インサイダー取引とは?経済用語について説明

インサイダー取引のまとめ
項目 内容
定義 上場企業の関係者が、未公開の重要情報を利用して、自己の利益や損失回避を目的に有価証券等の売買を行うこと
規制対象 会社関係者、情報受領者
規制対象となる情報 重要事実(決定事実、発生事実、決算情報、その他)、公開買付け等の実施・中止に関する事実
規制対象となる行為 売買等、情報伝達行為
公表 証券取引所の適時情報開示システム(TDnet)を通じて、証券取引所のホームページ内にある「適時開示情報閲覧サービス」に重要事実が掲載されたこと
罰則 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、没収、課徴金
発覚原因 証券取引等監視委員会による調査、内部告発
対策 社内ルールの整備、コンプライアンス教育の実施、情報管理体制の構築、内部監査体制の構築

1. インサイダー取引の定義とは

要約

インサイダー取引とは何か?

インサイダー取引とは、上場企業の関係者などが、会社に属しているからこそ得られた情報(重要事実)を利用し、自分の会社の株を売買して利益につなげていく取引を指します。例えば、特定の企業と合併することが翌日明らかにされる場合、公表されれば株価は大きく上がる可能性が高いです。一般の投資家は公表された時点で知ることになるため、株価が大きく上がっているタイミングで買うことになります。しかし、会社関係者は既に合併することが分かっており、株価が落ち着いた状態で購入できるのです。インサイダー取引は、一般の投資家に不利が被る形になりやすい取引であり、証券市場全体の信頼にも悪影響を及ぼします。一方で、「重要事実」が公表された後であれば、売買をしても問題はありません。

インサイダーは英語で「insider」と書き、内部の人・部内者・内部関係者などの意味があります。直訳すると、「内部関係者の取引」です。ビジネスの世界における「インサイダー」は、会社の情報にアクセスできる人を指します。この場合の会社の情報には経営方針・経営戦略・財務状況にアクセスできる人が該当しますが、経営者や役員はもちろん、現場の職員、パートやアルバイトも対象です。他には一定割合以上の株式を持つ株主や許認可の権限を持っている公務員、上場会社と契約している公認会計士や弁護士なども会社関係者の扱いとなります。これらの会社関係者から株価に影響を与える情報を見聞きした人物も規制の対象です。実は会計関係者から情報を聞いた人物がインサイダー取引の対象になるとは思わずに売買をしてしまい、捕まってしまうケースもあります。インサイダー取引は会社関係者だけが対象ではないことを知っておかなければなりません。

インサイダー取引によって課徴金納付命令勧告が出されるケースは年間で20~40件ほどです。実際にインサイダー取引に手を染める人物は、会社関係者よりも会社関係者から情報を受け取った人物の方が多い傾向にあります。その会社関係者も経営者・役員が関与するケースについては、実はそこまで多くなく、社員がインサイダー取引に手を染めてしまうケースが目立ちます。経営者・役員の中には株を保有する人は少なくありませんが、万が一売ってしまえば明らかにインサイダー取引を疑われてしまうため、リスクが大きすぎます。一方で、多少の株であれば、偶然を装って売買を行ってもバレないとインサイダー取引をやる側は思いがちです。そのため、社員などがインサイダー取引をやってしまいますが、監視はしっかりと行われているため、額に関係なくインサイダー取引はバレやすいと言えます。

そもそもなぜインサイダー取引はやったらいけないのか、その理由をご紹介します。基本的に市場は誰にとっても公平な環境でなければなりません。もしもインサイダー取引が許された場合、重要事実を先に知った人物だけが丸儲けをし、普通の投資家は割を食い続けることになります。これでは市場に対する信頼はなくなり、積極的な取引はなされないでしょう。公平で信頼される市場であり続けるために、インサイダー取引を禁止しており、フェアな状態で取引が行われるようにしないといけないのです。

インサイダー取引の類型
類型 説明
典型的なインサイダー取引 上場会社の役員が、業績予想の上方修正を知って、公表前に自社株式を買い付ける
インサイダー取引の対象者 会社関係者(役員、従業員、取引先など)、情報受領者(会社関係者から情報を得た者)
インサイダー取引の対象となる情報 重要事実(株式の発行、公開買付け、合併、業績予想の修正など)
インサイダー取引の対象となる行為 株式の売買、情報伝達、取引推奨

