アランフェスの文化的景観とは？世界遺産についての解説

アランフェスの文化的景観の構成要素
要素	説明
王宮	16世紀にフェリペ2世によって建設が命ぜられ、18世紀に完成。その後、カルロス3世によって拡張された。
庭園	王宮の周囲に広がる広大な敷地で、タホ川の流れを巧みに利用した造り。緑と水の調和が美しい。
街並み	碁盤の目状に区画整理された街並み。
祭り	守護聖人サン・フェルナンドの祭り、タホ川の海賊下りなど、様々なイベントが開催される。
食文化	農産物を食材とした料理や、王国の伝統であるジビエ料理が有名。

1. アランフェスの歴史
2. アランフェスの世界遺産登録
3. アランフェスの文化的景観
4. アランフェスの宮殿
5. アランフェスの庭園
6. アランフェスの祭り

1. アランフェスの歴史

アランフェスの名前の由来

アランフェスの地名はバスク語由来という説があります。言語学者のラファエル・ラペサはバスク語の「アランツァ」（サンザシ）という説を示していますが、「アラン」（谷または同音異義のプラム）かもしれません。アラビア語の「イブン・アランケジュ」（クルミの生える所）という説やラテン語の「アラ・ヨウィス」（ジュピター神殿）という説も唱えられています。7世紀の文献には「アラウス」や「アランス」という名前で現れ、「アランスエケ」などと呼ばれた後に、15世紀に「アランフエス」に落ち着いたようです。

アランフェスの名前の由来
説	内容
バスク語	「アランツァ」（サンザシ）または「アラン」（谷）
アラビア語	「イブン・アランケジュ」（クルミの生える所）
ラテン語	「アラ・ヨウィス」（ジュピター神殿）

アランフェスの歴史

1085年にアルフォンソ6世がトレドを征服した後も、アランフエスはカスティーリャ王国とイスラム諸国の間で争奪が行われました。1178年に最終的に征服され、アランフエスはサンティアゴ騎士団に与えられました。15世紀末、カトリック両王によって王室の土地とされ、1561年、フェリペ2世の命により宮殿の建築が始まりました。18世紀のフェルナンド6世によってアランフエスが生まれたのですが、当時に住んでいたのは宮廷関係者だけでした。

アランフェスの歴史的出来事
年	出来事
1085年	アルフォンソ6世がトレドを征服
1178年	アランフエスがサンティアゴ騎士団に与えられる
15世紀末	カトリック両王によって王室の土地となる
1561年	フェリペ2世が宮殿の建築を命じる
1808年	アランフエス暴動が発生
1851年	マドリード＝アランフエス間に鉄道が開通

アランフェスの歴史的出来事

1808年、宰相マヌエル・デ・ゴドイの支配に対してアランフエス暴動が発生しました。これによってゴドイが失脚し、カルロス4世が退位、フェルナンド7世が即位しますが、ナポレオンの介入によってジョゼフ・ボナパルトがスペイン王となりました。

1851年、スペインで2番目となる鉄道（イチゴ列車と呼ばれる）がマドリード＝アランフエス間に開通し、マドリードの近郊都市として産業が発展しました。

まとめ

アランフェスは、長い歴史の中で、様々な勢力に支配され、王室の土地として発展してきました。特に、16世紀以降、スペイン王室の夏の離宮として利用され、宮殿や庭園が建設されたことで、現在の文化的景観が形成されました。

2. アランフェスの世界遺産登録

アランフェスの文化的景観

アランフエスの王宮は、16世紀にフェリペ2世の命で建設が始められたもので、エル・エスコリアルと同じくフアン・バウティスタ・デ・トレドとフアン・デ・エレラによって設計されました。18世紀のフェルナンド6世の治世に完成し、カルロス3世によって拡張されました。

王宮からタホ川に沿って広がる庭園は、森や庭からなり、多くの泉や像で飾られています。王宮正面の「パルテレ庭園」、タホ川と人工の川に囲まれた「島の庭園」、タホ川に沿って延びる150haの「王子の庭園」などからなります。かつては王室の農業試験場でもあり、スペイン黄金時代に世界から集めた植物が栽培されていました。

世界遺産登録基準

2001年、王宮と庭園を含む風景は「アランフエスの文化的景観」としてユネスコの世界遺産（文化遺産）に登録されました。自然と人工物からなる景観が何百年も維持され発展してきたことが評価されました。この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録されました。

