。

16世紀の時点ではその鉱山で水銀があまり多くは採れなかったが、17世紀以降増加し、1689年には2000キンタール程度の水銀を産出していた。

しかし、同じ時期のアルマデンは1万キンタール程度、ウアンカベリカは15000キンタール以上であり、前述のようにその位置付けは補助的なものだった。

イドリヤの水銀はヌエバ・エスパーニャに回された時期が多かったが、17世紀前半においては、ヌエバ・エスパーニャで水銀が不足している際にも、ペルーに優先的に回されていた。

イドリアの歴史
時期 内容
1490年代 水銀鉱山が発見
16世紀 水銀の産出量は少なかった
17世紀以降 水銀の産出量が増加
1689年 2000キンタール程度の水銀を産出
18世紀 ウアンカベリカの生産量が減少したため、世界第2位の規模に
1994年 操業停止

2-3. アルマデンとイドリアの歴史的背景

アルマデンとイドリアは、どちらもヨーロッパにおける水銀生産の中心地として、長い歴史を持つ鉱山都市です。

アルマデンは、古代ローマ時代から水銀が採掘されており、スペイン帝国時代には、アメリカ大陸への水銀供給の中心地として重要な役割を果たしました。

一方、イドリヤは、15世紀に水銀鉱山が発見され、17世紀以降、アルマデンの補助的な水銀供給源として発展しました。

18世紀には、ウアンカベリカの生産量が減少したため、イドリヤはアルマデンに次ぐ世界第2位の規模の水銀鉱山となりました。

2-4. まとめ

アルマデンとイドリアは、どちらもヨーロッパにおける水銀生産の中心地として、長い歴史を持つ鉱山都市です。

アルマデンは、古代ローマ時代から水銀が採掘されており、スペイン帝国時代には、アメリカ大陸への水銀供給の中心地として重要な役割を果たしました。

一方、イドリヤは、15世紀に水銀鉱山が発見され、17世紀以降、アルマデンの補助的な水銀供給源として発展しました。

18世紀には、ウアンカベリカの生産量が減少したため、イドリヤはアルマデンに次ぐ世界第2位の規模の水銀鉱山となりました。

3. 水銀の採掘と加工方法

要約

3-1. 水銀の採掘方法

アルマデンとイドリヤでは、地下深くまで坑道を掘って水銀を採掘していました。

アルマデンでは、古代ローマ時代から使われていた露天掘りや坑道掘りが行われていました。

イドリヤでは、16世紀以降、地下深くまで坑道を掘る方法が採用されました。

水銀は、辰砂という鉱石から精錬されます。辰砂は、水銀と硫黄の化合物で、赤褐色をしています。

水銀の採掘方法
場所 方法
アルマデン 露天掘り、坑道掘り
イドリア 地下深くまで坑道を掘る方法

3-2. 水銀の精錬方法

辰砂から水銀を精錬するには、まず辰砂を粉砕し、その後、加熱して水銀を蒸発させます。

蒸発した水銀は、冷却されて液体に戻り、回収されます。

アルマデンでは、17世紀にブスタマンテ炉という精錬炉が開発され、効率的に水銀を精錬することができるようになりました。

イドリヤでは、アルマデンの技術を参考に、スペイン炉と呼ばれる精錬炉が導入されました。

水銀の精錬方法
工程 内容
1 辰砂を粉砕する
2 加熱して水銀を蒸発させる
3 蒸発した水銀を冷却して液体に戻し、回収する

3-3. 水銀の用途

水銀は、古代から様々な用途で利用されてきました。

特に、銀の精錬には、水銀が不可欠でした。

水銀は、銀と合金化してアマルガムを作り、その後、加熱することで銀を分離することができます。

この方法は、パティオ精錬法と呼ばれ、アメリカ大陸で広く普及しました。

3-4. まとめ

アルマデンとイドリアでは、地下深くまで坑道を掘って水銀を採掘し、辰砂から水銀を精錬していました。

水銀は、銀の精錬に不可欠な物質であり、アメリカ大陸で広く普及したパティオ精錬法に利用されました。

アルマデンでは、ブスタマンテ炉という精錬炉が開発され、イドリヤではスペイン炉と呼ばれる精錬炉が導入されました。