インサイダー取引の罰則

インサイダー取引には大きく分けて2つの罰則があります。ここでは2つの罰則について解説します。インサイダー取引が行われた場合、取引にかかわった人物は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、そして懲役と罰金の併科になる場合があります。また、財産の没収も行われるため、経済面での罪も強化されています。この場合の財産は、売って得た金額が対象です。例えば、500万で買い付けた株が1

法人がインサイダー取引を行った場合は、5億円以下の罰金になります。利益を得た金額が巨額であれば億単位の罰金が科せられる可能性が高いでしょう。課徴金は行政処分として行われるもので、こちらは利益に相当する額を納付することになります。買付けで利益を出した場合、東京証券取引所など証券取引所のホームページに合併などの重要事実が掲載されてから2週間における株価の最高値が関係するのです。先ほどのケースでは500万で買い付けた株を1

課徴金は違反の種類によって変わり、資産運用であれば1か月分の運用対価の額の3倍、仲介関連業務は1か月分の仲介関連業務における対価の額の3倍という形で課徴金が決められる流れです。時に巨額の金額となるインサイダー取引での課徴金ですが、実は状況次第では課徴金が半額になるケースがあります。誰からも指摘されることなく、自ら証券取引等監視委員会に報告を行う場合です。このケースのみ、課徴金が減額されます。一方、インサイダー取引を行った人物などが、違反を犯した日から過去5年において課徴金納付の命令を出されていた場合には、課徴金が1.5倍になってしまいます。

インサイダー取引は、一部の人々が企業の未公開重要情報を利用して不当に利益を得る違法行為であり、公正な証券市場の根幹を揺るがす重大な問題です。企業や規制当局は情報管理の徹底や罰則の強化などでインサイダー取引防止に努めていますが、一般投資家の信頼を裏切る不正を根絶するには、あらゆる関係者の高い倫理観が不可欠です。VALUなどの過去の事例から学び、健全な市場秩序を守り抜くことが重要となります。

インサイダー取引の罰則
罰則 内容
懲役 5年以下の懲役
罰金 500万円以下の罰金
没収 インサイダー取引で得た財産の没収
課徴金 利益相当額の納付
その他 社内処分(懲戒処分)、勤務先の信用失墜など

インサイダー取引の事例

東芝の子会社で働いていた社員が、取引先の会社で検査の不正があったことを知りつつ、情報が開示される前に株を売却したとして、インサイダー取引であると指摘を受けました。およそ2週間にわたって、500万円以上の株を売却し、情報開示前に売り抜けていたのです。事実が明らかとなり、社員は懲戒解雇処分となったせいか、刑事罰には問われなかったものの、課徴金として185万円を支払うよう勧告を受けています。

スクウェア・エニックスの社員だった人物は、複数の会社と携帯電話で遊べるゲームを一緒に開発している事実を知りながら、この複数の会社の株を買い付けたことで罪に問われました。社員は世界的にも知られているゲーム開発者でしたが、最終的に執行猶予付きの有罪となっています。罰金自体は200万円でしたが、追徴金が非常に高額で、2億円近い追徴金が課せられています。それだけインサイダー取引によって巨額の利益を出していたことがうかがえる事件です。

インサイダー取引は、重要事実を見聞きした第三者も該当するため、いい話を聞いたとばかりに取引を行ったら、その時点でインサイダー取引に手を染めたことになります。事実が発覚した瞬間、会社を懲戒解雇になる可能性も考えられ、人生を棒に振ることもあるでしょう。反対に、重要事実を第三者に話すことは、インサイダー取引を生み出す元凶になることも事実です。例えば、居酒屋で友人などについつい気が大きくなって話してしまったり、家族に開発状況を打ち明けたりすることは、インサイダー取引を誘発しかねません。インサイダー取引に関連するルールを事前に知っていれば、少なくとも第三者に対して暴露するような形で情報提供することは避けられるでしょう。

インサイダー取引は犯罪なので、絶対に手を出してはいけません。一方で、口を滑らせて重要事実を口にしたことで、相手を犯罪者にさせてしまう危険性もあります。重要事実を知った場合はたとえ家族であっても話さないことが大切です。また自社株をできる限り持たないこともおすすめです。本当に重要事実を知らなかったとしても、悪い偶然が重なることも考えられるため、一切疑われないようにするためにも、全く関係がない会社の株を買うようにするのも1つの手です。

インサイダー取引の事例
事例 内容
東芝の子会社社員によるインサイダー取引 取引先の会社の検査不正を知りながら、情報開示前に株を売却
スクウェア・エニックス社員によるインサイダー取引 複数の会社とのゲーム開発情報を事前に知り、複数の会社の株を買い付け
インサイダー取引の防止策 重要事実を第三者に話さない、自社株をできる限り持たない

