魚:クロトガリザメについて説明

1. クロトガリザメの特徴

1-1. 外見と生態

クロトガリザメは、メジロザメ属に属するサメの一種で、その名の通り、鎌状の長い胸鰭が特徴です。体長は最大で3.3mに達しますが、通常は2.5mほどです。背面は金属光沢のある灰褐色、腹面は白く、その滑らかな肌触りから英名では”Silky shark”と呼ばれています。

クロトガリザメは、全世界の熱帯の外洋域に生息し、表層を高速で回遊しています。深度50mまでの表層を好み、水温26-30℃の環境を好む傾向が見られます。彼らは、日和見的な捕食者で、主に硬骨魚や頭足類を餌としています。時には、連携して小魚の群れを襲ったり、好物のマグロを追って長距離を移動することもあります。

1-2. 繁殖と成長

クロトガリザメは、胎生で年中繁殖を行います。雌は1~2年ごとに、16匹までの仔を産みます。生まれた仔は、大陸棚の岩礁で成長し、その後、外洋へと出ていきます。

成長速度は、地域や個体差が大きいものの、他のサメと比較して同程度です。雄は6~10歳、雌は7~12歳で性成熟し、寿命は最低でも22年です。

1-3. 行動と社会性

クロトガリザメは、活動的で好奇心が強く、攻撃的な捕食者です。興味のあるものに近づいた場合、頭を振りながらゆっくりと旋回しますが、状況が変化すると非常に速く反応します。

若い個体は、身を守るため、緩く大きな群れを作ることも知られています。回遊時には、1,000匹を超える個体が集合することもあります。これらの群れは、個体サイズや太平洋では性別によっても分離されている可能性があります。群れの内部では、互いに体を斜めにして体側を見せつけあったり、口や鰓を広げたりする行動が見られます。脅威を感じると、背を弓なりに曲げ、尾と胸鰭を下ろし、頭を持ち上げた威嚇行動をとります。

1-4. まとめ

クロトガリザメは、その独特の体形と生態を持つ、外洋性のサメです。彼らは、世界中の熱帯海域で広く分布し、活発な捕食者として重要な役割を果たしています。しかし、近年は、乱獲や混獲によって個体数が減少しており、その保全が課題となっています。彼らの生態や行動を理解することは、彼らの保護に繋がる重要な一歩です。

参考文献

クロトガリザメ – Wikipedia

クロトガリザメ – Web魚図鑑

クロトガリザメ – 生態 – わかりやすく解説 Weblio辞書

2. クロトガリザメの生息地

2-1. 世界中の熱帯海域に広がる生息域

クロトガリザメは、その名の通り、世界中の熱帯域の海に広く分布しています。太平洋、大西洋、インド洋の沿岸域から沖合、外洋域まで、水温23~24℃の環境で多く見られます(Compagno 1984)。中央~東部太平洋では、公海域よりも沿岸近くの沖合域で多く報告されています。表層性であるため、深度18m以浅の沿岸域での出現は稀です。

クロトガリザメは、特に、マグロ漁業で用いられる人工漁礁(FADs)周辺に集まることが知られています。これは、FADs に集まる小魚やイカなどの餌生物を捕食するためと考えられています。超音波発信器を用いた研究によれば、FADs に蝟集するクロトガリザメは、日中は深度25m以浅で行動しますが、日没後は頻繁な鉛直移動を行い遊泳水深は深度250mまで達するとされています(Filmalter et al. 2015)。

2-2. 遺伝的多様性と地域的な分化

クロトガリザメの遺伝子解析は、その分布域の広さと、様々な漁業による影響を考慮し、重要な研究テーマとなっています。ミトコンドリアDNAの調節領域を用いた研究によれば、太平洋の東部と西部の間で遺伝的組成は弱いながらも有意に異なっていることが示されています(Galvan-Tirado et al. 2013)。さらに、大西洋西部とインド―太平洋間で遺伝的組成が大きく異なり、インド―太平洋内にも複数の分集団の存在が認められています。このことから、全大洋で5つの遺伝的集団が存在する可能性が示唆されています(Clarke et al. 2015)。

これらの研究結果は、クロトガリザメが遺伝的に異なる複数の集団からなり、地域的な分化が進んでいることを示しています。これは、それぞれの集団が独自の環境に適応し、進化してきたことを意味しています。

2-3. 繁殖地と仔魚の成長

クロトガリザメは胎生で、1~14尾の仔を産みます(Bonfil et al. 1993, Oshitani et al. 2003, Joung et al. 2008, Hall et al. 2012, Mauricio Hoyos-Padilla et al. 2012, Galvan-Tirado et al. 2015, del Carmen Alejo-Plata et al. 2016)。出生時の体長は、全長60~81.1cm、尾鰭前長48~60cmです(Bonfil et al. 1993, Joung et al. 2008, Hall et al. 2012, Galvan-Tirado et al. 2015, Oshitani et al. 2003)。妊娠期間は11~12ヶ月と推定されています(Bonfil et al. 1993, Mauricio Hoyos-Padilla et al. 2012)。

