指標 | 説明 | 評価方法 |
---|---|---|
財政赤字 | 政府の歳出が歳入を上回る状態 | 対GDP比で算出 |
公的債務残高 | 政府が負っている借金の総額 | 対GDP比で算出 |
経済成長率 | 国の経済活動の伸び率 | 四半期ごとのGDP成長率で算出 |
通貨価値 | 通貨の価値の変動 | 米ドルなど主要通貨に対する為替レートで算出 |
政治安定性 | 政府の安定性や政策の継続性 | 政治リスク評価機関による格付けで評価 |
格付け | 格付機関による国の信用力評価 | AAAからDまで10段階で評価 |
1. ソブリンリスクの定義とは
ソブリンリスクとは何か?
ソブリンリスクとは、国家が経済的な理由や政治的な理由で債務の返済をできなくなるリスクのことです。例えば、国が発行する国債を投資家が購入した場合、その国が経済危機に陥り返済できなくなったら、投資家は損失を被ることになります。これがソブリンリスクです。また、政治的な混乱や戦争、自然災害などによっても発生します。投資家はこのリスクを考慮に入れて、投資先を選ぶ必要があります。
ソブリンリスクは、国債などの公的機関の債務のことです。2009年末ころからのギリシャやスペインなどにおける財政不安を契機に、国家自体への融資のリスクについて金融市場で懸念されだしました。同義語としてカントリー・リスクがあるが、ソブリン・リスクは政府債務の信認として限定されて使われることが多い。
この背景には、08年9月のリーマン・ショック以降の欧米諸国における経済の悪化に対して、大規模な財政政策が発動され、財政赤字が膨らんだことがあります。特に、ユーロ諸国の債務に関して市場での関心が高まっている。
日本の公的債務残高は、09年末に882兆円、10年度末には973兆円に達する見込みであり、11年1月27日にはアメリカの格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本の長期国債を1ランク引き下げたものの、そのニュースは冷静に受け止められ、日本に対するソブリン・リスクは顕在化していない。
要因 | 説明 |
---|---|
経済要因 | 財政赤字の拡大、経済成長率の低迷、通貨価値の下落など |
政治要因 | 政情不安、政府の政策変更、戦争など |
その他 | 自然災害、テロなど |
ソブリンリスクの評価方法
ソブリンリスクの大きさを分析・評価し、その結果を記号などを用いて表したものをソブリン格付といいます。ソブリンリスクが低い(信用力が高い)ほど、格付は高くなり、ソブリンリスクが高い(信用力が低い)ほど、格付は低くなります。ソブリン格付は、格付機関と呼ばれる専門の評価機関が評価・公表しています。
代表的な格付機関には、スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズ、格付投資情報センターなどがあります。評価手法は各社異なります。
例えば、スタンダード・アンド・プアーズでは、政治システムの評価、経済評価、対外評価、財政評価、金融評価をソブリン(国や政府機関)の信用力を決定する5つの主要分野であると捉えて分析・評価しています。
ソブリン債は、国や政府機関が発行する債券であるため、一般的には民間企業が発行する債券(社債)に比べて信用リスクが低い債券として位置付けられます。しかし、国が発行していても、新興国のソブリン債の場合は、政府や政府機関の財政状況、国の経済状況、あるいは政変などの可能性により先進国に比べて信用リスクが高い傾向にあります。
格付機関 | 格付 | 意味 |
---|---|---|
スタンダード・アンド・プアーズ | AAA | 最高の信用力 |
ムーディーズ | Aaa | 最高の信用力 |
格付投資情報センター | JAA | 最高の信用力 |
スタンダード・アンド・プアーズ | BBB | 比較的高い信用力 |
ムーディーズ | Baa | 比較的高い信用力 |
格付投資情報センター | JBB | 比較的高い信用力 |
スタンダード・アンド・プアーズ | B | 低い信用力 |
ムーディーズ | Ba | 低い信用力 |
格付投資情報センター | JB | 低い信用力 |
ソブリンリスクと格付け
先進国の間でも、ソブリンリスクには差があります。例えば、スタンダード・アンド・プアーズによるG7のソブリン格付を見ると、次のように、ドイツとカナダが最上級のAAAであるのに対して、イタリアはBBB、日本はA+とドイツやカナダに比べて低くなっています。