まとめ

インサイダー取引は、上場企業の関係者が、会社に属しているからこそ得られた情報(重要事実)を利用し、自分の会社の株を売買して利益につなげていく取引を指します。インサイダー取引は、一般の投資家に不利が被る形になりやすい取引であり、証券市場全体の信頼にも悪影響を及ぼします。

インサイダー取引は、会社関係者だけでなく、会社関係者から情報を得た情報受領者も対象となります。インサイダー取引は、会社関係者や情報受領者が、重要事実を知った上で、その事実が公表される前に株式などの売買を行う行為です。

インサイダー取引は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、そして懲役と罰金の併科になる場合があります。また、財産の没収も行われるため、経済面での罪も強化されています。

インサイダー取引は、バレる可能性が高いです。証券取引等監視委員会は、市場にインパクトを与えるような事件が起こった場合、その前に不自然な取引が行われていないかを調査します。また、内部告発により発覚するケースもしばしば見受けられます。

2. インサイダー取引の法的規制

要約

インサイダー取引規制の対象となる者

インサイダー取引規制の対象となる者は、大きく分けて の2つです。会社関係者(金融商品取引法(以下「金商法」)166条1項)とは、わかりやすく言えば会社の内部者です。具体的には以下のような立場にいる人です。こうした人たちは、仕事上のやり取りの中で、その会社に関する重要な情報に触れる機会がある人たちといえます。そのため、インサイダー取引の対象となっています。なお、これらの立場から退いた後でも、1年以内であれば依然としてインサイダー取引規制の対象となります。

公開買付者等関係者(金商法167条1項)とは、公開買付け等を行おうとしている会社の内部者です。具体的には以下のような立場にいる人です。公開買付けとは、「〇〇社の株式を1株△円で買います」ということを公告した上で、不特定多数の株主から市場外で株式を買い集める手続きです。公開買付けが公表されると、提示された公開買付価格に応じて株価が上昇するのが通常です。つまり、公開買付けを行うという事実を公表する前に対象株式を買い集めておけば、利益を得られる可能性が非常に高いということがいえます。そのため、公開買付けを行おうとしている会社の内部者は、情報公開前に公開買付けの対象となっている株式の取引をすることを禁止されています。

会社関係者や公開買付者等関係者が自分で取引をしなかったとしても、たとえば家族や友人に情報を伝えて取引をさせ、その家族や友人が利益を得たとしたらどうでしょうか。他の人から見れば、本人が取引をするのと同じように不公平でしょう。会社関係者や公開買付者等関係者から、インサイダー取引規制の対象となる情報を聞いた人を「第一次情報受領者」といいます。金商法は、第一次情報受領者についてもインサイダー取引規制の対象としています(金商法166条3項、167条3項)。なお、第一次情報受領者から重要情報をさらに又聞きした人(第二次情報受領者)以降は、インサイダー取引規制の対象外です。

インサイダー取引規制の範囲を合理的に制限し、投資行動に対する萎縮効果を生じさせないようにするためです。

インサイダー取引規制の対象者
対象者 説明
会社関係者 上場会社の役員、従業員、取引先、顧問先など
情報受領者 会社関係者から直接重要事実を聞いた者
第一次情報受領者 会社関係者から直接重要事実を聞いた者
第二次情報受領者以降 インサイダー取引規制の対象外

インサイダー取引規制の対象となる情報

次に、どのような情報がインサイダー取引規制の対象となっているかについて解説します。会社関係者に関するインサイダー取引規制においては、「重要事実」が対象となります。公開買付者等関係者に関するインサイダー取引規制においては、公開買付け等の実施に関する事実または公開買付け等の中止に関する事実となります。それぞれについて解説します。

会社関係者に関するインサイダー取引規制の対象となる「重要事実」は、大きく以下の3つの事実・情報に分けられます。決定事実とは、会社が投資判断に著しい影響を及ぼす重要な決定をしたという事実をいいます。重要な決定の例としては、以下のようなものが挙げられます。こうした事実は会社経営の根本に関わるものですので、必然的に株価への影響も大きくなります。そのため、決定事実がインサイダー取引規制の対象情報とされています。なお、上場会社等の子会社に関して上記のような内容の決定がされた事実についても、決定事実に含まれます(金商法166条2項5号)。

