職業：土地家屋調査士について説明

土地家屋調査士の業務内容
業務内容	説明
不動産の調査と測量	土地や建物の現状を調査し、正確な数値を測量する
表示に関する登記の申請代理	不動産登記の申請に必要な書類を作成し、法務局に提出する
審査請求手続の代理	登記の申請が却下された場合に、不服申し立てを行う
筆界特定の手続き	土地の境界線が不明確な場合に、境界線を特定する
裁判外紛争解決手続（ADR）の代理	土地の境界に関するトラブルを裁判になる前に話し合いで解決する

1. 土地家屋調査士の仕事内容とは
2. 土地家屋調査士の資格取得方法
3. 土地家屋調査士に必要なスキルとは
4. 土地家屋調査士の未来性と将来展望
5. 土地家屋調査士としてのキャリアパス
6. 土地家屋調査士の業務の裏側に迫る

1. 土地家屋調査士の仕事内容とは

1-1. 不動産登記の専門家

土地家屋調査士は、不動産の所有者に代わり、不動産登記の申請を行う職業です。土地家屋調査士試験に合格し資格が得られると、仕事を始められます。不動産登記とは、土地や建物の所在・面積、所有者の住所・氏名といった情報を記して申請するものです。土地や建物の権利を公にし、「土地や建物の所有者が誰なのか？」をはっきりさせるという役割があります。不動産を所持した場合は、権利の所在を明らかにするために不動産登記が義務づけられており、所有者が必ず行わなければいけません。

しかし、不動産登記の申請には、法律の専門的な知識や土地・建物を正確に測量する技術などが必要です。そのため、国が定めた資格を持った土地家屋調査士が、所有者に代わり担当しています。

土地家屋調査士と司法書士は、どちらも不動産登記と関わる職業です。しかし、仕事の内容は異なります。土地家屋調査士が行う業務は、不動産登記の「表示に関する登記」に記録するための測定・調査や事務です。表示に関する登記には、土地や建物の正確な面積・形状・用途などの結果を記さなければいけないため、実際に土地家屋調査士が現地に赴いて計測を行います。

一方で司法書士は、不動産登記を中心に法律的な手続きを幅広く担当する業務です。会社の登記を担当したり、財産の管理や分け方についての書類作成をサポートしたりなどの業務も行います。

土地家屋調査士と司法書士の違い
項目	土地家屋調査士	司法書士
業務内容	不動産登記の表示に関する登記	不動産登記の権利に関する登記
主な業務	調査・測量、登記申請	権利関係に関する書類作成、登記申請
資格	土地家屋調査士	司法書士

1-2. 土地家屋調査士の主な業務内容

土地家屋調査士の業務内容は、主に以下の5つです。

土地家屋調査士の重要な仕事は、不動産の調査と測量です。実際に不動産のある現場へ向かい、不動産登記へ正確な数値を記録できるよう調査と測量を行います。また、登記されている記録と実際の数値が一致しているかの確認も行います。登記情報と実際の物件に共通点やずれがないか、ミリ単位までの正確な測量が必須です。

表示に関する登記の申請の代理は、土地家屋調査士の資格を持つ者のみが可能です。土地家屋調査士と同様に不動産登記に関わっている司法書士でも、表示に関する登記は申請を代理で行えません。\n表示に関する登記は、以下のような場合に行います。

登記にはさまざまな種類があり、登記の申請方法も決められています。土地家屋調査士は、こうした表示に関する登記の種類や申請方法、申請に必要な書類などについても理解し、代理を務めています。\nまた、文字情報だけでは説明が不十分な場合に図面の作成を行うのも、土地家屋調査士の仕事です。土地家屋調査士が作成する図面には、土地の測量結果を図を用いて説明した「地積測量図」や、建物の各階ごとの形を示した「各階平面図」などがあります。

表示に関する登記の種類
登記の種類	説明
表題登記	土地や建物の位置、面積、形状などの情報を登記簿に初めて登録する
表示変更登記	土地や建物の位置、面積、形状などが変更になった場合に行う登記
更正登記	登記簿に誤りがあった場合に行う登記
分筆登記	土地を分割する場合に行う登記
合筆登記	土地を合併する場合に行う登記
滅失登記	土地や建物がなくなった場合に行う登記

