項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 建設国債を発行しても歳入が不足する場合に発行される国債。一般的に「赤字国債」と呼ばれる。 |
目的 | 歳入不足の補填、経済対策、社会保障費の増加への対応 |
種類 | 建設国債、赤字国債、借換国債 |
利点 | 経済活性化、社会福祉の向上、財政政策の柔軟性 |
デメリット | 財政赤字の拡大、インフレーションのリスク、財政健全化の阻害 |
実例 | 1965年東京オリンピック後の不況、1975年オイルショック後の税収不足、近年における毎年発行 |
1. 特例国債とは
特例国債の定義
特例国債とは、建設国債を発行してもなお歳入が不足すると見込まれる場合に、特別の法律(特例公債法)に基づいて発行される国債のことです。その性質から一般的に「赤字国債」とも呼ばれます。特例国債は、建設国債と同様に国会の議決を経た金額の範囲内で発行できることとされ、一般会計予算総則にその発行限度額が計上されています。また、その参考として、国会での審議の際には建設国債と同様に、償還計画表を提出することになっています。
特例国債は、1965年度に戦後初めて発行され、94年度以降は税収不足に伴い毎年発行されています。
項目 | 特例国債 | 建設国債 |
---|---|---|
発行根拠 | 特例法 | 財政法第4条 |
目的 | 経常的経費の財源 | 投資的経費の財源 |
発行時期 | 歳入不足時 | 公共事業が必要な時 |
発行限度額 | 一般会計予算総則 | 一般会計予算総則 |
特例国債と建設国債の違い
特例国債と建設国債は、どちらも国債の一種ですが、発行の根拠となる法律が異なります。建設国債は、財政法第4条に基づいて発行されるため、「4条国債」とも呼ばれます。一方、特例国債は、特例法に基づいて発行されるため、「特例国債」と呼ばれます。
建設国債は、道路や橋などの社会基盤整備など、将来世代にも恩恵が及ぶ投資的経費の財源として発行されます。一方、特例国債は、社会保障費や防衛費など、将来世代に資産を残さない経常的経費の財源として発行されます。
年度 | 特例公債法制定の有無 |
---|---|
1965年度 | ○ |
1966年度~1974年度 | × |
1975年度 | ○ |
1976年度~1990年度 | ○ |
1991年度~1993年度 | × |
1994年度~現在 | ○ |
特例公債法の制定
特例国債を発行するためには、特例公債法という法律を制定する必要があります。特例公債法は、毎年、国会で審議され、成立します。
特例公債法は、かつては1年限りの法案でしたが、2012年以降は複数年度にわたって適用されるようになりました。これは、ねじれ国会による法案審議の遅延を防ぐためです。
まとめ
特例国債は、建設国債とは異なり、将来世代に資産を残さない経常的経費の財源として発行される国債です。特例国債を発行するためには、毎年、特例公債法を制定する必要があります。
特例国債は、国の財政状況を反映する重要な指標の一つです。特例国債の発行額が増加していることは、国の財政状況が悪化していることを示唆しています。
2. 特例国債の目的
財源不足の補填
特例国債の主な目的は、国の歳入が不足している場合に、その不足分を補填することです。国の歳入は、主に税金によって賄われますが、経済状況が悪化したり、社会保障費が増加したりすると、税収が減少し、歳入が不足することがあります。
特例国債は、このような場合に、国の歳出を賄うための資金を調達するために発行されます。特例国債によって調達された資金は、社会保障費、防衛費、人件費などの経常的経費に充当されます。
経済対策
特例国債は、経済対策としても利用されます。例えば、リーマン・ショックや東日本大震災などの際に、経済活動を活性化させるために、特例国債が発行されました。
特例国債によって調達された資金は、公共事業や減税などの経済対策に充当されます。
社会保障費の増加への対応
近年、高齢化社会の進展に伴い、社会保障費が大幅に増加しています。社会保障費の増加は、国の財政負担を大きくしており、特例国債の発行が不可欠となっています。
特例国債によって調達された資金は、年金や医療費などの社会保障費に充当されます。
まとめ
特例国債は、国の歳入不足を補填したり、経済対策を実施したり、社会保障費の増加に対応したりするために発行されます。
特例国債は、国の財政状況を反映する重要な指標の一つです。特例国債の発行額が増加していることは、国の財政状況が悪化していることを示唆しています。
3. 特例国債の種類
建設国債
建設国債は、道路や橋などの社会基盤整備など、将来世代にも恩恵が及ぶ投資的経費の財源として発行されます。建設国債は、財政法第4条に基づいて発行されるため、「4条国債」とも呼ばれます。
建設国債は、国会の議決を経た金額の範囲内で発行できるとされており、その発行限度額は一般会計予算総則に規定されています。
赤字国債
赤字国債は、社会保障費や防衛費など、将来世代に資産を残さない経常的経費の財源として発行されます。赤字国債は、特例法に基づいて発行されるため、「特例国債」と呼ばれます。
赤字国債は、建設国債の発行をもってしてもなお歳入が不足すると見込まれる場合に発行されます。
借換国債
借換国債は、満期を迎えた国債を償還するために発行される国債です。借換国債は、既存の国債を新しい国債に置き換えることで、国の債務残高が増加しないようにするためのものです。
借換国債は、国債整理基金特別会計で発行されます。
まとめ
特例国債には、建設国債、赤字国債、借換国債などがあります。
建設国債は、将来世代にも恩恵が及ぶ投資的経費の財源として発行されます。赤字国債は、将来世代に資産を残さない経常的経費の財源として発行されます。借換国債は、満期を迎えた国債を償還するために発行される国債です。
4. 特例国債の利点
経済活性化
特例国債は、経済活性化に役立ちます。特例国債によって調達された資金は、公共事業や減税などの経済対策に充当されます。