発生事実とは、会社について、投資判断に著しい影響を及ぼす重要な事象が発生したという事実をいいます。投資判断に著しい影響を及ぼす重要な事象の例は、以下のとおりです。上記の事実は、これまでの会社経営の前提を覆す可能性のある大きな事実といえます。当然、株価もこれらの事実の発生を受けて大きく変動することが見込まれます。そのため、発生事実がインサイダー取引規制の対象情報とされています。なお、上場会社等の子会社に関して上記のような事象が発生した事実についても、発生事実に含まれます(金商法166条2項6号)。

決算情報とは、会社の売上高等について、直近公表済みの予想値と最新の予想値または決算に差異が生じたという情報をいいます。決算情報は、株式市場において投機筋を中心として非常に関心が高く、株価にダイレクトに影響を及ぼします。そのため、決算情報がインサイダー取引規制の対象情報とされています。なお、上場会社等の子会社に関して上記のような差異が生じた情報についても、決算情報に含まれます(金商法166条2項7号)。

インサイダー取引規制の対象となる情報
情報 説明
重要事実 上場会社等の株価に影響を与える可能性が高い重要な事実
決定事実 会社が投資判断に著しい影響を及ぼす重要な決定をした事実
発生事実 会社について、投資判断に著しい影響を及ぼす重要な事象が発生した事実
決算情報 会社の売上高等について、直近公表済みの予想値と最新の予想値または決算に差異が生じた事実
バスケット条項 決定事実、発生事実、決算情報以外の、その他の重要な事実
公開買付け等の実施・中止に関する事実 公開買付け等の実施・中止が公表されると、株価が大きく変動する可能性が高いため、インサイダー取引規制の対象とされています。

公開買付け等の実施・中止に関する事実

先に解説したように、公開買付けが発表されると、公開買付価格に応じて株価が上昇するのが通常です。その反面、仮に公開買付けが中止されることが発表された場合、反動で株価が下落することが予想されます。そのため金商法は、公開買付け等の実施・中止の両方に関する事実についてインサイダー取引規制の対象情報としています(金商法167条1項)。

公開買付け等の実施・中止に関する事実は、インサイダー情報として取り扱われます(金融商品取引法167条2項)。公開買付けの実施・中止が公表されると、株価が大きく変動する可能性が高いため、インサイダー取引規制の対象とされています。

インサイダー取引規制によって禁止されているのは、 です。 は、当該事実の公表前に、対象株式等の「売買等」を行ってはなりません(金融商品取引法166条1項、3項、167条1項、3項)。✅  売買その他の有償の譲渡、譲受け✅  合併・会社分割による承継✅  デリバティブ取引

未公表の重要事実を知った会社関係者、及び公開買付け等の実施・中止に関する事実を知った公開買付者等関係者は、他人に利益を得させる目的・損失を回避させる目的をもって、当該事実を他人に伝達してはなりません(金融商品取引法167条の2第1項、第2項)。なお、第一次情報受領者から第三者への情報伝達は、規制対象外とされています。

インサイダー取引規制の対象となる行為
行為 説明
売買等 未公表の重要事実を知った会社関係者が、その事実が公表された後でなければ、その会社の株式等の売買等を行ってはならない
情報伝達行為 未公表の重要事実を知った会社関係者が、他人に利益を得させまたは損失を回避させる目的をもって、未公表の重要事実を他人に伝達してはならない

まとめ

インサイダー取引規制は、会社関係者や公開買付者等関係者が、未公表の重要事実を知った上で、その事実が公表される前に株式などの売買を行う行為を禁止しています。

インサイダー取引規制の対象となる情報は、大きく分けて「重要事実」と「公開買付け等の実施・中止に関する事実」の2つがあります。

インサイダー取引規制の対象となる行為は、大きく分けて「売買等」と「情報伝達行為」の2つがあります。

インサイダー取引規制は、対象情報の公表前における売買等や情報伝達行為について規制するものです。したがって、いつ「公表」がなされたかということが重要な基準となります。

3. インサイダー取引の影響とリスク

要約

インサイダー取引が発覚する原因

インサイダー取引が発覚してしまう原因には、大きく分けて以下の2つがあります。証券取引等監視委員会は、市場にインパクトを与えるような事件が起こった場合、その前に不自然な取引が行われていないかを調査します。市場での取引であれば、取引所に照会をかけることにより明るみに出ることになります。また市場外の取引についても、関係する会社の内部に調査が入れば判明する可能性が高いといえます。

インサイダー取引が内部者からの通報により発覚するケースもしばしば見受けられます。例えば、大規模なインサイダー取引が組織ぐるみで行われているというケースでは、これに関与した内部者やこれを知った内部者から内部通報があって、事が発覚するということもあるかもしれません。

