アルト・ドウロ・ワイン生産地域とは？世界遺産についての解説

アルト・ドウロ・ワイン生産地域の概要
項目	内容
位置	ポルトガル北部、ドウロ川上流
面積	25万ha（世界遺産登録面積24,600ha、緩衝地帯225,400ha）
登録年	2001年
登録基準	（iii）文化的景観、（iv）建築物群、（v）文化的景観
主な特徴	伝統的なブドウ栽培、ポートワインの生産、文化的景観
自治体	メザオン・フリオ、ペゾ・ダ・レグア、サンタ・マルタ・デ・ペナギアオン、ヴィラ・レアル、アリジョ、サブロサ、カッラゼーダ・デ・アンシアイス、トレド・デ・モンコルヴォ、ラメーゴ、アママル、サン・ジョアン・ダ・ペスケイーラ、ヴィラ・ノヴァ・デ・フォス・コアの13自治体

1. アルトドウロワイン生産地域の概要
2. アルトドウロの歴史と伝統
3. アルトドウロの気候条件と土壌
4. アルトドウロで栽培される代表的なブドウ品種
5. アルトドウロのワイナリーとワイン作りの工程
6. アルトドウロの世界遺産登録とその意義

1. アルトドウロワイン生産地域の概要

アルト・ドウロ・ワイン生産地域とは？

ポルトガル北部を流れるドウロ川の上流に位置するアルト・ドウロ地域は、2000年以上にわたって伝統的なワイン造りが行われてきた地です。18世紀以降にこの地域から多く出回ったポートワインは世界的に有名となりました。ここは伝統的なブドウ栽培によって技術や社会、経済の発展が見られる文化的景観でもあります。2001年にユネスコの世界遺産に登録され、その文化的景観は世界中から注目を集めています。

アルト・ドウロ地域は、ドウロ川によって形成された急勾配の段々畑が続く地です。夏は暑く、冬は寒冷で降水量も少ないことから、ワイン造りに適しています。この地でワイン造りが本格的に始まったのは3〜4世紀のローマ時代で、中世にはイスラム教徒の侵入によって中断するものの、14世紀から高品質のワインが多く造られるようになります。

18世紀になると、この地方独特の甘味とコクの強い「ポートワイン」が造られ、次第に英国で人気が出るようになりました。この地域は、何世紀にも渡って段々畑が作られていき、古くは1列や2列のぶどうの木だけしか栽培できなかったのですが、19世紀にフィロキセラ（ブドウネアブラムシ）によってヨーロッパのぶどう畑がほぼ絶滅したこともあり、19世紀後半〜20世紀初頭に再び形成され、現在も見られる石壁に囲まれた規則的な段々畑が続くようになりました。

日光が当たるように幅が広いのが特徴です。中腹には白い壁の家を持つ村が並び、18世紀に建造された教会の周囲には網目のように道路が張り巡らされています。他にも丘の上には邸宅や小さい礼拝堂などが点在しています。これらはワイン造りの長い伝統によって、技術や社会、経済の発展が見られ、今でも伝統的な方法でワイン造りが続くという文化的景観が見られます。

世界遺産登録基準

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、以下の3つの世界遺産登録基準を満たしていることから、世界遺産に登録されました。

登録基準（iii）：アルト・ドウロ地方は2000年近くワインを生産していて、その景観は人間の手によって作られてきたという点。

登録基準（iv）：アルト・ドウロ地方は、段々畑とワイン農場、村、礼拝堂、道路など、ワイン製造に関連するあらゆる活動が景観に見られるということ。

登録基準（v）：アルト・ドウロ地方の文化的景観は、伝統的なヨーロッパのワイン生産地の傑出した例であって、人間の活動が反映されたもの。18世紀以降、この地方の主力製品であったポートワインは、世界的に有名になり、このぶどう栽培の長い伝統は技術、社会、経済の進化を反映する景観を生み出したという点。

世界遺産登録基準
基準	内容
（iii）	2000年近くワイン生産、人間の手による景観
（iv）	ワイン製造関連の活動が景観に反映
（v）	伝統的なワイン生産地の傑出した例、人間の活動が反映された景観

アルト・ドウロ・ワイン生産地域の広がり

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、ドウロ川の上流に位置し、総面積は25万haに及びます。世界遺産の登録面積は24

世界遺産に登録されているのは、メザオン・フリオ、ペゾ・ダ・レグア、サンタ・マルタ・デ・ペナギアオン、ヴィラ・レアル、アリジョ、サブロサ、カッラゼーダ・デ・アンシアイス、トレド・デ・モンコルヴォ、ラメーゴ、アママル、サン・ジョアン・ダ・ペスケイーラ、ヴィラ・ノヴァ・デ・フォス・コアの13自治体です。

