項目 | 内容 |
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定義 | 電力の使用者(需要家)側のエネルギーリソースを制御して電力需要パターンを変化させ、需給バランスを調整する仕組み |
種類 | 上げDR(需要増加), 下げDR(需要抑制) |
制御方法 | 電気料金型DR, インセンティブ型DR |
歴史と背景 | 東日本大震災, IT技術の革新, 省エネ法の改正 |
経済への影響 | 電気料金, 燃料調達コスト, 経済活性化 |
メリット | 電気料金削減, 燃料調達コスト削減, 再生可能エネルギー有効活用 |
デメリット | 需要家の負担, システム構築コスト, 需要家の意識 |
現在の動向 | 普及が進んでいる, 課題も多い |
今後の展望 | 再生可能エネルギーとの連携, スマートグリッドとの連携, 需要家の積極的な参加 |
キーワード | ピークカット, ピークシフト, ネガワット取引 |
概念 | 需給バランス, エネルギーリソース, 分散型エネルギーリソース(DER) |
DRとBCPの関係 | DRはBCPの一部としてシステムの復旧を担う |
1. ドクターリーダンス(DR)とは
DRとは何か?
DRは、Demand Response(デマンドレスポンス)の略で、電力の使用者(需要家)側のエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、需要設備)を制御して電力需要パターンを変化させ、需給バランスを調整する仕組みです。小売電気事業者がデマンドレスポンスの契約を締結する需要家側に電力使用パターンの変化を促し、需要家側はその分の対価を受け取ることができます。
電気は大量に貯蔵することが困難であるため、電力系統は、需要(使用量)と供給(発電量)が常に同じになるように調整されています。これまでは需要に合わせて供給を調整していましたが、デマンドレスポンスでは供給に合わせて需要を調整します。
デマンドレスポンスは、電力系統に接続された再生可能エネルギー発電のほか、家庭や事業所に設置された太陽光発電設備や電気自動車(EV)、給湯機器(エコキュート)や空調といった分散型エネルギーリソース(DER)の活用方法の一つです。
種類 | 説明 |
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上げDR | 需要を増やす |
下げDR | 需要を減らす |
DRの種類
デマンドレスポンスには、需要を増やす「上げDR」と需要を減らす「下げDR」があります。
上げDRは、デマンドレスポンスによって電力需要を増やします。例えば、需要家側の機器を稼働したり、蓄電池を充電したりすることで、再生可能エネルギーの余剰電力を消費・吸収することを指します。
下げDRは、デマンドレスポンスによって電気の需要を減らします。例えば、空調や照明、また工場などの生産設備の稼働を調整・停止することで、電力需要のピーク時に需要を減らします。上げDRで挙げた蓄電池は下げDRにも関係しており、下げDRが依頼された時間帯に蓄電池が放電した電気を利用することで、需要家は契約先の小売電気事業者から供給される電力を削減できます。
制御方法 | 説明 |
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電気料金型DR | 時間帯別の電気料金を設定 |
インセンティブ型DR | 需要家にインセンティブを支払う |
DRの制御方法
デマンドレスポンスは、需要制御の方法によって、「電気料金型DR」と「インセンティブ型DR」に分けられます。
電気料金型DRは、例えば需要ピーク時に料金を値上げするといった時間帯別の電気料金を小売電気事業者が設定し、家庭や事業者に電力需要の抑制や増加を促す仕組みです。これは大多数に適用が可能である一方、どれだけの需要家が実際に電力を抑制したのか、デマンドレスポンスの効果が現れるか分からない面もあります。
インセンティブ型DRは、需要家が小売電気事業者との間であらかじめ契約を結び、小売電気事業者からの依頼に応じてデマンドレスポンスを実施、その対価としてインセンティブ(ポイントなど)が需要家に支払われる仕組みです。これは契約に基づくデマンドレスポンスとなるため効果が確実となる一方、実施には手間がかかり、多くの需要家への適用が難しい面もあります。なお、インセンティブ型DRの下げDRのことを、「ネガワット取引」とも呼びます。
まとめ
DRは、電力の需要家側のエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させ、需給バランスを調整する仕組みです。
需要を増やす「上げDR」と需要を減らす「下げDR」があり、制御方法には「電気料金型DR」と「インセンティブ型DR」があります。
DRは、再生可能エネルギーの有効活用や電力需給の安定化に貢献する重要な技術です。
2. DRの歴史と背景
DR導入の背景
DR導入の背景には、従来のエネルギー需給システムの課題、IT技術の革新、省エネ法の改正があります。
