ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場とは？世界遺産についての解説

ヴュルツブルク司教館の概要
項目	内容
所在地	ドイツ・バイエルン州ヴュルツブルク
建設時期	1720年～1780年
建築様式	バロック・ロココ様式
設計者	バルタザール・ノイマン
登録基準	(i) (iv)
登録年	1981年

1. ヴュルツブルク司教館の歴史と建造物
2. ヴュルツブルク司教館の庭園群と広場の特徴
3. ヴュルツブルク司教館の美術コレクションと展示物
4. ヴュルツブルク司教館周辺の観光スポットとアクセス方法
5. ヴュルツブルク司教館でのイベントと行事
6. ヴュルツブルク司教館を訪れる際のおすすめポイント

1. ヴュルツブルク司教館の歴史と建造物

ヴュルツブルク司教館の起源と建設

ヴュルツブルクは、ドイツ中南部のマイン川沿いに位置する古都で、中世より司教領として栄えてきました。13世紀から歴代ヴュルツブルク司教は、マイン川西岸のマリエンベルク城を居城としていましたが、18世紀に入ると、絶対主義の時代が到来し、要塞のような城館は時代遅れとされ、より壮大で華麗な宮殿が求められるようになりました。1700年前後に司教ヨハン・フィリップ・フォン・グライフェンクラウがマイン川東岸にシュロスラインと呼ばれる小規模なレジデンツを建設し、司教による東岸の開発が始まりました。

ヨーロッパ各地で外交経験を積んだヨハン・フィリップ・フランツ・フォン・シェーンボルンは、ヴェルサイユ宮殿やシェーンブルン宮殿といった絶対君主の手による宮殿に感化され、1719年に司教に選出されると、これらに劣らない壮大なレジデンツの建設を開始しました。建設は1720年に始まりましたが、1724年にヨハン・フィリップ・フランツが病死し、次の司教クリストフ・フランツ・フォン・フッテンは北ウイングのみを完成させて建設を中止しました。しかし、1729年に司教となったフリードリヒ・カール・フォン・シェーンボルンによって建設が再開されました。

レジデンツの建設には、当時の著名な建築家や芸術家たちが集結しました。全体を監督したのは、司教の宮廷建築家バルタザール・ノイマンで、マインツ選帝侯の宮廷建築家マクシミリアン・フォン・ヴェルシュが補佐にあたりました。また、オーストリアのバロック建築家ルーカス・フォン・ヒルデブラントやフランスのバロック・ロココ建築の旗手ロベール・ド・コット、ジェルマン・ボフランらが設計に加わりました。建物は1744年に竣工し、1740年から1770年にかけて内装工事が行われ、1765年から1780年には庭園の造営が行われました。

イタリアやフランドル、ミュンヘンから一流の職人が呼び寄せられ、ヴュルツブルクの宮廷装飾家・彫刻家アントニオ・ジュゼッペ・ボッシやヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・バティスタ・ティエポロ、ドイツのフレスコ画家ヨハネス・ジックらが参加しました。レジデンツは1780年に完成しましたが、実際に司教に使用された期間は非常に短く、1803年にヴュルツブルク司教領が廃止されてバイエルン選帝侯領に吸収され、ナポレオン戦争の過程でヴュルツブルク大公国となり、1814年にはバイエルン王国の版図に入りました。

ヴュルツブルク司教館の建設
時期	内容
1719年	ヨハン・フィリップ・フランツが司教に就任
1720年	司教館の建設開始
1724年	ヨハン・フィリップ・フランツが死去
1729年	フリードリヒ・カール・フォン・シェーンボルンが司教に就任し、建設再開
1744年	建物が竣工
1740年～1770年	内装工事
1765年～1780年	庭園の造営
1780年	司教館の完成

ヴュルツブルク司教館の建築様式と特徴

ヴュルツブルク司教館は、長さ約170mの中央棟をメインに、南北に長さ約90mの翼廊が加えられた広大な建造物で、2階建てになっていて、5つの大広間と300もの部屋があります。最も有名なのは、建物の中央部にある600平方mもの「階段の間」です。ここはドーム構造になっていて、天井にはヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロによる世界最大とされるフレスコ画が描かれています。

吹き抜けの構造であったため、耐久性に関しては当時から疑問を持たれていました。しかし、第2次世界大戦時の空襲は町を焼き尽くしましたが、ここだけ天井が残ったことというから、やはり優れた建造物であるということが証明されたというエピソードも。ヴュルツブルク司教館は、フランス、イタリア、オーストリアから芸術家・建築家を集め、バロック建築としても非常に優れた作品に仕上がったという点で評価されています。

ヴュルツブルク司教館は、バロック様式の宮殿でも並外れた構造と装飾を持つ芸術作品で、その挑戦的な取り組みは国際色豊かで独創的な芸術の表現が見られるという点で評価されています。また、フランスのパリ、イタリアのヴェネツィア、オーストリアのウィーンなど18世紀のヨーロッパの優れた建築家・彫刻家・画家などの共同作品であるという点も評価されています。

