項目 | 内容 |
---|---|
制度の目的 | 産業公害の防止 |
対象となる工場 | 製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業 |
対象となる施設 | ばい煙発生施設、特定粉じん発生施設、一般粉じん発生施設、汚水等排出施設、騒音発生施設、振動発生施設、ダイオキシン類発生施設 |
資格取得方法 | 国家試験、資格認定講習 |
資格の種類 | 大気関係、水質関係、騒音関係、振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、ダイオキシン類関係、主任管理者 |
試験実施時期 | 毎年10月の第一週の日曜日 |
合格率 | 20〜30% |
必要な勉強時間 | 100〜150時間 |
キャリアパス | 工場の環境管理部門、設備管理部門、品質管理部門、環境コンサルタント会社、環境調査会社、環境関連の研究機関など |
未来展望 | 環境問題の深刻化、技術革新、社会の意識変化により需要は増加する |
1. 公害防止管理者とは
公害防止管理者制度の誕生
公害防止管理者とは、特定の工場において、大気・水質・振動・騒音などの検査を行い、公害を防止する役割を果たす国家資格です。この資格は、戦後の高度経済成長期に発生した深刻な公害問題に対処するために生まれた制度です。1971年(昭和46年)に制定された「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」によって、工場内に公害防止に関する専門知識を持つ人材の設置が義務付けられました。この法律の施行により、公害防止管理者制度がスタートしました。
公害防止管理者制度は、工場における公害防止体制の強化を目的としています。工場は、公害防止管理者を含む公害防止組織を設置することで、環境への影響を最小限に抑え、地域住民の健康と安全を守る役割を担います。
公害防止管理者は、工場の環境管理において重要な役割を担う専門家です。環境問題への意識が高まる現代社会において、公害防止管理者の存在は、持続可能な社会の実現に不可欠です。
業種 | 施設 |
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製造業 | ばい煙発生施設、特定粉じん発生施設、一般粉じん発生施設、汚水等排出施設、騒音発生施設、振動発生施設、ダイオキシン類発生施設 |
電気供給業 | ばい煙発生施設、汚水等排出施設、騒音発生施設、振動発生施設 |
ガス供給業 | ばい煙発生施設、汚水等排出施設、騒音発生施設、振動発生施設 |
熱供給業 | ばい煙発生施設、汚水等排出施設、騒音発生施設、振動発生施設 |
特定工場とは?
公害防止管理者の選任が義務付けられているのは、特定の工場です。特定工場とは、以下の4つの業種に属し、対象となる施設を所有している工場を指します。
・製造業(物品の加工業を含む)\n・電気供給業\n・ガス供給業\n・熱供給業
これらの業種の中で、以下のいずれかの施設を有している工場が特定工場に該当します。\n1. ばい煙発生施設\n2. 特定粉じん発生施設\n3. 一般粉じん発生施設\n4. 汚水等排出施設\n5. 騒音発生施設\n6. 振動発生施設\n7. ダイオキシン類発生施設
特定工場は、公害防止管理者だけでなく「公害防止統括者」「公害防止主任管理者」「公害防止管理者」から構成される公害防止組織を置く必要があります。例えば、業務を拡大して特定工場に該当するようになった場合は、公害防止管理者を選任し、公害防止組織を作らなければなりません。
区分 | 内容 |
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大気関係 | 第1種~第4種 |
水質関係 | 第1種~第4種 |
騒音関係 | 騒音発生施設 |
振動関係 | 振動発生施設 |
特定粉じん関係 | 特定粉じん発生施設 |
一般粉じん関係 | 一般粉じん発生施設 |
ダイオキシン類関係 | ダイオキシン類発生施設 |
主任管理者 | 公害防止組織の統括・管理 |
公害防止管理者の種類
公害防止管理者の資格は、13種類に分けられています。これは、工場から排出される物質の種類や量、規模によって区分が分けられているためです。
・大気関係(第1種~第4種)\n・特定粉じん関係\n・一般粉じん関係\n・水質関係(第1種~第4種)\n・騒音関係\n・振動関係\n・ダイオキシン類関係\n・主任管理者