水銀は、銀の精錬以外にも、鏡や温度計などの製造にも利用されてきました。

4. アルマデン鉱山の労働環境

要約

4-1. 労働者の構成

アルマデン鉱山では、様々な労働者が働いていました。

16世紀半ば以降、鉱夫として囚人たちが送り込まれており、1799年の王令で廃止されるまでに約2000人が強制労働に従事したと見積もられている。

また、18世紀には水銀産業が盛んになったことから、季節労働者などの鉱夫としてこの地で労働していました。

鉱夫の数は増加するに従い、病気や怪我をする人が増えたために造られたのが、サン・ラファエル王立鉱夫病院です。

アルマデン鉱山の労働者の構成
種類 内容
労働者 囚人、季節労働者など
人数 約2000人(強制労働刑務所)

4-2. 労働環境の悪化

アルマデン鉱山は、地下深くまで坑道を掘るため、労働環境は非常に過酷でした。

坑内は、暗くて湿気が多く、空気も悪いため、呼吸器系の病気にかかる人が多かった。

また、水銀は毒性があるため、水銀中毒になる人も少なくありませんでした。

水銀中毒の症状は、頭痛、めまい、吐き気、手足のしびれなど様々です。重症になると、精神障害や死亡に至ることもあります。

アルマデン鉱山の労働環境の悪化
問題点 内容
坑内環境 暗く、湿気が多く、空気も悪い
健康被害 呼吸器系の病気、水銀中毒など
水銀中毒の症状 頭痛、めまい、吐き気、手足のしびれなど

4-3. 労働者の待遇

アルマデン鉱山の労働者は、厳しい労働環境の中で働かされ、待遇も決して良いものではありませんでした。

賃金は低く、労働時間は長く、休日はほとんどありませんでした。

また、労働者は、病気や怪我をしても、十分な治療を受けることができませんでした。

そのため、アルマデン鉱山の労働者は、常に危険と隣り合わせの生活を送っていました。

アルマデン鉱山の労働者の待遇
項目 内容
賃金 低い
労働時間 長い
休日 ほとんどない
治療 十分な治療を受けられない

4-4. まとめ

アルマデン鉱山は、地下深くまで坑道を掘るため、労働環境は非常に過酷でした。

坑内は、暗くて湿気が多く、空気も悪いため、呼吸器系の病気にかかる人が多かった。

また、水銀は毒性があるため、水銀中毒になる人も少なくありませんでした。

労働者の待遇も決して良いものではなく、常に危険と隣り合わせの生活を送っていました。

5. イドリアの都市計画と建築物

要約

5-1. イドリアの都市計画

イドリアは、水銀鉱山を中心とした街として発展しました。

鉱山周辺には、鉱夫の住居や商店、教会などが建設され、街は徐々に拡大していきました。

イドリアの街は、鉱山と密接に関係しており、鉱山が街の経済の中心でした。

鉱山で働く労働者のための施設も充実しており、鉱山劇場や病院などが建設されました。

イドリアの都市計画
項目 内容
中心 水銀鉱山
発展 鉱山周辺に労働者の住居や商店、教会などが建設され、街が拡大
特徴 鉱山と密接に関係した都市計画

5-2. イドリアの建築物

イドリアには、バロック様式やゼツェシオン様式など、様々な建築様式の建物が残っています。

鉱物取引所は、1764年に建設された建物で、スロベニアに残るバロック建築の中では最古の部類に属しています。

鉱山劇場は、1769年に建てられたスロベニア最古の石造劇場であり、イドリヤの水銀鉱夫たちの文化的な面を伝えています。

市庁舎は、1898年に建設されたもので、ゼツェシオン様式を始め、ゴシック・リヴァイヴァルやルネサンス・リヴァイヴァルなど、多彩な建築様式が折衷された建築物です。

イドリアの建築物
建物 様式 建設年 特徴
鉱物取引所 バロック様式 1764年 スロベニア最古のバロック建築
鉱山劇場 石造 1769年 スロベニア最古の石造劇場
市庁舎 ゼツェシオン様式、ゴシック・リヴァイヴァル、ルネサンス・リヴァイヴァル 1898年 多彩な建築様式が折衷された建築物