1-3. 審査請求手続の代理

表示に関する登記の審査請求手続も、不動産所有者の代理で行えます。審査請求手続とは、登記の申請後に登記所が適切な対応をしてくれなかった場合に、不服申し立てができるというものです。不動産の所有者は、すぐに登記が行われなかったり不当な処分を言い渡されたりした際に、登記所に対して審査請求ができます。

この審査請求手続は本来、不動産の所有者本人が行うものです。しかし土地家屋調査士であれば、所有者の代理を務めることが認められています。

筆界特定の手続きも、不動産所有者の代理で行えます。筆界特定とは、隣接する土地の範囲が曖昧な場合に、筆界と呼ばれる公的な境界を引いて土地の範囲を特定することです。土地の所有者は、筆界特定が必要だと判断した場合、筆界特定登記官へ筆界を特定するための調査を依頼できます。土地家屋調査士であれば、この筆界特定の手続も代理で行えます。

土地の境界が曖昧な場合、筆界特定の手続きの他に、裁判で筆界を特定する「筆界確定訴訟」という方法もあります。しかし、裁判には時間と費用がかかります。そこで代わりに取れる方法が、裁判外紛争解決手続（ADR）です。

筆界特定の手続き
筆界特定の手続き	説明
筆界特定の申請	土地の所有者が筆界特定登記官に申請する
筆界調査委員による調査	筆界調査委員が現地調査を行い、筆界の位置を特定する
筆界特定登記官による特定	筆界特定登記官が筆界調査委員の意見を参考に、筆界の位置を特定する

1-4. まとめ

土地家屋調査士は、不動産登記の「表示に関する登記」を専門とする国家資格です。不動産の所有者に代わり、登記に必要な調査・測量、申請手続き、審査請求、筆界特定、裁判外紛争解決手続などの業務を行います。

土地家屋調査士は、不動産登記の専門知識と技術、コミュニケーション能力、責任感などを持ち合わせて、正確で迅速な仕事を提供することが求められます。

土地家屋調査士は、不動産取引の安全性を支え、人々の大切な財産を守る重要な役割を担っています。

土地家屋調査士の仕事は、社会貢献性が高く、やりがいのある仕事です。

2. 土地家屋調査士の資格取得方法

2-1. 土地家屋調査士試験

土地家屋調査士になるには、まず土地家屋調査士資格の取得が必要です。資格を取得するために、調査士試験に合格しなければいけません。

調査士試験は、受験するために特別な資格や条件は必要なく、誰でも受験できます。平均1～3年ほど勉強して合格する人が多いです。

調査士試験に合格した後は、各都道府県の土地家屋調査士に登録をします。登録が完了すると、土地家屋調査士として働けるようになります。

登録の際は、登録手数料2万5

土地家屋調査士試験の概要
項目	内容
試験実施機関	法務省
試験内容	筆記試験（午前・午後）と口述試験
受験資格	制限なし
合格率	近年は10%前後
試験日	筆記試験：例年10月第3日曜日、口述試験：翌年1月第3週目

2-2. 試験内容

土地家屋調査士試験は、択一式・記述式で出題される筆記試験と、筆記試験の合格者のみが受けられる口述試験で構成されています。試験の実施時期は筆記試験が例年10月第3日曜、口述試験が1月中旬です。

受験資格に制限はありませんが、測量士や一級建築士の資格保有者は筆記試験の一部が免除されます。

2021年度試験では、受験者3859名のうち404名が合格しました。合格率10.47%と、ここ数年間では最も高い数値です。しかしこれは、受験者数の減少が影響しているためとも考えられます。土地家屋調査士試験の難易度が高いことには変わりなく、しっかりと準備をしたうえで試験に臨む姿勢が必要です。

土地家屋調査士試験の合格率は、近年は10%前後で推移しています。

土地家屋調査士試験の免除
資格	免除される試験
測量士	筆記試験の午前試験
測量士補	筆記試験の午前試験
一級建築士	筆記試験の午前試験
二級建築士	筆記試験の午前試験