これらの地域は、ドウロ川沿いに広がるブドウ畑、ワイン農場、村、教会、道路など、ワイン製造に関連する様々な要素が一体となって、独特の文化的景観を形成しています。

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、ポルトガル北部を代表する観光地の一つであり、毎年多くの観光客が訪れています。

アルト・ドウロ・ワイン生産地域の広がり
項目	内容
総面積	25万ha
世界遺産登録面積	24,600ha
緩衝地帯	225,400ha
自治体	13自治体

まとめ

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、2000年以上の歴史を持つ伝統的なワイン造りが行われている地域です。

ドウロ川沿いの急勾配の段々畑は、ワイン造りに適した環境であり、世界遺産に登録されるほどの文化的景観を形成しています。

この地域では、伝統的なブドウ栽培方法が受け継がれており、世界的に有名なポートワインが生産されています。

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、ポルトガル北部を代表する観光地の一つであり、ワイン好きだけでなく、歴史や文化に興味がある人にとっても魅力的な場所です。

2. アルトドウロの歴史と伝統

ローマ帝国時代からのワイン造り

アルト・ドウロ地域でのワイン造りの歴史は、紀元前3世紀から4世紀のローマ帝国時代にまで遡ります。ローマ人は、この地域にブドウやオリーブといった地中海式気候に適した植物を導入し、農業を本格的に展開しました。

ローマ人は、鉱泉をふんだんに利用し、鉱石を採掘し、道路や橋を建設するなど、この地域の発展に大きく貢献しました。ローマ帝国の支配が終わり、その後はスエビ族、西ゴート族、ムーア人が支配する時代が続きます。

中世の前半部分では、アルト・ドウロ地域でのワイン生産は行われていませんでしたが、12世紀の半ばにポルトガル王国が成立すると、ワイン生産が再び活発化しました。

様々な修道院組織がワイン畑の再興に貢献し、ワイン生産は盛んに行われるようになりました。

ローマ帝国時代からのワイン造り
時代	内容
ローマ帝国時代	ブドウやオリーブの導入、農業本格化
中世	スエビ族、西ゴート族、ムーア人の支配、ワイン生産の中断
12世紀以降	ポルトガル王国の成立、ワイン生産の再興、修道院組織による貢献

ポートワインの誕生と発展

14世紀中ごろには、現在のこの地域特産のポートワインが生産されるようになります。ポートワインとは、醸造途中でアルコール度数の高いブランデーを加え、糖分が残っている状態で発酵を止めたものです。

18世紀には、甘くてアルコール度数の高いワインを好むイギリスに大量に輸出されるようになりました。ドウロ川河口の都市ポルトから出荷されたことから、ポートワインと呼ばれています。

1756年、ポンバル侯爵はポートワインのブランド価値を守るためワイン生産管理のための会社を設立し、指定された生産地以外でつくられたワインをポートワインとして輸出することを禁止します。これは世界で初めての「原産地統制呼称制度」と言われており、その後フランスやイタリアなどでも同様の制度が普及することとなります。

アルト・ドウロ地域で醸造されたワインは、冬を越したあとにドウロ川をはるばる下り、ポルトの対岸の町であるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにて熟成・ビン詰めをされます。

ポートワインの誕生と発展
時代	内容
14世紀中ごろ	ポートワインの生産開始
18世紀	イギリスへの輸出開始、人気上昇
1756年	原産地統制呼称制度の導入
現在	ドウロ川を下ってポルトへ輸送、熟成・ビン詰め

伝統的なワイン造りの技術

アルト・ドウロ地域では、古くから伝統的なワイン造りの技術が受け継がれてきました。その中でも特に有名なのが、収穫時期に人間が素足でブドウを踏みつぶす「ラピサージュ」という方法です。