大気と水質関係は、それぞれ第1種~第4種と区分が分かれています。これは「扱うことのできる排出量」と「扱うことのできる排出物の種類」の違いによるものです。第1種は工場の規模、排水排ガスの種類によらず対応可能で、第2~4種は工場の規模や有害物質の有無に制限がかかります(第4種は、小規模かつ特定の物質対応の工場に限られます)。
まとめ
公害防止管理者は、特定の工場において、大気・水質・振動・騒音などの検査を行い、公害を防止する役割を果たす国家資格です。
公害防止管理者制度は、戦後の高度経済成長期に発生した深刻な公害問題に対処するために生まれた制度です。
公害防止管理者は、工場の環境管理において重要な役割を担う専門家であり、環境問題への意識が高まる現代社会において、その存在は持続可能な社会の実現に不可欠です。
2. 公害防止管理者の職務内容
公害防止管理者の主な業務
公害防止管理者の主な仕事は、専門分野に関する原料・燃料などの検査と排出された煙・汚水などの濃度測定や記録です。
例えば、ダイオキシン類関係の資格を取得している場合、原料や燃料にダイオキシンを発生させる物質が含まれていないか、検査をします。また、大気関係の資格を持っているなら、工場から排出された煙の検査を行います。水質関係の資格を持っていれば水、騒音関係の資格を取得していれば、騒音の検査が可能です。
現在、ほぼすべての特定工場が、有害物質や汚染物質を放出しないような仕組みを、工場内の設備に組み込んでいます。しかし、システムがうまく作動しなかったり劣化によって不具合が生じたりすると、有害物質が工場外部に漏れる恐れもあるでしょう。
そのような事態を防ぐために、施設の定期的な整備や点検も公害防止管理者の仕事です。公害を予防するためには、特定工場で働く従業員への教育も重要です。特に、人体に有害な物質を発生させる可能性がある原材料などを扱う部署で働く従業員には、定期的に勉強会などを開く必要もあります。公害防止管理者は、従業員への教育も仕事の一環としておこないます。公害防止組織としてマニュアルを作ったり、資料を作成したりして、従業員への啓蒙活動をする場合もあるでしょう。
業務内容 | 詳細 |
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検査 | 原料・燃料、排出された煙・汚水などの濃度測定 |
測定・記録 | 排出物質の量や濃度の測定と記録 |
施設の整備・点検 | 定期的な整備や点検 |
従業員教育 | 環境に関する知識や意識の向上 |
事故対応 | 自治体や警察、消防との連携、再発防止対策 |
事故発生時の対応
万が一事故などが発生し、公害の原因となる物質が特定工場外へ流出した、もしくは流出する恐れがある場合の対応も、公害防止管理者の仕事です。
自治体や警察、消防と連絡を取って、どのような物質が流出したのか、もしくは流出する恐れがあるのかなどを伝え、共に対策を立てます。また、再発防止対策を立てるのも重要な仕事です。
公害防止管理者の仕事は、多岐にわたります。そのため、求人は「設備管理」「施設管理」「水質管理」などの仕事名で募集されるケースが大半です。また、公害防止管理者は資格区分が細かいので、必要な資格は明記されていることが多いでしょう。
一例を挙げると、以下のような求人があります。\n場内排水発生施設で発生する水質管理 (東海地方/自動車部品メーカー)\nバイオマス発電所の運転管理 (北海道/発電所)\n施設管理業務 (九州地方/自動車メーカー)
公害防止管理者の役割
公害防止管理者は、工場の環境管理において重要な役割を担う専門家です。
環境問題への意識が高まる現代社会において、公害防止管理者の存在は、持続可能な社会の実現に不可欠です。
公害防止管理者は、工場の環境負荷を低減し、地域住民の健康と安全を守るために、専門知識と技術を駆使して様々な業務を行います。
まとめ
公害防止管理者の主な業務は、専門分野に関する原料・燃料などの検査、排出された煙・汚水などの濃度測定や記録、施設の定期的な整備や点検、従業員への環境教育などです。
事故発生時には、自治体や警察、消防と連携して、迅速な対応と再発防止対策を行います。
公害防止管理者は、工場の環境管理において重要な役割を担い、持続可能な社会の実現に貢献しています。
3. 公害防止管理者に求められるスキルと能力
専門知識
公害防止管理者には、環境に関する幅広い専門知識が求められます。
具体的には、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、振動規制法などの環境関連法規、化学物質の性質や環境への影響、環境測定方法、環境アセスメント、環境管理システムなどに関する知識が必要です。