2-3. 試験対策

土地家屋調査士試験は、法律知識、測量技術、不動産登記に関する知識など、幅広い分野を網羅した試験です。そのため、独学で合格するのは難しいと言われています。

試験対策としては、資格予備校に通う、通信講座を受講する、参考書や問題集を活用するなど、自分に合った方法を選ぶことが重要です。

資格予備校では、経験豊富な講師による授業や、過去問対策などのサポートを受けることができます。通信講座では、自分のペースで学習を進めることができます。参考書や問題集は、独学で学習する際に役立ちます。

土地家屋調査士試験は、合格率が低く難易度が高い試験です。合格するためには、計画的に学習を進めることが重要です。

2-4. まとめ

土地家屋調査士になるには、法務省が実施する土地家屋調査士試験に合格する必要があります。

試験は、筆記試験と口述試験の2段階で行われます。

試験対策には、資格予備校、通信講座、参考書や問題集など、自分に合った方法を活用しましょう。

土地家屋調査士試験は難易度が高いですが、計画的に学習を進めれば合格は可能です。

3. 土地家屋調査士に必要なスキルとは

3-1. コミュニケーション能力

コミュニケーション能力はどのような仕事でも重視されますが、土地家屋調査士はとくに重要です。土地家屋調査士は、主に以下のような場面で高いコミュニケーション能力が求められます。

土地家屋調査士にとってのお客様である不動産の所有者とは、やり取りする機会がやはり多いです。また、確定測量やADRを行う際も、隣接する土地の所有者や弁護士など、多くの関係者とのやり取りが発生します。登記を行う際には、個人ではなく不動産会社から依頼されるケースもあり、企業を相手としたコミュニケーション能力も必要です。

土地家屋調査士は、依頼者や関係者との良好なコミュニケーションを図り、円滑に業務を進めることが重要です。

そのため、土地家屋調査士には、相手に分かりやすく説明する能力、相手の意見に耳を傾ける能力、交渉力などが求められます。

コミュニケーション能力が必要な場面
場面	説明
依頼者とのやり取り	不動産の所有者から依頼を受け、業務内容を説明する
関係者とのやり取り	境界確定の際に、隣接する土地の所有者と話し合いを行う
企業とのやり取り	不動産会社などから依頼を受けた場合、企業と交渉を行う

3-2. 体力

土地家屋調査士は、現地に行って測量を行うフィールドワークが多い仕事です。1日に多数の依頼をこなす場合もあり、体力を使います。

また、確定測量の際には「確定杭」というコンクリートの杭を地面に押し入れる作業があり、かなりの力が必要です。1人で行う作業ではありませんが、体力はあった方がよいでしょう。

土地家屋調査士は、体力的にきつい仕事です。

体力に自信がない方は、事前に体力作りをしておくことをおすすめします。

体力が必要な場面
場面	説明
現地調査	土地や建物の調査のために、屋外で長時間作業を行う
測量作業	測量機器を操作したり、杭を打ち込んだりする作業を行う

3-3. 数字に強いこと

土地や建物の測量・調査では、正確な数字を出さなくてはいけません。記録する際にも、正確かつ細かなデータの処理が必要です。そのため、土地家屋調査士は数字やデータに強い人が向いています。

また、土地や建物の測量にはミリ単位でのデータが必要です。少しでも数値が間違っていると、大問題となる可能性もあります。

測量・調査やデータの処理は、何度も経験するうちに慣れるものです。しかし、もともと強い方が適性はあると言えます。

土地家屋調査士は、正確な測量やデータ処理を行うため、数字に強いことが重要です。

3-4. まとめ

土地家屋調査士には、コミュニケーション能力、体力、数字に強いことなど、さまざまなスキルが求められます。

これらのスキルを身につけることで、土地家屋調査士として活躍することができます。

土地家屋調査士は、専門知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力や責任感も求められます。

お客様との信頼関係を築きながら、正確で迅速な仕事を提供していくことが重要です。

4. 土地家屋調査士の未来性と将来展望

4-1. 土地家屋調査士の仕事はなくなるのか？

AIは、今や急速に進歩を遂げ、将来的に様々な仕事がAIに代わってしまうのではないかといわれています。すでに測量の領域では下記のような様々な新技術が導入されました。