この伝統的な方法は、現在でも一部のワイナリーで行われており、観光客も参加できる体験ツアーなども開催されています。

また、ワイン樽をドウロ川を下ってポルトまで運ぶ「ラベーロ船」も、アルト・ドウロ地域の伝統的な文化の一つです。

ラベーロ船は、かつてはワインの輸送手段として重要な役割を果たしていましたが、現在は観光船として多くの人々に親しまれています。

伝統的なワイン造りの技術
技術	内容
ラピサージュ	ブドウを素足で踏みつぶす伝統的な方法
ラベーロ船	ワイン樽をドウロ川を下ってポルトまで運ぶ伝統的な船

まとめ

アルト・ドウロ地域は、ローマ帝国時代からワイン造りが行われてきた歴史ある地域です。

14世紀中ごろには、世界的に有名なポートワインが誕生し、イギリスへの輸出が盛んになりました。

この地域では、古くから伝統的なワイン造りの技術が受け継がれており、現在でも「ラピサージュ」や「ラベーロ船」など、伝統的な文化を見ることができます。

アルト・ドウロ地域の歴史と伝統は、ワイン造りを通して現代に受け継がれており、世界遺産に登録されるほどの文化的価値を持つ地域となっています。

3. アルトドウロの気候条件と土壌

アルト・ドウロの気候

アルト・ドウロ地域は、ドウロ川の上流に位置し、大陸性気候の影響を受けています。夏は暑く、冬は寒く、年間を通して日照時間が長く、ブドウ栽培に適した気候です。

夏には気温が40℃を超えることもありますが、乾燥した気候のため、ブドウは糖度が高く、濃厚なワインを生み出すことができます。

冬は、霜が降りることもあるため、ブドウの生育には注意が必要です。しかし、寒暖差が大きいことで、ブドウの果実が凝縮され、風味豊かなワインが生まれると言われています。

アルト・ドウロ地域は、ブドウ栽培に適した気候条件と、長い歴史の中で培われた伝統的なワイン造りの技術によって、世界的に有名なポートワインを生み出しています。

アルト・ドウロの土壌

アルト・ドウロ地域の土壌は、石や砂利が多く、水はけが良いのが特徴です。

この土壌は、ブドウの根がしっかりと張り、水分や養分を効率的に吸収することができます。

また、土壌のミネラル分がブドウの風味に影響を与え、複雑で奥深い味わいのワインを生み出すと言われています。

アルト・ドウロ地域の土壌は、ブドウ栽培に適した環境であり、高品質なポートワインの生産に貢献しています。

土壌の特性とワインへの影響

アルト・ドウロ地域の土壌は、ブドウの生育に適した環境であるだけでなく、ワインの品質にも大きな影響を与えています。

石や砂利が多い土壌は、水はけが良く、ブドウの根がしっかりと張り、水分や養分を効率的に吸収することができます。

また、土壌のミネラル分がブドウの風味に影響を与え、複雑で奥深い味わいのワインを生み出すと言われています。

アルト・ドウロ地域の土壌は、ブドウ栽培に適した環境であり、高品質なポートワインの生産に貢献しています。

土壌の特性とワインへの影響
特性	影響
水はけが良い	ブドウの根がしっかりと張り、水分や養分を効率的に吸収
ミネラル分豊富	複雑で奥深い味わいのワインを生み出す
石や砂利が多い	ブドウの生育に適した環境

まとめ

アルト・ドウロ地域は、ブドウ栽培に適した気候条件と土壌条件に恵まれています。

夏は暑く、冬は寒く、年間を通して日照時間が長い大陸性気候は、ブドウの糖度を高め、濃厚なワインを生み出すのに適しています。

石や砂利が多く、水はけの良い土壌は、ブドウの根がしっかりと張り、水分や養分を効率的に吸収することができます。

これらの気候条件と土壌条件が、アルト・ドウロ地域で生産される高品質なポートワインの秘密です。

4. アルトドウロで栽培される代表的なブドウ品種

アルト・ドウロのブドウ品種

アルト・ドウロ地域では、様々なブドウ品種が栽培されていますが、特に有名なのが、トウリガ・ナショナル、トウリガ・フランカ、ティンタ・バロッカ、ティンタ・ロリス、ティンタ・アマレラ、ティント・カン、ソウザンなどです。

これらのブドウ品種は、アルト・ドウロ地域の土壌や気候に適しており、濃厚で複雑な味わいのポートワインを生み出すのに最適です。

特に、トウリガ・ナショナルは、アルト・ドウロ地域を代表するブドウ品種として知られています。

トウリガ・ナショナルは、濃厚な果実味とタンニン、そして複雑な香りを持ち、高品質なポートワインの製造に欠かせない品種です。

アルト・ドウロのブドウ品種
品種	特徴
トウリガ・ナショナル	濃厚な果実味とタンニン、複雑な香り
トウリガ・フランカ	柔らかく、フルーティーな味わい
ティンタ・バロッカ	濃厚な果実味とタンニン、スパイシーな香り