出産は周年行われるとする報告(Hall et al. 2012)がある一方、晩春(Branstetter 1987)~初夏(Bonfil et al. 1993)、5~7月(Oshitani et al. 2003)との報告もあります。del Carmen Alejo-Plata et al. (2016)は、出産は周年行われるがピークは5~10月としている。交尾期については、晩春(Branstetter 1987)、5~7月(Galvan-Tirado et al. 2015)と推定されています。繁殖周期については、出産、交尾が晩春に起こるものの出産後に卵巣卵が未発達であることから、休止期を挟んで2年の可能性があるとされています(Branstetter 1987)。

2-4. まとめ

クロトガリザメは、世界中の熱帯海域に広く分布し、遺伝的に異なる複数の集団が存在しています。繁殖は周年に行われ、仔魚は沿岸域で成長した後、外洋へ出ていきます。マグロ漁業での混獲や、フカヒレなどを目的とした漁獲などにより、個体数は減少傾向にあります。そのため、クロトガリザメの生息域や資源量の把握、そして適切な管理が求められています。

参考文献

クロトガリザメ – Wikiwand

クロトガリザメ(くろとがりざめ)とは? 意味や使い方 – コトバンク

PDF クロトガリザメ 全水域

3. クロトガリザメの食性

3-1. 広範囲な獲物を捕食する雑食性

クロトガリザメは、その生息域である熱帯・亜熱帯の海域において、多様な生物を捕食する雑食性のサメとして知られています。その食性は、魚類、頭足類、甲殻類、そして時には海鳥や海獣の死骸にまで及びます。

魚類では、イワシ、サバ、アジなどの小型魚から、カツオ、マグロなどの大型魚まで、様々な種類を捕食します。特に、群れをなして行動する魚種を好む傾向があり、効率的に捕食できることが特徴です。頭足類では、イカやタコなどの軟体動物を捕食し、甲殻類では、エビ、カニ、ヤドカリなどを捕食します。これらの生物は、クロトガリザメにとって重要なタンパク源であり、その成長と維持に役立っています。

クロトガリザメは、時には海鳥や海獣の死骸も捕食することが知られており、腐肉食性の側面も持ち合わせています。これにより、クロトガリザメは、生態系において、海洋環境の清掃役としての役割も担っていると考えられます。

3-2. 獲物への攻撃と捕食方法

クロトガリザメは、獲物を捕食する際には、鋭い歯と強力な顎を使って、噛み砕くようにして捕食します。また、素早く泳ぎ回り、獲物を追いかけることも可能です。

クロトガリザメは、主に視覚と嗅覚を使って獲物を探します。水中の振動や匂いなどを感知し、獲物を発見します。獲物を発見すると、素早く近づき、一撃で捕まえようとします。

捕食方法としては、待ち伏せ型と追跡型の2つの方法が挙げられます。待ち伏せ型では、岩陰や海藻の中に潜んで、獲物が近づいてくるのを待ち、突然襲いかかります。追跡型では、獲物を発見すると、水中で素早く泳ぎ回り、追いかけて捕食します。

3-3. 食性と生息環境の関係

クロトガリザメの食性は、その生息環境と密接な関係があります。クロトガリザメは、熱帯・亜熱帯の海域に生息しており、これらの海域には、様々な種類の魚類や無脊椎動物が生息しています。

クロトガリザメは、これらの生物を効率的に捕食することで、その生息環境に適応しています。また、クロトガリザメは、海流や潮汐などの環境変化にも柔軟に対応できるため、広範囲な海域に生息することが可能です。

3-4. まとめ

クロトガリザメは、熱帯・亜熱帯の海域に生息する雑食性のサメで、魚類、頭足類、甲殻類、そして時には海鳥や海獣の死骸まで、様々な生物を捕食しています。その食性は、生息環境に適応したものであり、クロトガリザメが、生態系において重要な役割を担っていることを示しています。

クロトガリザメの食性に関する研究は、今後も進められていくことが予想されます。その研究成果は、クロトガリザメの生態や進化を理解する上で、重要な役割を果たすものと考えられます。

参考文献

クロトガリザメの生物情報|スクーバモンスターズ

メジロザメ属について&生物一覧ー | 市場魚貝類図鑑

クロトガリザメ | 美ら海生き物図鑑 | 沖縄美ら海水族館 – 沖縄 …

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