これらの新技術は素晴らしいものですが、あくまでも多少の誤差があっても後で調整できる大規模測量に限られたものです。したがって、個人の大切な資産である不動産を表す精度の高い測量は、土地家屋調査士の優れた技術に頼らないとできません。

そのため、しばらくの間はAIに代わってしまうことはないと考えてよいでしょう。ただし、AIによって測量の一部が取って代わられることもあり得るので、注意が必要です。

AI技術の進化によって、土地家屋調査士の仕事内容も変化していく可能性はあります。

AI技術の導入例
技術	説明
GPS自動追尾型トータルステーション	自動的に距離や面積をデータ化できる
ドローンによる測量	航空写真を撮影し、境界を効率的に定める
3Dスキャナー	三次元で距離を計測し、傾斜などのデータも取得できる

4-2. 土地家屋調査士の将来性

土地家屋調査士の将来性は、安定しているといえます。

土地の境界を巡るトラブルや筆界特定、ADR等は増加傾向にあり、資格を持っていれば将来は独立することもできるからです。

実務未経験者を除き、求人も絶えることはありません。マーケットは広がっているので、安定して働ける手堅い職業といえるでしょう。

土地家屋調査士は、今後も需要が見込める安定した職業です。

4-3. 土地家屋調査士の資格取得のメリット

土地家屋調査士の資格がある方は、他の関連資格も取得しておくとよいでしょう。

特に司法書士は権利に関する登記の専門家のため、ダブルライセンスで資格を取得すれば、不動産登記の業務をすべて行えるようになるのがメリット。

例えば建物を新築した場合は、土地家屋調査士として表示に関する登記を行います。次に、司法書士として所有権保存登記や抵当権設定登記等を行います。

業務の幅が増えるだけでなく、依頼者もワンストップで登記の依頼ができるので手間がかかりません。信頼性も高まります。

土地家屋調査士が取得すると有利な資格
資格	説明
司法書士	不動産登記の権利に関する登記を代理できる
行政書士	官公署への書類作成や手続き代行を行う
測量士	土地の測量を行う
不動産鑑定士	不動産の価値を鑑定する

4-4. まとめ

AI技術の進化によって、土地家屋調査士の仕事内容も変化していく可能性はありますが、今後も需要が見込める安定した職業です。

土地家屋調査士は、専門知識や技術を活かして、社会に貢献できるやりがいのある仕事です。

土地家屋調査士の資格取得は、将来の選択肢を広げるための有効な手段となります。

土地家屋調査士を目指している方は、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。

5. 土地家屋調査士としてのキャリアパス

5-1. 土地家屋調査士のキャリアパス

土地家屋調査士のキャリアパスは、大きく分けて3つのパターンがあります。

1つ目は、土地家屋調査士事務所に就職し、経験を積むパターンです。このパターンでは、先輩調査士から指導を受けながら、実務経験を積むことができます。

2つ目は、独立開業するパターンです。このパターンでは、自分のペースで仕事を進めることができますが、顧客を獲得したり、経営を安定させたりするなど、多くの苦労が伴います。

3つ目は、他の士業と連携して業務を行うパターンです。このパターンでは、それぞれの専門性を活かし、より幅広いサービスを提供することができます。

土地家屋調査士のキャリアパス
キャリアパス	説明
土地家屋調査士事務所に就職	先輩調査士から指導を受けながら、実務経験を積む
独立開業	自分のペースで仕事を進めることができる
他の士業と連携	それぞれの専門性を活かし、より幅広いサービスを提供する

5-2. 土地家屋調査士の仕事の魅力

土地家屋調査士の仕事の魅力は、以下の点が挙げられます。

1つ目は、社会貢献性が高いことです。土地家屋調査士は、不動産登記を通じて、人々の財産を守る重要な役割を担っています。

2つ目は、専門性を活かせる仕事であることです。土地家屋調査士は、専門知識や技術を駆使して、複雑な業務をこなします。

3つ目は、独立開業しやすいことです。土地家屋調査士は、独立開業して自分のペースで仕事を進めることができます。

土地家屋調査士の仕事の魅力
魅力	説明
社会貢献性が高い	人々の財産を守る重要な役割を担う
専門性を活かせる	専門知識や技術を駆使して、複雑な業務をこなす
独立開業しやすい	自分のペースで仕事を進めることができる