米国を本拠地とする世界的な金融グループのブラックロック社は、独自手法でソブリン信用リスクを評価し、ブラックロック・ソブリン・リスク指数(BSRI)として公表しています。
ブラックロック・ソブリン・リスク指数は、先進国から新興国まで60ヶ国の信用リスクを、各国の財務状況、返済意欲、対外債務状況、金融部門の健全性などを多面的かつ包括的に分析してスコア化し、それを元に各国の国債の順位付けを行なっています。
BSRIによると、2019年6月末現在、ソブリンリスクが最も低いのはノルウェー、日本は60ヶ国中第30位、最下位(60位・最もソブリンリスクが高い)はベネズエラとなっています。
まとめ
ソブリンリスクは、国家の債務返済能力に対するリスクであり、経済状況や政治情勢、災害など様々な要因によって発生する可能性があります。
ソブリンリスクは、格付機関によって評価され、格付によってそのリスクの大きさが示されます。
ソブリンリスクは、投資家にとって重要な判断材料であり、投資先を選ぶ際に考慮する必要があります。
ソブリンリスクは、国債の価格や通貨の価値に影響を与える可能性があり、市場全体に大きな影響を与える可能性があります。
2. ソブリンリスクの起源と歴史
ソブリンリスクの起源
ソブリンリスクという概念は、歴史的に見ると、国家が債務不履行(デフォルト)を起こした事例から生まれてきました。
19世紀には、南米諸国やヨーロッパ諸国で、国家が債務不履行を起こす事例が頻繁に発生しました。
20世紀に入ると、世界恐慌や第二次世界大戦などの世界的な危機によって、多くの国が債務不履行に陥りました。
これらの歴史的な出来事を通して、国家の債務返済能力に対するリスク、つまりソブリンリスクが認識されるようになりました。
時期 | 国 | 原因 | 結果 |
---|---|---|---|
19世紀 | 南米諸国 | 独立後の財政不安 | 債務不履行 |
1930年代 | 世界各国 | 世界恐慌 | 債務不履行 |
1940年代 | 世界各国 | 第二次世界大戦 | 債務不履行 |
2010年代 | ギリシャ | 財政赤字の拡大 | EUからの救済 |
2010年代 | スペイン | 不動産バブル崩壊 | EUからの救済 |
ソブリンリスクの現代における発展
現代においては、グローバル化と金融市場の発展によって、ソブリンリスクはより複雑化しています。
特に、2008年のリーマン・ショック以降、世界経済の不確実性が高まり、多くの国が財政赤字を抱えるようになりました。
この状況下で、ソブリンリスクは、先進国においても深刻な問題として認識されるようになりました。
特に、ユーロ圏では、ギリシャやスペインなどの国の財政危機が、ソブリンリスクの顕在化を招きました。
ソブリンリスクと格付け機関
ソブリンリスクを評価するために、格付機関と呼ばれる専門機関が設立されました。
格付機関は、国の経済状況、財政状況、政治状況などを分析し、ソブリンリスクの大きさを評価します。
格付機関の評価は、投資家にとって重要な情報源であり、投資先の選定に役立ちます。
しかし、格付機関の評価は、必ずしも正確ではありません。格付機関の評価は、過去のデータに基づいて行われるため、将来の状況を正確に予測することはできません。
まとめ
ソブリンリスクは、歴史的に見ると、国家の債務不履行の事例から認識されるようになりました。
現代においては、グローバル化と金融市場の発展によって、ソブリンリスクはより複雑化しています。
格付機関は、ソブリンリスクを評価する重要な役割を果たしていますが、その評価は必ずしも正確ではありません。
ソブリンリスクは、今後も世界経済に大きな影響を与える可能性があります。
3. ソブリンリスクの影響とメカニズム
ソブリンリスクの影響
ソブリンリスクが高まると、国債の価格が下落し、国債の利回りが上昇する傾向があります。
これは、投資家が、国債の返済リスクが高まったと判断し、国債を売却しようとするためです。
国債の価格が下落すると、国は、新たな国債を発行する際に、より高い利回りで発行する必要が生じます。
これは、国の財政負担を増大させ、さらにソブリンリスクを高める可能性があります。
影響 | 説明 |
---|---|
国債市場 | 国債価格の下落、利回りの上昇 |
為替市場 | 通貨価値の下落 |
株式市場 | 株式市場の下落 |
企業の資金調達 | 資金調達コストの上昇 |
ソブリンリスクのメカニズム
ソブリンリスクは、様々な要因によって発生します。
経済的な要因としては、財政赤字の拡大、経済成長率の低迷、通貨の価値の下落などが挙げられます。