インサイダー取引は、こっそり行っているつもりでも「壁に耳あり障子に目あり」、発覚する可能性は高いと考えましょう。

インサイダー取引は刑事罰の対象ともなっていて、軽い気持ちで手を出してしまうと多くのものを失ってしまう結果となります。そのため、インサイダー取引を行うことは固より、インサイダー行為と疑われるような行為も絶対にやめましょう。

インサイダー取引が発覚する原因
原因 説明
証券取引等監視委員会による調査 市場にインパクトを与えるような事件が起こった場合、その前に不自然な取引が行われていないかを調査
内部告発 インサイダー取引に関与した内部者やこれを知った内部者から内部通報があって、事が発覚

インサイダー取引が発覚した場合のリスク

インサイダー取引が発覚した場合、課徴金納付命令又は刑事罰を受ける可能性があります。課徴金納付命令とは、制裁として課徴金を納付すべき旨の命令で、金融庁により発せられます。課徴金納付命令の対象となるのは、自分又は第一次情報受領者が、インサイダー取引規制に違反する「売買等」を行った場合です(金融商品取引法175条1項、175条の2第1項)。課徴金額の計算方法は、以下のとおり要約できます。

(a)自己の計算による場合→獲得した利益又は回避した損失の全額 (b)他人の計算による場合→投資運用業者であれば運用報酬の3倍、それ以外であれば受け取った対価相当額 (a)情報伝達が、売買等の媒介・取次ぎ・代理業の一環として行われた場合→受け取った手数料等の3倍 (b)情報伝達が、有価証券の募集・売出し等の取扱業の一環として行われた場合→受け取った手数料等の3倍(有価証券の引受けも行っている場合、引受対価の2分の1を加算) (c)それ以外の場合→第一次情報受領者が得た利得相当額の2分の1

以下のいずれかに該当するインサイダー取引規制違反については、刑事罰が科される可能性があります。

会社や従業員がインサイダー取引を行った場合、刑事罰や罰金が科されます。合わせて、職員等は懲戒免職といった社内規定による罰則を受け、企業は社会的信頼が失墜するでしょう。不正取引を行わず、起こさせないことが重要です。

インサイダー取引が発覚した場合のリスク
リスク 説明
課徴金納付命令 制裁として課徴金を納付すべき旨の命令
刑事罰 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金
社内処分 懲戒解雇、減給、降格など
信用失墜 企業の社会的信用が失墜

インサイダー取引防止のための対策

会社の法務・コンプライアンス担当者としては、自社の役員・従業員によるインサイダー取引規制違反を予防するため、以下の対応を取ることをご検討ください。

インサイダー取引は、重要事実を見聞きした第三者も該当するため、いい話を聞いたとばかりに取引を行ったら、その時点でインサイダー取引に手を染めたことになります。事実が発覚した瞬間、会社を懲戒解雇になる可能性も考えられ、人生を棒に振ることもあるでしょう。反対に、重要事実を第三者に話すことは、インサイダー取引を生み出す元凶になることも事実です。例えば、居酒屋で友人などについつい気が大きくなって話してしまったり、家族に開発状況を打ち明けたりすることは、インサイダー取引を誘発しかねません。インサイダー取引に関連するルールを事前に知っていれば、少なくとも第三者に対して暴露するような形で情報提供することは避けられるでしょう。

インサイダー取引は犯罪なので、絶対に手を出してはいけません。一方で、口を滑らせて重要事実を口にしたことで、相手を犯罪者にさせてしまう危険性もあります。重要事実を知った場合はたとえ家族であっても話さないことが大切です。また自社株をできる限り持たないこともおすすめです。本当に重要事実を知らなかったとしても、悪い偶然が重なることも考えられるため、一切疑われないようにするためにも、全く関係がない会社の株を買うようにするのも1つの手です。

インサイダー取引は、意図せず抵触してしまうケースがあるため、未然に防止するための対策が不可欠です。上記に挙げた対策を取り入れながら、インサイダー取引が会社に及ぼす深刻な影響を、関係者全員が認識しておくことが大切です。

インサイダー取引防止のための対策
対策 説明
社内ルールの整備 インサイダー取引に関する社内規則を整備し、従業員に周知徹底する
コンプライアンス教育の実施 インサイダー取引に関するコンプライアンス教育を実施する
情報管理体制の整備 未公表の機密情報が外部に漏れて不正利用されないよう、適切な情報管理・体制整備を行う
内部監査体制の構築 社内規程の遵守を確認するために、研修の実施状況は内部および外部監査機関の定期調査で確認すべき事項