ヴュルツブルク司教館の地下にはワインセラーがあることでも知られ、フランケンワインが置かれています。ここは古くからフランケン地方と呼ばれたために、この地方のワインはフランケンワインと呼ばれ、丸いボトルに入れることで有名です。フランケンワインは白ワインが多く、気候も冷涼のため、キリッとしたさっぱりめのワインです。ドイツを代表する作家ゲーテもフランケンワインを愛好していたとか。

ヴュルツブルク司教館の建築様式
様式	特徴
バロック様式	壮大で華麗な建築様式
ロココ様式	繊細で優雅な装飾
ドーム構造	天井がドーム型になっている
吹き抜け	柱のない広い空間
フレスコ画	壁や天井に描かれた絵画

ヴュルツブルク司教館の戦災と復興

ヴュルツブルクは第2次世界大戦末期の1945年3月16日、イギリス空軍による爆撃で4

戦後すぐにレジデンツの再建・修復が開始され、約2

また、周辺のリング庭園やホーフ通り、いくつかの歴史的建造物がバッファー・ゾーンに指定されています。2階建て（中二階を含めると4階）で約400室を有する3ウイングは167×92mの長方形のベース上に築かれており、中央西に前庭とフランコニア噴水があります。フランコニア噴水はバイエルンの建築家ガブリエル・フォン・ザイドルの設計で、中央には彫刻家フェルディナント・フォン・ミラーが制作した女神フランコニア像がたたずんでいます。

ヴュルツブルクのレジデンツは、もっとも均質で卓越したバロック宮殿のひとつであり、構造と装飾ともに際立ったヨーロッパ・バロック様式の独立した芸術作品である。レジデンツは野心的な設計、独創的な創造精神、工房の多様な国際性を持ち、その結果として類を見ない芸術的成果を実現している。同時代のモニュメントでこのような才能の結集を表現する例は他にないと思われる。

ヴュルツブルク司教館の戦災と復興
時期	内容
1945年3月16日	イギリス空軍による爆撃
戦後	再建・修復開始
1987年	修復完了

まとめ

ヴュルツブルク司教館は、18世紀に権勢を誇ったヴュルツブルク司教ヨハン・フィリップ・フランツが、当時の著名な建築家や芸術家を集め、60年の歳月をかけて建設したバロック・ロココ様式の宮殿です。

建設には、バルタザール・ノイマンをはじめ、ルーカス・フォン・ヒルデブラント、ロベール・ド・コット、ジェルマン・ボフランといったヨーロッパを代表する建築家たちが参加し、内装にはアントニオ・ジュゼッペ・ボッシやジョヴァンニ・バティスタ・ティエポロといった芸術家たちが貢献しました。

ヴュルツブルク司教館は、ヨーロッパでもっとも輝ける宮殿のひとつとされ、ナポレオンやマリア・テレジアといった著名人からも称賛されています。

第2次世界大戦で大きな被害を受けましたが、戦後、約2

2. ヴュルツブルク司教館の庭園群と広場の特徴

レジデンツ庭園

ヴュルツブルク司教館の東側には、レジデンツ庭園が広がっています。レジデンツ庭園は、円と直線で構成されたバロック様式の平面幾何学式庭園で、綺麗に刈り込まれた生垣と放射線状の通路があり、自然環境とのバランスがよい心安らぐ構成となっています。

また、庭園を彩る花々は、街の花屋にある花で、決して華美でなく、優雅な宮廷を引き立てる控えめな美しさも魅力です。

レジデンツ庭園は、ヴュルツブルク司教館の建築様式と調和し、訪れる人々に心地よい空間を提供しています。

レジデンツ庭園の特徴
特徴	内容
様式	バロック様式
構成	円と直線で構成された平面幾何学式庭園
植栽	綺麗に刈り込まれた生垣と放射線状の通路
雰囲気	心安らぐ空間

ホーフ庭園

ヴュルツブルク司教館の南側には、ホーフ庭園が広がっています。ホーフ庭園は、レジデンツ庭園と同様に、円と直線で構成されたバロック様式の平面幾何学式庭園ですが、西側は自然を模したイギリス式庭園となっています。

ホーフ庭園には、華美過ぎず自然美をほどよく残した庭園があり、春から夏にかけてバラの花が美しく咲き誇ります。また、庭園を彩る彫刻も魅力的で、「フランコニアの泉」と呼ばれる円形の噴水やキューピットなどの彫刻が巧みに配置されています。

ホーフ庭園は、市民の憩いの場としても愛されており、観光客だけでなく地元の人々も訪れる人気のスポットです。

ホーフ庭園は、ヴュルツブルク司教館の建築様式と調和し、訪れる人々に心地よい空間を提供しています。

ホーフ庭園の特徴
特徴	内容
様式	バロック様式とイギリス式庭園
植栽	バラの花、木々
彫刻	フランコニアの泉、キューピットなどの彫刻
雰囲気	自然美と彫刻が調和した空間

レジデンツ・スクエア

ヴュルツブルク司教館の西側には、レジデンツ・スクエアが広がっています。レジデンツ・スクエアは、ヴュルツブルク司教館の正面に位置し、その壮大な建築様式をより一層引き立てています。