公共事業は、雇用創出や経済活動の活性化に貢献します。減税は、企業の投資意欲を高め、消費支出を増加させる効果が期待されます。
項目 | 内容 |
---|---|
公共事業 | 雇用創出、経済活動の活性化 |
減税 | 企業の投資意欲向上、消費支出増加 |
社会福祉の向上
特例国債は、社会福祉の向上にも役立ちます。特例国債によって調達された資金は、年金や医療費などの社会保障費に充当されます。
社会保障費の増加は、国民の生活水準の維持向上に貢献します。
財政政策の柔軟性
特例国債は、政府の財政政策の柔軟性を高めます。特例国債を発行することで、政府は、歳入不足や経済危機などの状況に対応することができます。
特例国債は、政府が迅速に財政政策を実行するための重要な手段です。
まとめ
特例国債は、経済活性化、社会福祉の向上、財政政策の柔軟性などの利点があります。
特例国債は、国の財政状況を改善するための有効な手段の一つです。
5. 特例国債のデメリット
財政赤字の拡大
特例国債は、国の財政赤字を拡大させる可能性があります。特例国債は、国の借金であり、その利払い費用は、将来の世代の税金で賄われます。
特例国債の発行額が増加すると、国の財政負担が大きくなり、将来の世代に重い負担を負わせる可能性があります。
インフレーションのリスク
特例国債の発行は、インフレーションを引き起こす可能性があります。特例国債によって調達された資金が、過剰な需要を生み出し、物価が上昇する可能性があります。
インフレーションは、国民の生活水準を低下させる可能性があります。
財政健全化の阻害
特例国債の発行は、財政健全化を阻害する可能性があります。特例国債の発行が続くと、国の財政状況が悪化し、財政健全化が難しくなる可能性があります。
財政健全化が遅れると、国の信用力が低下し、国際的な投資家の信頼を失う可能性があります。
まとめ
特例国債は、財政赤字の拡大、インフレーションのリスク、財政健全化の阻害などのデメリットがあります。
特例国債は、国の財政状況を悪化させる可能性があるため、慎重に発行する必要があります。
6. 特例国債の実例
東京オリンピック後の不況
1965年、東京オリンピック直後の日本経済は、昭和40年不況と呼ばれる深刻な不況に陥りました。企業の倒産が続出し、政府の税収も大きく落ち込みます。
当時の佐藤栄作首相や福田赳夫大蔵大臣などが議論を重ねた結果、1965年11月19日の第二次補正予算で、戦後初めてとなる国債を発行する方針を決定しました。
この国債発行に対して、佐藤首相は「あくまでも特例としての発行である」と発表し、これにより特例国債(赤字国債)が生まれたのです。
時期 | 背景 | 発行目的 |
---|---|---|
1965年 | 東京オリンピック後の不況 | 税収不足の補填 |
1975年 | オイルショック後の税収不足 | 税収不足の補填 |
1990年代以降 | バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルス | 経済対策、社会保障費の増加対応 |
オイルショック後の税収不足
1975年度に石油ショック後の影響により巨額の税収不足が予測されるようになります。建設国債の発行により賄われる公債発行対象経費を上回る部分を補うために、改めて特例としての国債を発行せざるをえなくなったのです。
戦後初の国債を「特例で」出したことで、これを使えばよいとの発想だったのかもしれません。このため「昭和50年度の公債の発行の特例に関する法律」が国会に提出され、成立しました。
この法律が単年度立法として提出されたことで、それ以降も類似の法律(略称は「特例公債法」)が毎年度制定され、特例国債が発行されます。
近年における特例国債の発行
1990年度から1993年度の間、好景気による税増収や財政再建の努力の結果として、特例国債が一時的に発行されない期間がありました。しかし、すぐにまた発行が再開され、1994年度から現在に至るまで特例国債は毎年発行され続けています。
特例国債は、建設国債の発行をしても歳入が不足すると見込まれる場合に、一般会計の財源不足を補うために発行されます。おもに社会保障、防衛費や人件費などの経常的経費を調達するために充てられています。
しかし、人件費などの経常的経費は、将来世代に資産を残すことはありません。国債残高のみ増加し、そのための利払いと償還のための税負担というかたちでの費用負担だけを残すことになるため、財政法ではこのための国債発行は認めていません。それにもかかわらず、一時期を除いて毎年度特例法が制定されています。もはや特例という言葉自体も意味をなさないものになっているのです。
まとめ
特例国債は、戦後初めて発行されたのは1965年で、東京オリンピック後の不況による税収不足を補填するために発行されました。
その後、オイルショックやバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルスなどの影響で、特例国債は毎年発行されるようになりました。
特例国債は、国の財政状況を反映する重要な指標の一つです。特例国債の発行額が増加していることは、国の財政状況が悪化していることを示唆しています。
参考文献
・「特例」という言葉自体も意味をなさない…なぜ毎年度「特例 …
・「特例」という言葉自体も意味をなさない…なぜ毎年度「特例 …
・国債って何? 国債の種類②:特例国債(赤字国債)|国債とは …
・特例国債(トクレイコクサイ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・特例国債(とくれいこくさい) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・赤字公債特例法改正案、コロナ長期対応へ5年延長 – 日本経済新聞
・特例国債とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
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