1つ目が従来のエネルギー需給システムの課題です。従来は、電力会社が消費者・需要家の電気使用量を予測して、需要に合わせて発電所を稼働させることで、電力の需給バランスを図ってきました。しかしながら、東日本大震災では、エネルギー供給が制約されたほか、大手電力会社が大規模電源と需要地を系統で繋ぐ従来の「集中型エネルギーシステム」の脆弱性が明らかになりました。
こうした背景から、エネルギー需給システムにおいては、従来の省エネ対策に追加してデマンドレスポンスの重要性が認識されつつあります。具体的には、デマンドレスポンスで効果的にピークカット※を行うことで、需給ひっ迫の解消に寄与するとともに、非効率な火力発電の焚き増し等が不要となるため、中長期的に効率的な電力システムの構築につながることが期待されています。※ピークカット:最も使用電力の多いピーク時の使用電力を「カット」し、電力の使用量そのものを低減させる仕組み
要因 | 説明 |
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東日本大震災 | エネルギー供給制約, 集中型エネルギーシステムの脆弱性 |
IT技術の革新 | エネルギー需給を細かく制御できる技術革新 |
省エネ法の改正 | 電気の需要の平準化が明記 |
IT技術の革新
2つ目がIT技術の革新です。エネルギー需給構造の変化に伴う需要家側のニーズも多様化しています。これに併せて近年IT技術や蓄電技術を中心に、エネルギー需給を細かく制御できる技術革新が進展しており、デマンドレスポンスの導入を後押しする一つの材料となっています。
具体的には、平成23年度から横浜市や北九州市などの国内の4地域で行っているCEMS(地域エネルギー管理システム)や、HEMS等の通信インターフェイスが挙げられます。
省エネ法の改正
3つ目が省エネ法の改正です。東日本大震災後の電力需給ひっ迫を契機に、エネルギー効率の改善や、CO₂を排出する化石燃料の使用の低減など、従来の省エネの強化に加えて、電力需給バランスを意識したエネルギー管理を行うことの重要性が強く認識されました。
これに伴い、2021年4月に施行された改正省エネ法では、「電気の需要の平準化」の概念が追加されました。具体的には、全国一律で7~9月(夏季)、及び12月~3月(冬期)の8時~22時の間で、節電や、電気を使用する時間帯をずらす(シフト)など電気需要平準化に資する措置を、労働環境や従業員への負担を配慮しつつ行うことが明記されています。
まとめ
DR導入の背景には、東日本大震災によるエネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの脆弱性、IT技術の革新、省エネ法の改正などがあります。
これらの背景から、従来の省エネ対策に加えて、電力需給バランスを意識したエネルギー管理の重要性が認識され、DRが注目されるようになりました。
特に、改正省エネ法では「電気の需要の平準化」が明記され、DRの導入が促進されています。
3. DRが与える経済への影響
電気料金への影響
DRは、電気料金に大きな影響を与えます。特に、インセンティブ型DRでは、需要家が電力会社からインセンティブを受け取ることができるため、電気料金の削減につながります。
また、電気料金型DRでは、ピーク時に料金を値上げすることで、需要家の電力使用を抑制し、電力会社はコストの高い電源の利用を減らすことができます。
このように、DRは、電力会社と需要家の双方にとって、電気料金の削減に貢献する可能性があります。
影響 | 説明 |
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電気料金削減 | インセンティブ型DRでは報酬が支払われる |
電気料金値上げ | 電気料金型DRではピーク時に料金を値上げ |
燃料調達コストへの影響
DRは、燃料調達コストにも影響を与えます。特に、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、発電量の変動が大きくなっています。
DRによって、需要を抑制したり、再生可能エネルギー由来の電力を有効に使ったりすることで、燃料の追加購入を減らすことができ、燃料調達コストを削減することができます。
また、DRは、電力需給がひっ迫する際に、発電効率の低い火力電源等の稼働を抑えることに繋がり、ひいては日本全体での燃料消費量の低減やCO2の排出抑制にも繋がり得ます。
影響 | 説明 |
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燃料調達コスト削減 | 燃料の追加購入を減らす |
CO2排出抑制 | 火力発電等の稼働を抑える |
経済活性化への影響
DRは、経済活性化にも貢献する可能性があります。DRの導入によって、新たなビジネスモデルやサービスが生まれ、雇用創出や地域経済の活性化につながる可能性があります。
例えば、DRのシステム開発や運用、需要家へのコンサルティングなど、DR関連のビジネスが拡大する可能性があります。