レジデンツ・スクエアは、ヴュルツブルク司教館の正面に位置し、その壮大な建築様式をより一層引き立てています。

レジデンツ・スクエアの特徴
特徴	内容
位置	ヴュルツブルク司教館の正面
雰囲気	ヴュルツブルク司教館の壮大さを引き立てる空間

まとめ

ヴュルツブルク司教館の庭園群と広場は、バロック様式とイギリス式庭園が調和した美しい空間で、訪れる人々に心地よい空間を提供しています。

レジデンツ庭園、ホーフ庭園、レジデンツ・スクエアは、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、ヴュルツブルク司教館の建築様式と調和し、一体感を生み出しています。

庭園群と広場は、ヴュルツブルク司教館の建築様式と調和し、訪れる人々に心地よい空間を提供しています。

3. ヴュルツブルク司教館の美術コレクションと展示物

階段の間

ヴュルツブルク司教館の中央ウイングにある「階段の間」は、柱のない広い吹き抜けを特徴とし、天井は「世界最大のフレスコ画」といわれるティエポロのフレスコ画で覆われています。

柱のない32×18mの空間で、完成当初は「欠陥」「崩壊する」との批判を受けたものの、第2次世界大戦時の爆撃にも耐え抜いて設計の確かさを証明しました。

階段の間のフレスコ画は、世界で最も大きなフレスコ画として知られており、ティエポロの代表作の一つです。

階段の間は、ヴュルツブルク司教館の最も象徴的な空間であり、訪れる人々に圧倒的な感動を与えます。

階段の間の特徴
特徴	内容
構造	柱のない吹き抜け
天井画	ティエポロによる世界最大のフレスコ画
規模	32×18m
評価	設計の確かさを証明する空間

ホワイト・ホール

ホワイト・ホールは、招待客用のホールで、白で統一されたロココ様式の部屋です。

ボッシのスタッコ細工とシャンデリアで凜とした空気を演出しており、階段の間とは異なる雰囲気を醸し出しています。

ホワイト・ホールは、ヴュルツブルク司教館の華麗な内装を象徴する空間の一つです。

ホワイト・ホールの特徴
特徴	内容
様式	ロココ様式
色調	白
装飾	スタッコ細工、シャンデリア
雰囲気	凜とした空間

インペリアル・ホール

インペリアル・ホールは、大きな窓と白・銀・金・ピンクといった色彩で彩られたバロック様式の華やかな空間です。

彫刻や大理石柱に加えて、ティエポロのフレスコ画やボッシの黄金のスタッコ細工などで装飾されており、豪華絢爛な雰囲気です。

インペリアル・ホールは、ヴュルツブルク司教館の華麗な内装を象徴する空間の一つです。

インペリアル・ホールの特徴
特徴	内容
様式	バロック様式
色調	白、銀、金、ピンク
装飾	彫刻、大理石柱、フレスコ画、スタッコ細工
雰囲気	豪華絢爛な空間

まとめ

ヴュルツブルク司教館は、階段の間、ホワイト・ホール、インペリアル・ホールなど、数多くの美術コレクションと展示物を有しています。

これらのコレクションは、ヴュルツブルク司教館の建築様式と調和し、訪れる人々に芸術的な感動を与えます。

ヴュルツブルク司教館は、美術コレクションと展示物を通して、18世紀のヨーロッパ文化を伝える貴重な場所です。

4. ヴュルツブルク司教館周辺の観光スポットとアクセス方法

ヴュルツブルクへのアクセス

ヴュルツブルクは、ドイツのバイエルン州北西部、マイン川沿岸に位置し、ロマンティック街道の北の起点として知られています。

ヴュルツブルクへのアクセスは、ミュンヘン中央駅から電車で約2時間です。

ヴュルツブルク中央駅は、ドイツで新幹線の役割を担うICEの停車駅で、各方面からのアクセスが便利です。

ヴュルツブルク中央駅からヴュルツブルク司教館までは、徒歩約15分です。

ヴュルツブルクへのアクセス方法
交通手段	所要時間
電車	ミュンヘン中央駅から約2時間
ICE	ヴュルツブルク中央駅まで停車
徒歩	ヴュルツブルク中央駅から司教館まで約15分

ヴュルツブルクの観光スポット

ヴュルツブルクには、ヴュルツブルク司教館以外にも、聖キリアン大聖堂、マリエンカペレ、マルクト広場、ノイミュンスター教会、アルテ・マインブリュッケなど、多くの観光スポットがあります。

聖キリアン大聖堂は、レジデンツの近くに位置する、背の高い二つの尖塔が印象的なロマネスク様式の建築物です。

マリエンカペレは、マリエン広場に面して立つ、朱色と白色のコントラストが鮮やかな個性的な外観の礼拝堂です。

マルクト広場は、ヴュルツブルクの中心部にある広場です。

ヴュルツブルクの観光スポット
スポット	特徴
聖キリアン大聖堂	ロマネスク様式の建築物
マリエンカペレ	後期ゴシック様式の教会
マルクト広場	ヴュルツブルクの中心部にある広場
ノイミュンスター教会	バロック様式の教会
アルテ・マインブリュッケ	マイン川に架かる橋