政治的な要因としては、政情不安、政府の政策変更、戦争などが挙げられます。
ソブリンリスクは、これらの要因が複合的に作用することによって発生します。
ソブリンリスクと市場への影響
ソブリンリスクは、市場全体に大きな影響を与える可能性があります。
ソブリンリスクが高まると、投資家は、リスクの高い国債を売却し、安全資産とされる国債や金などの資産に資金を移す傾向があります。
この結果、リスクの高い国債の利回りが上昇し、安全資産の利回りが低下する傾向があります。
また、ソブリンリスクは、通貨の価値にも影響を与える可能性があります。ソブリンリスクが高まると、その国の通貨の価値が下落する傾向があります。
まとめ
ソブリンリスクは、国債の価格、利回り、通貨の価値に影響を与える可能性があります。
ソブリンリスクは、経済的な要因と政治的な要因が複合的に作用することによって発生します。
ソブリンリスクは、市場全体に大きな影響を与える可能性があり、投資家にとって重要なリスク要因です。
ソブリンリスクは、世界経済の安定性に影響を与える可能性があります。
4. ソブリンリスクの具体例と事例
ギリシャの財政危機
2010年、ギリシャは財政赤字の拡大と債務不履行の危機に直面しました。
ギリシャ政府は、財政赤字を削減するために、緊縮財政政策を実施しましたが、国民の反発が強く、経済は悪化しました。
ギリシャの財政危機は、ユーロ圏全体の金融不安につながり、欧州連合(EU)は、ギリシャへの救済措置を実施しました。
ギリシャの財政危機は、ソブリンリスクが現実のものとなる可能性を示す事例となりました。
時期 | 出来事 |
---|---|
2009年 | 財政赤字の拡大が明らかになる |
2010年 | EUからの救済 |
2011年 | 第1次救済 |
2012年 | 第2次救済 |
2015年 | 第3次救済 |
日本の財政問題
日本は、世界で最も高い政府債務残高を抱えています。
日本の財政赤字は、高齢化による社会保障費の増加や、経済成長率の低迷によって拡大しています。
日本の財政問題に対する懸念は、近年高まっていますが、日本は、国内の投資家層が厚く、政府債務の構成も自国通貨建てで平均償還年限も長いことから、ソブリンリスクは顕在化していません。
しかし、日本の財政状況は、今後、人口減少や経済成長率の低迷が続けば、悪化する可能性があります。
項目 | 数値 |
---|---|
公的債務残高 | 約1000兆円 |
財政赤字 | 対GDP比3%程度 |
経済成長率 | 1%程度 |
人口減少率 | 約0.5%程度 |
その他の事例
ソブリンリスクは、ギリシャや日本以外にも、多くの国で発生しています。
例えば、南米諸国やアフリカ諸国では、政治不安や経済危機によって、ソブリンリスクが高まっている国があります。
ソブリンリスクは、世界経済の安定性に影響を与える可能性があるため、国際的な協力によって、ソブリンリスクの発生を抑制する必要があります。
ソブリンリスクは、投資家にとって重要なリスク要因であり、投資先を選ぶ際に考慮する必要があります。
まとめ
ソブリンリスクは、世界中で発生する可能性のあるリスクであり、投資家にとって重要なリスク要因です。
ギリシャの財政危機は、ソブリンリスクが現実のものとなる可能性を示す事例となりました。
日本は、世界で最も高い政府債務残高を抱えていますが、国内の投資家層が厚く、政府債務の構成も自国通貨建てで平均償還年限も長いことから、ソブリンリスクは顕在化していません。
しかし、日本の財政状況は、今後、人口減少や経済成長率の低迷が続けば、悪化する可能性があります。
5. ソブリンリスクと市場への影響
ソブリンリスクと国債市場
ソブリンリスクが高まると、国債市場に大きな影響を与えます。
投資家は、ソブリンリスクの高い国債を売却し、安全資産とされる国債や金などの資産に資金を移す傾向があります。
この結果、ソブリンリスクの高い国債の利回りが上昇し、安全資産の利回りが低下する傾向があります。
また、ソブリンリスクは、通貨の価値にも影響を与える可能性があります。ソブリンリスクが高まると、その国の通貨の価値が下落する傾向があります。
ソブリンリスク | 国債市場への影響 |
---|---|
上昇 | 国債価格の下落、利回りの上昇 |
低下 | 国債価格の上昇、利回りの低下 |
ソブリンリスクと為替市場
ソブリンリスクは、為替市場にも大きな影響を与えます。
ソブリンリスクが高まると、その国の通貨の価値が下落する傾向があります。