5-3. イドリアの都市計画と建築物の特徴

イドリアの都市計画は、鉱山と密接に関係しており、鉱山が街の経済の中心でした。

鉱山で働く労働者のための施設も充実しており、鉱山劇場や病院などが建設されました。

イドリアには、バロック様式やゼツェシオン様式など、様々な建築様式の建物が残っています。

これらの建物は、イドリヤの歴史と文化を物語る貴重な遺産です。

5-4. まとめ

イドリアは、水銀鉱山を中心とした街として発展し、鉱山と密接に関係した都市計画が特徴です。

鉱山で働く労働者のための施設も充実しており、鉱山劇場や病院などが建設されました。

イドリアには、バロック様式やゼツェシオン様式など、様々な建築様式の建物が残っています。

これらの建物は、イドリヤの歴史と文化を物語る貴重な遺産です。

6. 世界遺産登録の意義と今後の課題

要約

6-1. 世界遺産登録の意義

アルマデンとイドリアの水銀鉱山は、世界遺産に登録されることで、その歴史的・文化的価値が広く認められました。

これらの鉱山は、ヨーロッパにおける水銀生産の中心地として、世界経済に大きな影響を与えました。

また、鉱山労働者の生活や文化、技術革新など、様々な側面から人類の歴史を理解する上で重要な遺産です。

世界遺産登録は、これらの遺産を保護し、後世に伝えるための重要な一歩です。

世界遺産登録の意義
項目 内容
歴史的価値 ヨーロッパにおける水銀生産の中心地
文化的価値 鉱山労働者の生活や文化、技術革新
重要性 人類の歴史を理解する上で重要な遺産
目的 遺産を保護し、後世に伝える

6-2. 今後の課題

アルマデンとイドリアの水銀鉱山は、世界遺産に登録されたことで、観光客が増加し、経済効果も期待されています。

しかし、同時に、観光客の増加による環境負荷や、遺産の保全問題も課題として挙げられます。

世界遺産登録を機に、これらの課題に対処し、持続可能な観光を実現していくことが重要です。

また、水銀は毒性があるため、環境汚染の問題も懸念されています。

世界遺産登録後の課題
問題点 内容
観光客増加 環境負荷、遺産の保全問題
水銀汚染 環境汚染問題

6-3. 世界遺産登録の意義と今後の課題

アルマデンとイドリアの水銀鉱山は、世界遺産に登録されることで、その歴史的・文化的価値が広く認められました。

これらの鉱山は、ヨーロッパにおける水銀生産の中心地として、世界経済に大きな影響を与えました。

また、鉱山労働者の生活や文化、技術革新など、様々な側面から人類の歴史を理解する上で重要な遺産です。

世界遺産登録は、これらの遺産を保護し、後世に伝えるための重要な一歩です。

6-4. まとめ

アルマデンとイドリアの水銀鉱山は、世界遺産に登録されることで、その歴史的・文化的価値が広く認められました。

これらの鉱山は、ヨーロッパにおける水銀生産の中心地として、世界経済に大きな影響を与えました。

世界遺産登録は、これらの遺産を保護し、後世に伝えるための重要な一歩です。

しかし、同時に、観光客の増加による環境負荷や、遺産の保全問題、水銀による環境汚染の問題など、様々な課題も存在します。

参考文献

水銀の遺産アルマデンとイドリヤ | スペイン | 世界遺産 …

【世界遺産】アルマデンとイドリアとは?|中世の暮らしを …

水銀の遺産アルマデンとイドリヤ – 登録 – わかりやすく解説 …

水銀の遺産アルマデンとイドリヤ – Wikipedia

アルマデンとイドリア:水銀鉱山の遺産 – 世界遺産を学ぶ

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