まとめ

インサイダー取引は、証券市場の公平性を損なう行為であり、厳しく規制されています。

インサイダー取引が発覚すると、課徴金納付命令や刑事罰を受ける可能性があります。

インサイダー取引を防止するためには、社内ルールや法規制の周知徹底、情報管理体制の整備、コンプライアンス教育の実施などが重要です。

インサイダー取引は、企業の信用を失墜させる行為です。インサイダー取引の発生を防ぐために、関係者全員がインサイダー取引に関する知識を深め、高い倫理観を持つことが重要です。

4. インサイダー取引の実例と問題点

要約

村上ファンド事件

2006年に村上世彰氏が率いる村上ファンドが、ニッポン放送株でインサイダー取引を行ったとして、村上世彰氏が逮捕された事件です。この事件はメディアで大きく取り上げられ、世間をざわつかせました。ニッポン放送の株を大量に保有していた村上ファンドの村上世彰氏は、ニッポン放送株を大量に購入するという堀江貴文氏が率いるライブドアの決定を知った上で、ニッポン放送の株が高騰すると共に売却したという事件。

判決は、懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円だった。村上氏は当時を振り返り、「堀江(貴文氏)がたった一言、『フジテレビがほしい』『ニッポン放送(の株)を買うことはできますか?』と言っただけ。何のインサイダーでもない」と冗談めかして説明したといいます。(IT media Newsより引用)

ちょっとした一言がインサイダー取引に繋がってしまうんだね!

インサイダー取引は、バレる可能性が高いです。証券取引等監視委員会は、市場にインパクトを与えるような事件が起こった場合、その前に不自然な取引が行われていないかを調査します。また、内部告発により発覚するケースもしばしば見受けられます。

村上ファンド事件
内容 説明
事件の概要 村上ファンドが、ニッポン放送株を大量に購入するというライブドアの決定を知った上で、ニッポン放送の株が高騰すると共に売却した
判決 懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円

ドンキ前社長の逮捕事件

最近話題になったインサイダー取引の事例もあります。公表前に知人男性に自社株の購入を不正に勧めた金融商品取引法違反(取引推奨)の疑いで、2020年末にドンキ前社長の大原孝治氏が逮捕されました。(東洋経済オンラインより抜粋)

取引推奨とは、株価に影響を与える重要事実を知った会社関係者が、公表前に他人に株式の売買を勧める行為を指します。2014年の法改正で「取引推奨」も禁止されたワン!

ここで注目すべきなのは、情報を知って取引を行った知人男性は罪に問われず、株取引を推奨した大原氏が罪に問われている点です。

取引の売買で儲けたことではなく、株価に影響を与えるような情報を伝えたことが違法なんだね

ドンキ前社長の逮捕事件
内容 説明
事件の概要 ドンキ前社長が、公表前に知人男性に自社株の購入を不正に勧めた
罪状 金融商品取引法違反(取引推奨)
結果 逮捕

インサイダー取引のグレーゾーン

インサイダー取引は、こっそり行っているつもりでも「壁に耳あり障子に目あり」、発覚する可能性は高いと考えましょう。インサイダー取引は刑事罰の対象ともなっていて、軽い気持ちで手を出してしまうと多くのものを失ってしまう結果となります。そのため、インサイダー取引を行うことは固より、インサイダー行為と疑われるような行為も絶対にやめましょう。

インサイダー取引は、重要事実を見聞きした第三者も該当するため、いい話を聞いたとばかりに取引を行ったら、その時点でインサイダー取引に手を染めたことになります。事実が発覚した瞬間、会社を懲戒解雇になる可能性も考えられ、人生を棒に振ることもあるでしょう。反対に、重要事実を第三者に話すことは、インサイダー取引を生み出す元凶になることも事実です。例えば、居酒屋で友人などについつい気が大きくなって話してしまったり、家族に開発状況を打ち明けたりすることは、インサイダー取引を誘発しかねません。インサイダー取引に関連するルールを事前に知っていれば、少なくとも第三者に対して暴露するような形で情報提供することは避けられるでしょう。

インサイダー取引は犯罪なので、絶対に手を出してはいけません。一方で、口を滑らせて重要事実を口にしたことで、相手を犯罪者にさせてしまう危険性もあります。重要事実を知った場合はたとえ家族であっても話さないことが大切です。また自社株をできる限り持たないこともおすすめです。本当に重要事実を知らなかったとしても、悪い偶然が重なることも考えられるため、一切疑われないようにするためにも、全く関係がない会社の株を買うようにするのも1つの手です。