これは、投資家が、ソブリンリスクの高い国から資金を引き揚げようとするためです。
通貨の価値が下落すると、その国の輸入品は高くなり、輸出品は安くなります。
ソブリンリスク | 為替市場への影響 |
---|---|
上昇 | 通貨価値の下落 |
低下 | 通貨価値の上昇 |
ソブリンリスクと株式市場
ソブリンリスクは、株式市場にも影響を与える可能性があります。
ソブリンリスクが高まると、投資家は、リスクの高い株式を売却し、安全資産とされる債券などの資産に資金を移す傾向があります。
この結果、株式市場は下落する傾向があります。
また、ソブリンリスクは、企業の資金調達にも影響を与える可能性があります。ソブリンリスクが高まると、企業は、資金調達をより高いコストで行う必要が生じます。
ソブリンリスク | 株式市場への影響 |
---|---|
上昇 | 株式市場の下落 |
低下 | 株式市場の上昇 |
まとめ
ソブリンリスクは、国債市場、為替市場、株式市場など、市場全体に大きな影響を与える可能性があります。
ソブリンリスクが高まると、国債の利回りが上昇し、通貨の価値が下落し、株式市場が下落する傾向があります。
ソブリンリスクは、投資家にとって重要なリスク要因であり、投資先を選ぶ際に考慮する必要があります。
ソブリンリスクは、世界経済の安定性に影響を与える可能性があります。
6. ソブリンリスクの管理と予防策
ソブリンリスクの管理
ソブリンリスクは、投資家にとって重要なリスク要因であり、適切な管理が必要です。
ソブリンリスクを管理するためには、まず、ソブリンリスクの発生源を理解することが重要です。
ソブリンリスクの発生源を理解した上で、投資家は、ソブリンリスクを回避したり、軽減したりする対策を講じる必要があります。
ソブリンリスクを回避する対策としては、ソブリンリスクの低い国債に投資したり、ソブリンリスクをヘッジする金融商品を利用したりすることが挙げられます。
方法 | 説明 |
---|---|
リスク回避 | ソブリンリスクの低い国債に投資 |
リスク軽減 | ソブリンリスクをヘッジする金融商品を利用 |
情報収集 | 国の経済状況や政治状況に関する情報を収集 |
分散投資 | 複数の国債に投資してリスクを分散 |
ソブリンリスクの予防策
ソブリンリスクを予防するためには、各国政府は、財政健全化を進める必要があります。
財政健全化を進めるためには、歳出削減や増税などの政策が必要となります。
また、各国政府は、経済成長を促進し、雇用を拡大する政策を進める必要があります。
経済成長を促進することで、税収が増加し、財政赤字が縮小します。
対策 | 説明 |
---|---|
財政健全化 | 歳出削減や増税など |
経済成長促進 | 雇用拡大など |
構造改革 | 経済の競争力強化 |
国際協力 | IMFやEUなどの国際機関との協力 |
国際的な協力
ソブリンリスクは、国際的な問題であり、国際的な協力によって解決する必要があります。
国際機関や各国政府は、ソブリンリスクの発生を抑制するための協力を強化する必要があります。
例えば、国際通貨基金(IMF)は、ソブリンリスクの高い国に対して、財政支援を提供しています。
また、EUは、ユーロ圏の金融安定化のために、欧州安定メカニズム(ESM)を設立しました。
まとめ
ソブリンリスクは、投資家にとって重要なリスク要因であり、適切な管理が必要です。
ソブリンリスクを管理するためには、ソブリンリスクの発生源を理解し、リスクを回避したり、軽減したりする対策を講じる必要があります。
ソブリンリスクを予防するためには、各国政府は、財政健全化を進める必要があります。
ソブリンリスクは、国際的な問題であり、国際的な協力によって解決する必要があります。
参考文献
・わかりやすい用語集 解説:ソブリンリスク(そぶりんりすく …
・ソブリンリスクとカントリーリスクの違いと関連性 | 丸ノ内 …
・ソブリンリスクとは – 生きた証券用語辞典 – バリューサーチ …
・ソブリンリスク(そぶりんりすく) | 証券用語集 | 東海東京証券 …
・PDF 日本の中長期のソブリンリスクはどのように評価されるのか
・ソブリンリスクとは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・「ソブリンリスク」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
・日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略 土屋剛 …