また、最新の環境技術や規制動向を常に把握し、情報収集能力も重要です。
分野 | 内容 |
---|---|
環境関連法規 | 大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、振動規制法など |
化学物質 | 性質や環境への影響 |
環境測定方法 | 大気、水質、騒音、振動などの測定方法 |
環境アセスメント | 環境影響評価 |
環境管理システム | ISO14001など |
分析能力
公害防止管理者は、調査や測定で得られたデータを分析し、問題点を特定する必要があります。
そのため、統計処理やデータ分析のスキル、論理的思考力、問題解決能力が求められます。
さらに、分析結果を分かりやすく説明し、関係者に理解してもらうためのコミュニケーション能力も重要です。
コミュニケーション能力
公害防止管理者は、工場の従業員、上司、関係機関など、様々な人とコミュニケーションを取ることが必要です。
そのため、相手に分かりやすく説明する能力、相手の意見を丁寧に聞き取る能力、交渉力、プレゼンテーション能力などが求められます。
また、地域住民との意見交換会など、外部の人々とのコミュニケーションにも積極的に参加する必要があります。
まとめ
公害防止管理者には、環境に関する専門知識、分析能力、コミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルと能力が求められます。
これらの能力をバランス良く身に付けることで、工場の環境管理を効率的に行い、地域社会への貢献に繋げることができます。
常に最新の環境技術や規制動向を把握し、スキルアップを続けることも重要です。
4. 公害防止管理者の必要な資格
公害防止管理者試験
公害防止管理者の資格を取得するには、基本的に「公害防止管理者試験」を受験し、合格する必要があります。
この試験は年齢や学歴、職歴を問わず、どなたでも受験可能です。
試験の内容は、大気関係、水質関係、騒音関係、振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、ダイオキシン類関係、主任管理者の8区分に分かれており、それぞれ専門的な知識が求められます。
試験は毎年1回、10月の第一週の日曜日に行われます。
項目 | 内容 |
---|---|
試験内容 | 大気関係、水質関係、騒音関係、振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、ダイオキシン類関係、主任管理者 |
試験実施時期 | 毎年10月の第一週の日曜日 |
合格率 | 20〜30% |
必要な勉強時間 | 100〜150時間 |
資格認定講習
資格認定講習は、公害防止管理者試験の代わりに、資格を取得できる方法です。
ただし、講習を受けて公害防止管理者の資格を取得できるのは、下記の有資格者に限られます。
・環境計量士\n・公害防止技術管理者\n・水質汚濁防止技術管理者\n・大気汚染防止技術管理者\n・騒音・振動規制技術管理者\n・特定粉じん関係技術管理者\n・一般粉じん関係技術管理者\n・ダイオキシン類関係技術管理者
資格認定講習は、実務経験を積んだ上で、より専門的な知識を深めるためのコースです。
資格 | 内容 |
---|---|
環境計量士 | 環境に関する計量の専門知識と技術 |
公害防止技術管理者 | 公害防止に関する技術管理の専門知識と技術 |
水質汚濁防止技術管理者 | 水質汚濁防止に関する技術管理の専門知識と技術 |
大気汚染防止技術管理者 | 大気汚染防止に関する技術管理の専門知識と技術 |
騒音・振動規制技術管理者 | 騒音・振動規制に関する技術管理の専門知識と技術 |
特定粉じん関係技術管理者 | 特定粉じんに関する技術管理の専門知識と技術 |
一般粉じん関係技術管理者 | 一般粉じんに関する技術管理の専門知識と技術 |
ダイオキシン類関係技術管理者 | ダイオキシン類に関する技術管理の専門知識と技術 |
試験の難易度
公害防止管理者試験の合格率は、各区分で20〜30%程度となっています。
試験範囲が広く、専門的な知識が求められるため、難易度が高い試験と言えます。
合格には、100〜150時間の学習時間が必要と言われています。
計画的な学習計画を立て、効率的に学習を進めることが重要です。
まとめ
公害防止管理者の資格を取得するには、公害防止管理者試験に合格するか、資格認定講習を受講する必要があります。