登録基準（ii）：アランフエスの文化的景観は、王族の宮殿もあったということもあり、さまざまな文化が集まったことで作り出された景観であるという点。

登録基準（iv）：アランフエスの文化的景観は、景観設計の発展において重要な段階を示すものであるということ。

世界遺産登録基準
基準	内容
登録基準（ii）	様々な文化が集まったことで作り出された景観
登録基準（iv）	景観設計の発展において重要な段階を示す

世界遺産登録の意義

アランフエスは、夏の離宮が置かれたこともあり、スペインの王族によって宮殿や庭園が建造された都市であることから、さまざまな文化が持ち込まれ、景観設計の発展が見られるという点で評価されています。

まとめ

アランフエスは、王宮と庭園を含む文化的景観が評価され、2001年に世界遺産に登録されました。これは、スペイン王室の長い歴史と文化、そして自然との調和が作り出した景観が、世界的に認められたことを意味します。

3. アランフェスの文化的景観

文化的景観とは

文化的景観とは、地域における人々の生活や生業、そして風土によって形成された景観地のことです。単に美しい風景だけでなく、そこに暮らす人々の歴史や文化、伝統が積み重ねられてきた証であり、貴重な文化遺産として認識されています。

アランフェスの文化的景観の特徴

アランフェスの文化的景観は、スペイン王室の宮殿と庭園を中心とした、自然と人工物が調和した景観です。フランスのヴェルサイユ宮殿を模して造られた宮殿や庭園は、ヨーロッパの文化の影響を受けながらも、スペイン独自の文化や歴史を反映した独特の景観を形成しています。

また、アランフェスは、タホ川に沿って発展した街であり、緑豊かな自然に囲まれています。街の周囲は乾燥地帯ですが、タホ川のおかげで潤いのある環境が保たれ、中世の雰囲気を漂わせる街並みが形成されています。

アランフェスの文化的景観の特徴
特徴	説明
自然と人工物の調和	スペイン王室の宮殿と庭園を中心とした、自然と人工物が調和した景観
ヨーロッパ文化の影響	フランスのヴェルサイユ宮殿を模して造られた宮殿や庭園
スペイン独自の文化	スペイン独自の文化や歴史を反映した独特の景観
緑豊かな自然	タホ川に沿って発展した街であり、緑豊かな自然に囲まれている

文化的景観の価値

アランフェスの文化的景観は、単に美しい風景だけでなく、スペイン王室の歴史や文化、そして自然との調和を象徴する重要な文化遺産です。王宮や庭園は、スペインの芸術や建築、庭園設計の技術を伝える貴重な資料であり、世界中の人々に感動を与えています。

まとめ

アランフェスの文化的景観は、スペイン王室の歴史と文化、そして自然が織りなす、独特で美しい景観です。この景観は、世界遺産に登録されることで、その価値が世界的に認められ、保護と継承が求められています。

4. アランフェスの宮殿

アランフェスの王宮の歴史

アランフェスの王宮は、16世紀にフェリペ2世によって建築が命ぜられ、18世紀のフェルナンド6世の時代に完成しました。その後、カルロス3世によって宮殿の拡張が行われ、建設当初から完成までおよそ100年以上の時間がかかっています。

アランフェスの王宮の見どころ

アランフェスの王宮の見どころは、その美しい外観、27もの部屋と庭園です。荒野の中に突如として現れるオアシスのような存在感のある王宮の中は見学できるようになっており、壁一面が陶磁器のレリーフで飾られた「磁気の間」や、贅を尽くした豪華な内装の「王座の間」があります。

最大の見どころは「アラブの間」です。アルハンブラ宮殿の二姉妹の間を真似て作ったとされるこの部屋は、細やかな着色が施されており非常に美しい様子になっています。

アランフェスの王宮の見どころ
部屋	説明
磁気の間	壁一面が陶磁器のレリーフで飾られている
王座の間	贅を尽くした豪華な内装
アラブの間	アルハンブラ宮殿の二姉妹の間を真似て作られた部屋。細やかな着色が施されている

アランフェスの王宮の建築様式

アランフェスの王宮は、スペイン王室の長い歴史の中で、様々な建築様式が取り入れられてきました。フェリペ2世の時代に建設が始まった当初は、ルネサンス様式の影響が見られますが、その後、バロック様式やロココ様式など、時代の流れとともに建築様式も変化していきました。

特に、カルロス3世の時代に増築された部分は、フランスのヴェルサイユ宮殿を模して造られたもので、フランス風の華麗な装飾が施されています。

アランフェスの王宮の建築様式
時代	建築様式
16世紀	ルネサンス様式
18世紀	バロック様式、ロココ様式
カルロス3世時代	フランス風の華麗な装飾

まとめ

アランフェスの王宮は、スペイン王室の歴史と文化を象徴する壮麗な建築物です。様々な建築様式が融合し、豪華な内装と美しい庭園が調和した、見ごたえのある宮殿となっています。