インサイダー取引は、意図せず抵触してしまうケースがあるため、未然に防止するための対策が不可欠です。上記に挙げた対策を取り入れながら、インサイダー取引が会社に及ぼす深刻な影響を、関係者全員が認識しておくことが大切です。

インサイダー取引のグレーゾーン
ケース 説明
家族への情報漏洩 社員が家族に重要事実を話したことで、家族がインサイダー取引を行った
利益確定前の売買 重要事実を知った上で株を買い付け、利益確定前に売却した
海外在住者によるインサイダー取引 海外在住者が、日本の企業の内部情報を利用して株取引を行った
自社株の売買 自社の業績が良いか悪いかを知りながら、自社株を売買した

まとめ

インサイダー取引は、企業の内部関係者が、未公開の重要情報を利用して、不当に利益を得る違法行為であり、公正な証券市場の根幹を揺るがす重大な問題です。

インサイダー取引は、バレる可能性が高いです。証券取引等監視委員会は、市場にインパクトを与えるような事件が起こった場合、その前に不自然な取引が行われていないかを調査します。また、内部告発により発覚するケースもしばしば見受けられます。

インサイダー取引は、刑事罰の対象ともなっていて、軽い気持ちで手を出してしまうと多くのものを失ってしまう結果となります。そのため、インサイダー取引を行うことは固より、インサイダー行為と疑われるような行為も絶対にやめましょう。

インサイダー取引は、意図せず抵触してしまうケースがあるため、未然に防止するための対策が不可欠です。上記に挙げた対策を取り入れながら、インサイダー取引が会社に及ぼす深刻な影響を、関係者全員が認識しておくことが大切です。

5. インサイダー取引と一般投資家の関係

要約

インサイダー取引が一般投資家に与える影響

インサイダー取引は、一般投資家にとって不公平な取引です。インサイダー取引が横行すると、一般投資家は、公開されている情報のみを基に投資判断をするのに対し、インサイダーは内部情報を利用して有利な取引を行うことができます。

インサイダー取引は、市場の信頼を損なう可能性があります。インサイダー取引が横行すると、一般投資家は、市場が公平ではないと感じるようになり、投資意欲が低下する可能性があります。

インサイダー取引は、市場の効率性を低下させる可能性があります。インサイダー取引が横行すると、市場の価格形成が歪み、効率的な資源配分が阻害される可能性があります。

インサイダー取引は、市場の安定性を損なう可能性があります。インサイダー取引が横行すると、市場の不安定要因となり、市場の変動が大きくなる可能性があります。

インサイダー取引が一般投資家に与える影響
影響 説明
不公平な取引 一般投資家は、公開されている情報のみを基に投資判断をするのに対し、インサイダーは内部情報を利用して有利な取引を行うことができる
市場の信頼の損失 一般投資家は、市場が公平ではないと感じるようになり、投資意欲が低下する可能性がある
市場の効率性の低下 市場の価格形成が歪み、効率的な資源配分が阻害される可能性がある
市場の安定性の損失 市場の不安定要因となり、市場の変動が大きくなる可能性がある

インサイダー取引を避けるための一般投資家の対応

一般投資家は、インサイダー取引を避けるために、以下の点に注意する必要があります。

インサイダー取引に関する情報を収集し、インサイダー取引の危険性を理解する。

インサイダー取引が行われている可能性のある企業の株式には投資しない。

インサイダー取引に関する情報提供があれば、証券取引等監視委員会に通報する。

インサイダー取引を避けるための一般投資家の対応
対応 説明
インサイダー取引に関する情報の収集 インサイダー取引の危険性を理解する
インサイダー取引が行われている可能性のある企業の株式への投資回避 インサイダー取引が行われている可能性のある企業の株式には投資しない
インサイダー取引に関する情報提供 インサイダー取引に関する情報提供があれば、証券取引等監視委員会に通報する

インサイダー取引と投資家の権利

インサイダー取引は、一般投資家の権利を侵害する行為です。一般投資家は、公平な市場で取引を行う権利があります。

インサイダー取引は、一般投資家の利益を損なう可能性があります。インサイダー取引によって、一般投資家は、本来得られるはずだった利益を得ることができなくなる可能性があります。

インサイダー取引は、一般投資家の投資意欲を低下させる可能性があります。インサイダー取引が横行すると、一般投資家は、市場が公平ではないと感じるようになり、投資意欲が低下する可能性があります。