試験は難易度が高く、合格には相当な努力が必要です。
しかし、この資格を取得することで、特定工場での就職を有利に進めたり、専門的な知識を深めたりすることができます。
5. 公害防止管理者のキャリアパス
就職先
公害防止管理者の資格を取得すると、製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業などの特定工場で働くことができます。
具体的には、工場の環境管理部門、設備管理部門、品質管理部門などに就職することができます。
また、環境コンサルタント会社や環境調査会社、環境関連の研究機関などでも活躍することができます。
業界 | 職種 |
---|---|
製造業 | 環境管理部門、設備管理部門、品質管理部門 |
電気供給業 | 環境管理部門、設備管理部門 |
ガス供給業 | 環境管理部門、設備管理部門 |
熱供給業 | 環境管理部門、設備管理部門 |
環境コンサルタント会社 | 環境コンサルタント |
環境調査会社 | 環境調査員 |
環境関連の研究機関 | 研究員 |
キャリアアップ
公害防止管理者の資格は、専門性の高い資格であり、取得することでキャリアアップに繋がる可能性があります。
例えば、工場内での責任ある立場への昇進や、環境管理部門のリーダー、環境コンサルタントなど、より専門性の高い仕事に就くことができます。
また、公害防止管理者の資格は、転職活動においても有利に働くことがあります。
資格取得のメリット
公害防止管理者の資格を取得することで、様々なメリットがあります。
・特定工場での就職を有利に進めることができる\n・専門的な知識を深めることができる\n・キャリアアップの可能性が広がる\n・転職活動において有利に働く\n・社会貢献性の高い仕事に就くことができる
公害防止管理者は、環境問題の解決に貢献できる、社会的に意義のある仕事です。
メリット | 詳細 |
---|---|
就職活動 | 特定工場での就職を有利に進める |
専門知識 | 専門的な知識を深める |
キャリアアップ | 昇進やより専門性の高い仕事への転職 |
転職活動 | 転職活動において有利に働く |
社会貢献 | 環境問題の解決に貢献できる |
まとめ
公害防止管理者の資格を取得することで、特定工場での就職を有利に進めたり、専門性の高い仕事に就いたりすることができます。
また、キャリアアップの可能性を広げ、転職活動においても有利に働くなど、様々なメリットがあります。
公害防止管理者は、環境問題の解決に貢献できる、社会的に意義のある仕事です。
6. 公害防止管理者の未来展望
環境問題の深刻化
地球温暖化、海洋汚染、生物多様性の減少など、環境問題はますます深刻化しています。
そのため、環境問題への対策は、企業や社会全体にとって重要な課題となっています。
公害防止管理者は、環境問題の解決に貢献できる専門家として、今後も重要な役割を担っていくことが期待されます。
技術革新
環境問題の解決には、技術革新が不可欠です。
近年では、AI、IoT、ビッグデータなどの技術が発展し、環境管理の効率化や新たな環境対策技術の開発が進んでいます。
公害防止管理者は、これらの技術を理解し、活用することで、より効果的な環境対策を行うことができます。
社会の意識変化
環境問題に対する社会の意識は、近年高まっています。
企業は、環境配慮の取り組みを積極的に行うようになり、環境管理の重要性が高まっています。
そのため、公害防止管理者の需要は、今後も増加すると予想されます。
まとめ
公害防止管理者は、環境問題の解決に貢献できる、社会的に重要な役割を担う職業です。
環境問題の深刻化、技術革新、社会の意識変化など、様々な要因から、公害防止管理者の需要は今後も増加すると予想されます。
公害防止管理者は、環境問題の専門家として、持続可能な社会の実現に貢献していくことが期待されます。
参考文献
・資格制度の概要|国家試験・資格認定講習|公害防止管理者 …
・法律に基づく公害防止管理者制度|公害防止管理者について|東京 …
・公害防止管理者とは?種類や試験の内容、合格基準について …
・環境管理シリーズ(公害防止管理者の仕事)|一般社団法人 …
・環境管理士ってどんな資格?- 難易度や勉強方法、資格の利用 …
・環境コンサルタントになるには? なるまでのルートや必要な …
・環境コンサルタントとは|仕事内容・求められるスキル・年収 …
・労働衛生コンサルタントと衛生管理者は何が違う?それぞれの …
・公害防止管理者の資格を取るとどんなメリットがある? | プロコミ