また、DRの導入によって、企業の競争力強化やイノベーション促進につながる可能性もあります。
まとめ
DRは、電気料金の削減、燃料調達コストの抑制、経済活性化など、経済に多大な影響を与える可能性があります。
特に、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の安定化、CO2排出量の抑制など、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすと期待されています。
DRは、経済的なメリットだけでなく、環境問題や社会問題の解決にも貢献する可能性を秘めています。
4. DRのメリットとデメリット
DRのメリット
DRには、以下のようなメリットがあります。
電気料金の削減: 需要家がDRに参加することで、電気料金を削減することができます。特に、インセンティブ型DRでは、需要抑制量に応じて報酬が支払われるため、経済的なメリットが大きくなります。
燃料調達コストの削減: 電力会社は、DRによって需要を抑制することで、燃料の追加購入を減らすことができ、燃料調達コストを削減することができます。
再生可能エネルギーの有効活用: DRは、再生可能エネルギーの導入拡大を促進する効果があります。再生可能エネルギーは、天候に左右されるため、発電量が不安定です。DRによって、需要を調整することで、再生可能エネルギーによる発電を最大限に活用することができます。
メリット | 説明 |
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電気料金削減 | インセンティブ型DRでは報酬が支払われる |
燃料調達コスト削減 | 燃料の追加購入を減らす |
再生可能エネルギー有効活用 | 再生可能エネルギーによる発電量の変動を吸収 |
DRのデメリット
DRには、以下のようなデメリットがあります。
需要家の負担: DRに参加するには、需要家が電力使用を調整する必要があります。これは、生活や業務に支障をきたす可能性があります。
システム構築コスト: DRを導入するには、システム構築や運用にコストがかかります。特に、インセンティブ型DRでは、需要家との契約や報酬の支払いなど、複雑なシステムが必要となるため、コストがかかりやすいです。
需要家の意識: DRの効果を発揮するためには、需要家の意識改革が不可欠です。需要家がDRの重要性を理解し、積極的に参加することが重要となります。
デメリット | 説明 |
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需要家の負担 | 生活や業務に影響を与える可能性 |
システム構築コスト | システム構築や運用にコストがかかる |
需要家の意識 | 需要家の意識改革が不可欠 |
DR導入の課題
DRの導入には、いくつかの課題があります。
需要家の理解: DRは、需要家にとって、生活や業務に影響を与える可能性があります。そのため、需要家の理解と協力が不可欠です。
制度の整備: DRを効果的に導入するためには、制度の整備が必要です。例えば、DRの参加を促進するためのインセンティブ制度や、DRの取引を円滑に行うためのルールなどが求められます。
技術開発: DRの技術開発も重要な課題です。特に、需要家のエネルギーリソースを効率的に制御するための技術や、DRの取引を安全かつスムーズに行うための技術などが求められます。
課題 | 説明 |
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需要家の理解 | 生活や業務に影響を与える可能性があるため理解と協力が不可欠 |
制度の整備 | DRの参加を促進するためのインセンティブ制度や取引ルールが必要 |
技術開発 | 需要家のエネルギーリソースを効率的に制御するための技術開発が必要 |
まとめ
DRは、電気料金の削減や燃料調達コストの抑制など、多くのメリットをもたらす一方で、需要家の負担やシステム構築コスト、需要家の意識など、いくつかのデメリットや課題も存在します。
DRを効果的に導入するためには、これらのメリットとデメリット、課題を理解し、適切な対策を講じる必要があります。
政府や電力会社、需要家などが協力して、DRの普及を促進していくことが重要です。
5. DRの現在の動向と今後の展望
DRの普及状況
DRは、近年注目を集めており、日本でも多くの電力会社がDRの導入を進めています。
特に、インセンティブ型DRは、需要家にとって経済的なメリットが大きいため、普及が進んでいます。
しかし、DRの普及には、まだ課題も多く、需要家の理解や制度の整備、技術開発などが求められています。
今後の展望
今後のDRは、以下の様な方向に進展していくと考えられます。
再生可能エネルギーとの連携: 再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、DRは、再生可能エネルギーによる発電量の変動を吸収する役割を担うことが期待されています。