インサイダー取引は、一般投資家の資産形成を阻害する可能性があります。インサイダー取引によって、一般投資家は、本来得られるはずだった利益を得ることができなくなる可能性があり、資産形成が遅れる可能性があります。

インサイダー取引と投資家の権利
権利 説明
公平な市場で取引を行う権利 一般投資家は、公平な市場で取引を行う権利があります
利益を得る権利 インサイダー取引によって、一般投資家は、本来得られるはずだった利益を得ることができなくなる可能性があります
投資意欲を持つ権利 インサイダー取引が横行すると、一般投資家は、市場が公平ではないと感じるようになり、投資意欲が低下する可能性があります
資産形成を行う権利 インサイダー取引によって、一般投資家は、本来得られるはずだった利益を得ることができなくなる可能性があり、資産形成が遅れる可能性があります

まとめ

インサイダー取引は、一般投資家にとって不公平な取引であり、市場の信頼を損なう可能性があります。

一般投資家は、インサイダー取引に関する情報を収集し、インサイダー取引の危険性を理解することで、インサイダー取引を避けることができます。

インサイダー取引は、一般投資家の権利を侵害する行為であり、一般投資家の利益を損なう可能性があります。

インサイダー取引は、一般投資家の投資意欲を低下させ、資産形成を阻害する可能性があります。

6. インサイダー取引の未来展望と対策

要約

インサイダー取引の未来展望

インサイダー取引は、今後も厳しく取り締まられることが予想されます。近年、インサイダー取引の摘発件数は増加傾向にあり、当局はインサイダー取引の防止に力を入れています。

インサイダー取引の防止には、テクノロジーの活用が期待されています。人工知能(AI)やビッグデータ分析などの技術を活用することで、インサイダー取引の兆候を早期に発見することが可能になります。

インサイダー取引の防止には、国際的な協力が不可欠です。インサイダー取引は、国境を越えて行われることが多いため、国際的な協力体制を強化することで、インサイダー取引の防止効果を高めることができます。

インサイダー取引の防止には、投資家の意識改革が重要です。投資家は、インサイダー取引の危険性を理解し、インサイダー取引に関与しないように注意する必要があります。

インサイダー取引の未来展望
展望 説明
インサイダー取引の厳格な取り締まり 今後も厳しく取り締まられることが予想されます
テクノロジーの活用 人工知能(AI)やビッグデータ分析などの技術を活用することで、インサイダー取引の兆候を早期に発見することが可能になります
国際的な協力 インサイダー取引は、国境を越えて行われることが多いため、国際的な協力体制を強化することで、インサイダー取引の防止効果を高めることができます
投資家の意識改革 投資家は、インサイダー取引の危険性を理解し、インサイダー取引に関与しないように注意する必要があります

インサイダー取引防止のための対策

インサイダー取引を防止するためには、企業は、以下の対策を講じる必要があります。

インサイダー取引に関する社内規則を整備し、従業員に周知徹底する。

インサイダー取引に関するコンプライアンス教育を実施する。

インサイダー取引に関する内部監査体制を構築する。

インサイダー取引防止のための対策
対策 説明
社内ルールの整備 インサイダー取引に関する社内規則を整備し、従業員に周知徹底する
コンプライアンス教育の実施 インサイダー取引に関するコンプライアンス教育を実施する
情報管理体制の構築 未公表の機密情報が外部に漏れて不正利用されないよう、適切な情報管理・体制整備を行う
内部監査体制の構築 社内規程の遵守を確認するために、研修の実施状況は内部および外部監査機関の定期調査で確認すべき事項

インサイダー取引防止のための法規制の強化

インサイダー取引を防止するためには、法規制の強化も必要です。

インサイダー取引の罰則を強化する。

インサイダー取引の摘発を強化する。

インサイダー取引に関する情報提供を奨励する。

インサイダー取引防止のための法規制の強化
強化 説明
罰則の強化 インサイダー取引の罰則を強化する
摘発の強化 インサイダー取引の摘発を強化する
情報提供の奨励 インサイダー取引に関する情報提供を奨励する

まとめ

インサイダー取引は、今後も厳しく取り締まられることが予想されます。

インサイダー取引の防止には、テクノロジーの活用、国際的な協力、投資家の意識改革が重要です。

インサイダー取引を防止するためには、企業は、社内規則の整備、コンプライアンス教育の実施、内部監査体制の構築などの対策を講じる必要があります。

インサイダー取引を防止するためには、法規制の強化も必要です。

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