5. アランフェスの庭園

アランフェスの庭園の特徴

アランフェスの庭園は、王宮の周囲に広がる広大な敷地で、タホ川の流れを巧みに利用した造りになっています。緑と水の調和が美しく、散策するだけでも心が安らぎます。

庭園内には、様々な種類の植物が植えられており、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。また、噴水や彫刻など、芸術的な要素も取り入れられており、見ごたえのある庭園となっています。

アランフェスの庭園の種類

アランフェスの庭園には、大きく分けて「パルテレ庭園」「島の庭園」「王子の庭園」の3つの庭園があります。

「パルテレ庭園」は、王宮の正面に位置し、幾何学模様の造園が特徴です。フランスのヴェルサイユ宮殿などの影響を受けていると言われています。

「島の庭園」は、タホ川と人工の川に囲まれた島状の庭園です。ヘラクレスとヒドラの泉など、美しい彫刻が見どころです。

「王子の庭園」は、タホ川に沿って延びる広大な庭園です。様々な種類の樹木が植えられており、散策を楽しむことができます。

アランフェスの庭園の種類
庭園	説明
パルテレ庭園	王宮の正面に位置し、幾何学模様の造園が特徴
島の庭園	タホ川と人工の川に囲まれた島状の庭園。ヘラクレスとヒドラの泉など、美しい彫刻が見どころ
王子の庭園	タホ川に沿って延びる広大な庭園。様々な種類の樹木が植えられている

アランフェスの庭園の見どころ

アランフェスの庭園の見どころは、王宮の周囲に広がる広大な敷地で、タホ川の流れを巧みに利用した造りになっています。緑と水の調和が美しく、散策するだけでも心が安らぎます。

まとめ

アランフェスの庭園は、王宮と一体となった、自然と人工物が調和した美しい景観です。広大な敷地内には、様々な種類の植物が植えられており、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。また、噴水や彫刻など、芸術的な要素も取り入れられており、散策するだけでも心が安らぐ、魅力的な庭園となっています。

6. アランフェスの祭り

アランフェスの主な祭り

アランフェスでは、一年を通して様々な祭りやイベントが開催されています。

5月30日前後には、守護聖人サン・フェルナンドの祭りが行われます。この祭りにつきものの牛追い、若牛、成牛の闘牛に参加するため、市民は街に繰り出します。また、この時期にはアルファランフエス（Alfaranjuez）という陶磁器市も立ちます。

9月の祭りは、家畜市と収穫祭、さらに君主が宮廷人と楽しむために主催した祭りから始まったものです。この期間、地元の人々は有名なアランフエスの暴動（Motín de Aranjuez）の芝居を上演します。この行事は国の観光資源に指定されています。

またこの時期には、広く知られるようになったタホ川の海賊下り（Descenso Pirata por el Tajo）も行われます。3キロの区間、何百人もの住民たちが独創的な小船に乗って、川岸に集まった何千人もの見物人を盛り上げながら、タホ川を下っていくのです。

アランフェスの主な祭り
時期	祭り	内容
5月30日前後	守護聖人サン・フェルナンドの祭り	牛追い、闘牛、陶磁器市
9月	家畜市と収穫祭	アランフエスの暴動の芝居上演
9月	タホ川の海賊下り	住民たちが小船に乗ってタホ川を下る

アランフェスの音楽祭

5月から6月にかけて開催されるFestival Música Antigua Aranjuez（アランフエスクラシック音楽フェスティバル）は、アランフエスを代表する一大フェスティバルで、誰もが楽しめるコンサートの魅力的なプログラムを展開しています。

アランフェスの食文化

アランフエスのガストロノミーとしては、主に農産物を食材とした料理や、王国の伝統であるジビエ料理が挙げられます。代表的なレストランで、かつての国王や貴族たちを喜ばせた料理を味わうことができます。アスパラガス、有名なイチゴ、トマト、レタス、芽キャベツ、キジなどが、タホ川流域の食材として有名です。

地元で「ガンゴス（Gangos）」と呼ばれるタホ川沿いのレストランでは、サラダ、スペイン・オムレツ、ウサギ肉のニンニク風味を味わえます。アスパラガス、キジ、カエルの足、かの有名なイチゴをはじめとするアランフエスの名物料理を楽しむなら El Rana Verde がおすすめです。また、レストラン Aguatinta では肉、魚、シーフード料理を提供しており、パティオテラスには垂直庭園があります。Casa Joséでは、ベジタリアン家庭料理を楽しむことができます。