トウリガ・ナショナルの特徴

トウリガ・ナショナルは、ポルトガル固有の品種で、その存在感は際立ちます。

その味の良さから、一部の生産者はこの品種100％のワインを製造しています。

多くのブドウは、最近植えられたブドウの木から作られていますが、トウリガ・ナショナルの大部分は古いブドウの木によって栽培されています。

ブドウの木は一般的に同じ木が同じ土地に繰り返し植えられ、その寿命は100年以上にもなります。

その他のブドウ品種

トウリガ・フランカは、トウリガ・ナショナルと並んで、アルト・ドウロ地域で最も重要なブドウ品種の一つです。

トウリガ・フランカは、トウリガ・ナショナルよりも柔らかく、フルーティーな味わいが特徴です。

ティンタ・バロッカは、アルト・ドウロ地域で最も広く栽培されているブドウ品種の一つです。

ティンタ・バロッカは、濃厚な果実味とタンニン、そしてスパイシーな香りを持ち、ポートワインに複雑な味わいを加えます。

まとめ

アルト・ドウロ地域では、様々なブドウ品種が栽培されていますが、特に有名なのが、トウリガ・ナショナル、トウリガ・フランカ、ティンタ・バロッカなどです。

これらのブドウ品種は、アルト・ドウロ地域の土壌や気候に適しており、濃厚で複雑な味わいのポートワインを生み出すのに最適です。

トウリガ・ナショナルは、アルト・ドウロ地域を代表するブドウ品種として知られており、その濃厚な果実味とタンニン、そして複雑な香りは、高品質なポートワインの製造に欠かせないものです。

アルト・ドウロ地域で栽培されるブドウ品種は、この地域のワインの個性と魅力を形作っています。

5. アルトドウロのワイナリーとワイン作りの工程

アルト・ドウロのワイナリー

アルト・ドウロ地域には、大小様々なワイナリーが点在しています。

ワイナリーでは、ブドウの収穫からワインの製造、瓶詰め、そして熟成まで、ワイン造りの全工程を見学することができます。

ワイナリー見学ツアーでは、ワインの製造工程の説明を受けたり、試飲を楽しむことができます。

また、ワイナリーによっては、宿泊施設やレストランを併設しているところもあり、ワインをテーマにした特別な体験をすることができます。

ワイン作りの工程

アルト・ドウロ地域で生産されるポートワインは、伝統的な方法で作られています。

ブドウの収穫後、ブドウを圧搾し、発酵を開始します。

発酵中に、アルコール度数の高いブランデーを加えることで、発酵を途中で止めるのが特徴です。

ブランデーを加えることで、ブドウの糖分がアルコールに変化するのを防ぎ、甘く濃厚なポートワインになります。

ワイン作りの工程
工程	内容
ブドウの収穫	収穫後、ブドウを圧搾
発酵	発酵中にブランデーを加えて発酵を止める
熟成	樽の中で熟成させる
瓶詰め	熟成後、瓶詰め

ポートワインの熟成

ポートワインは、樽の中で熟成されます。

熟成期間は、ワインの種類によって異なりますが、一般的には3年から50年以上です。

熟成期間が長いほど、ワインはまろやかで複雑な味わいになります。

熟成されたポートワインは、瓶詰めされ、世界中に輸出されます。

まとめ

アルト・ドウロ地域には、伝統的なワイン造りが行われているワイナリーが数多く存在します。

ワイナリーでは、ブドウの収穫からワインの製造、瓶詰め、そして熟成まで、ワイン造りの全工程を見学することができます。

ポートワインは、発酵中にブランデーを加えることで、甘く濃厚な味わいが生まれます。

熟成されたポートワインは、世界中で愛飲されています。

6. アルトドウロの世界遺産登録とその意義

世界遺産登録の背景

アルト・ドウロ・ワイン生産地域は、2001年にユネスコの世界遺産に登録されました。

世界遺産登録の理由は、2000年以上の歴史を持つ伝統的なワイン造り、そしてそのワイン造りに関連する文化的景観が評価されたからです。

アルト・ドウロ地域は、ドウロ川沿いの急勾配の段々畑、ワイン農場、村、教会、道路など、ワイン製造に関連する様々な要素が一体となって、独特の文化的景観を形成しています。

この文化的景観は、ポルトガルの人々の生活と文化を反映しており、世界遺産に登録されるほどの価値があると認められました。

世界遺産登録による影響

アルト・ドウロ・ワイン生産地域の世界遺産登録は、この地域に大きな影響を与えました。

世界遺産登録によって、観光客の増加が見られ、地域経済の活性化に貢献しました。

また、世界遺産登録は、伝統的なワイン造りの技術や文化を保護する役割も果たしています。

世界遺産登録は、アルト・ドウロ地域にとって、大きな転換期となりました。

世界遺産登録による影響
影響	内容
観光客増加	地域経済の活性化
伝統文化の保護	伝統的なワイン造りの技術や文化の維持
世界的な認知度向上	アルト・ドウロ地域の知名度向上