スマートグリッドとの連携: スマートグリッドは、電力網を高度化する技術です。DRは、スマートグリッドと連携することで、より効率的に電力需給を調整することができます。
需要家の積極的な参加: 需要家の意識改革が進み、DRの重要性を理解する人が増えることで、DRの普及が加速すると考えられます。
展望 | 説明 |
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再生可能エネルギーとの連携 | 再生可能エネルギーによる発電量の変動を吸収 |
スマートグリッドとの連携 | より効率的に電力需給を調整 |
需要家の積極的な参加 | 普及が加速 |
DRの重要性
DRは、電力需給の安定化、再生可能エネルギーの有効活用、CO2排出量の抑制など、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすと期待されています。
また、DRは、電力会社や需要家の双方にとって、経済的なメリットをもたらす可能性があります。
今後、DRは、エネルギー政策においてますます重要な役割を担っていくと考えられます。
まとめ
DRは、電力需給の安定化や再生可能エネルギーの有効活用など、多くのメリットをもたらすことから、今後ますます普及していくことが期待されています。
しかし、DRの普及には、需要家の理解や制度の整備、技術開発など、多くの課題があります。
政府や電力会社、需要家などが協力して、DRの普及を促進していくことが重要です。
6. DRを理解するためのキーワードと概念
DR関連のキーワード
DRを理解するためには、いくつかの重要なキーワードがあります。
ピークカット: 電力需要のピーク時に、需要を抑制することで、電力需給のバランスを調整することです。
ピークシフト: 電力需要のピーク時間をずらすことで、電力需給のバランスを調整することです。
ネガワット取引: インセンティブ型DRの下げDRのことを指します。需要家が電力会社からインセンティブを受け取って、電力需要を抑制します。
キーワード | 説明 |
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ピークカット | 電力需要のピーク時に需要を抑制 |
ピークシフト | 電力需要のピーク時間をずらす |
ネガワット取引 | インセンティブ型DRの下げDR |
DR関連の概念
DRには、いくつかの重要な概念があります。
需給バランス: 電力の需要と供給が常に一致している状態です。DRは、需給バランスを調整する仕組みです。
エネルギーリソース: 電力需要を調整するために利用される資源です。発電設備、蓄電設備、需要設備などが含まれます。
分散型エネルギーリソース(DER): 家庭や事業所に設置された太陽光発電設備や電気自動車(EV)、給湯機器(エコキュート)や空調など、分散して設置されたエネルギーリソースです。
概念 | 説明 |
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需給バランス | 電力の需要と供給が常に一致している状態 |
エネルギーリソース | 電力需要を調整するために利用される資源 |
分散型エネルギーリソース(DER) | 家庭や事業所に設置されたエネルギーリソース |
DRとBCPの関係
DRは、BCP(事業継続計画)と密接な関係があります。
BCPは、災害や事故が発生した場合に、事業を継続するための計画です。DRは、BCPの一部として、システムの復旧を担います。
DRとBCPを連携させることで、災害や事故発生時の事業継続性を高めることができます。
まとめ
DRを理解するためには、ピークカット、ピークシフト、ネガワット取引などのキーワードと、需給バランス、エネルギーリソース、DERなどの概念を理解することが重要です。
また、DRはBCPと密接な関係があり、両者を連携させることで、災害や事故発生時の事業継続性を高めることができます。
DRは、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の安定化など、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすと期待されています。
参考文献
・【2024年最新】デマンドレスポンスとは?基礎知識から種類、仕組み、参加方法と注意点まで詳しく解説 | 【公式】サービスサイト | 伊藤忠 …
・【2023年最新】デマンドレスポンスとは?仕組みや課題をわかりやすく解説|EGM
・用語解説 第103回テーマ 経済 Dr(デマンドレスポンス)
・用語解説 第103回テーマ: 経済dr(デマンドレスポンス) | 電気学会 [B] 電力・エネルギー部門
・電力需給ひっ迫への処方箋:デマンドレスポンス(Dr)とは何か |Wwfジャパン
・デマンドレスポンス(DR)とは?2022年注目される理由 – 省エネ・創エネ.com
・新しいでんきの使い方、DR(デマンドレスポンス)とは?わかりやすく解説
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